●リプレイ本文
青い空に白い砂浜、そして目の前にはキラキラ輝くエメラルドの海!
「綺麗な海ですの!」
クリスティン・ノール(
gc6632)は目の海を見て、歓喜の声を零した。
これに同意を示すのは樹・籐子(
gc0214)だ。
「こう暑い日ざしの真っ只中でー、潤いと涼を得るには、水辺で海水浴と洒落込むのが一番なのだけれどー」
そう口にしたところで溜息が零れる。
「‥‥またこういう手合いのキメラですか」
まるで籐子の声を拾ったような声を零したリュティア・アマリリス(
gc0778)は、ここに来た目的を思い出す。
「バグアには特殊な趣味の持ち主が多いのでしょうか‥‥」
頭が痛くなってくる。
そう口中で呟き額に手を添える彼女に、今度は籐子の声が捕捉する。
「確か、水着を好むという如何にも変なスライムなのよねー」
この声に依頼人の楓の首が縦に振れる。
「要は悪食スライム退治ですネ♪」
セラ・ヘイムダル(
gc6766)はそう言って拳を握ると、楓に向き合って彼女の手を取った。
そして真摯な表情で彼女の目を見つめる。
「水着を食べるなんて女性の敵です‥‥私が退治してあげますネ!」
「あ、ありがとう‥‥」
そう言いながら僅かに顎を引いてしまうのは、何か殺気を感じたからだろうか。
セラ自身は頼れる女性をアピールしたいのだが、楓はそう言うことに鈍感の様子。危険だからと他の女生徒もいないので少しだけ寂しい。
そして海を見ながらお怒りなのは、何も彼女たちだけではなかった。
「海は楽しく遊ぶですの! 邪魔するキメラは、めっ! ですの!」
クリスティンも拳を握って怒っている。
やはり遊び場を崩されるのは頂けないと言うことだろうか。
それに同調するのは佐倉・咲江(
gb1946)だ。
「がぅ、海で遊ぶために頑張る‥‥」
そう言いながらコクリと頷き、手にしている荷物に視線を落とした。
その中には今回着用すべく用意した水着がある。
「江戸の敵を長崎で‥‥だけど、スライムへの絶好のリベンジチャンスじゃな♪」
そう言って腰に手を当てるのは刃霧零奈(
gc6291)だ。
どうやら彼女はどこかでスライム型のキメラと闘ったことがあるようだ。その時のリベンジをここのキメラでしようというのだろうか。
「元々の属性にキメラが付加して周辺住民は商売あがったりなのよねー」
籐子は思案気に呟き、楓を振り返った。
「まあ、お姉ちゃん達が来たからにはどーんっと任せなさい。綺麗に退治しちゃうわよー」
そう言って膨らんだ胸を大きく叩く。
その仕草に楓は頷き返すと、籐子はウインクを彼女に飛ばした。
「そこの彼女。地元の名物は何かしらねー。おわっらたじっくり案内してよねー」
言って笑った彼女に頷きを返した所で、咲江が荷物を広げ始めた。
「とりあえず私はこの水着でいく‥‥」
言って取り出したのは、白のワンピースだ。
それを目にした他の面々も水着を取り出す。
そして思い出したように咲江の目が楓に向かった。
「楓はどうする‥‥?」
「え?」
「やっぱ、ここは真紅のビキニがいいよ♪」
そう言ったの零奈だ。
彼女の手には、自身が着る深紅のビキニが握られている。
そしてそこに差し出されたもう一着の水着に楓は更に目を瞬いた。
「宜しければスクール水着はどうでしょう」
「え、あの‥‥」
「楓さまにも水着で戦闘参加して欲しいですの」
クリスティンはそう言いながら目を輝かせる。
そんな彼女が持つのはスクール水着だ。
人世初のスクール水着は彼女にとって未知の世界。そして学校に行ったことが無い彼女にとってそれを着る事はある意味楽しみでもあった。
「自分の事件は自分の手で解決する‥‥それでこそ能力者、なのです♪」
セラの言葉は尤もだ。
困ったように口を噤んだ彼女に追い打ちが掛かる。
「クリスはこれがオススメですの!」
可愛い顔をしながらクリスティンが差し出したのは、零奈が持っていた深紅のビキニだ。
「楓さまは黒い綺麗な髪ですの。黒には赤が似合うと思いますですの!」
「‥‥それ、布、ちっちゃい‥‥」
「髪はポニーテールにしたらとっても素敵だと思いますですの!」
目を輝かせて力説するクリスティン。
それに完全に押された楓は、反射的に頷きを返すと、水着を受け取ったのだった。
●水着ー!
