タイトル:【低】Monster huntマスター:碧風凛音

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 11 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/05/26 21:02

●オープニング本文


 コロンビアの三大バグア軍基地が陥落した後。
 強固な防衛力を誇るキメラ闘技場を除き、国内のバグア勢力は続々と周辺国へ撤退して行った。
 しかし、彼らが国内に残したキメラの総数は数百体とも言われ、これらは物資の流通を妨げ、住民達の生活を脅かしている。
 また、コロンビアの重要な収入源である石油や宝石類の採掘をも困難にしているのである。
 広大な国土を我が物顔で跋扈するキメラに困り果てていたジャンゴ・コルテス大佐に助け舟を出したのは、意外な人物だった。
 UPC南北中央軍中将のヴェレッタ・オリム(gz0162)である。
 彼女は、北米のとある場所に隠匿された『UPCキメラ研究所』の所長を兼任しているのだが、エイジア学園都市にある付属研究員養成校で使用する教材用キメラが不足している。
 つまり、その調達場所としてコロンビアに目を付けたらしい。
 キメラ闘技場の影響か、それとも南米の変化に富んだ地形のせいか、そこに棲息するキメラはバリエーションに富み、未だ研究も進んでいない。
 生け捕りにする必要は無いが、出来る限り大量に調達して欲しい、とのオリムの命に、コルテス大佐は、傭兵を動員した一大キメラ狩りを計画したのであった。

「さて、君たちに今回狩って欲しいのはヘル・ハウンドと呼ばれるキメラだ。
 荒野の廃墟――かつての市街地に住んでいて子牛くらいの大きさの、真っ黒い犬の姿をしたキメラだ。炎の息を吐く」
 UPC南中央軍の作戦士官はコロンビアの地図を広げて目的地を説明したあと、そう述べた。
「このキメラは体当たり・牙・そして伝説の通りに炎の息を吐き出す。
 数は10匹程度だが怖いのはとにかく攻撃力が高いのとウルフ・パック(狼群戦術)と呼ばれる連係攻撃だ。
 多数で獲物を取り囲み、連携してかわるがわる攻撃してくる。幸い『戦場』は障害物が多く隠れる場所も無数にある。
 その分、敵もどこに潜んでいるか分からないが、奴らは群れで行動しているから、一匹見つければまず大体が近くにいるだろう。
 廃墟の屋内などに誘い込んでだり障害物を利用して敵の連携を断つといい。まあ、こんなところか。
 今回は反バグア武装勢力のエイシャ(gz0282)もこのミッションに参加する。
 諸君と同じく能力者としてはまだ新米だが、戦士としての経験は7歳の頃からになる。足手まといにはならんはずだ。
 こちらからの説明は以上だ。なにか質問があればエイシャを通じて軍に訪ねて欲しい」
 そう言うと作戦士官は解散を告げた。

●参加者一覧

ジーン・ロスヴァイセ(ga4903
63歳・♀・GP
神撫(gb0167
27歳・♂・AA
ロジーナ=シュルツ(gb3044
14歳・♀・DG
奏歌 アルブレヒト(gb9003
17歳・♀・ER
佐賀繁紀(gc0126
39歳・♂・JG
エクリプス・アルフ(gc2636
22歳・♂・GD
赤月 腕(gc2839
24歳・♂・FC
悠夜(gc2930
18歳・♂・AA
Kody(gc3498
30歳・♂・GP
火神楽 恭也(gc3561
27歳・♂・HG
ヨハン・クルーゲ(gc3635
22歳・♂・ER

