●リプレイ本文
「‥‥そう。ダメなのね、ハイン」
両手を開き空を仰ぐ。
「私には、もう何もない! だから、何もいらない! この世界も、この体も!」
拳銃を抜き、自分の首に押し当てる。
「私の魂を以って此処に到れ‥‥! 『ティンダロス』!!」
「‥‥さよなら、ハイン」
―大好きだったよ―
そして、一発の銃声が響いた。
ハインが止める間もなく。
しかし、その銃声はネクロマンサーの発したものではなかった。
カレンが腰だめに撃った拳銃の弾が、ネクロマンサーの拳銃を弾いていたのだった。
『グォォォォォォォ‥‥‥!!』
直後、地下からラボを噴き飛ばし、地表へとなにかが出現した。
無数のコードが絡みつき、それは生き物を彷彿とさせた。
KVであったであろうソレは、モノアイを赤く滾らせ、鳴動を続けていた。
ネクロマンサーに駆け寄るハイン。
バイタルは安定しているが何をしても目を覚まさない。
「これは‥‥一体何が起きたんだ?」
おかしいなぁ‥‥もう動くには十分な数を入れたのに。何が足りないんだろ
‥‥そうか。魂が多すぎて、まとまって動けないんだ。なら、直接使役すれば‥‥
深い眠りに落ちながらも、ネクロマンサーは決断する。
そして、ネクロマンサーは自らの魂をティンダロスへと乗り移らせた。
●OP
『Blaze Dash』
作詞・作曲:シャンリークィ
歌:シャンリークィ
クレジットとともに、前口上から。
光の導き 闇の胎動
心通わす 鋼の身体
解き放ちし 竜の力は
闇を切り裂き 舞い上がる
悲しみの向こう 光差すその先へ
「機装戦隊ドラグナイツ!」
何度でも歩きだそう
幾度でも手を伸ばそう
大切なモノ 手にするまで
満天の星々に誓う
固き決意
水面に映る流星の影
咲き誇る 桜の向こうに
揺らめく 過去の幻影
あの日
胸に灯った 確かな炎
夜を越え 今走りだす
力の限り
●バグラム陣営
「敵に機密情報を盗まれ、勢力強化を許すとは、大層な失態だな。どう責任取るつもりだ?」
クロッカがカインにつめよる。
「その時に居なかったお前に何が言える?」
リシアが吠える。シュトゥルムヴィントは興味なさげに壁の花になっていた。
「受け入れを決めたのは、カインの独断だったぜ?」
クロッカがさらりといなす。
「最初に見つけた私に責任があるんだ。カイン様を責めるんじゃないよ」
「‥‥止せリシア、私は自分の責から逃れようとは思わん。
私が奴が手に入れた以上の成果を上げる、まずはそれで良いのだろう、クロッカ」
「まあ‥‥な」
クロッカは曖昧につぶやく。
「しばし待て。こいつの今までの功績は今回の件を補っている。
それでも足りぬなら奴らと戦わせて始末をつけさせれば良い。幸い奴らもやる気みたいだしな」
漸 王零が仲裁に入る。
「この落とし前、私がつけてくるよ。それでいいんだろ?」
「ほう‥‥面白い。どう始末するか、見物だな。殺し損ねたら、リシアに責任を取ってもらおう」
「望む所さ!」
リシアは怒りながら退出していく。
「心配は無用だ‥‥私は今もバグラムの戦士。全身全霊を以って、我々の敵と戦うまで」
「了解。せいぜい頑張ってくださいな」
クロッカはそう言って会話を終わらせる。
「よぅ、クロッカ。この戦、多分負けるぜ。勘‥‥だがな。退く用意はしときな。そういうの、得意だろ」
「ふむ‥‥お前はどうするね?」
「俺か? 俺は、勝っても負けても。最高な方にしか転ばねぇ。だから、好きにするさ」
「そうか‥‥できれば無事でな」
「あぁ、じゃあな。生きてたら、また会おう」
シュトゥルムヴィントはクロッカとそう会話を交わし、クリュッタロスに命令する。
「クリュス。俺から最後の命を出す。しかと遂行しろ」
「はい」
「それは―――だ。いいな」
「それは‥‥」
「いいな?」
戸惑うクリュッタロスにシュトゥルムヴィントは念を押す。
