●リプレイ本文
基地周辺上空。
HWと飛行キメラの群れが基地を離れて行ったのを見届けてから、UPC軍は行動を開始した。
バイパー、アンジェリカ、フェニックスが編隊を組んで敵基地に突入して行く。
即座に迎撃のHWが出撃した。それを見て傭兵たちが続く。
「バグアどもは民間人もお構いなしか、貴様らのそのド汚いやり方、完膚なきまでに叩き潰してやるからなぁ!」
龍深城・我斬(
ga8283)が叫びながら突入する。
「CW確認。5時の方向、数5。距離1000」
エル・ウッド(gz0207)が電子管制を行いながらレーダーの反応を読み上げて行く。
バイパー部隊はシュヴァルム編成を五つ作り、それぞれがCWに向かう。CWの特殊能力の効果範囲外からミサイルを撃ち放つ。念のため三連射。それでCWの群れは全滅し、頭痛の種は消え去った。
「すげぇ数‥‥とっととプラント壊して、少しでも減らさないと。これ以上お前らの好きにさせるか!」
翡焔・東雲(
gb2615)がツングースカで敵を攻撃し、その攻撃を回避したところが友軍の射線上になるように誘導する。
アンジェリカの部隊が誘導されたHWやキメラを5機ずつの編隊をとって集中攻撃を浴びせて行く。その攻撃で2機のHWと複数のキメラが地に落ちた。
墜落したHWは基地の施設に接触し爆発。火災が沸き起こる。
「大型確認。7時の方向、距離500。その他取り巻き多数」
「よし、取り巻きをまとめて落とすよ。新型複合式ミサイル誘導システム起動。K−02ミサイル一斉発射!」
鷲羽・栗花落(
gb4249)が10機の小型HWを対象に千発のミサイルを放つ。誘導されたそれらは違うことなくHWに命中し、一撃で10機を落とす。墜落したHWは基地の滑走路や施設に接触して爆発する。
大型HWがプロトン砲で栗花落を狙い打つ。だが、栗花落機の機動力には慣性制御をもってしても敵わず、光条は虚しく宙を裂く。
「残念でした!」
栗花落が叫ぶ。
中型HWも集中して栗花落機を狙う。
「なんで僕ばっかり狙われるかなぁ、もう!」
そういいつつも11機の集中攻撃を全て回避してのける栗花落。
「えーい、もう。うじゃうじゃと鬱陶しいなあ、もう」
美崎 瑠璃(
gb0339)はマシンガンで飛行キメラの群れを薙ぎ払いながら呟く。瑠璃は自分の機体の性能を把握しており、足手まといにならないようにキメラや小型HWだけを相手にするように心がけていた。
「よし、ウェル、あわせろ!」
「了解!」
我斬がウェイケル・クスペリア(
gb9006)と連携をとる。
我斬がUK−10AAMで大型HWを牽制し、超伝導アクチュエータVer.3を使って急接近して隙を作る。
そこにウェイケルがブースト空戦スタビライザーとSESエンハンサーを同時起動させて大型HWに接近する。
「システム、オールコンプリートッ。いっけぇぇ!!」
そして全力でオメガレイを叩き込む。
錬力を大量に消費したが、その攻撃で大型HWは落ちた。爆発しながら落ちてゆく大型HWから脱出ポッドが飛び出し、中にいたパイロットが脱出を果たす――かに見えたが、我斬がUK−10AAMを脱出ポッドに叩き込む。
「言ったろ? 完膚なきまでに叩き潰してやるってな!!」
指揮官機がいなくなり統制が乱れたHWの群れは迷走し、小型HWが軍のフェニックスに向かって攻撃を仕掛ける。しかしフェニックスの機動性とベテランパイロットの操作テクニックが重なって全て回避される。
彼我の戦力差を弁えずに攻撃してくるところは指揮官がいた時と変わらないが、それが余計にひどくなっているように感じられた。
「ふむ。大型は落ちたか。では地上のゴーレムを屠ろうか」
キリル・シューキン(
gb2765)は淡々とそう言うと、速度を落としながら急降下し、フレア弾を投下する。
100メートルの誤差も考慮して投下されたフレア弾はゴーレムの群れを直撃し、その表面装甲を溶かす。だが、まだゴーレム達は稼働していた。
「いざ往かん! 戦場へ」
佐賀重吾郎(
gb7331)が地上から軍のKV部隊に先行して基地に突撃を行う。
「さてさて、行こうかねぃ。拙僧が道を拓く。火力を集中して、蹴散らすんだよぅ‥‥簡単っぽいだろう。がんばろうねぃ!」
ゼンラー(
gb8572)も重吾郎とともに先頭を走る。
「傭兵、援護するぜ!」
ゼカリアとリッジウェイからの援護射撃を浴びながら、二人は血路を開く。文字通りキメラの血で塗装しながら。
「拙者が居るからといって攻撃の手を緩めるなかれ。なーに、当たらんよ。味方の攻撃には」
重吾郎はそう軽くジョークを飛ばしながら砲塔を精密射撃に切り替え、レーザーガトリング砲の全力射撃を行う。
ゼンラーはスラスターライフルの弾丸を広範囲にばらまきながらナナハンの高速性を活かして前進して行く。
そして二人が切り開いた道を軍の部隊が進んで行く。
施設を破壊しながら進むが、キメラがどこからともなく際限なく現れる。
「戦車はキメラを攻撃。自走砲は施設攻撃、対空砲は飛攻キメラを攻撃。歩兵は指揮車と医療後送車の直衛!」