●リプレイ本文

●プロローグ
「いっぱい捕まえなくちゃいけないんだってぇ。大変そうだから、ボクもう帰っていい?」
 ロジーナ=シュルツ(gb3044)が高速艇の中でそう言う。本気で言っているのか冗談で言っているのか判断に苦しむ内容だった。
「まあまあ、キメラ退治に生け捕り、狼戦術に篭城戦か。なかなかバラエティに富んだ内容じゃないか。
 張り切って行こうじゃないか」
 ジーン・ロスヴァイセ(ga4903)がそう言って、ロジーナをなだめる。それに対しロジーナはこう答えた。
「うーん。たしかに面白そうではあるんだけどね?」
 ロジーナは顔をしかめる。どうやら本気だったらしい。
「‥‥シュルツ、もう帰ることはできませんよ‥‥」
 奏歌 アルブレヒト(gb9003)がそう言うと、ロジーナは「わかってるよう」と言う。半ば拗ねたような様子だ。
「ふむ、地獄の猟犬ですか‥‥追加で番犬まで出ないことを祈っておきましょうかね」
 ヨハン・クルーゲ(gc3635)がそう言うと、エイシャ(gz0282)が
「番犬型キメラも別の場所では確認されておるらしいが、今回は猟犬しかおらんで」
 と言った。地獄の番犬ケルベロス‥‥世界中から寄せられるキメラの出現報告によれば、こちらもどうやら存在するらしい。
「炎を吐く犬型か、結構厄介かもな」
「はっ! ベテランのあんたがそれでどうするよ?」
 神撫(gb0167)の慎重な言葉に火神楽 恭也(gc3561)が豪快に笑う。
 熟練の神撫の腕を恭也は信じていた。
「まあ、無理は怪我のもとというからな。炎でローストチキンにならないようにしよう」
「ヘル・ハウンドって炎吐くんだろ? 何で炎なんか吐こうと思ったんだろうな?」
「さて、そういうふうに作られたんでしょう」
 佐賀繁紀(gc0126)の言葉にKody(gc3498)がつぶやき、エクリプス・アルフ(gc2636)が答える。
「キメラは許さない。絶対に」
 悠夜(gc2930)は家族をキメラに奪われた経験からキメラに対する憎しみを捨てていない。
 とはいえそれは作戦の趨勢に関与するほど大きな感情ではなく、本人の制御でどうにかなるものであった。
「まぁ、気を張らずに行こうぜ」
 赤月 腕(gc2839)がカスタードパイを食べながら言う。
 そうこうしているうちに高速艇は目的地へついた。
「なかなか不気味なところですね‥‥」
 ヨハンが廃墟を見てそう感想を漏らす。
「そうか? 俺は廃墟なんざ見慣れているからな、特に何も感じないな」
 神撫がそれに対し熟練者の余裕を見せる。
「‥‥まずは、戦場の確保‥‥」
 アルブレヒトが廃墟になる前の地図を見ながらデパートを指さす。
「おーけー。殲滅班と囮班にわかれよう」
 腕がそう言って班分けの意見を出す。
 まず、囮班の前衛にエイシャとKody、中衛にロジーナとヨハン、後衛にはエクリプスと腕を充て、残る6名には殲滅班に回ってもらう。そして、殲滅班内の配置は、前衛が悠夜とジーン、中衛が繁紀と恭也、後衛がアルブレヒトと神撫、のように振り分ける。2名ずつのペアをバランス良く組み合わせた班割であった。
「異論はないよ」
 ジーンがそう言うと他のメンバーも賛同し、班割は決まった。
「じゃあ、このデパートでいいんだな? トランシーバーは両方の班にある。こいつで連絡をとろう」
 神撫が新人の意見を尊重しながら口をはさむべきところには口をはさむ。
「んー、こうもうちょっと入り口は逃げ込み易い程度に広くて、封鎖し易い程度に狭い。
 それでいて窓が少なくて、構造が複雑でないところがいいな」
「ならば、こちらの建物のほうがいいのではないか?」
 顔に黒色のドーランを塗った繁紀がいう。
「そうですね。ここら辺がいいでしょう‥‥」
 エクリプスがキメラを探す準備をしながら言う。
「腕はなぜライトを持っていかない?」
「隠れるのに灯持ってたらばれるだろ?」
 悠夜の質問に腕はそう答える。
「さて、囮班は索敵に入るぜ!」
 Kodyがそう言って確保した建物を確認してから移動を始める。
「窓は塞ぐんだ。階段もひとつだけ確保してあとは潰すんだ」
 神撫がそう言うと恭也が「了解」と答えながら室内のものを移動してバリケードを作る。
 ヨハンがバリケードをワイヤーで固定し、戦場の確保が終わると囮班に無線連絡がはいった。