「イエス、マイマスター。すべては主の栄光のために」
「それでいい‥‥」
シュトゥルムヴィントはそう言うと格納庫に向かった。
「さぁ相棒! ショウタイムだ!」
そして出撃する。
●UPC基地
「レムレースさんの魂は、必ず取り戻す」
ハインは決意を固めながら、一人ロビンの調整を行う。と、そこにカレンがやってくる。
「チェスター、チェスターよね。覚醒の状態までは、誤魔化せないもの」
「‥‥そうか、そこまではカモフラージュ出来ませんでしたね。騙しててすいません。でも、敵の目を欺くためには必要なことだったんです」
「いいわ、貴方が生きていたのなら。でも、この戦いが終わったら、またどこかへ行くんでしょう?」
「そうですね。バグラムはここにだけいるわけではありませんから‥‥」
「そう‥‥でも、今だけは側にいてね」
「‥‥はい」
そうしてカレンはチェスターの作業を眺めながら心穏やかにしていた。
「よし、完成だ!」
シリウス・ブレイダー博士は、未完成だった制御システムを完成させることに成功した。
これにより、異常な余剰エネルギーが発生することもなくなり、
無理にエネルギーを外部に放出する必要もなくなったが、光の翼は使い勝手が良さそうなので、そのまま装置は残している。
制御面は完璧なので、放出装置に被弾しても大爆発することはなくなった。
「シーちゃん‥‥」
「びゃっくん」
白夜はそれを見て、その才能は流石だと認める。
「ありがとう‥‥」
白夜の賛辞にシリウスは照れて微笑んだ。
●郊外
バグラムの基地から現れた生物めいたKV「ティンダロス」は、非常に緩慢な動作で前進を続けていた。
「‥‥見ろ、奴が通った後を。折れた木が、一瞬で枯れた。奴に精気を吸われたんだ」
町の人が叫ぶ。
「あれが街に入ったら‥‥UPCに通報だ!」
そしてティンダロスはUPCに通報され、ヨハン・アドラー少佐率いる21連隊の出撃となった。
「綾瀬・水月、フェニックス、出る! 私に続け!」
「綾瀬大尉、頼みますよ!」
「了解!」
「戦車大隊、出撃準備!」
リュウガ・スルギ大尉が号令をかける。
「戦車随伴兵、出撃準備!」
ロウガ・スルギ大尉が号令をかける。
「21連隊、全部隊出撃。コードネーム『猟犬』の阻止に入ります」
ヨハンの副官メリィ・ラムレス准尉が全軍に告げる。
「よっしゃ、うちも行くで!」
エイシャ・アッシュフォードが一時的に21連隊の指揮下に入りながらロジーナを飛ばす。
こうしてティンダロスとUPC軍とが接触したがどれほど攻撃を受けてもすぐ再生し、さらに壊れた部分から触手が飛び出してKVや戦車を吸収していく。そして肥大化したティンダロスは、20メートルくらいの大きさになっていた。
「くっ! 砲撃手、打て、打て」
ジーン・ロスヴァイセ復員軍曹が戦車を触手の圏外に後退させながら砲撃手に射撃指示を出す。
だが、撃っても撃っても回復するティンダロスの前に、彼女の表情は絶望で埋れていた。
火絵 楓のフェニックスがティンダロスへ向かう。
だがその攻撃も回復され逆に触手に絡め取られてしまう。
「うわああああああああああ!」
叫びながら取り込まれていく楓。そして彼女はティンダロスの一部となった。
●決起集会
「諸君、バグラムの技術を手に入れ我々はパワーアップした。敵も当然我々に対し総力戦をかけてくるだろう。
だが、臆してはならん。すでに郊外では『猟犬』と言う敵性体との戦闘が始まっている。
兵士諸君、絶望することなく、立ち上がれ。希望捨てることなく、前を向け。勝利するのは、我々だ!」
基地司令ユーリ・ヴェルトライゼンが集まったUPC兵たちに対して演説を行っている。
それを受け、士気は否が応にも高まっていた。
「先ずは、謝罪を‥‥」
白夜は演説が終わったあと皆を集め説明を行っていた。
「欺く為とは言え、皆を傷つけたことを」
しかし
