タイトル:山田良子は自重しない2マスター:敦賀イコ

シナリオ形態: イベント
難易度: 易しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/06/17 01:44

●オープニング本文


 私の名前は山田良子(17)カンパネラ学園に通う女子高生。
 BLを専門に扱う第n文芸部・薔薇組のエース、曼珠院 紗華子と言えば私のことである。

 私は今、学園にいる。
 ようやく学生の本分である学業に復帰といったところなのだが、実際はそれどころではない。
 私は先日開拓した新ジャンル『KV少年』に萌え滾っている。燃えがありあまってスパークしそうだ。
 多種多様のKVが生産されている今であれば幅広い萌えの発現が期待できる。それに加え傭兵の機体は各々のこだわりと思い入れが強く現れているものだ。いわば量産機というキャンバスに己の美意識と理想を投影した萌えと燃えの融合体である。
 よろしい。ならば擬人化だ。
 『KV少女』があるなら『KV少年』があってもおかしくはあるまい。少年に限らず青年、壮年何でも来い。(ただしイケメンに限る)
 しかも少年同士が禁断の恋に落ちたりしてれば尚良し。
 KV人気を考えればこの系統の潜在需要はかなり高いはず。


『あなたの考えたKV少年とそれにまつわるショートストーリーを募集します。
 投稿は第n文芸部・薔薇組まで』


 カンパネラ学園の掲示板の片隅に張り出された一枚の広告。それが一体何を意味するのか、わかる人にはわかるだろう。
 わかる人がいなくても泣かない。
 この山田良子、茨道など進み慣れておる。

●参加者一覧

/ 藤田あやこ(ga0204) / ガーネット=クロウ(gb1717) / 最上 空(gb3976) / 南桐 由(gb8174) / デュアルナ(gc4007) / 暇人(イマジン)(gc4023) / ルーミア(gc4027) / 月詠 雪(gc4032

●リプレイ本文


※※ この先はBL要素が大量に含まれております。 ※※
※※ あなたの健康を害する危険性がありますので、閲覧にはくれぐれもご注意ください。 ※※
※※ 尚、読後に何かに目覚めたとしても当方では一切関知いたしません。 ※※
※※ また、今回、妄想の種としてKVやそれにまつわる兵装を使用しておりますが、元々のKVや兵装を侮辱する意図は一切ありません。 ※※



 ビーストソウルの熱血好青年けもたま・もえる(獣魂燃)15歳
 見かけは硬派熱血番長、性格は喧嘩好きと思いきや、そのたぎる魂でブルーな気分を包み込み、爽やかに勇気付けるハートフルな好青年。決め台詞は「見ろ青空、真っ赤な太陽、明日も晴れだぜ元気出せ」
 ゲジゲジ眉にでかい目玉(メガレーザーアイ)、ひしゃげた学生帽、襟元全開の学ランに何故かドリル内蔵のゲタ(レッグドリル)、チェーンソー(金曜日の悪夢)を片手に学校の裏山で爽やかに樹を切って汗を流している。


 藤田あやこ(ga0204)から届いたメールに記載されていたのは燃え擬人化ビーストソウルだった。
 うむ、これは少年誌で行けるのではないだろうか。
 昨今、『才能・美形・運』というご都合主義満載の気取った小綺麗なキャラクターが氾濫する少年誌だ、獣魂君のあえて時代を逆行する挑戦的なキャラが受けるかも知れない。主に大きなお友達に。


 潅木を伐採して鬱蒼と茂る裏山に明りを与え、学園に爽やかさを与えんと日々活動している獣魂燃。
 ある日、いつものように下草刈りに出かけたところ、文芸部の窓から嬌声がする。
「文芸だと?暗い部屋で黙って本に向かうなんて不健康だな」
 よし俺が諭してやる、青空の素晴らしさを共有しようではないか、と意気揚々乱入するも、文芸部員に逆に諭され、文芸もよい物だなと思う。
 でも、何かが違う何かが足りない。
 そうだ青春だ、熱血だ!!とけもたま・もえるは己の身の内に燃え滾る熱い血潮に気付く。そして読書とアウトドアのアンビバレンツな関係に引裂かれそうな思いを抱き苦悩する‥‥。
 獣魂燃攻め、本の虫な人々受け、どうすればいいの?
 苦悩の末、獣魂はそうだ!と閃いて裏山に向かい大木に思いをぶつける。
「これも愛するあの人と一緒にいる為だ!」
 チェンソーで樹を切り刻み巨大な鉛筆を作る。
「さぁ、明るい空の下へ駆け出そう!爽やかな君の微笑があれば俺は幸せさ。吹き抜ける風、ともにすごす時間‥‥とりとめもない思いの一頁を君の青春日記に記そう!」


