●リプレイ本文
●OP
主題歌が流れながら、学園の日常生活が描かれ、登場人物たちが次々と出てくる。
そしてスタッフのテロップが流れたあとにキャストのテロップが流れる。
キャスト
鳥女/火絵 楓(
gb0095)
神楽坂 ファイナ/ファイナ(
gb1342)
闇野ミサ、ダークエンジェル/鬼道・麗那(
gb1939)
チェスター・ハインツ/チェスター・ハインツ(
gb1950)
月影・白夜/月影・白夜(
gb1971)
エオス・アイオーン、シルバー・クロウ/烏丸 八咫(
gb2661)
祥龍/ドニー・レイド(
gb4089)
ウル・斎藤/ウレキサイト(
gb4866)
ニュクス・アイオーン/キャプテン・エミター(
gb5340)
番長・比留間ゲンジ/桂木穣治(
gb5595)
布野橘/フーノ・タチバナ(
gb8011)
多田 勝子/鳳凰 天子(
gb8131)
布野詠美/エイミ・シーン(
gb9420)
青葉レン/ブロンズ(
gb9972)
藍・カレン/サラ・ディデュモイ(gz0210)
監督 セルゲイ・グリューン
新春特番 機装戦隊ドラグナイツ特別編
学園戦隊ドラグナイツ!
番組タイトルのあとにCMに入る。
UPCの兵士募集のCMとドローム社とその子会社の商品を紹介するCM。そしてドラグナイツ第二期放映決定のお知らせが入り、冒頭シーンへとなる。が、その前に視聴注意がついた。
サラ・ディデュモイが学生服姿で現れる。
「TVを見るときは部屋を明るくして画面から離れて見てね。それから、録画データの違法コピーは著作権法と国際条約で罰せられるから不正に流通させないこと。それから、今回のお話はパラレルワールドです。いつものドラグナイツとは、少し違うから注意してね♪」
●Aパート
「新しいあさぁ===========!!」
学校の屋上で鳥のきぐるみを着た女が叫んでいた。
早朝。アイオーン家。
「ニュクス、起きなさい。早くしないと朝食抜きで置いていきますよ」
弓道部の朝練のあるアイオーン姉妹の朝は早い。
「ん‥‥むにゅう」
布団がずり落ち、パジャマ姿のニュクスが寝ぼけた声を出す。
「ほら、寝ぼけない。いつまでも寝ぼけていると、その乱れたパジャマ姿を写メにとって学校中に流しますよ」
「‥‥だめだめ! それだめ!」
慌てて飛び起きる。祥龍さんにそんな姿を見られたら一生の恥だ。そう思って飛び起きる。
姉の作戦がちである。
「よし、起きましたね。顔を洗って朝食を食べなさい。朝練が待ってますよ。ほら、急いで」
「はーい」
返事をしてニュクスは部屋を出て洗面所へと向かう。こうして新しい一日は始まった。
「まったくこのままでは単位に響きますよ」
だがその呟きを妹は聞いていなかった。
「そーれから」
鳥女が屋上で叫んでいる。
それから約二時間後、遅刻ぎりぎりの時間。
「兄さん、行ってきまーす!」
藍・カレンはパンをくわえながら家の玄関を飛び出した。代休で休みの兄とは違ってカレンには学校がある。
「あーもう、遅刻遅刻」
パンをぱくつきながら学校までの道のりを走るカレン。
そんな彼女が曲がり角を曲がったとき、バイクが飛び出してきた。
あわてで急制動をかけるバイク。カレンはその拍子に転んでしまう。
「あ、危なかった‥‥大丈夫ですか?」
緑色の髪に青い瞳の、整った顔立ちの少年がバイクから降りてきてカレンを助け起こす。
「あ、ありがと‥‥あ、あたし学校に遅刻しそうだからこれで!」
思わずときめいてしまったカレンだが遅刻しそうだということで自分を誤魔化すと学校に向かって走っていこうとする。