「白夜君、任務ご苦労様でしたそれと、よくぞ帰って来てくれました」
エオスが彼の謝罪を止める。
「今まで隠していてすみませんでした。極秘任務だったもので‥‥」
「お帰りなさい、月影さん」
真由が微笑んで白夜を迎える。
「お帰り!」
カレンも白夜の背を叩く。
「なに、作戦なんだから深く考える必要はないですよ」
DRのメンバーのひとりがそういう。
そうして白夜は皆に暖かく迎え入れられた。
「それにしても、なぜ成長を?」
「どうやら、僕にも少し変った血が流れていた様ですね‥‥」
その疑問に白夜は掌見つめ、深くは語らずじまいだった。
そして、奪取して来た敵情報の報告と、説明に重力制御装置を皆の機体に積んだ事を通達。
メイとイェルを呼び止め元に戻る方法の説明をする。
「二人はどうしたい?」
フェンリスが訪ねる。
「身体が変化して以来薬を使わなくなってよくなったにゃ。ボクはあの時生まれ変わった気がする。
この方法って、ボクには意味にゃい気がするにゃこれは、ボクみたいに変化した融合体には意味が無いしかえって危険にゃ」
メイは何故か戻れなくなってしまったことに安堵しつつイェルにはこう言った。
「イェルは、もどるのにゃ人間に。生きていて欲しいのにゃ、好きな人には」
「姉さん‥‥わかった。戦いが終わったら融合を解除するよ。月影さん、よろしく」
「‥‥お二人の決意はわかりました。最大限努力します」
白夜はそう言って二人の意思を尊重することに決めた。
「‥‥僕はまだ終わりにしたくないから。でも、最後のけりくらいは付けてるよ」
イェルはフェンリスにそう告げる。
そして、白夜はカレンに向かって言った。
「彼の事、報告は受けていますね?」
「異世界の兄さん‥‥でも、敵だわ。光の竜で、洗脳を解ければいいんだけど」
「ユダ自体に洗脳を強化する装置があるようです。ユダを撃墜すればどうにかなるかもしれません」
「‥‥そう。それに賭けるしかないわね」
「ええ」
――あたしは、突然自我を手に入れた。
マスターは喜んでくれた。兵器でしかないあたしを。
性格なんてまるきり違うのに、孫娘として扱ってさえくれた。
上の奴らは破棄を決定した。そしてあたしから全てを奪い去った。
あたしは、北欧神話の地獄の女神ヘルだ。バグラムを地獄に落す為にここに来た――
「久しぶりだな姐さん、こういう時こそ出番だろ」
エオスの端末に通信が入る。
「ヘルですか、感謝しますよこの様な時には助かります」
それだけで二人は意思疎通できた。
「じゃあ、決戦場で会おう」
「ええ‥‥」
ヘルはバグラムの創り出したサイボーグ型KV「ストライクバルキリー」のプロトタイプである。
脱走し彷徨って居るところをUPC軍に捕らえられゴットホープ側につく事となったため、バグラムへの恨みは強い。
それ故の戦闘参加表明であった。
●血戦
「滅多にない力の宴だ。勝とうが負けようが、好きなように楽しめば良いさ」
ホアキンが呟くとロス上空に巨大な幻影が現れた。
異世界から召喚しているギガワームの幻だった。
「クロウ! これで最後だ! 限界まで‥‥やろうぜ!」
シュトゥルムヴィントが叫ぶ。鹵獲シュルテンの中で。
「やはりあなたとはこれで、戦うべきでしょうから」
そう言ってエオスはフェニックスで応戦する。
レーザーやライフルとフェザーミサイルの応酬が行われる。
「テメェを殺したら、次は誰で満足すりゃあいいんだろうなぁ!」
「知りませんよ‥‥死ぬのは貴方です。ヴィント!」
――転
「派手にやってるな‥‥ふん、ヘルのガルムもいるか。
ファルケ・リッター、出るぞ。
他の奴等に言っておけ。邪魔するなら容赦しないと」
コピーAUKV装着者、クラーク・エアハルトはヘルのモデルとなったエイラとは因縁がある。だから、
「またあったなヘル! いい加減、貴様の顔にも見飽きたんだ。
決着をつけようじゃないか?