「ふぅ、やっぱり涼しいわねー」
そう言って三角ビキニの上にドット柄のビキニを着用した籐子が伸びをする。
その水着を目にしたセラがふと彼女の水着を覗き込んだ。
「2枚も着てるんです?」
「別に一枚だけでそれを剥ぎ取られたままでも良いんだけどー」
籐子はスクール水着に着替えたセラにニコリと笑んで人差し指を立てて見せた。
「未成年が居る事だしそこはちゃんと弁えてね」
クスリと笑んだ彼女に、セラはなるほどと頷く。
その直ぐ傍では白のワンピース型の水着を着た咲江が準備運動をしている。
彼女の手にはエレキギター型の超機械があり、彼女は準備運動を終えるとそれを構えて周囲を見回した。
「がぅ、キメラ探さないと‥‥」
「そうですね、町の方々の為にも綺麗に御掃除してしまいましょう」
リュティアは白と水色を使ったツートンカラーのワンピース型水着を着た状態で周囲を見回す。
今の所視界に入る範囲にキメラはいない。
「楓さんには後方支援をお願い‥‥あれ、楓さん?」
パーカーを着て完全に水着を隠して立つ楓に目を瞬く。
零奈は彼女に歩み寄るとスッと手を差し出した。
「それじゃあキメラが寄ってこないよ」
「‥‥そ、それは」
そうかもしれないけど、と声を曇らせたところで明るい声が聞こえてくる。
「クリスはスクール水着、初めてですの!」
紺色のスクール水着を着て喜ぶクリスにセラと籐子が声を掛ける。
「似合ってるじゃないー」
「本当です、良くお似合いですよ」
にこりと笑んで言われる言葉にクリスは上機嫌だ。
「ほら、みんな喜んで着てるんだから〜」
グイッと引っ張られたパーカーが剥ぎ取られ、零奈と同じ深紅のビキニが露見した。
「似合ってますのです♪」
楓の肩をポンッと叩いたセラに、彼女の目が向かう。
何とも言い難い、すがるような視線にセラはコクリと頷く。
「大丈夫です、相手はそんなに強くないと言いますし、問題ないですよ♪」
そう言ってリラックスさせるように肩を叩き、腕を叩き‥‥あれ?
と、とにかく、こうして水着に着替えた一行は、武装を果たすと変態スライム退治に乗り出したのだった。
●イェロー
咲江は早速、黄色いスライムと遭遇していた。
「このギターならスライムにも効果あるかな‥‥」
そう呟いて構えたのはエレキギター型の超機械だ。
彼女はギュッとそれを握り締めると一気に駆け出し――
「――がぅぅ?!」
「咲江様!」
物凄い勢いで砂に足を取られて転んだ咲江に、リュティアが駆け寄る。
しかし駆け寄ったのは彼女だけではなかった。
「がぅ!?」
目の前で飛躍したスライムが彼女に伸し掛かろうと飛びついてくる。それを白銀のグローブを嵌めたリュティアの拳が撃退すると、彼女は小さく息を吐いて咲江を振り返った。
「大丈夫ですか?」
「がぅ、ありがと‥‥ぅ?」
立ち上がった瞬間、3体のスライムが見え‥‥え、増えてる。
リュティアは急いで探査の眼を使用して周囲を探る。他に敵はいなさそうだが、増えた事自体が厄介だ。
リュティアは拳を握ると、砂を深く踏んだ。
「個体としてはそれほど強力なキメラではないようですので、回避よりも攻撃を優先しましょう」
この声に咲江も頷いて武器を構える。
そうして弾き出した超音波型の衝撃波が放たれるとキメラたちも動き出した。
「しまっ!?」
視界に飛び込んで来た黄色い物体に、急いでギターを構えるが‥‥。
「がぅ、食べるなぁー!!」
何処に口があったのか。