「学校って‥‥その制服からするとジョバンニ学園ですか? それなら丁度いい、僕もそこにいくつもりだったんですよ。どうです? 後ろに乗っていきませんか?」
「え、いいの?」
「ええ。遅刻、しそうなんでしょ? 飛ばしますよ」
カレンは少年のバイクに乗ると、しっかりとしがみついた。
バイクが町を走り抜けていく。風が心地よかった。
「? ‥‥何でしょうか? ‥‥と、遅れてしまいますね‥‥」
一連の騒動を見ていたカレンのクラスメイト月影・白夜が不思議そうに去っていくバイクを見るが、遅刻しそうなので慌てて走り出す。
バイクが学校に到着すると、少年はバイクを止めた。
カレンの隣家の幼馴染でクラスメイトのニュクス・アイオーンが弓道部の朝練中に見知らぬ少年と一緒にバイクで登校したカレンの姿を見て、
「‥‥冬だけど春が来た‥‥のかなー?」
と笑っていた。
「ニュクス、余所見をしない」
顧問で姉のエオス・アイオーンがニュクスに注意をする。
「あ、ごめんなさい」
ニュクスは謝ると練習に戻った。弓道着を翻しながら。
カレンはバイクから降りると、少年に礼を言って歩き出そうとした。そこを少年が呼び止める。
「そうだ‥‥君、名前は?」
「あたしはカレン。藍(らん)・カレン。変わった名前でしょ? 中国人とのハーフなの。じゃあね。今日はありがとう」
そういって校内に入っていくカレンを、少年は見送っていた。
「新しいあさぁ===========!!」
「?」
突然聞こえてきた叫び声に少年が目を向けると、屋上で鳥のきぐるみを着た女が叫んでいた。
「なんだあれ?」
だが、彼の疑問に答えるものはなかった。
そして屋上に警備員が現れ鳥女を捕まえようとするが、女は
「あたしは鳥だ、鳥だ、Iimbir=====d」
と叫んで飛び立とうとし、無論飛べるはずもなく地面に激突するのだが、傷ひとつなく、どこかへと走り去る。
と、チャイムが鳴った。
「いけない。転校初日から遅刻はまずいな‥‥」
少年は慌ててバイクを駐輪場に止めると校舎に向かって走っていった。
それとほぼ同時に高級リムジンが校門前に止まる。扉が開くと執事とボディーガードが出てきて、執事が後ろの扉を開ける。
「皆様、おはようございます」
「姫様、おはようございます」
回りの生徒が挨拶をする。
彼女は闇野ミサ。容姿端麗、頭脳明晰、スポーツ万能、心優しき学園のマドンナとして皆から愛されている。
「ではお嬢様、行ってらっしゃいませ」
「ええ。では‥‥」
執事に一礼すると、皆に会釈しながら校舎へと向かっていった。
「そーれから」
鳥女が叫ぶ。
カレンのクラスに担任のエオスが入ってくる。
「きりーつ」
「礼」
「着席」
静かにエオスの言葉を待つ生徒達。
「おはようございます、皆さん」
「おはようございまーす」
「今日は転校生がいます。それでは、ハインツ君、入ってきてください」
エオスの言葉に、「はい」と言う返事があって、カレンが今朝バイクに乗せてもらった少年が入ってきた。
「あーっ!」
思わずカレンが叫ぶ。
「どうしました、カレン?」
エオスが尋ねるが、カレンは慌てて誤魔化す。
「では、自己紹介を」
「はい。チェスター・ハインツです。趣味はキーボードで、特技は家事です。よろしくお願いします」
「きゃーっ!」
「かわいいー!」
女子から歓声が上がる。
「カレンの隣の席が空いていますね。そこに座ってください。カレン、授業後に校舎を案内してあげなさい。それで先ほどのことは目をつぶります」