 添えられたSSは熱血爽快青春真中直球ストライクのラブコメだ。気持ち内角低めきわどいところにも思えるがさておき。インテリ文系と熱血一直線(天然)の組み合わせはどのジャンルでも揺るぎない。
 これは健全プラトニック清純派BLコメディといったところか。

 何にしてもKV愛に満ちているところが素晴らしい。
 燃えにしろ萌えにしろ、根底にあるのは愛だ。
 異論は認めない。
 愛があるからこそこだわり、自分色に染めようとする。
 それが機体改造に向くか、それ以外に向かうかは人それぞれだ。
 無論、戦場にて己が命を預けるものなのであるから、資金の余力がある限り強化を行い、兵器としての質を高めることは必須であろう。それが生存に直結する。
 だが、その生命線である機体強化にも自分の好みが如実に反映されるものだ。
 結局の所そこにできあがるのは『自分色の機体』
 そういった意味では、機体改造も機体擬人化も大した差はないだろう。
 ぶっちゃけ目クソ鼻クソだ。クソとは言っても、これが当人にとってみれば大問題であり、一週間もクソを出せなければ大変なことになるし、我慢し続ければ軽く命に関わる。

 あやこからのメールを読みながらそんなことをつらつらと考えていたところ、控えめに部室のドアを叩く音がする。
「どうぞ」と声をかければ、礼儀正しい挨拶と共にガーネット=クロウ(gb1717)が入ってきた。
「張り紙を見まして」
 学園生活には以前より興味がありました。見学をさせていただいても? と小首を傾げるガーネット。
 おっと、山田ミステイク。張り紙に薔薇組がBL専門であることを記載していなかった。
 未だ汚れを知らない一般の純なお嬢さんを巻き込むのは主義に反する。きちんと説明責任を果たして引くか残るかを決めて貰わなければ。
 かくしかと要点を掻い摘んで説明したところ、ガーネットは無表情ながらぱちくりと瞳を瞬かせた。
「何か、普通の文芸とは違うような。ですが、心のどこかが惹かれる気がします」
 まさかの同志予備軍であるか。
「私達の足は地から離れられませんが、妄そ‥想像の翼は既成の常識を離れて空高く舞い上がれる。それが文学と言う事なのですね」
 未知の事柄へ興味津々の様子が初々しく可愛らしい。そんな時代が私にもあったはずなのだがそれはいつのことだったか。
 ともあれ、ここは全力で盛大に背中を押す他あるまい。
「良子ちゃん‥‥ほんとうにKVBL始めたんだね‥‥」
「はいっ、空が正々堂々と妄想を全力で投げ付けに来ましたよ!」
 そこへ、南桐 由(gb8174)同志と最上 空(gb3976)同志がやってくる。
 強力な想像力(イマジネーション・パワー)を持つ二人の来訪は、百万の味方を得たに等しい。
「この世界に存在する物は、全て攻めか受けかが定められていると信じてます!」
 しょっぱなからなんと力強い宣言であるか。


 机を四つ並べてテーブル代わりとし、三人にそれぞれ椅子をすすめると、部室備え付けの冷蔵庫からチーズケーキを取り出して、秘蔵のブレンドティーを煎れる。
 放課後ワクワクティータイムの始まりだ。


