タイトル:【Woi】憂鬱マスター:文月猫

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/09/09 02:26

●オープニング本文


大規模作戦『War of independence』が曲がりなりにも、ひとまず終止符を打とうとしていたその頃。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 北米某所、にあるUPC軍の補給敞。といっても実情は、大規模作戦で使用した輸送用のトラックとか、諸々機械のオーバーホールやメンテナンスを行う工場である。ここで修理が施された車両や機械類は、再び元の部隊やら、現場に送り出されこととなる。
 ‥‥修理工場とは行っても、その設備や技術は、UPC軍でもトップクラスであり、最新の機械類などがおかれていたのだが‥‥
「敵陸戦ワームが補給敞に迫っているだと?」
 UPC軍では、その情報に色めきたった。バグア側は、補給敞を奪取しようという魂胆なのか?敵戦力はTW複数とのこと。
 UPC軍としても、できれば施設に損害は与えたくない。よって、直接に施設が巻き込まれない地点で迎撃する作戦を立案する。で、
「ここは、傭兵達に任せた方がいいようですね」
 最初にこの情報を受け取ったラフィン・ドレイクは直ちにこう判断した。シェイド討伐戦直後という現状から判断して、傭兵達に頼らざるを得ないと。そこで直ちにLHに連絡をとる。
「‥‥というわけですので、大至急手空きの傭兵達を向かわせてほしい」
 とここまで言いかけた、彼の手元に、「緊急」と書かれたメモが回されてきた。それを見た瞬間、珍しく動揺が顔に現れたラフィン。
「‥‥これは‥‥」
 と、つぶやくとすぐさまLHの担当者にこう告げた。
「あまり耳にしたくはないでしょうが、TWだけではないようです。‥‥。ゴーレムが確認されました。」
 こういいながら、ふ〜〜と息を吐く。
「なんでまた、ゴーレムが‥‥」
 と周りにいた同僚たちが呻いた。明らかにその口調は動揺していた。
 バグアは、かなり本気モードに思えた。

●参加者一覧

王 憐華(ga4039
20歳・♀・ER
井出 一真(ga6977
22歳・♂・AA
龍深城・我斬(ga8283
21歳・♂・AA
魔神・瑛(ga8407
19歳・♂・DF
加賀 弓(ga8749
31歳・♀・AA
ヨグ=ニグラス(gb1949
15歳・♂・HD
神宮寺 真理亜(gb1962
17歳・♀・DG
流叶・デュノフガリオ(gb6275
17歳・♀・PN

●リプレイ本文


 「大規模作戦の直後だというのに、いったいどこからこの戦力が」
 という加賀 弓(ga8749)の嘆き。人類側は疲弊しきっているというのに、バグアは些細な場所にまで戦力を惜しげもなく送り込んでくる。気分はまさに憂鬱である。
 しかも今回御丁寧にゴーレムまで送り込んで来ている。機体数の上では、傭兵側が多いが、絶対的な戦力でいうと、ともすれば傭兵側不利であろうことは、事前に想像できた。そこで、緻密かつ綿密な戦術をたてて望む傭兵。
「無事に全員が生還されることを望みます」
 という、出撃前のラフィン・ドレイク(gz0257)の言葉を改めてかみしめる。


 というわけで、今回、戦略上もっとポイントとなると思われるのが、交戦予定地点にかかる河である。こういった天然の障害物は、使いようで敵にも味方にもなる。さらに橋まで架かっている。これをうまく利用しようと考えているのが、歴戦の井出 一真(ga6977)であり、魔神・瑛(ga8407)である。
 特にゼカリアを駆る魔神の場合、その陸戦専用兵器ともいえる新鋭機の実力が試せるいい機会であろう。聞けばその徹甲散弾の威力はかなりのものらしいのだが。対ゴーレムにどこまで有効なのだろうか? で、他の傭兵達はといえば。
 王 憐華(ga4039)は、アンジェリカでの出撃。対バグア用の知覚特化型KVだ。
 龍深城・我斬(ga8283)は雷電。重武装・重装甲のKVで、今回の主武装は「レッグドリル」である。
 ヨグ=ニグラス(gb1949)はシュテルン。VTOLが可能な高性能機。
 神宮寺 真理亜(gb1962)は、リッジウェイ。兵員輸送型KVであるため、どうしてもそちらに主眼がいってしまうが、人型での戦闘も可能である。
 で、最後が、皇 流叶(gb6275)のシュテルン。処々の改造が施されている。
 それに加賀のゼカリアが加わる。陸戦、ということを考えれば、ゼカリアが活躍できるかも作戦の成否に大きくかかわってくると予想されるのだが。