「あ、はい‥‥」
「兄妹そろって全く‥‥いつもこうなのですから‥‥」
「‥‥? 何か?」
エオスのつぶやきにカレンが反応するが、なんでもないとエオスは答える。
それから二・三の伝達事項を話してエオスはホームルームの終わりを告げる。
「きりーつ」
「礼」
『ありがとうございました』
エオスが教室を去っていく。
女子生徒たちはチェスターの周りに集まる。その集団から押し出されるカレンに向かって話しかけてくる人物がいた。
「おはよう、今日も元気そうだな」
多田 勝子。いつも竹刀と剣道着のサムライ少女である。
「おはよう。勝子も元気そうね」
「ああ、私は元気が身上だからな」
「そうね、ふふ」
笑いあう二人。なんでもない日常の青春がそこにあった。
「そーれから」
鳥女が叫んでいる。
一時限目が始まる頃――保健室。
「ちーっす」
学校にいる時間のほとんどを屋上か保健室で寝てすごしている青葉レンが、今日も睡眠を求めて保健室へやってきた。
「あらレンちゃん、今日も来たの? 戻るときは布団を直して行って下さいね」
学園の保険医、ウル・斎藤はそんなレンを咎める様子もなく、保健室を出て行った。
「祥龍さんどこかしらねえ‥‥」
用務員の祥龍さんを探して東へ西へ。ウルは学校中を探しまわる。
花壇へ来たとき、老け顔で学生には見られない、学園の硬派な番長、比留間ゲンジが花壇を弄っているのを見つけた。
「ゲンジちゃん、今日も花壇のお世話?」
「ああ、ウル先生。花は良いよな。癒される」
「そうね。ところで祥龍さんみなかったかしら?」
「祥龍なら校庭のほうの花壇弄ってたぜ」
「そう、ありがとう」
ウルは礼を言うとその場をあとにし、校庭に向かった。
「それにしても放課後が楽しみだのー。ミサさんが放課後に屋上に来いだなんて。ミサさんが俺のことを‥‥? やっぱり男は腕っ節だよな! く〜番長やっててよかったあ!」
何も知らない番長はマドンナのミサに呼び出されて有頂天になっていた。
「いっぽうそのころ」
鳥女が暇そうにつぶやいた。
カレンのクラスでは物理の授業が行われていた。
「はい、月影さん、この問題答えてくれる?」
そういって出されたのはかなり難しい定理の問題だったが、白夜は一瞥し、スラスラ解いてみせる。響くチョークの音は軽快で、且つ早い。
「是で大丈夫でしょうか?」
「オーケー。満点よ。じゃあ、この定理について解説するわね‥‥」
「ほんでもって、そんでもって」
鳥女が小躍りしながら言った。
「うふふ‥‥だ〜れだ♪」
祥龍を発見したウルは、祥龍がこちらに気がついていないのをいいことに、後ろからコッソリと近付き、両手で目隠しをする。そして不可抗力の振りをして背中に胸を当てる。
「‥‥その声は、ウルさん?」
「あ・た・り♪」
そう言ってウルは祥龍を解放する。
「どうしました、ウルさん」
「祥龍さんに会いに来ましたの」
「そうでしたか。でも、保健室は良いんですか?」
「だって、仮眠を取りに来る生徒しかいませんもの。それにしても‥‥あら、体育の授業ですわね。私にもあぁいう時期があったのですわね‥‥」
そういってウルはため息をつく。
「なに、ウルさんだってまだ十分若いですよ」
「まあ、うれしい。祥龍さん‥‥」
「ウルさん‥‥」
二人だけの世界を作っていると、
「あたしは鳥だ、鳥だ、Iimbir=====d」
鳥女が叫んで再び落下した。そして警備員に追われこちらにやってくる。
激突。
「おっと、ごめんなにょら〜」
鳥女は謝ると走り去っていった。