「以前にもお話しましたが、空の愛機イビルアイズのザミエルは10〜12歳前後の金髪碧眼半ズボンで小生意気なショタで、寝る時には母親がくれたクマのぬいぐるみが無いと寝られないとか、ニンジンが苦手とかですね。あっ、ちなみに母親は幼少の頃に他界し、父親に過保護に育てられているお陰で、超ファザコンだとか、最近父親が再婚を匂わせており、相手の女性に全力全開で嫌悪を抱いているとかの、裏設定もあります」
「うん、複雑な家庭環境が生意気ショタっ子を育むんだね‥‥」
 何の迷いもてらいもなく空が語るショタ設定に由が同意を示す。ガーネットはカップとソーサーを手に優雅な姿勢でお茶を飲んでいたが、今にも身を乗り出さんばかりの食いつきをみせていた。
「父親と女の仲を引き裂く為に、父親の後を尾行するが途中で迷子になり、いつしか、柄の悪いバグア達がたむろする裏路地に迷い込んでしまうショタ、そして運の悪い事に曲がり角でバグア達とぶつかってしまい、因縁を付けられ囲まれてしまうショタ、『口で言っても分からないなら、カラダに教えてやるよ』と、げひた笑みを浮かべ伸びるバグア達の魔手!そして、闇に墜ちる半ズボン!!」
 だんだんとヒートアップしてゆく空、蛍光灯を反射し爛々と光るメガネのブリッジを中指で押し上げる由、お茶そっちのけで何かを掴み始めたガーネット。
 穢れなく純真なものが堕ちて行く過程には『禁断の愉悦』を感じざるを得ない。これは人としての宿命(ディスティニー)だ。東京ディスティニーリゾートだ。
 無論、二次元に限っての話だが。現実ではない二次元だからこそ許されるのだ。
 三次元でこういった一個の人格を踏みにじるような真似をする連中は死んでいい。マジで。
 マーダーライセンスをくれるのなら私が処刑しに行ってもいいくらいだ。地獄すら生ぬるい目にあわせてくれようず。
 さておき。
「くぅー!良いですねやはり、生意気強気キャラが無理矢理に見ず知らずの人間に‥‥と言うのは堪りませんね!!前にも見たシチュだと言うのは気のせいです!王道は何度見ても良い物なんです!」
 語りきった空は両拳を固く握り椅子を蹴って立ち上がる。今にも魂を天に還してしまいそうだが、まだ待って欲しい。
「この王道には801893、いわゆるモブ棒男の存在は欠かせませんね」
「棒、男‥‥ですか‥?」
 おっと、また山田ミステイク。ビギナーのガーネットになかなか恥ずかしい単語を口にさせてしまった。
「‥‥間男とも言うね‥‥」
 上級者の由が助け船を出してくれる。
「つまりは、家庭環境などの要因で素直になれない純真な少年が、好きでもない相手に無理矢理、か、体を‥‥という悲劇なのですね」
 ガーネットが恥じらい、もじもじとカップを弄りながら空の話を端的にまとめた。
「そう、その悲劇の後、傷心のショタっ子を愛し慰める本命の登場です!」
「‥‥そこから生まれる真実の愛‥‥ショタのトラウマを優しく払拭する王子様的な本命でも‥‥俺様に全て任せろ俺ついてこい的な本命でも良し‥‥悲劇の後の甘やかなハッピーエンド‥‥その過程の可能性は無限大‥‥」
「つまりは、愛だろ?愛」
 空と由、私の畳みかけるような連携。打ち合わせもしていないのにポーズがキレイに決まった。戦隊モノであったならば背後で爆発と共にカラフルな爆煙が上がっているところだろう。
「愛なのですね‥‥っ」
 カップを机の置き、頬を両手で包み込み瞳を輝かせるガーネット。
「甘々もいいですけれど、空的には眼鏡が似合う鬼畜でクールな攻めとか好きですね」
「‥‥鬼畜メガネ‥‥KVだとどれが似合うかな‥‥ウーフー、とか‥‥? 由の愛機のスピリットゴーストは‥‥きっといつも‥ツナギを着たような格好で‥『俺の四連キャノンみてくれ‥こいつをどう思う?』とか『いいぞ、次はブーストだ』とかきっと平気な顔して言っちゃうんだ」
「ガチktkr!」
「すごく‥‥固定兵装です‥‥」
 机に両肘をついて顔の前で手を組み、口元を隠すような姿勢で由が語り出す。ゲンドウ降臨は由の本気の証だ。
「スピリットゴーストとコンビを組ませるなら‥‥誰がいいかな?ゼカリアと組んでガチムチ‥‥重量級も良いけど‥‥サイファーみたいな‥‥ショタッぽいのもいいような気もする‥‥」
「スピリットゴーストとゼカリアのガチムチコンビには肉体と肉体のぶつかり合い、雄野郎同志の汗とか汁とかいろんなものが飛び散りそうな濃さがありますね!」
 空がしきりに頷く。何とまあ、深く心得ているょぅじょであるか。
「ショタっ子とガチムチお兄さんのハートフルほのぼの路線も捨てがたくござ候」
 ハード路線も良いモノだが、ソフト路線もそれはそれで良いものだ。過激に走るだけがBLの楽しみでは無かろう。
「うん‥‥KVは色々売り出せれているし‥‥開発も進んでいるから‥‥色々と妄想が膨らんでいいよね‥‥」
 フフ、と軽く微笑みながら由が天井を見上げる。その表情は愉悦に彩られ、充足していることが伺えた。
「‥‥しまった‥‥涎が」
 慌てて口元を拭う由。そっとハンケチを差し出すガーネット。
「皆様のお話を聞いて、だいたい理解しました。私も地から足を離して妄そ‥‥想像の翼を広げさせていただきます」
 悟ったような穏やかな表情のガーネットに最早迷いは見られなかった。
「そうですね‥‥私の愛機はディアブロなのですが、能力値から、赤毛、細身で尖った感じの外見。ぶっきらぼうで乱暴な不良少年だけど傷つきやすい。家の冷蔵庫には拾った子犬用の牛乳完備。姉には頭が上がらず、女性恐怖症気味。次々と現れる新型に乗り換えられてきた過去があり、簡単に心は許さない‥‥といった感じで」
「ガラスの十代少年ですね」
「どっちかというと尾崎?」
「ヒムロックでも良し」
 我々の感想にガーネットは我が意を得たり、と深く頷く。
 お前ら実年齢言ってみろというツッコミなど聞こえぬわ。
「相手が兄貴キャラでしたら、何かの誤解で相手を傷つけてしまうものの、それを許されて泣きじゃくる甘え系。相手が邪険にしても子犬のようについてくる弟キャラでしたら、照れながらも『チッ、しょうがねぇなあ』と視線を合わせずに髪をくしゃくしゃ撫でる‥‥これは何系というのでしょうね」
「いやいや、言いたいことはよーく伝わりましたとも」
「‥‥ちょっとヤンデレ入ってる感じがいいね‥‥」
 ガーネットは頬を染め、小さくありがとうございます、と口にする。
「それで、ですね。その後はどっちも俺様受け、ということで‥‥『くっ、俺のアグレッシブ・フォース‥‥が、我慢できないっ、ごめん!』みたいな‥‥」
 ああ、と熱い吐息を漏らし瞳を閉じるガーネット。
 傍目には何を言っているのか、何を我慢できないのか、何を謝っているのかすら意味不明。と思われるだろうが、この場に集った面々には禁断の園で繰り広げられる野郎共の宴をありありと大胆かつ繊細な筆致で瑞々しく脳内に描き出している。
「‥‥兄貴キャラなら『いいから、出せよ‥‥お前のは全部俺のPRMシステムで受け止めてやる‥』」
「弟キャラなら『いいよ、ボクの試作型AECなら大丈夫‥‥』ですね」
「全部受け止めて、俺のキャバリーチャージ‥‥みたいな!」
 桃色吐息が全員の口から一斉に漏れ出す。
 この空間を色彩で表すならピンク一色、それもロマンと情熱とエロスとリビドーがない交ぜになったかのような深いピンク色だろう。


