●リプレイ本文
●はじめに
「それでは、自己紹介がてらチーム分けをしていただきましょうか」
アントン=イワノフ少尉がそういうと、リネット・ハウンド(
ga4637)から口を開いた。
「リネット・ハウンド、フリーのプロレスラーです。ビーストマンをやっています。訓練とはいえ、手を抜くわけにはいきませんね。むしろ訓練だからこそ全力で行くべきですわね! 実戦に活かせるよう、じっくりトレーニングに励みましょう! よろしくお願いします」
「天宮(
gb4665)、ドラグーンです。どちらのチームに入るかはわかりませんが、手加減はいたしませんよ」
天宮の言葉にイワノフ少尉が
「そうですね。手加減をしたらやられるのは自分です」
と言った。
「弧磁魔(
gb5248)です。サイエンティストです。この訓練でさらに腕を上げたいと思います」
「ブロント・アルフォード(
gb5351)、フェンサーだ。実戦訓練‥‥己を鍛えるいい機会だと思っている」
「丙 七基(
gb8823)ファイターです。全力を出せるようにがんばります」
「胡桃 楓(
gb8855)でス。フェンサーでス。こう見えても男でスよ。よろしくお願いしまス」
どう見ても女の子にしか見えない楓がそう言うと、周囲からどよめきが上がった。
「陽山 神樹(
gb8858)、グラップラーです。訓練とは言っても人を傷つけるのはちょっと抵抗があるんですが、バグアを倒すためにも心を鬼にしていきたいと思います」
「和 弥一(
gb9315)、フェンサーです。能力有りでの対人戦は初めてかもしれません。今後にも備えてしっかり訓練しようと思います」
「ダグ・ノルシュトレーム(
gb9397)。ストライクフェアリーです。よろしくお願いします」
「最後ですね。ファリス・フレイシア(
gc0517)です。フェンサーをやっています。よろしくお願いします」
「はい、ありがとうございます。では、チーム分けですが、どうしますか?」
イワノフ少尉が問うと、楓が手を上げた。
「あノ、こんナのはどうでショウ」
そしてチーム分けの案を発表する。
Aチーム
天宮 レベル18
和 弥一 レベル13
弧磁魔 レベル12(支援職)
陽山 神樹 レベル7
丙 七基 レベル5
合計レベル55
支援職=サイエンティスト×1
Bチーム
リネット・ハウンド レベル14
ブロント・アルフォード レベル14
ダグ・ノルシュトレーム レベル13(支援職)
胡桃 楓 レベル10
ファリス・フレイシア レベル5
合計レベル56
支援職=ストライクフェアリー×1
「ふむ。問題ないでしょう。皆さんはいかがです?」
イワノフ少尉の問いに、みなが賛同を示す。
「ではこの組み合わせでいきましょう。早速準備をしてください」
「参加者が男性ばかりで正直ムッサイなぁ‥‥と思っていましたが、こちらのチームに入れて良かったです。ええ、俺のやる気が変わってきますからね」
と調子の良いことを言いつつダグがファリスに話しかける。
「‥‥負けても良いんです。これが実戦なら違いますが、今日は訓練。負けて学ぶ事もあるでしょう。気楽に、気楽に」
「ええ、そうですね。戦闘では人数もレベルも同じなので一人でも減った方が不利です。私はレベルが低いので最初に狙われるか、最後に狙われるかですが‥‥後者なら軽く見られてることを利用したいですね。どちらのチームも一斉攻撃を狙うでしょうから、連携の起点となる人に攻撃を仕掛けることで連携を崩せればと思いますが‥‥」
ファリスが己の考えを述べると、ブロントが
「じゃあ、俺かリネットが最初に狙われる可能性もあるか。用心しないとな」
そう言いながら笑う。
「わたしは前衛が得意なので、覚醒してすぐさま相手チームに突撃し、相手チームの前衛のレベルが低い順に攻撃していきましょう。連携を行えるようなら協力お願いします」
リネットがそう言うと楓が「了解しまシタ」と答える。
一方Aチーム――
「やはり、このように人数も実力も拮抗しているときは一人ひとり倒していくべきでしょうね」
雨宮がそう言うと、神樹が賛同した。