 さて、作戦である。射程ではるかに凌駕する敵に、砲撃戦を持ち込まれてはジリ貧になる可能性が大きいと考えた傭兵達。勝機を見出すために、できれば接近戦に持ち込みたいのだが、TWにしろゴーレムにしろ、プロトン砲の長射程は脅威。
 そこで、多少思い切った作戦に。2班に分け、1班を敵懐に飛び込ませるべく、ジャンプして渡河を行うという作戦に。で、もう1班が、その懐に飛び込む味方を砲撃などで援護する、ということなのだが、射程に絶対の差があるので、敵をKVの射程に引き込まないことには援護もできず、接近班がいい的になるだけ、という可能性も考えれば、リスク覚悟といえるかもしれない。
 で、その2班。「ジャンプ川越接近戦」班とでも言うべきA班は、井出、魔神、龍深城、皇の4人。もちろん正面からまともに行くわけではなく、左右に展開し、懐に飛び込む算段。さらには、ただ素直に飛ぶのではなく、井出と魔神はフェイントをかけて、つまり相手を霍乱させてから川越をするという、さらに凝った作戦に。
 魔神にいたっては戦車形態で河を普通にわたるという作戦。戦車形態なら、ぬかるんだ川底での機動力低下もローリスクになるとの計算らしい。ジャンプ着地時にバランスをくずす可能性も考えた上での作戦であろう。こういうとき阿修羅の4脚は、バランスという点では絶妙である。
 で残りの4人、王、ヨグ、神宮寺、加賀が「支援砲撃後渡河」班とでも言うべきB班。彼らの支援なくしては、接近班の作戦遂行はありえないのだが、果たして簡単にいくのだろうか?
 敵が本当にレンジを取って砲撃に徹した場合は、というリスクは覚悟であろう。
「射程がもっとも長いのは私の武器か?」
 と神宮寺。スナイパーライフルD02のことである。まず、この範囲内に敵を引きずりこむ必要がある。こちらも長い射程の武器を持つ王は、渡河後は接近戦には持ち込まず中距離での支援に徹する、という構えである。かくして‥‥


 「敵、急速接近中なのです」
 とコクピットで叫ぶヨグ。敵との交戦ポイントを前に改めて作戦を確認する。緊張と不安が入り混じる瞬間。敵の動きをみつつ前後4機づつ。さらにジャンプ班は、両翼に展開するので、2機づつでペアになるような陣形。
「射程的には微妙ですけれど」
 と加賀。破壊力では、おそらく最強であろう大口径滑腔砲であるが、いかんせん射程ではバグア側兵器には歯が立たない。
 と次の瞬間、
「来る!」
 と誰かが叫ぶ声。前方はるか、いくつかの閃光がきらめいた。そのプロトン砲の長射程は、早くもKVを捕らえる距離になったのだろう。
「!!」
 その衝撃は、コクピット内の神宮寺の体を揺らした。プロトン砲の直撃があったのだ。リッジウェイがゆれる。それは想定していたとはいえ、かなりのものだった。一瞬不安がよぎるのを押さえ、なおも前進する。ド〜ン、という衝撃音が不気味である。


 その時戦神の幸運は、すでに傭兵達の方に向いていた。そう。敵は、砲撃戦でのKVとの持久戦を選ばず、KVにさらに近づいてきたのだ。持久戦になるのを嫌がったのかも知れない。このことが、この戦いの行方を決定付ける大きな転換点であった。
 問題の河がすぐ目の前に。そこにかかる橋は、見た目KV2機以上同時に乗らなければなんとか持ちこたえられそうに見えた。あいかわらず、すさまじいプロトン砲の攻撃にさらされるKV。だが、もう少しの辛抱である。
「だめもとでも」
 とばかり、ゴーレムに大口径滑腔砲を放つ加賀。‥‥それはさすがに相手には届かなかったが、手前に大きな爆撃のような跡を残す。敵行動を阻害する効果ぐらいはあったかもしれない。
「敵射程内に。スナイパーライフル発射」
 ついに神宮寺の射程に先頭のTWが入った。KVから発する閃光。だが、そいつはTWの装甲に吸い込まれるも、ダメージがあるようには見えなかった。予想以上の重装甲に思えるTW。さらに敵は接近。王のSRRも敵を射程に捕らえた。アンジェリカからも閃光が。