アイキャッチが入りCMへ。
北米大統領ジョナサン・エメリッヒが演説を行っている。
「バグアの脅威に、我々人類は絶対に屈服しない。国民諸君! 君達も戦士の一人だ。君達が仕事で町を支え、国を支えることが人類を支えることにつながる。政府は諸君を決して見捨てたりはしない。人類の人類による、人類のための星を、勝ち取るのだ!」
アイキャッチが入りBパートへ
●Bパート
「ひーるー」
鳥女が叫んだ。
昼休み。
用務員室。
「腕に縒りをかけましたの。はい、あ〜んしてください♪」
ウルが祥龍に手作りの弁当を食べさせようとしたところに、ニュクスがやってくる。
「祥龍さん、お昼だよ、ご飯を食べよう♪」
ニュクスがエオスの手を引いて用務員室に入ってくる。
「あらニュクスちゃん、今日はどうしたのかしら?」
「祥龍さんとご飯を食べに。ウル先生、さっき保健室に生徒が運ばれるの見ましたけど、こんな所で油売ってて良いんですか〜?」
「大丈夫よ。保健委員がいるから」
などと女同士で水面下の争いを繰り広げていると祥龍が
「いつもありがとうニュクスちゃん、俺は幸せ者だな。‥‥あぁ、エオス先生も一緒かい?」
と空気を読まないことを言う。
「今日の玉子焼きは美味しく焼けたから。祥龍さん、はいあーん♪ 姉さんも食べよう」
「ニュクス‥‥、嬉しいですが自分の事も考えなさい。私は応援していますから」
(「まさか、同じ人を好きに成ってしまうとは。もう私は‥‥あの兄バカに未練など‥‥無いのだから‥‥けれど」)
エオスは遠くで三人を見守りながらそんなことを考えている。と、
「ウルさん、もし良ければ今晩お食事でも如何です?」
祥龍が言った。
(「これだからこの男は‥‥」)
エオスは心の中で拳を握り締める。
「まあ、よろしいんですの? それではお誘いをお受けしますわ」
どこ吹く風で誘いを受けるウル。
「ねえさーん‥‥」
涙目になるニュクス。
「負けてはいけませんよ、ニュクス」
励ますエオス。
「それからどうした」
鳥女がきぐるみの口から器用に食べ物を摂取しながら呟いた。
「こら、そこの生徒。未成年は喫煙禁止だ!」
勝子が昼の見回りをしていると、いかにも不良風の男子生徒が煙草を吸っていた。
「あんだ、おめー?」
いかにも頭の悪そうな口調でガンをつける生徒に向かって、勝子が竹刀の切っ先を向ける。
「反省して速やかに喫煙をやめるならよし。さもなくば‥‥」
「さもなくばなんだってえ?」
煙草をふかしながら聞き返す不良。
「反省の色なしと見た。制裁!」
煙草の火のついた部分だけを竹刀で切り落とす勝子。
「てめえ!」
色めきたつ不良。ナイフを取り出し勝子に突撃する。
「甘い!」
身軽な体捌きでかわすと、思いっきり竹刀で不良の脳天を直撃する。
「面!」
それだけで脳震盪を起こして不良は気絶した。
「あほー。あほー」
鳥女が叫んだ。
「やかましいぞ鳥。お前も制裁するぞ!」
勝子が叫ぶと、鳥女は一目散に逃げ出した。
「それからどうなったんだろうねえ?」
ジュースを飲みながら鳥女はそう言った。
布野橘と神楽坂 ファイナおよび布野詠美は幼馴染である。
橘は剣道部に所属しており、ファイナは剣道部ではなかったが、二刀使いの剣士だった。そして詠美とファイナはお互い憎からず思っていたが橘は重度のシスコンで妹が可愛くて仕方がない。それと同時に戦力になるファイナを剣道部に引き込みたがっていた。
そこで思いついたのがファイナとの決闘。橘が勝てばファイナは詠美をあきらめ剣道部へ。ファイナが勝てば詠美とファイナの交際を認めるという条件だった。
