タイトル:【JTFM】農園解放マスター:碧風凛音

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/01/21 00:41

●オープニング本文


2009年11月末 クルゼイロ・ド・スウル基地
「作戦の方は順調に運んでいるようだな」
 ジャンゴ=コルテス大佐は葉巻を咥え、白い顎鬚を撫でながらコロンビアの地図上で動いた作戦地点を確認する。
 ボゴタ基地の大規模攻略作戦、カリ基地への大きな陽動作戦、メデジン基地へのローラー作戦などが実行され、そのどれもが成果を上げていた。
 ルイス・モントーヤからの情報もさながら傭兵達の活躍が大きいのはいうまでもない。
「国境部の偵察も行われましたが、まだコロンビアをこちら側に引き込めたわけではありません。エクアドルやベネズエラの反応が気になるところです」
 ジャンゴの隣では着慣れない軍服に身を包んだ南米らしい浅黒い肌でプロポーションのよい美女がたっていた。
 ミス・ボリビアでもあったソフィア・バンデラスである。
「一つの意見として取り入れておこう。元ミスが軍人となって作戦に参加するとは意外だな」
「周りが戦火に見舞われている中、中立国だからと閉じこもっているわけにはいきません。平和のために戦いたいんです」
「Soy bueno senorita(OK、お嬢さん) その気持ちを忘れるんじゃないぞ。次の作戦をはじめようか」
 娘ほどの年頃の女性の強い目にジャンゴは不敵に笑い次なる作戦へと動きをみせるのだった。


 コロンビアコーヒー農園解放作戦
 そんな依頼がエイシャ(gz0282)の所属するゲリラ集団のところに舞い込んできたのは1月を過ぎたころだった。
 UPC南中央軍からの依頼である。
 曰く、軍を大きく動かすのが難しいので、君達で何とかしてほしい。コーヒー農園を開放できれば、今後のコロンビアの状況も明るいものになるだろう。
 とのことだった。
 偵察部隊によれば敵の戦力はキメラが十数匹と、強化人間ではない一般兵が50人であるとのこと。
 対してこちらの人数は約100名。キメラさえいなければ楽に落とせる場所ではあるのだが‥‥
「能力者にも依頼は出してある。彼らと協力してコーヒー農園を開放してほしい」
 UPCの仕官はエイシャにそういった。そして地図と航空写真を渡してよこした。
「敵の士気は低い。ある程度不利になれば逃げ出すだろう。それでは、良い報告を期待している」

●参加者一覧

地堂球基(ga1094
25歳・♂・ER
篠崎 公司(ga2413
36歳・♂・JG
辰巳 空(ga4698
20歳・♂・PN
緑川 めぐみ(ga8223
15歳・♀・ER
メビウス イグゼクス(gb3858
20歳・♂・GD
クラリア・レスタント(gb4258
19歳・♀・PN
水無月 神楽(gb4304
22歳・♀・FC
楽(gb8064
31歳・♂・EP