指揮車からの指示が飛ぶ。そこにゼンラーが駆けつけるとグングニルでキメラの群れを貫く。
「遅くなったねぃ! 難敵は拙僧が止める。軍の人達は火力を集中して確実に仕留めるんだよぅ!」
「助かった‥‥射撃、集中!」
ゼンラーが抑えた隙に火力を集中させてキメラの群れを屠る。
「さて。もういけるねぃ? 拙僧は他の戦域に行くが‥‥死ぬんじゃないよぅ? ゼンラの神様の元に行きたい人なら大歓迎だがねぃ!」
「御免被る。せいぜい生きあがくとしよう」
笑いが広がる。
「さて、ウェイケル。爆撃の指示頼むぜ。俺はそれまで適当に暴れとく」
「アイサー、任せな。戦闘しながら格納庫へ移動だぜ、我斬」
「了解!」
ウェイケルと我斬が会話している間に、敵にも変化があった。
「ゴーレム浮上! 数5!」
それを受けてアンジェリカ部隊がゴーレムの掃討に向かう。
フレア弾の直撃を受けて動きが鈍っていたゴーレムはアンジェリカ部隊によって全滅させられる。一方、地上のゴーレム部隊はゼカリア部隊と戦いを繰り広げていた。
「人間様を舐めるなよ、機械共!」
変形したゼカリアと格闘戦を演じるゴーレム部隊。
しかしゼカリアに乗ったパイロットの技量はゴーレムのAIを遥かに上回っていた。
全滅させられるゴーレム達。
「よし、今だ。ゴーレムもいなくなった今が爆撃時だぜ!」
「ラジャー」
そうして格納庫に我斬のフレア弾とウェイケルのGプラズマ弾が投下される。
爆発。
炎上。
これで目標の一つBF(の収納された格納庫)の破壊は終わった。あとは1キロほど奥にあるキメラ製造プラントである。
「キリル、降りるよ。合わせな!」
翡焔が爆撃の混乱に乗じて垂直離着陸機能で強引に降下を試みる。
「Ураааа!」
キメラの群れをブレードウィングで牽制し、蹴散らしながら着陸を強行し、軍の後方に着陸する。
「よし、火力発電施設発見だ。これより燃料ごと発電施設を破壊する! 巻き込まれたくなかったら下がれ!」
味方を退避させ、キメラを集める。そして最大射程でグレネードランチャーを発射。
燃料とまさに今燃焼中の施設が破壊され、大爆発が起きる。
送電が止まり基地の電源が落ちる。その中でもキメラ製造プラントは予備の電源で稼働し、次々とキメラを吐き出していた。
「よし、これで地上からでも目標がはっきりしたね。急いで破壊して」
栗花落がそう言って中型HWに攻撃を加える。
「カバーするね!」
そこに瑠璃がカバーに入る。
二人の連携攻撃で3機の中型HWが撃墜された。
「ありがとう!」
それで栗花落を脅威と感じたのだろう。中型HWの群れが栗花落を集中的に狙う。
「だからもー、なんで僕だけ!」
そういいつつも全部かわしてみせるあたり栗花落機の機動性と操縦技術は確かなものだと言えた。
更にフェニックス部隊が中型に挑み、同じく3機を撃墜する。
無線に歓声が走る。
そして小型の群れが瑠璃を狙う。
17条の光の束が瑠璃のワイバーンを溶かす。
「きゃあああああああああああ!」
「おおっと!」
落下する瑠璃の脱出ポッドをゼンラーのナナハンの腕がやんわりとキャッチする。
「大丈夫かぃ?」
ゼンラーはコックピットを開けると瑠璃に練成治療を施す。三度。
衣服は襤褸襤褸だが怪我は回復したようだった。
「ありがとう、ゼンラーさん」
「あいよ。ここからは歩兵としてキメラと戦うと良いさね。それにしても不運だったねぃ。集中攻撃を受けるなんて」
「それも戦場だよ。でも、こうして助かったから文句は言わない。キメラ製造施設を破壊してくるね!」
瑠璃はそう言ってナナハンの腕から飛び降りると機械「牡丹灯籠」を装備した。
「行ってきます!」
「おうさね!」
そして瑠璃は駆け出した。
重吾郎は武器をサムライソードと機盾シャーウッドに持ちかえると、キメラを切り裂き始めた。
「絶頂撃砕流を身に刻むが良い」
そうこうしている間にリッジウェイ部隊がキメラ製造プラントにたどり着いた。
「ファイア!」
一斉射撃でキメラごと施設を叩き潰す。
そうして攻撃目標を達成し、瑠璃は歩兵とともにリッジウェイに乗り込み、帰還を開始した。
だが、闘いながら帰還しようとしている空戦部隊に近いづいてくる敵がいた。
エルのレーダーがそれを発見したときにはすでに遅かった。
「中型3、小型6出現。プロトン砲来ます!」
それは打合せしたかのように生き残っていたHW群と連携して、軍のアンジェリカ部隊を狙う。
アンジェリカ部隊は集中砲撃を溶けて空中で昇華し、生存者は零だった。
「‥‥拙僧は英霊を増やすために戦いに来たんじゃないんだけどねぃ‥‥」
ゼンラーが沈痛な面持ちで言う。
栗花落のすすり泣きが無線を満たす。
そのHWは陽動班が取り逃がしたHWだった。
その後何とか敵HWを全滅させて帰投を果たした基地襲撃部隊だったが、基地は通夜ムードであった。
そして軍の評価も、一応作戦は成功したが被害が甚大な点も鑑みて厳しいものだった。
「力が‥‥力が欲しい‥‥」
エルは泣きながら基地の壁を殴っていた。そして、少年は力を欲す。それは、他者を守るための盾と、悪意を切り伏せる剣だった。
了