そして剣道場。
「よぅし、決闘だ。好きなスタイルでかかってきな。お前が勝ったら詠美のことを認めてやる。ただし、俺が勝ったら剣道部に入部してもらう。いいな?」
橘はそう言うと竹刀を構えた。
「いいぜ、その勝負、受けた!」
ファイナは竹刀を二本とると天地上下の構えをとる。
(「この構え、この気迫‥‥。ガキの頃からこいつと付き合ってきたけど、いざ前に立ってみるととんでもない威圧感だ。へへっ、武者震いがするぜ。小学生の頃から剣道続けてきた俺でさえ恐怖を感じる覇気。くっ、恐ろしいヤツめ。部にも所属せずに何故これほどの力を滲み出させることが出来るんだ。俺なんか敵に威圧感を与えるのに五年はかかったんだぞ? 何だ、ヤツの体の奥底から染み出るこのパワーは‥‥。 ハッ、来る!?」)
ファイナが跳躍する。左の剣は足を、右の剣は腕を狙っている。
「くっ!」
橘は剣を下から上に払ってその攻撃をかわすと、そのまま振り下ろす。
「面!」
「ちぃっ!」
強力な振り下ろしをファイナは両方の剣を交差させて受け止める。
「やるな橘!」
「お前こそな、ファイナ!」
鍔迫り合い。両者一歩引いて間合いを取る。
「突き!」
橘の剣がファイナの喉元を狙う。
「やめてえええええ!」
と、突然の制止が入った。
「詠美!」
「何で此処へ!?」
橘とファイナが驚く。
詠美はチアの練習をしているはずだった。
「部員さんから聞いたの。二人とももう止めてよ! もう争わないで!」
「詠美‥‥」
橘が言葉に詰まる。
「タチ兄ちゃん、何でこんな馬鹿げた賭けなんかするのよ」
「そ、それは‥‥ファイナ、今回は引き分けにしてやるよ。剣道部に入らなくたっていいや。でもな、詠美のことも認めないからな!」
「この兄馬鹿め!」
言葉に詰まり負け惜しみのように引き分けを宣言する橘と、そのシスコン振りに厭きれて言葉を吐き捨てるファイナ。
「何で仲良くできないのよ‥‥」
そういってロケットの蓋を開ける詠美。そこには橘と詠美とファイナの三人で仲良く写った写真が入っていた。
「ごめん、詠美」
「タチ兄ちゃん‥‥」
「わかったよ。ここは詠美に免じて剣道部に入ってやる。でも、詠美の事を諦めた訳じゃないからな!」
「ファイナ‥‥」
三人が雰囲気に浸っているところに、昼休みの終わり5分前を告げるベルが鳴った。
「やばい。授業始まる!」
「えー、あたしチア服のままだよ!」
「とにかく急ぐんだ、橘、詠美」
ファイナがそういって走り出す。
「あ、おい!」
「ちょっと、待ってよ!」
こうして青春の一ページがめくられていくのだった。
「あ、そりゃそりゃ」
鳥女が屋上で寛ぎながら言った。
放課後。
カレンはチェスターを連れて学校を案内していた。
「それで、ここが図書館‥‥って、白夜!」
図書館を案内していると、白夜が山積みのとても難しそうな本の中で、読んでいる本は開いたままで、とても穏やかで可愛い寝顔をして寝息をたてている。
「‥‥ん‥‥此処の‥‥連結は‥‥」
寝言を言う白夜。
「そっとしておきましょう。次は視聴覚室を案内するわね。映画館並みの設備があるわよ」
「それは楽しみですね」
二人はそう言うと図書館を後にした。
「屋上では‥‥逢引?」
鳥女が首をかしげた。
「ミサさん!」
「番長さん、よく来てくださいました」
ミサに呼び出された番長が尻尾を振る犬のごとくミサに愛想を振りまく。
「それで、重大な話って?」
「それはですね‥‥」
ミサは番長の瞳をまっすぐ見て顔を近づける。