エイラの残滓の木偶人形が‥‥ここで終わりにしてやる」
「姉貴の文句はいわせねぇ、それに木偶に木偶呼ばわりされたくねぇぞ」
漆黒にファイヤーパターンの描かれたヘルヘブン750「ガルム」に騎乗したヘルが、ランスでクラークのシラヌイと空中戦を繰り広げる。
――転
「フェンリス護りたい人のトコ行くにゃ」
「わかった。白夜はフェンリスが守る」
メイとフェンリスがそう会話を交わし、イェルとともに表に出る。
そこで見つけたのは生身でUPC兵士を蹴散らす闘牛のような娘ルー・ガルーだった。
彼女はダークキャット(現シルキーキャット)、イェーガー(イェル)とは人間時代に知り合っている。
だが、その後彼ら同様融合体とされ、記憶面での不具合から冷凍封印されていた。
現在でもその面は解消されていないが、最終戦に合わせ封印を解除、投入されたのだった。
これはメイ、イェルの存在をバグラムが認知した故、その関係性からぶつけることを考えたためである。
そして出会ってしまったメイとルー。
「ぐぅ、る? なんかしってる。お前らしってる気がする、ぜ」
「ルー、やめるにゃ戦いたくないにゃ」
「うがあああぁぁ!! つぶれろつぶれろ、つぶれろおぉぉっ!!」
だがメイの言葉も届かず、ルーは攻撃を行ってくる。
メイはルー・ガルーと戦う事を決意する。
「自分の選択を‥‥辞めたくはないから‥‥駄目にしたくないから!!」
イェルもルーと戦うことを躊躇していたが、自身や皆のために戦うことを再度思い出し、決意を決める。
2対1の激しい攻防が繰り広げられる。
そこにジャガーの姿をした融合体エル・ウッドが割って入りイェルの相手をする。
「ぐるるるるるる‥‥」
理性はないようだ。
こうして考えてみると、メイやイェルに意識があったのは奇跡と言えるのかもしれない。
――転
「ククク、私のスピードについてこれるかい」
バグラムのダークムーンはバイク型の専用機に乗ってUPCを蹂躙していた。
「そこまでよ」
カレンのフェニックスがダークムーンを止めに入る。
「癪にに触るねえ‥‥」
剣戟と銃撃の打合。
そして不利を悟ったダークムーンはあっさりと撤退する。
「ふん、あとは好きにやりな」
「待ちなさい!」
カレンが追うが、その圧倒的なスピードの前では追いつけなかった。
――転
ティンダロスが市街地に入ってくる。その頃にはすでに40メートル近い巨体に成っていた。
「‥‥あれは、僕が行きます。僕が倒さなければならない敵ですから」
チェスターはそう言うとライフルで援護していた手を止めロビンを召喚。そしてロビンを駆ってティンダロスへと向かっていく。
「いっけええ!」
ライフルで攻撃をするがその回復力に阻まれさしたるダメージを与えられない。
【ミィツケタ‥‥ハァインゥゥ‥‥!】
大量の触手が槍のように地面を穿つ。
それをかわしながらハインは勝機を考える。
「それなら‥‥大ダメージを与えて一気に仕留める!」
「ドラグナイツ! 隙は私たちが作る。一気に決めろ!」
綾瀬・水月大尉のフェニックスがティンダロスに体当たりを仕掛ける。
そこにチェスターはワイヤーを放ちティンダロスの動きを止める。
「チャンスは一度‥‥いくぞ、オートクレール解放! 沈めぇ!!」
その攻撃はティンダロスのコアを貫き、無敵を誇ったティンダロスはゆっくりと崩壊を始める。
【ネェハイン‥‥‥ワタシハ、ナニカマチガッテイタノ?】
「そう簡単に、死のうとしないで下さい。生きて自分で見ないと‥‥見えない世界もあるんです‥‥」
ティンダロスから解放されたネクロマンサーの魂にチェスターはそう告げる。
【‥‥ソウ‥‥】
そしてUPC基地におかれてあったネクロマンサーの体がぴくりと動いた。
――転
空間転移をしてリシアが現れる。
「坊や、あたしを怒らせてくれたね。覚悟は良いかい?」
「ウルさん‥‥」
「しらないねえ‥‥そっちのお嬢ちゃんも、私に舐めた口を聞いたことを後悔させてあげるよ」
攻撃は喰らわず、されど当てられず。舞っているかの如き所作での攻防を見せるリシア。
だが二刀流とはいえ二人を同時に相手にすることに苦戦しているようだった。
そこにカインが空間転移で現れる。
「いい、リシア」
白夜の相手を始めるカイン。
そしてカインはユダを召喚し、リシアとともに複座型のユダに乗り込む。
「来い、魔を絶つ白き剣!」
白夜もパラディンを呼び出し複座型のそれにフェンリスとともに乗り込む。
「貴方も『藍祥龍』なら、その世界で人々を守る為に戦っていたはず、その志を、その世界に居た大切な人たちを思い出して!」
ニュクスが叫ぶ。だが、ユダによって洗脳されているカインには届かない。
「カイン様に色目を使ってるんじゃないよっ!」
リシアがミサイルを発射させる。
「甘い!」
ニュクスはそれをすべて切り捨てるとユダに対して向き直った。
――転
クリュッタロスを含むシュバルツメッサーも戦場にいた。だが、すでに彼女を残し他のものは生き絶えていた。
「行きましょう、二人ならきっと勝てます!」
真由がツバメに向かって通信を入れる。
「勿論だよ! 私たちは前にしか進まない。そう決めたんだから!」
友情パワー確認。迎撃準備完了。
「貴様等‥‥その声、あの時のか! ハ、ハハハ! 待っていたぞ
シュバルツメッサーも私で最後。だが、それでいい。主を継ぐのは、私一人でな!
私の力は、全て主のもの! 主に見出され、主によって培われた!
いわば、私の存在は全て、主によって形成される‥‥そう、私『も』死神なのだ!