●レッツハント!
 殲滅班からの無線連絡を受けて、腕が爆竹を鳴らす。
 爆竹は静寂な廃墟に反響し、やがて四方からキメラが現れる。10匹いるようだ。
「作戦の第一段階は成功。次いで建物までキメラを誘導する」
「さてさて、見つけましたよ‥‥見つかったのかな?」
 Kodyの言葉にエクリプスがそう言うとエイシャが頷き、「迅雷」で前に出る。
 Kodyは「瞬天速」で前に出て、エイシャと並ぶ。
「はっ!」
「せい!」
 エイシャの剣がキメラの脇腹に突き刺さり、Kodyのトンファーが肋骨にブチ当たる。
 骨の砕ける感触がKodyに手応えとして残った。
 そして注意が二人に集まったのを確認すると、二人は「迅雷」と「瞬天速」で前線を離脱する。
 次いでヨハンの超機械「マーシナリー」の電磁波とロジーナのガンポッド【SuD】のグレネード弾がエイシャとKodyの攻撃したキメラの頭部に命中する。
 キメラの頭部をスイカ割りのスイカのごとく砕いたその一撃でキメラは絶命する。
 キメラの末期の悲鳴が廃墟に響き、殲滅班にまで聞こえてくる。
「‥‥すごい、悲鳴‥‥」
 アルブレヒトが思わずそうつぶやいた。こちらまで届く恐ろしいほどの悲鳴に恐怖したようであった。
 仲間を殺されたキメラは敵意の目でこちらを見ると、一斉に突進してきた。
 動物らしく一直線に突っ込んでくるキメラに、エクリプスの小銃「S−01」 と腕の長弓「彩雲」から銃弾と矢が発射される。
 それは吸い込まれるようにキメラの体に命中し、腹部に大きな傷跡を残す。キメラが殺意を増してさらに突進してくる。
 敵意を引きつけて、全員が後退する。それは作戦のうち。
 そして逃げる囮班をキメラが追いかけるが、絶妙に速度を調節して逃げているためキメラは攻撃する暇もなくただただ追いかけるのみであった。
 命をかけた鬼ごっこは続く。怒りと敵意に燃えるキメラの目が傭兵たちに少なからずプレッシャーを与える。
「さあさあ、こちらですよ‥‥」
 エクリプスはそうからかう様に言う。
 人語を解すわけでもないだろうがキメラたちは怒ったように突進してくる。
「鬼さんこちら、や」
 エイシャも迅雷を使ってわざと近づいたり離れたりをしながらキメラを殲滅班のまつビルへと誘い込む。
 するとキメラは面白いように誘き出されていった。
 腕がハンドサインで無線連絡を入れるように言ってくる。もうすぐ殲滅班が待機しているビルに近づくからだ。
「こちらヨハン。神撫様、囮の役目は無事完遂出来そうです」
 ヨハンがトランシーバーで神撫に通信を入れる。
「了解した。ではこちらも誘導を行う」
 神撫がヨハンに答えてそういうと、二階からけたたましい音が響いた。
 アルブレヒトが用意した防犯ブザーだ。逃げる囮班とその音に引きつけられるようにキメラは前に進む。
 そして殲滅班は囮班がキメラを建物の中に入れたのを確認して、唯一開けておいた入口側の窓から飛び降り、入り口を確保する。
「一気に片付けるぜ!」
 恭也が繁紀とともに無防備な敵の背中を攻撃する。
 繁紀は射撃する旨のハンドサインを送って「貫通弾」入の「強弾撃」をお見舞いする。
 強力な一撃はキメラの背骨を砕きキメラに情けない悲鳴を上げさせる。
 恭也は繁紀の攻撃にあわせ、「ブリットストーム」をつかう。
 射程にはすべてのキメラが収まっている。ヘヴィーガンナーの範囲攻撃がキメラの群れを襲う。
 その射撃にキメラ達の足が止まり、大きな隙ができる。
 そうしてできた隙にジーンが突入して「瞬天足」で壁を駆け上がり、ゲイルナイフとナイフを壁に刺し足場を確保し、小銃「S−01」で敵の頭上から鉛の雨を降らせる。
「キメラに生まれ落ちたことを悔やむんだね」
 ジーンはそう言って無慈悲に鉛弾を注ぎ込む。
「マッハで蜂の巣にしてヤんよー!」
 悠夜がそう叫びながら小銃「ブラッディローズ」 を連射する。
 まずキメラが1匹、心臓を撃ちぬかれて絶命する。
 断末魔の悲鳴は建物の中に激しく響いた。
 そして2匹目が頭部に二発の銃弾を受け脳を破裂させて死亡する。
 3匹めは腹部をえぐられ血を吹きながら倒れる。残りは6匹となった。
 命を奪う生々しい感触が悠夜とジーンの手の中に残る。
「キメラでも、殺すってのはあんま気分のいいもんじゃないな」
 悠夜がそうつぶやく。幾つかの依頼を経験しても命を奪う感覚というものはそう慣れるものではない。
 そしてアルブレヒトが超機械「ザフィエル」で、
「ここから先は行かせない。この場で潰えろ」
 神撫が「ソニックブーム」を付与した炎斧「インフェルノ」で囮班に向かうキメラを攻撃する。
 電磁波と衝撃波がキメラを襲いキメラは放物線を描いて吹き飛び、地面に叩きつけられて命を落とす。
 ついで電磁波と衝撃波がもう1匹のキメラに命中し魂を現世から切り離される。
 そして第3撃が別なキメラに放たれ、無慈悲な攻撃がその生命を一瞬にして奪う。
 残りのキメラが3匹となったため神撫は斧の側部でキメラの頭部を殴る。
「手加減は難しいな‥‥」
 神撫がそうつぶやくとキメラは意識を失い地面に倒れた。
 そしてもう1匹も同様に意識を奪う。とはいえ必死で抵抗する獣を気絶させるのは言うほど容易いことではない。
 それでもキメラをどうにか昏倒させると、残ったキメラ1匹は逃走を試みた。
「させるか」
 覚醒中は声を出せない腕の唇がそう動き、エクリプスとともに殺さないように力加減を調整しながらキメラを昏倒させる。
「‥‥確かに、手加減と言うのは難しいですね」
 エクリプスが神撫のつぶやきに同意するようにそう言う。
 そして傭兵たちはワイヤーやテープで口を塞ぎ、キメラの四肢を折る。
 骨が折れる派手な音とともにキメラが苦痛で目覚めて、口を塞いでいたワイヤーやテープを千切ると雄叫びを上げ、口の中に炎を貯める。
「‥‥まずい」
 危険を感じ取ったロジーナがキメラに機械剣でトドメを刺す。それは心臓を正確に貫くが、その時の感触がロジーナの腕に伝わった。
「気持ち悪い‥‥」
 ロジーナはそう吐き捨てながらももう1匹のキメラも心臓を刺し貫いて殺す。
「躾の悪いワンちゃんですね。この程度の拘束では意味がないようですね。
 仕方がありませんがこちらも殺してしまいましょう。まあ、サンプルの状態はいいのでボーナスは出るでしょう」
 ヨハンがそう言って 超機械「マーシナリー」の電磁波でキメラにトドメを刺す。キメラは一瞬で死体に変わる。
 キメラの悲鳴が次々と廃ビルに響いた。
「恐ろしい悲鳴だ‥‥」
 繁紀が肩を竦める。その悲鳴は人間の心の奥底に潜む恐怖心を刺激する。