「では、攻撃する相手に私が練成弱体をかけますので、その間に皆さんで一斉に攻撃するというのでどうでしょう?」
「そうですね。では、高レベルのどちらかから倒すということでどうでしょう?」
弧磁魔の言葉に弥一がそう答えると、雨宮が賛同する。
「では倒す順番はブロントさん、リネットさん、ダグさん、楓さん、ファリスさんと言った感じですね」
弧磁魔がそう言うと七基が
「諒解。オレとしては、一番の若輩だからそれなりに攪乱しながらで行くよ。まぁ、本当に胸を借りるということになるんだけどな」
と言う。
「高レベルから殲滅だな。了解♪」
神樹がそう答えたところでイワノフ少尉がフィールドへの移動を促した。
そして40メートルほど離れたところで互いに陣形を組んでから、戦闘開始となった。
●バトル
「それでは、開始!」
サイエンティストの教官が周囲に控える中で、能力を使用しての本気の対人戦が始まった。
弥一以下Aチームは弧磁魔が練成弱体をかけるタイミングを見計らって攻撃を控えている。一方のBチームは最初から攻撃を仕掛けてきた。
まずブロントがハンドガンで牽制しながら接近する。その射撃は牽制であると同時に回復役である弧磁魔を狙ったものだった。弧磁魔の肩に命中し弧磁魔は血を噴き出す。
「痛いですね」
ダメージを受けたことさえややナルシスト気味に表現する弧磁魔。そしてブロントは30メートル前進した。
「行きマス」
楓がそう宣言しながらブロントを孤立させないように30メートル前進する。
「先に接近したこちらが不利な気がしますが‥‥仕方がありません」
ファリスもそういいながら30メートル前進する。
「いきますか」
リネットはそういって覚醒すると狼を思わせる獣人の姿に変身し、四足歩行で30メートル前進する。
そこまでBチームが行動し終えたところで弧磁魔がブロントに練成弱体をかける。
「さあ、まずは貴公からですよ」
そして、それを合図にブロントに対する一斉攻撃が始まった。まず全員が10メートル前進しブロントに接近すると、弥一が二連撃でブロントに踊りかかる。
「いくっすよ!」
神樹がディガイアで斬りかかる。
「いきます!」
七基がソードブレイカーで斬りつける。
『死神乱舞』
雨宮が竜の咆哮の応用でブロントを空中に浮かそうとする。
しかし第1撃はブロントの回避力の前に、弥一の二連撃の二回目を残して回避されてしまう。
「くうっ!」
ダメージを受けて呻くブロント。そして第2撃目は天宮の竜の咆哮でブロントが空中に浮いて無防備になったところで一斉に攻撃が襲う。
「実戦ならこれで死亡か‥‥俺はまだ未熟だな」
強烈な一撃を受けてブロントが意識を手放す。
「練成治療を!」
イワノフ少尉が叫ぶとサイエンティストの教官から練成治療が飛びブロントは意識を取り戻すが退場処分となる。
最後にダグが30メートル前進してそこで十秒経過した。
そしてやはりAチームは弧磁魔の練成弱体を待っているのでBチームが先に行動を起こすことになる。
最も経験の浅い七基が集中的に狙われ、楓の二連撃、ファリスのセベク、リネットの流し斬りが七基を襲う。
が、弥一が迅雷でその連携に割り込む。
「ぐはっ!」
弥一はそれらの集中攻撃を受けて意識を失う。
「練成治療を!」
イワノフ少尉の指示で練成治療が行われ、弥一はフィールドの外へと運び出される。
「や、やれた‥‥の?」
ファリスが確認するようにつぶやく。
「次こそ七基さんデスよ」
楓が死の宣告をして七基に襲い掛かる。
「くうっ!」
七基は三人の連携攻撃を回避することができずにもろに攻撃を食らってしまう。そして弥一同様意識を手放した。
「練成治療を!」
担架で運ばれながら練成治療を受ける。
「神樹さんごめんなさい」
ファリスが謝りながら神樹に攻撃を仕掛け、楓とリネットもそれに続く。
楓は練力が切れたので円閃に切り替わったがリネットは相変わらず流し斬りで攻撃をしてくる。
「くっ!」
神樹も意識を失い、練成治療を受けて退場する。
そして
「弧磁魔さん、このままでは全滅です。やられる前に一気に決めてしまいましょう」