●リプレイ本文

●事前打ち合わせ
「‥‥となると、この地点での交戦が予想されますね」
 辰巳 空(ga4698)は航空写真を見ながら地形を確認し、事前に作戦を練る。
「では、私が囮になって敵戦力を引き寄せますので、皆さんは左右からそれを挟みこんでください」
 空の言葉に、篠崎 公司(ga2413)が応じる。
「麻痺毒への警戒は怠らないように。完全という物は存在しませんから」
 それから自分は左翼に入ると宣言する。
「空さんとは常に無線で連絡を取り合いたいところですが‥‥」
「まあ、戦闘中に余力があればそうします。一応トランシーバーは持っていくつもりですけど」
 と空が応じる。
『私も左翼に入ります』
 言葉をさる事情で失ってしまったクラリア・レスタント(gb4258)が筆談でそう宣言する。
 覚醒すればスムーズにしゃべることが出来るのだが、今は覚醒していない。
「うちはこいつらと一緒にバグア派の兵士を押さえるわ。それでええか?」
 エイシャ(gz0282)が背後に控えている武装勢力を指しながらそう言う。
「エイシャさん、初めまして。緑川めぐみといいます。以前、従兄弟が訓練でお付き合いしたと聞いています。よろしくお願いします。私はエイシャさんはその配置でいいと思いますよ。あ、私は右翼に入ります」
 緑川 めぐみ(ga8223)が挨拶がてら自分の配置を宣言する。
「コロンビアを落とせば戦略的には北米への圧力が軽くなりますし、美味しいコーヒーが飲めるというだけでも勝利したという気分になりますしね。でも支給品でコーヒーばかり出てくるドリンクスパイラルだけは勘弁ですが」
 そんな軽口を叩きながらも武器の確認と手入れを怠らないめぐみ。エイシャは素直に好感を持った。
「私も右翼に入りましょう。コーヒーはいいものですからね。ぜひとも取り返したい」
 メビウス イグゼクス(gb3858)がそう言って、軍から特別に支給された缶コーヒーを飲む。
「出来れば豆から挽いたのを飲みたいですしね」
 そう言って笑う。
「そうですね。僕も右翼に入ります。それで、連携のことですが‥‥」
 水無月 神楽(gb4304)が笑って応じながら連携について話を持っていく。
「俺は右翼の後衛だな。俺は援護に回るから、前衛職の連中はがんばってくれ」
 地堂球基(ga1094)が神楽の言葉に答えてそう言う。
「まあ、こちらで保護してる難民勢に無為にただ飯食わせるのも経費が掛かるし、無目的に待機なのも精神が削がれるよな。そう言う意味では政略レベルの軍事行動だ。規模が小さいからといってコーヒー農園の解放作戦は軽く見れないぞ。まあ、俺はエイシャがいるからこの依頼を引き受けたようなものだがな」
「え?」
 球基の言葉にエイシャが反応するが、球基は「いや、なんでもない」とごまかす。
「おいしーコーヒーをまーもりーましょーん☆ってね」
 楽(gb8064)がそう言って場の空気を切り替える。
「楽さんは左翼に入るよ。現地に着いたら一応探査の眼とかで罠を確認するよー。とりあえずこの航空写真からだと、右翼はこっちから、左翼はこっちからでよさそうだねー」
「そうですね。そろそろ出発しましょうか? 打ち合わせも大体終わりましたし」
 空の言葉にみなが頷き、徒歩行軍による20キロの旅が始まった。
 