その死神の力! とくと知るがいい!」
ライフルを放ち拡散ビームを撃ち、小さな死神はツバメと真由を圧倒する。だが‥‥
「止めだ! 死ぬがいい!」
クリュッタロスがそう叫ぶのと同時に
「ツバメさん、これからこの機体のリミッターを解除します。その間、前をお願い!」
「了解! これ以上は、抜かせない。絶対に!」
真由が破暁の超限界稼働を発動させる。
ツバメが完成制御で人形のまま飛行する。
「私を、ただの囮だと思ったら大間違いだよ! メガレーザーアァァイ!!」
レーザーを発射し、周囲のザコをなぎ払う。
リミッターを解除した破暁の装甲の各部が開き金色に光る粒子を放ち
それと共に出力が危険域にまで上昇する。
「ファストリミテッドリリース、続けてセカンドリミテッドリリース!」
それまで振るっていたドラゴンスタッフが変形
先端に両肩の光刃「鳳」が分離して装着され、それを柄にして巨大練剣発動!
「応えて! 練剣「光の竜」!!」
横薙ぎの一撃――
「負けた‥‥?」
爆散。
しかしクリュッタロスは直前で脱出していた。
――転
「すまねぇガルム無茶させたな。今は休んで良いぜ。後はあたしがやるからよ」
相打ちになったヘルとクラークは機体を飛び降り、生身にて決着を付けるべく戦い始める。
「どうした、やはり貴様はその程度か!! 彼女に遠く及ばないぞ!」
「言ってろ!」
右手に持ったSMGでヘルを牽制しつつ、左手のアーマーと一体化した高速振動クローで仕留めに掛かる。
「決めてやる喰らえうヘルヘブン」
互いの技が炸裂する。
ダメージは、クラークの方が大きい。
「俺は結局、彼女を‥‥そしてそのコピーであるお前を超えれなかったと言う事か‥‥まいったねぇ。
動けるなら、早くここからは離れな‥‥巻き込まれるぞ」
その言葉の通りコピーAUKVは各所で火花を散らし始めていた。
アーマーのメットを外し、ヘルにキスをするクラーク。
「その世で、彼女に詫びて来るよ。ヘル‥‥」
そしてヘルを突き飛ばし、二、三歩あるき、爆発。
こうして彼の凄絶な人生は幕を閉じた。
――転
基地内部
「やはりお出になられるのですか?」
大統領のSP、アクセル・ランパードは大統領にそう訪ねる。
「ああ、あの機体が出てきた以上、私も前に出なければなるまい」
「分かりました、では止めは致しません。ですが、こちらも護衛に付かさせて頂きます」
アクセルはため息混じりにそう言うと、基地司令のユーリも出撃準備をしているのを見つけた。
「司令、貴方までですか!?」
「戦力が足りないのだ。仕方あるまい」
その頃、クロッカは影キメラと共にトイレでSPを襲い、変装して本物と入れ替わっていた。
そしてキメラにSPを分断させる。
パイロットスーツに着替える大統領とユーリ。それを影で狙っている偽SP。そして――
「決定打だ! 死になクロウ!」
「私は負けはしない白銀の魔女シルバー・クロウの名にかけて」
白銀の魔女の力を解放するエオス。
そして、互いの機体に互いの剣が深々と突き刺さり、相打ち。
同時に落下していく。
墜落後、二人ともコクピットから出る。
「‥‥ハ、ハハハ‥‥‥! 俺の負けか。戦士が、用兵家に負けちゃあ形無しだ」
既に瀕死の重傷で、その場にくず折れる。
「やはり‥‥あなたとは、こうなってしまいましたか‥‥」
「ザマァねぇな。だが、いい気分だ。最後の相手が、テメェだったからな」
そしてエオスは瀕死のヴィントの唇を奪う。
「最期の時ぐらい、私の我が侭くらい良いでしょう」
「ハッ、本当に‥‥いい最後だ‥‥ぜっ!」
エオスを押しどけ、ヴィントはシュルテンに乗り込む。
そして上昇を始める。
「俺ァ死神! 踊り狂う死神、シュトゥルムヴィント! 死神は‥‥死なねぇ! この魂は、空に還り、必ず‥‥また戻る! しかるべき者の下へ!」
ヴィントが叫ぶ。
「ハ、ハハハ! ハァーハッハッハ!!」
爆散。
「私は忘れはしない。ヴィント、貴方のことを。そして生きてみせます貴方の命の分まで」
それからクリュッタロスの端末に通信を入れる。
「クリュス、見ていましたね? あなたに判断は任せます、ただし命を絶つことは許しません」