「ミ、ミサさん‥‥」
ゴクリ。番長は唾を飲み込んだ。
「ダークエンジェルとして命じます。この学園を破壊しなさい‥‥」
紅く光った瞳が番長の瞳を映す。
「わかり‥‥ました」
番長の、ゲンジの瞳が紅く光る。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
ゲンジは絶叫するとミサから渡された金属バットを持って階段を下りていった。そして、窓ガラスという窓ガラスを破壊する。
そして保健室にたどり着き、保健室の窓ガラスを破壊する。と、
「うるせえなぁ‥‥なんだいったい? 俺の睡眠を妨げるのは誰だ?」
レンが目を覚まし寝ぼけ眼で周囲を見渡す。
ゲンジが保健室の備品を破壊していた。
「ゲンジ、てめえ、何してやがる」
だがレンの問いかけにゲンジは答えることなく暴れまわっている。
「なんだ、やかましいな」
勝子が保健室に入ってくる。
「番長か。おぬしがこの様に暴れるとは珍しいな。迷惑なので力づくで止めさせてもらうぞ。はっ!」
竹刀を抜いて番長に斬りかかる。
だが番長は金属バットで竹刀を受け止めると、右手を離して勝子の鳩尾に拳を入れる。
「かはっ‥‥」
倒れる勝子。
「あの多田がやられた!」
いつの間にか集まっていたギャラリーが叫ぶ。
「つ、強い。力及ばずか、無念‥‥」
そのままギャラリーによってベッドに運ばれる勝子。
「おい、ゲンジ、人が気持ちよく寝てたのによくも邪魔してくれたなあ!」
レンは拳をゲンジにめがけて振るう。
ゲンジは軽く上体を引いてその攻撃をかわすと、右拳をボディ狙いで入れる。
だがレンはそれを受け止めると、回し蹴りでゲンジの首元を攻撃する。
「がぁ!」
その強烈な一撃で気絶するゲンジ。
「強い!」
ギャラリーが叫ぶ。
そしてゲンジもベッドへと運ばれた。
「ふーう。まったく、なんだってんだ。さて、もう一度寝よう‥‥って、ベッドが埋まってるな」
レンがぼやいていると、一連の事件を監視していたミサが呟いた。
「ちぃっ、使えないオトコですわね」
そしてそこにウルがやってくる。
「まあまあ、なんですのこれは?」
マイペースに驚くウルに、漆黒のスーツの女が襲い掛かる。
「あぶねえ!」
レンがウルを庇い、引き寄せる。
「なんだてめえ!」
「我が名はダークエンジェル、魔界より来たりし美しき女神と知りなさい」
ミサ、いやダークエンジェルはレンに左ストレートを叩き込んで撃沈させると、周りの生徒達を無差別に襲い始めた。
「キャー! 祥龍さん助けて〜〜っ!」
ウルは付近に居ないはずの祥龍に助けを求めて右往左往していた。
「大丈夫ですか、ウルさん!」
「何事ですか!」
祥龍とエオスが駆けつける。そして、ニュクスも遅れてやってきた。
「あら、誰かと思えば裏切り者のシルバー・クロウじゃない。ちょうど良いわね、あなたの妹、戴きますわ」
ダークエンジェルはニュクスに当身をして気絶させると、彼女を抱えて窓から飛び出す。
「ニュクス!」
「ニュクスちゃん!」
エオスと祥龍が叫ぶ。
「祥龍さん、怖かったですわ〜」
ウルが祥龍に抱きつき、胸を押し当てる。
「ニュクス、ニュクス!!」
エオスが叫ぶ。
(「私に力があれば‥‥力私には有ったはず思い出せない‥‥」)
その時、左目に激痛。エオスは思わず眼を押さえ倒れ込む。
「思い出しましたそう、私は‥‥白銀の魔女エオス・アイオーン、そして元バグラムの幹部シルバー・クロウ」
エオスは祈るような姿勢を取り何かを呟くと、白銀のオーラが身体を包みシルバー・クロウにその姿を変える。