●農園到着
「どうです、楽さん? 罠や敵の様子は?」
 公司が双眼鏡を持って探査の眼で農園の様子を見ている楽に向かって尋ねる。
「んー。見た感じ、まだこっちには気がついていないみたいだねー。まあ、あと少し接近すれば確実に見つかるだろうけどねー。見晴らしいいから」
『罠は?』
「罠も見た限りではないようだねー。道路が続いてるから、少なくとも道路に地雷とかは仕掛けられないでしょうー」
 クラリアの筆談に気楽な調子で応じる。
「そうやな。まあ、逆に言えば正面から攻め込むしか出来ないわけか」
 エイシャがそう言うと楽が頷く。
「武装勢力の皆さんも怪我とかしている人はいないみたいだねー。それじゃ、いきましょうかー」
 そして武装勢力の行軍速度に合わせて正面から攻め込み、やがて農園のバグアは兵がこちらに気づくと戦端が開かれた。
「撃てー!」
 エイシャが武装勢力に指示して弾幕を張らせる。そして陣形を少しずつ前進させながら、能力者たちが隙をついてキメラのほうへと飛び出す。
「俺の内の何かがお前達を悪だと判断する‥‥。さぁ、裁きの時間だ!」
 メビウスが叫ぶ。
「その命‥‥神に返しなさい」
 そう言って覚醒する。
 まず、空が瞬速縮地で敵の群れに突入する。
 そのとたん、スカーレット・ニードルが空に向かって群がり、アンドロスコルピオたちは弓を形成して矢をつがえる。
「かかりましたよ」
 無線でそう言って空はにやりと笑うと、ゆっくりと後退を始める。その際小銃「S−01」で攻撃するのも忘れない。
 スカーレット・ニードルの装甲は薄く、小銃の一撃で血を飛ばしながら砕け散る。
 二匹のスカーレット・ニードルを倒しつつ後退すると右翼の球基、めぐみ、神楽、メビウスと、左翼の公司、楽、クラリアが一斉にスカーレット・ニードルに攻撃を始める。
 まず、公司が長弓「クロネリア」 に矢を番えて放つ。
 一直線にスカーレット・ニードル目指して飛んだ矢は急所をつぶして巨大蠍を倒す。
 さらに矢を番えてもう一撃放ち、もう一匹も始末する。
 そして少し前進して包囲網を縮めた。
 クラリアが迅雷で一気にスカーレット・ニードルの群れに接近すると、疾風を使い脚部を淡く光らせ回避力をあげる。
「ここは返して貰う! 貴方達は邪魔!」
 シルフィードを抜いて切りかかり、風のごとく戦場を飛び回り巨大蠍を全滅させる。これで麻痺毒の脅威は半減した。
 一方、エイシャは武装勢力を率いてバグア派の兵士と戦闘していた。
「あまいで」
 敵の銃撃をエルガードではじき、味方を庇う。
「凹陣形で半包囲や。敵は数が少ない。火線を集中させたれ!」
 エイシャの指示の下武装勢力は陣形を組み立てつつ、バグア派の兵士を倒していく。
「戦乙女、閃光いくぞ!」
「おっしゃ!」
 その言葉とともに閃光手榴弾が飛びバグア派兵の中で炸裂する。
「いまだ、ってー」
 一斉に射撃が行われる。一人の体に三本以上の火線が集中し、急所を撃たれてバグアは兵士は倒れる。
「一撃必殺です! 消えなさい!」
 めぐみが流し斬りと両断剣のコンボでアンドロスコルピオを攻撃する。
 ノコギリアックスを四度振るい、アンドロスコルピオに重傷を負わせるが、倒すまではあと一撃足りなかった。
「さぁ‥‥茶番は終わりだ。狂おしく散れ‥‥」
 天剣「ウラノス」 にエネルギーをチャージしながらメビウスが吼える。
 まず、めぐみが残したアンドロスコルピオを倒すと、剣が青く発光し、アンドロスコルピオの側面を、抜き胴の一閃と共に駆け抜ける。
「エクシードドライブ‥‥アロンダイト!」
 その2連撃で一匹を倒すと、さらにもう一匹の尻尾を切り裂く。
「円線!」
 神楽が円線を発動させてアンドロスコルピオを攻撃する。しかし手ごたえは弱い。
「手ごたえが今一ですね。まだまだ修練がたりませんか‥‥」
 一撃を加えては離脱すると言う戦法のため手数も少なく、思うようにダメージを与えられない。
「これがプレゼントだ」
 球基はプレゼントボックスの形をした超機械から電磁波を発生させて神楽の残したキメラに止めを刺すと、さらに二発発射して、重傷を負わせる。
 そして、アンドロスコルピオたちが一斉に矢を放ってきた。