「‥‥承知。主‥‥‥‥立派な最期でした。後は、お任せ下さい」
そしてクリュッタロスは闇に消えた。
「ジョナサン‥‥」
大統領のことが心配になり、基地へと戻るエオス。
そして大統領が機体に搭乗直前、死角よりクロッカとキメラが踊りかかる。
「何っ!? 既に潜り込まれていましたか!!」
「クッ‥‥」
キメラの攻撃を体をひねってかわす大統領。
「大統領、ここは危険です! 早く非難を‥‥チッ!?」
「なに、そう簡単にやられはせんよ。これでも従軍経験者だ!」
大統領はそう言うと、ファイティングポーズを取る。
「希望正義と吠え立てる、卑しい国家の番犬風情が‥‥祝祭の邪魔をするな」
SPを蹴散らしクロッカが大統領に肉薄する。
クロッカの紅炎が大統領に迫る。だが、大統領は腰からサーベルを抜くとそれを受け止めた。
剣戟。
割って入るスキがない。
その間にSPは集まり影キメラは葬られていく。
「銀の雨よ!」
エオスのシルバー・クロウトしての魔力で銀色の雨が降る。
身をかわすクロッカ。
「‥‥ちっ、失敗か」
失敗を悟ると転移で消えるクロッカ。
「あなたは‥‥!?」
「私はゴットホープのエオス・アイオーン。大統領は無事ですか?」
アクセルの誰何にそう答えると、エオスは大統領へと走った。
「ジョナサン、貴方のことが好きです‥‥例え結ばれないとしても」
「エオス‥‥気持ちはありがたい。だが、私は大統領でね」
「わかっています‥‥告げられれば十分です。御武運を」
エオスの敬礼を受け、大統領はフェニックスへと乗り込む。
――転
「っぁ、が‥っ!? っ!? っ〜〜〜、あたしの、記憶をっ、壊すなああぁぁ゛ぁ゛っ!!?」
ルーはダメージを受け混乱していた。
「安心するのにゃ、敵じゃないから」
噛み付かれ暴れられてもメイはルーを抱きしめる。
「思い出すのにゃ、人としての記憶を‥‥人の心をどんな姿でもルーはルーにゃんだから」
「‥‥っ‥‥あ、あ‥‥ぁ‥‥」
ルーはゆっくりと力を抜いて気を失った。
「哀れだけど、倒すしかないね!」
一方、イェルはエル・ウッドに電磁投射砲を叩き込んでいた。
封印していたすべての能力を開放して。
「手伝うにゃ」
「姉さん!」
「ボクの力も注ぎこむにゃ!」
そして二人の力が注ぎ込まれた電磁投射砲は、エル・ウッドを打ち倒した。
そして、二人はKVを呼び出し乗り込む。
――転
ユダの隣には6枚の翼と尻尾を生やした魔神の様な姿の漆黒のKVがいた。漸王零乗り込む闇天雷シェイドカスタムである。
次第に周囲の敵を駆逐し集ってくるKVもこの2機には思うように手が出せず、次々と攻撃を受けていた。
ニュクスはこちらの世界の祥龍から受け継いだアヌビスを操り、フレキシブルモーションで自身の合気道を活用しながら戦っていた。
ツバメと真由もユダと闇天雷の前にやってきて攻撃をさばき続ける。
そして白夜が。
大統領が。
アクセルが。
ユーリが。
カレンが。
チェスターが。
集った。
負けるはずのない。
そしてアクセルが光の竜神をユダに向かって放つ。
「ここまで来たら、後はお任せします! 全てに決着を!!」
それを庇うように闇天雷がやってきて直撃を受け、爆散する。
人型形体の、ユーリの乗るリヴァイアサンが弾幕を張る。
「くっ‥‥」
カインは舌打ちをしてそれを鬱陶しそうに受ける。
「ドラグナイツの諸君、我々が隙を作る。諸君はその隙に光の竜神でユダのコクピットブロックだけを抜き取りたまえ」
『了解!』
大統領のフェニックスとユーリのリヴァイアさんと、ツバメの雷電が一斉に攻撃をして隙を作ると、
そこに光の竜を纏い飛行形態に変形したドラグナイツ達のKVの姿があった。
『光の、龍神!』
光の竜神はユダを貫通して人形に戻り、後ろでポーズを決める。
「流石は『この世界の俺』が見込んだ戦士達、か。
‥‥見事だドラグナイツ。その光で、この世界、護り続けてみせるがいい」
だが、その瞬間に漸王零がコクピットブロックごとカインとリシアを救い出していた。
「ドラグナイツを侮るな、闇に落ちた人間ひとり救えないで、正義が名乗れるものかっ!! 『光竜の咆哮(ドラグーン・ハウリング)!』」