ワンピース型の水着の裾に喰らい付いたキメラに咲江がわたわたと騒ぐ。
一方リュティアは、冷静に拳を叩き込むと砂浜に崩れ落ちる敵に息を吐いた。
「残るは2体ですね‥‥って、咲江様!?」
他のキメラは何処に、そう視線を巡らせた先に見えた咲江の姿に彼女の目が見開かれる。
「がぅぅぅ‥‥ほとんど食べられた‥‥」
辛うじて残る布を抑えながら、キメラを足蹴する姿にリュティアの額に手が添えられた。
「やっぱり、こうなるのですね‥‥」
そう口にした時だ。
視界に黄色い物体が飛び込んでくる。
彼女はそれを飛躍して避けると迷うことなく拳を見舞う。そうして1件落着、そうなるはずだった。
しかし――
「こ、これは‥‥!」
最後の悪あがきにと吐き出された液体が彼女の水着を溶かし始めた。
退治の様子は完璧、しかしどこかに不幸な性質でもあるのだろうか。
残る1体のキメラを前に身動きが取れなくなる。
「流石に恥ずかしいけど男の人いなければ大丈夫‥‥かな?」
「そ、それは‥‥」
そう言っている間にも、残る1体が飛び掛かってきた。
それを咲江が迎え撃つ。
「倒しちゃう‥‥がぅ!」
殆ど何も纏わない状態で放った衝撃波。
それはキメラの身を弾き飛ばすと、彼女たちは多少の犠牲を払い、スライム討伐を完了させたのだった。
●レッド
零奈と籐子、そして楓は赤いスライムを前に戦闘態勢に入っていた。
「同じ赤同士‥‥尋常に勝負♪」
そう言って拳を構えるのは零奈だ。
彼女はローズクオーツの嵌るグローブを握り締めると、一気に砂を蹴った。
これに合わせて籐子も動き出す。
「さあ、かかってらっしゃいー」
軽やかに踏むステップは敵を誘き寄せるには十分なものだ。
彼女は飛び掛かるキメラを視界に彼女は迷うことなく盾――え‥‥えっと、ビーチチェア型の盾を振り上げた?
これに敵が驚いたかどうかは定かではない。
ただ大好物の水着を前に大口を開けた事だけは確かだった。
彼女は掲げた盾で半透明の個体を受け止めると、フッと口角を上げて見せた。
「甘いわよー」
言って振り上げた足が、盾の影から突出する。
そうして貫いた胴が赤い液体を放った。
「あらー」
水滴を受けた彼女の水着は損害。ポロリと落ちたそれに別のキメラが反応した――だが、そこに銃弾の雨が降る。
これを放ったのは楓だ。
彼女は籐子の動きを注意深く見ながら、援護射撃を放ってくる。
これを受けた籐子の口角が上がった。
「あらー、余所見なんてダメよー」
彼女はそう囁くと、遠慮なしにブラを咥えたキメラの脳天を足蹴にして伏した。
一方、零奈はというと‥‥
「甘い、甘い♪ そうそう当たらないよ♪」
身軽に突進してくるキメラを避けると、僅かに光を帯びたままの足で飛躍した。
それに合わせて敵も飛び上がると、彼女は腰を低くしてアッパーの要領で拳を打ち込む。
「‥‥あ、あれ?」
倒したと同時に降り注いだ液体に、零奈の目が見開かれた。
徐々に減って行く水着の面積に急いで飛び退くが、僅かに遅い。
「にゃー! あたしの水着がぁ!!」
顔を真っ赤に叫ぶが、敵はまだ存在する。
「む、むぅ、恥ずかしいけど、今は殲滅が優先っ!」
なんだか踊っている敵に駆け寄ると、彼女の拳が限界まで引かれる。
そして――
「水着の仇ー!!」
ゴスッと突っ込まれた拳にキメラが止まる。
そこに楓の援護射撃と籐子の回し蹴りが見舞われると、敵は呆気なく液体に還った。
「終わった‥‥」
「ああん、綺麗な柔肌が傷ついてるじゃないー」
「え! あ、ちょっと!」