 めぐみめがけて飛んできた5本の矢のうち2本がめぐみに命中する。
「くうっ!」
 めぐみは重傷を受け、その場に膝をつく。
 そして第二派がメビウスめがけて放たれるが、メビウスはそれを難なくかわすと、めぐみを庇う位置に立った。
「なんか硬そうだから、機械剣だねん」
 楽はそう言って銃を機械剣に持ちかえると、球基が残したキメラを倒す。
「やはり弓は脅威ですね」
 空はそう言って銃を朱鳳に持ちかえると、アンドロスコルピオの弓を狙って破壊しにかかった。
 そして思惑通りすべてのアンドロスコルピオの弓の部分を破壊し、そのうちの一体には重傷を負わせる。
「ここは手数を優先するか。クラリアさん、連携していきましょう」
 そう言って公司は弓から拳銃「ラグエル」にもちかえ、大鎌「サリエル」 にもちかえたクラリアを援護する。
 そして空が重傷を負わせたアンドロスコルピオを倒すと、残りの3匹に重傷を負わせる。
 エイシャ率いる武装勢力は敵の8割を戦闘不能にし、残りの士気が落ちて逃げ出した兵士の追撃にかかっていた。
「神楽さん、メビウスさん、こちらも連携で行きましょう!」
 めぐみが叫ぶと二人は応じて、タイミングを合わせて攻撃を仕掛ける。
「くっ」
 めぐみは体を庇いながらも果敢に攻撃を仕掛け、神楽とメビウスも負けじと剣を振るう。
 その連携攻撃は残っていたアンドロスコルピオすべてを切り伏せ、その瞬間に勝利は確定した。
「世界の為‥‥人々の為だ。その為になら何度でも剣を振るおう」
 メビウスが呟く。
「私もです」
 めぐみが同意した。
 エイシャが逃げる敵の追跡をあきらめかえってくるころには、武装勢力の兵士が、敵が残していった通信機を軍用のチャンネルに合わせて帰りの迎えを呼んでいた。
 球基はめぐみや武装勢力のメンバーの傷を練成治療で治療すると、練力をほとんど使い果たしてへたり込んでいた。
「お疲れさん。ありがとな。球基はんがいてくれなかったら、何人も死んでたとこだったわ。犠牲が最小限ですんで、助かった」
 エイシャが武装勢力を代表して礼を言う。
「なに、これも俺の役目さ」
 そう言って球基は笑う。
「こちらの被害も少なくてよかったですね。蠍が弱くて助かりました。毒だけは懸念の材料だったのですが」
 公司が歩いてきてそう言うと、空が「そうですね」と頷いた。
「作戦成功ですね。この農場から美味しいコーヒーがたくさん出るといいですね」
 勝利の余韻に浸りながら、めぐみはエイシャに微笑みかける。
「せやな。コーヒーはうまいもんな」
 そう言ってエイシャも微笑み返す。
「コーヒーか、実にいい物だ。あとで俺も頂くとしましょう」
 メビウスがそう言ってコーヒー豆を手に取る。
「‥‥コーヒー? ‥‥いろ‥‥ちがう?」
 クラリアがそう言って首をかしげる。どうやら生の実を見るのは初めてらしい。
「分けて‥‥もらえないかな‥‥」
 クラリアの特別な人がコーヒー好きのため、贈り物にしようと考えていた。
「僕もご褒美に少し豆を分けてもらいたいところですね。それくらいの融通は利かせてくれるといいのですが‥‥」
 神楽がそう言ってクラリアに同意する。
「まー、農園を奪えたんだからそのうちおいしいコーヒーが出回るでしょー」
 楽がそう言って会話を〆ると、迎えの兵員輸送車とメディカルリッジウェイが到着した。
 メディカルリッジウェイに球基の練成治療だけでは足りない歩兵を乗せると、傭兵たちは兵員輸送車に乗ってコーヒー農園を後にした。

●後日談
「コーヒー農園の解放は成功したようだな」
 ジャンゴ=コルテス大佐が元ミスボリビアのソフィア・バンデラス准尉に確認するように言う。
「はい。傭兵の尽力が大きかったようです」
「では、礼をせねばなるまい。新鮮なコーヒー豆を送ってやりたいところだが、奪還したばかりでは収穫もままならんな。親バグア派から押収できた豆があれば、せめて美味いコーヒーの一杯だけでも振る舞ってやってくれ」
「了解しました。そのように処理します」
 コルテス大佐の指示を受けて、ソフィアが事務手続きをとる。
「できるだけ上等なものを、だぞ」
「はい」
 こうして、コーヒー農園解放作戦は終了しようとしていた。