そしてその咆哮でユダをバラバラにする。
「終わった‥‥のか?」
ツバメは呆然と戦場を見守っていた。
戦闘の帰趨はすでに人類にある。主たる幹部を失ってバグラムは撤退し、撃墜され、その数を減らす。
そして、ユダの崩壊でギガワームの召喚プロセスも止まった。幻は幻として、消えゆくのみ。
「くく‥‥バグラムなど幾らでもいるさ」
クロッカはそう笑うと目立たぬ記者姿で雑踏へと姿を消した。
●ED
『軌跡』
作詞・作曲:シャンリークィ
歌:サラ・ディデュモイ
スタッフクレジットとともにキャストクレジットが流れる。
夜の帳の中
粉雪が空から
優しく降りてくる
クロッカ/ホアキン・デ・ラ・ロサ(
ga2416)
シュトゥルムヴィント/ゼラス(
ga2924)
漸 王零/漸 王零(
ga2930)
ふわりふわりと舞い踊る妖精たちは
白いキャンパスに描かれた悲しみの記憶を
ゆっくりと覆い隠してく
ジーン・ロスヴァイセ/ジーン・ロスヴァイセ(
ga4903)
クラーク・エアハルト/クラーク・エアハルト(
ga4961)
星河 メイ/柿原ミズキ(
ga9347)
イェル /イスル・イェーガー(
gb0925)
咲き誇る雪桜が
これはただの夢だと囁いた
ユーリ・ヴェルトライゼン/ユーリ・ヴェルトライゼン(
ga8751)
チェスター・ハインツ/チェスター・ハインツ(
gb1950)
月影・白夜/月影・白夜(
gb1971)
火絵 楓/火絵 楓(
gb0095)
けれども ほら
心に宿る氷の楔が
その悪夢が現実(リアル)だと告げている
ルー・ガルー/エミル・アティット(
gb3948)
エオス・アイオーン(シルバー・クロウ)/烏丸 八咫(
gb2661)
カイン/ドニー・レイド(
gb4089)
足が竦む 顔が俯く
今いる場所から動けなくなる
クリュスタッロス/クラリア・レスタント(
gb4258)
シリウス・ブレイダー/アーク・ウイング(
gb4432)
ヘル/エイラ・リトヴァク(
gb9458)
そっと振り返り 見つめるのは
自分が歩んできた
足跡(みちしるべ)
リシア/ウレキサイト(
gb4866)
ニュクス・アイオーン/キャプテン・エミター(
gb5340)
そして ふと気付く
自分が胸に抱いていたモノ‥‥
望み守り抜いた 光
平凡な日常と言う 掛け替え無き宝物に
須藤 ツバメ/安藤ツバメ(
gb6657)
蔵里 真由/望月 美汐(
gb6693)
アクセル・ランパード/アクセル・ランパード(
gc0052)
瞳を閉じ
その温もりを感じ
体が熱を取り戻す
戒めの楔そっと抱きしめ
ゆっくり溶かしてく
レムレース、ネクロマンサー/ファタ・モルガナ(
gc0598)
ダークムーン/鬼道・麗那(
gb1939)
藍・カレン/サラ・ディデュモイ(gz0210)
エル・ウッド/エル・ウッド(gz0207)
エイシャ・アッシュフォード/エイシャ・アッシュフォード(gz0282)
ヨハン・アドラー/ヨハン・アドラー(gz0199)
大統領/ジョナサン・エメリッヒ北米大統領
etc‥‥
ふと顔を上げれば
感じる仄かな温もり
差し込む朝日に溶けてゆく
白き幻影
どんな夜に 夢に
囚われたとしても
必ず‥‥夜明けは訪れる
どんなに冷たい氷でも
いつかは溶けて消える
今 強き羽ばたきに舞い上がる
軽やかな白銀の煌き
透き通る青空に
太陽が輝き
駆け抜ける風が翼誘う
粉雪は白き花弁へと
姿変え幸せな安らぎを歌う
咲き誇る桜の向こう側
揺らめいた過去の幻想
一陣の風が吹き荒び
花吹雪と共に消えてゆく
新緑の風が告げる命の芽吹き
今 この胸に輝くは大輪の花
一歩ずつゆっくりと 歩んでゆこう
現在(いま)を見据えて前へ
AND YOU
機装戦隊ドラグナイツ 最終話 「灼熱の竜騎兵」
END
制作・著作 グリューン・ムービー
「これで依頼は完了だ‥‥約束通り我がこの世界にいたという形跡を消しておいてくれよ」
漸王零はデータの入ったディスクを大統領に渡すとそういった。
「ああ、任せたまえ。それで、彼らは?」