雨宮がそう言うと、弧磁魔が
「了解しました。ふふ‥‥」
とナルシスティックに返事をする。そして天宮が竜の爪で、弧磁魔が超機械「ミルトス」でリネットに攻撃を仕掛ける。
「くっ‥‥まだまだ」
だがリネットはその連携攻撃を耐え切る。
「さすがですね、ならばもう一度です」
さすがに2撃目は耐えられなかった。リネットは気絶する。
「練成治療を!」
そして練成治療を受ける。
雨宮は竜の爪を用いてさらにダグに攻撃を仕掛ける。だが、
「そう簡単にはやられませんよ!」
盾で受け止められ攻撃の威力は半減する。
「ストライクフェアリーの名は伊達ではありません。KV戦と支援スキルだけだと思っていると、痛い目見ますよ」
そういいながらダグは超機械「ザフィエル」で弧磁魔を狙う。
1回目は弧磁魔も耐え切ったが、追撃には耐えられず、「ここまでですか‥‥」とナルシスティックに倒れこむ。
「練成治療を!」
イワノフ少尉の支持を受けてサイエンティストの教官が練成治療を施し、弧磁魔を場外へと運ぶ。
「一人ですか。これは思い切り不利ですね」
雨宮がつぶやきながら竜の爪を乗せた冥府の鎌をダグに振るう。
1撃、2撃。盾で受け止めてもダメージは残る。2撃目でダグは意識を失い練成治療を受ける。そして雨宮は楓を標的に定めた。
「ぐうっ。マダマダでス」
雨宮の攻撃を二回受けても重傷のレベルでなんとかこらえている。
そして楓とファリスが連携して反撃に出るがそれらの攻撃はすべて雨宮に回避され、雨宮は楓に止めを刺すとファリスに鎌を振るった。
「やっぱり、これが現実ですか‥‥」
2回の攻撃を受けてファリスは倒れ、そこで勝利者が確定する。
●戦いのあと
「そこまで! 勝者Aチーム!」
イワノフ少尉が試合を止める。
「5分休憩の後に反省会です。それでは、休憩」
イワノフ少尉がそう言うと、弧磁魔は荷物からミックスジュースを取り出し飲み始めた。
「はぁ〜。戦いの後のミックスジュースは‥‥良い」
満悦のようである。
雨宮と弧磁魔とブロントのミヤマガラス隊に所属する三人は、弧磁魔がミックスジュースを飲む中コーヒーを飲んで談笑する。
「最初にいきなり襲われたが‥‥さては弧磁魔、謀ったな?」
「ええ、強い貴公から倒していくのは常道でしょう。実力が拮抗している以上、要から潰していくに限ります」
そういって弧磁魔はふふっと笑った。
「それにしても天宮、お前とは一度一騎打ちで戦いたいと思っていたのだがどうだ、反省会が終わったら一戦しないか?」
「ええ、いいですよ。喜んでお受けいたします」
そして神樹は壁に寄り掛かかり、そのまま座り込んでふぅっと息を吐き
「何とか無事に終わったな‥‥ボロボロだけど」
と苦笑した。
「もしこれが実戦だったら‥‥」
そこでみなの視線を集めていることに気がついて、
「って空気読まないこと言ったかな‥‥俺」
と冷や汗を流す。
「さて、反省会です。まず寸評から申しましょう。余力があるうちに熟練のものから叩いたAチームの作戦がちです。Bチームは先に経験の浅いものから狙って数を減らそうと考えたようですが、今回のような戦いの場合、同じ倒すなら大物から。そうすれば敵は指揮統率を失います。雨宮君を先に倒していれば、あるいはBチームが勝ったかもしれません」
イワノフ少尉がやってきてそう告げる。ただし、戦術は場合によりけりだということを付け足すのも忘れない。
「Bチームのやり方が正しいときもあります。ただ、敵の幹部と対峙した時は幹部を先に狙うほうが良いでしょう。護衛の相手も必要ですが、幹部を倒す前に練力が尽きてしまっては意味がないのですから‥‥」
そう言ってから各人に今回の先頭の反省ポイントを発言するよう促し、活発な討議が進んでいく。そして反省会が終わってからブロントと雨宮の一騎打ちが行われ、雨宮が辛勝した。
そして練力が減少したまま第2回戦を行う。反省ポイントを生かした戦いは非常に時間がかかり、判定の結果引き分けとなった。そして能力者たちは特殊戦闘訓練所に付随する宿泊施設で英気を養ってから、次の依頼へと向かったのであった。
了