そのころ、騒ぎを聞きつけてやってきたカレンたちを、奇妙なスーツを着た集団が襲って来た。
そしてカレンとチェスターの前にやってくる。
「藍・カレン、貴様の夢を戴きにやってきた!」
スーツの男が叫ぶ。
「な‥‥なにこれ?」
おびえるカレン。
「思い通りにはさせない‥‥来い! ミカエル」
駐輪場。緑色に塗装されたバイクに自動でエンジンがつき、校舎の中を人を避けながら疾走する。
バイクの音が近づいてくる。
「装着!」
チェスターが叫ぶと、バイクは変形して鎧となり、チェスターの体を包む。
「学園戦隊ドラグナイツ、推参! 竜と大天使ミカエルの名の下に、バグラム、お前達の好きにはさせない」
「チェスター君、あなたいったい? きゃっ!」
チェスターはカレンを抱きかかえると、竜の翼で安全なところに避難する。
「大丈夫‥‥あなたの夢は、僕が‥‥僕たちが守ります。そうだろ、白夜!?」
「その通りです!」
槍斧と両手両足の装着鎧装備で逸早く現場に急行していた白夜が、チェスターに答える。
「きて! ミカエル!」
銀色に塗装されたバイクがやってくる。
「装着!」
白夜が叫ぶと、バイクは変形して鎧となり、白夜の体を包む。
「エオス先生、いえ、エオスさん、わかりますね、僕たちの役割は‥‥」
「カレンの夢を守る。そしてニュクスも守る!」
チェスターの言葉にエオスが答える。
「ここは任せて、ニュクスさんを!」
「ありがとう」
白夜の言葉に礼を言うと、シルバー・クロウとなったエオスは窓から飛び出した。
「うう‥‥」
ダークエンジェルの肩でニュクスが目を覚ました。
「あら、お目覚め? 囚われの姫君様」
「おまえは‥‥そうか、バグラムか」
ニュクスの推測にダークエンジェルはご名答と答える。
「絶対、みんなは来てくれる。私は、信じているから」
「そう。でも、ここは夢の中よ。どうやって助けるのかしらね」
「こうやってだ!」
言葉とともに空中から銀の矢が雨のように降ってくる。
「シルバー・クロウ! 覚醒したの!?」
「妹を返して貰いますよミサ」
エオスは奇形剣を呼び出す。そして剣をダークエンジェルめがけて振るう。
「私はあなたごときに負けはしない! カレンの夢から出てお行きなさい!」
「くっ!」
剣の攻撃をかわしながらダークエンジェルは呻き声を上げる。
「さすがは元幹部といったところね。仕方がないわね。撤退してあげる!」
ダークエンジェルはニュクスを肩から落とすと大きく跳躍して校舎の影に消えた。
それを確認したエオスは地上に降りる。
「ニュクス!」
「姉さん! 姉さん!」
抱き合う姉妹。
「ニュクスが無事で良かった。望んではならないことですが、夢の間はもう少しこのままで居たいですね‥‥」
「覚えてなさい学園戦隊‥‥この次は必ずアナタ達の最後ですわよ」
姉妹を屋上から見詰め、背後に控える新たな刺客に合図を送るミサ。
一方校舎の中ではチェスターと白夜がバグラムを順調に倒していた。
「光の竜よ!」
光の竜を発動させ、白夜はバグラムを次々と倒していく。
「カレンさんの夢から出て行け!」
そして――
「布野三銃士参上!」
布野兄妹とファイナが登場し、二人の剣士は竹刀で、詠美は空手と柔道の技で一般の生徒を守る。勝ちにはいけないが防御に徹するならば彼らにも目はある。
「カレン‥‥目覚めるんだ、カレン」
「用務員さん? いえ、祥龍兄さん?」
祥龍が光りながらカレンに呼びかける。