「我と、白銀の魔女二人の力で、扉をこじ開ける。そして帰るよ‥‥もといた世界に」
「そうか‥‥」
光の竜神の影響で洗脳の解けたカインとリシアは、元の世界へ帰ろうとしていた。
「さぁ扉は開いた‥‥我は行くが君らはどうする? なに‥‥最後まで裏切り者の名のごとく罪を裏切り生きていても罰は当たらんさ」
そう言って悪魔のように漸王零は笑う。
「貴方には、居るべき世界がある。それはここでは無い」
「コレで、良かったのですよ、ニュクス。それにして、姉妹揃って男運がないとは‥‥何故でしょうかね。
しかし別の世界では‥‥いえ愚問ですねそれは」
ニュクスがそういい、エオスが苦笑する。
「これは我らだけの秘密だ。行きたまえ、藍祥龍」
「すまないな、世話をかけた」
「ありがとうございます」
カイン‥‥いや藍祥龍とリシアが大統領に礼を言う。
「元気でね、『兄さん』」
「おげんきで」
「二度とあわないことを祈っています‥‥」
カレンが、チェスターが、白夜が別れを告げる。
「‥‥まあ、お元気で」
「元気でな」
真由とツバメが別れを告げる。
「まあ、お前が白夜を受け入れてくれたおかげでイェルとルーはもとに戻れたにゃ。そのことには感謝しとくにゃ」
「ありがとうございました」
「まあ、完全にとは行かなかったけど‥‥」
メイとイェルとルーが別れを告げる。
「ではな、ミスタープレジデント。さあ、行こうか」
そして漸王零は祥龍とリシアを連れて元の世界へと帰っていく。
やがて、扉は静かに閉じられた。
ピピッ――
と、エオスの端末にメールが届く。
「主の礼は、何時か返す」
とだけ。
そして彼女は‥‥戦場に居た。
鎌を振るい、戦場の只中を駆け抜ける。
「ハッ、ハハハ! 私は死神! 『氷雨の死神』クリュスタッロス!
死神は、死なない! ハハハ! アハッハハハハ!!」
深紅の瞳を揺らし、荒野と化した戦場で、彼女は高らかに嗤う。
死神の魂は消えず、戦場で産声をあげた。
メイは別店の経営を任せられ、ドジもなくしてすっかりと経営者としての任務を全うしていた。
そして、夜はロスを護る仕事‥‥いや、ヒーローチームAnimalsとして活躍をしていた。
「だから、あたしにはこういうのは似合わねえんだよ!」
ヘルはウェイトレス姿で顔を真赤にして抗議していた。
●最後に
無事蘇生したレムレースはチェスターに別れを告げ、里に帰ることになった。
「私は、里に帰るよ。そこで、皆を供養しながら過ごす事にする」
「そうですか、お元気で」
「そう。さようなら、ハイン。また、いつか会いましょう」
頬にキスをし、彼女は真っ直ぐ林道を歩いて行った。
光の導き 闇の胎動
心通わす 鋼の身体
解き放ちし 竜の力は
闇を切り裂き 舞い上がる
悲しみの向こう 光差すその先へ
「機装戦隊ドラグナイツ!」
何度でも歩きだそう
幾度でも手を伸ばそう
大切なモノ 手にするまで
満天の星々に誓う
固き決意
水面に映る流星の影
咲き誇る 桜の向こうに
揺らめく 過去の幻影
あの日
胸に灯った 確かな炎
夜を越え 今走りだす
力の限り
たとえ傷付き 心折れそうになっても
止まれない 止まらない
哀しみのない世界 手に入れるまで
明日を夢見て 戦い抜こう
そこにはきっと 光に満ちた夜明け
僕らを待っている
朝焼けが染めあげる
幾千の花々
不意に過ぎる 微睡みの香り
一陣 風が吹きすさび
花吹雪と共に 消えてゆく
あの日
胸に誓った 切なる願い
何度でも また走りだす
想いの限り
幾度倒れ 思い砕けそうになっても
止まれない 止まらない
皆が笑える世界 取り戻すまで
希望を信じ 戦い続ける
そこにはきっと 希望に満ちた青空
僕らを待っている
闇に浮かぶ光の先
確かな未来
手を伸ばせば 届くと
そう思い 手を伸ばす
届かない まだ辿り着けない
だからこそ 今は走り続ける
いつの日か その光
この手に掴む そう信じて
何度傷付き 心砕けそうになっても
止まれない 止まらない
笑いあえる世界 手にするまで
その日を信じ 走り続ける
悲しみの向こう 光指す先 笑顔に満ちる場所
きっと僕らを待っている
フェイドアウトしてゆき暗転。