 盛り上がりが一段落し、お茶のおかわりを煎れるために一度席を立った私が戻る頃には、ガーネットは空とディープなBL談義を交わすようになっていた。
「──勝ったな」
 私はパイプ椅子に座っている由の斜め後ろに経ってぽつりと呟いた。
 手で隠されている由の口元が笑みを深めたのは言うまでもない。メガネも光っている。
 ここに新たなジャンルと新たな同志が誕生したのだ。



 第n文芸部薔薇組新刊予告


 ビーストソウルの獣魂燃(15歳)は青春を青空の下で謳歌する元気いっぱいの熱血好青年である。彼の悩みはただ一点、文芸部にいる気になるアイツのことだ。彼と外で思いっきり青春をしたい、だが、彼は文芸部員。一途なインドア派の彼をどうしたら外の世界へと誘えるのか‥‥苦悩する獣魂。
 その頃、獣魂と同じクラスのディアブロは兄貴分と弟分との間に挟まれ揺れ動いていた。ぶっきらぼうで乱暴な不良少年だが、その裏には人に乗り捨てられ、傷ついてきたという悲しい過去があった。悲しみを背負ったディアブロの心を癒すのは──?
 学校のチョイ悪用務員、スピリットゴーストはバグアでもかまわないで食っちまう人間だった。自慢の四連キャノンを発射する相手を求めて街へと繰り出した彼は、バグアに執拗に絡まれるイビルアイズ・ザミエルと出会う。
 複雑な家庭環境の元、屈折した心を抱えるザミエルには決して他人には言えない過去があった──

 青空の下へと駆け出したい獣魂の想いは通じるのか。
 繊細に揺れ動くディアブロの想いの先は。
 スピリットゴーストの包容力に、ザミエルは心を開くのか。


 『総天然色KV男子図鑑』
 今夏発売予定

 同時発売予定
 『狂い咲きの研究員』
 『眼鏡とメロン』
 『今宵、君ヲ略奪ス』

 お問い合わせは、第n文芸部薔薇組まで