「そうだよ、カレン。ここはお前の夢の世界。お前が望んだ夢の世界。だけどバグラムがお前の夢を狙って現れた。もう、夢を見る時間は終わりだ。目覚めるんだ、カレン!」
「わかったわ、兄さん! 来なさい、ミカエル!」
青に塗装されたバイクがやってくる。
「装着!」
そしてそれはカレンを守る鎧へと変わる。
「白夜、チェスター、ありがとう。もう大丈夫。三人で光の竜を発動させるわよ!」
「ええ!」
「わかりました!」
「光の!」
「竜よ!」
「目覚めよ!」
そして光の竜はバグラムを一掃し平和を取り戻す。
「終わった‥‥」
カレンが呟く。
「兄さん‥‥」
「カレン、よくやった」
祥龍はそう言うとウルを見る。
「ウルさん、夢の中だけど、幸せでした」
「あたしもです。祥龍さん」
抱き合い、キスをする祥龍とウル。
「無事みたいですね‥‥良かった」
チェスターはカレンの無事に安堵しつつ告げる。
「でも、そろそろお別れですね『起きる時間』ですよ」
「そうね」
「現実に戻る前に、ちょっとシャワーを浴びてきますね」
白夜がそういってシャワールームに向かう。
「あたしも、シャワーを浴びるわ。起きるのはもう少し待ってね」
そうして二人がシャワーに向かった頃、エオスが戻ってきた。
「エオスさん、ニュクスさんは?」
チェスターがたずねる。
「しばらく一人になりたいそうです。それに‥‥」
と言って祥龍とウルを見る。
「ドロマイト、夢の中だけでも幸せでいてください」
「その名前で呼ばないでくださいな」
そういってウルは拗ねる。
そして一人きりになったニュクスは、「祥龍さん‥‥」と呟いたあと空中から剣を取り出す。
「‥‥これを使う様な事にならなくて良かった‥‥」
剣には【ADR−2 Arondight(アロンダイト)】の銘が刻まれていた。
そしてシャワー室。脱衣部屋に入ったカレンは、驚くべきものを見る。
白夜に胸があったのだ!
「! ‥‥」
真っ赤になって固まる白夜。思わずカレンは夢から覚めてしまった。
「新しいあさぁ===========!!」
それでも叫ぶ鳥女。
カレンの宿舎。白夜とチェスターがカレンに呼びかけていた。
「ん‥‥」
カレンは白夜を見て視線を止める。
「‥‥? なんでしょう?」
「白夜、貴方って女の子?」
「そ、そんなわけないですよ!」
慌てて否定する白夜。
「そういえば、二人ともどうしたの?」
その問いにチェスターが答える。
「えっと‥‥たまには一緒に学校にでも、と思いまして。いかがです?」
「いいわね。チェスター、バイクの後ろに乗せてよ」
「ええ、いいですよ」
そういって微笑むチェスター。
そして、二台のバイクがカレンの宿舎から走り去っていく。
「おわりー!」
鳥女が叫んでいた。
●ED
エンディングテーマが流れる中、日常生活を送るドラグナイツの面々の映像と、夢の中の登場人物たちの映像が交互に流れる。
スタッフロールが流れる。
キャスト
鳥女/火絵 楓
神楽坂 ファイナ/ファイナ
闇野ミサ、ダークエンジェル/鬼道・麗那
チェスター・ハインツ/チェスター・ハインツ
月影・白夜/月影・白夜
エオス・アイオーン、シルバー・クロウ/烏丸 八咫
祥龍/ドニー・レイド
ウル・斎藤/ウレキサイト
ニュクス・アイオーン/キャプテン・エミター
番長・比留間ゲンジ/桂木穣治
布野橘/フーノ・タチバナ
多田 勝子/鳳凰 天子
布野詠美/エイミ・シーン
青葉レン/ブロンズ
藍・カレン/サラ・ディデュモイ
監督 セルゲイ・グリューン
新春特番 機装戦隊ドラグナイツ特別編
学園戦隊ドラグナイツ!
END