ホッと安堵の息を零した零奈に抱き付いた籐子は、そのままの状態で蘇生術を掛け、思う存分若い女の子の感触を楽しんだのだった。
○ブルー
ビーチサンダルを装備したクリスティンは、足元の砂を固めると、周囲を見回した。
その目に飛び込むのは青いスライムだ。
「酸を吐くのは危険ですの。えっと‥‥水着は溶けちゃうですの?」
「水着が溶かされるのが先か、私たちが退治するのが先か‥‥勝負ですよ!」
セラはそう言うと、堂々と前に出た。
「カッコイイですの!」
クリスティンは目を輝かせて身の丈よりも大きい両刃の剣を構えて前に出た。
彼女もセラを見習うつもりらしい。
「キメラは2体ですの」
言って駆け出した彼女の足がキメラの側面に入り込む。
そうして深く踏んだ砂が足に掛かると、彼女の手にする刃が風を切った。
「てやー! ですの!!」
風と共に振り抜かれた刃がスライムを叩き斬る。その時飛び散った液体が水着に触れ、彼女の目が見開かれた。
「水着が溶けるですの!」
彼女は慌てて液体を払うが、水着は僅かに溶けてしまった。
その頃、残る1体を相手にするセラは、横笛型の超機械を構えて電磁波を放つ。
その攻撃はキメラに届くが、敵は突進する動きを止めない。
「義兄様が言ってました」
セラは進み来る敵を前に、敢えて迎え撃つ準備を取った。
「『脱がされるのは嫌じゃなく、脱がされても良いさ! と考えるんだ』って♪」
「なるほどですの!」
え‥‥クリスティン、納得しちゃった――ではなく、そう言って迎え撃つセラにキメラが飛び掛かった。
彼女はそれを体で受け止めると、水着に喰らい付いたキメラをホールドする。
「いまです!」
この声にクリスティンが、セラに当らないよう間合いをきちんと取って剣を振り抜く。
そうして敵が倒れると、セラの水着は飛び散ったキメラの液体と共に消え去ったのだった。
●イッツ☆リゾート?
砂浜にパラソルを開いたリュティアは、用意した人数分の飲み物をテーブルに置き、深く溜息を吐いた。
「‥‥私の水着‥‥」
そう言う彼女はメイド服を着ている。
彼女の傍には、スライムが残した水着の残骸があるが、これらは食べられた水着だ。
溶かされた水着は戻ってきていない。
彼女はもう一度溜息を零すと海を見た。
「がぅ、水着なくなっちゃったしこれで我慢する‥‥」
咲江が身に着けるのは白の下着だ。
どうやらこの格好で海に入るらしい。
そしてそんな彼女にクリスティンが近付いて来る。
「楽しく遊ぶですの!」
そう言った彼女は新しい白のスクール水着を着ている。そうして咲江と共に海に入ると、案の定彼女の下着は‥‥。
「いいわねー、目の保養だわー」
籐子は海で遊ぶ彼女たちを見ながら笑顔を零すと、隣で砂浜に座る零奈を見た。
「しかし、どうしてこの手のキメラって、こうも変態ちっくなのかなぁ‥‥? むっつりバグアでも居るのかな?」
「どの世界にも、変態はいるものよー」
そうかなあ? と、籐子の言葉に首を傾げる彼女は、頭から被ったバスタオルで口元を塞ぐ。
どうにも腑に落ちないらしい。
そして彼女たちの傍で関心的に立ち尽くしていた楓にセラが近付いて来た。
「大丈夫でしたか?」
「‥‥まあ、それなりに」
言って頷く楓は既に制服姿だ。
そんな彼女を見てセラは言う。
「貴方は筋が良い‥‥傭兵として働いてみませんか?」
じゅるり♪
なんだか目が光った気がする。
楓は一歩後ろに下がると、何か身の危険を感じて首を大きく横に振った。