●ハンティング終了
 こうしてハンティングはキメラに攻撃する暇を与えることがないままに終了した。そして、
「せっかくコロンビアに来たからコーヒー豆お土産に買っていきたいんですが‥‥この時間じゃあお店も開いて無いでしょうね‥‥」
 気が緩んだヨハンがそう軽口を叩くと、エイシャが
「そのうちコロンビア産のコーヒー豆も流通し始めるはずや。コーヒー農園を開放してだいぶたつしな。それに、うちらがこうしてキメラを狩っていけば、治安も良くなる」
 と言った。
「さて、死体の回収はキメラ研究所の人に任せて、俺たちは帰りましょう‥‥」
 エクリプスがそう言うと繁紀が賛同する。
「ところで、高速艇はどこだっけな?」
 繁紀がそういうと周囲はずっこけた。
 一行は高速艇に戻るとキメラの死体の回収が終わるまで休憩した。
 死体の状態が綺麗なので、追加でボーナスが出ることに決まり、傭兵たちは安堵した。
 そしてコーヒー農園でとられた豆で仕事のあとの熱い一杯をゆっくりと楽しむ。
 高級な豆で入れられたコーヒーは彼らの心を癒し、落ち着かせる。
 やがて死体の回収が終わり、高速艇でボゴタまで一旦移動し、一泊して疲労を回復させると、エイシャと別れてラスト・ホープへと帰っていった。
 
 了