 だがこの反撃によって、敵の侵攻速度が多少鈍った。おろらく、バグア側の予想以上の射程からの攻撃だったのかも知れない。足止め程度の効果はあったようだ。援護とすればまあまあである。
 いよいよA班の出番だ。左右に開き、そのタイミングを計り‥‥。そして。
「跳躍シーケンス開始! 跳べえ!」
 と井出。彼は橋を渡るような態勢で、おおきく進路を変えようとするポーズで、フェイントしてからジャンプ。瞬間、橋正面にいたゴーレムの射線まん前になるが、その攻撃をフェイントによってはずさせた。見事である。阿修羅改、その4脚のバランスのよさで、しっかり河向こうに降り立った。
 かたや、魔神の場合。井出に遅れること少し、彼の援護態勢からその阿修羅改の無事着地を見届けると、ジャンプフェイントを敢行。それにつられてゴーレムのフェザー砲が火を噴いたが、それはジャンプにつられ、高い射線で放ったもの。その閃光は頭上を掠めていった。こちらも大成功である。戦車形態で渡河。その無限軌道は川底のぬかるみをものともしない。‥‥彼がからぶりさせたフェザー砲は、後方の支援砲撃隊の頭上を掠めていった。


 のこり2機、龍深城と皇は普通にジャンプ。幸いジャンプ中に狙われる事もなく、無事着地。砲撃によるジリ貧状態から脱出できて安堵する龍深城。
「さて、ここから先は誰もとおさせんぜ」
 と意気込み万全である。
 この渡河によって、敵も本格的に接近戦を選ばざるを得ない状況に。もし、ゴーレムが有人で中に指揮官でも乗っていれば、作戦ミスに気がついたかも知れないが。が、逆にそれはKV側にとっても、混戦になるということを意味していた。混戦になれば、支援部隊の砲撃もリスクがでてくるだろうし、また、そのタイミングも限定されるようになるかもしれないからだ。背後から撃たれる、ということはないにしてもである。
 まずは、TWの砲台つぶしである。だが不用意に接近は禁物だし、うっかりゴーレムの射線に入れば、ツープラトン攻撃を見舞う結果にもなるからだ。
 混戦の中、まず手近のTWに狙いを定める井出。すでにソードウィングを展開している彼は、サンダーテイルを併用し、TWに攻撃を加える。常にゴーレムの動きに警戒しながらである。みればゴーレム。自分からではなく、周囲のTWへの支援中心に動いているようで。また、TWもゴーレムを囲むような動きである。そうなればその方がやりやすい。
「おし。援護するぜ」
 と魔神。人型に変形し、まず援護の体制をとる。その大口径滑腔砲でTWを狙う。相手とさらに混戦になったら連装機関砲も使う予定である。
 龍深城は、47mm砲とファランクスを併用し、相手の先手先手を取って、一気に接近する。さらにはドリルキックである。ここまで来ると格闘戦にも見えてくる。
 ジャンプ時点で、敵の左翼にかなり周り込んでいるので、TWの側面から攻撃しやすい態勢ではあるのだが、それだけでは決定的なアドバンテージがあるわけでもない。どうしても物理攻撃主体では、防御の硬いTWには、削るのに時間がかかるのだ。
「さて、いくかね」
 そのさらに左手の皇、さらに回りこむように敵の側面と取ろうと接近する。予定では、龍深城とは別個の機体を狙う予定なのだが、混戦になると同じ相手に正対する場合もあるので、お互いの位置関係は常に把握しておかねばならない分、ポジショニングが難しくなったりするのだが、そんな状況でも、冷静に相手を選び、弾幕を張りつつ、主兵装で切り込む。できればTWのフォーメーションを乱して、射線をかぶらせたいところである。うまくいけば、怪我覚悟でゴーレムに切り込む決意も。あえてTWの砲門を狙って、爆破も試みてみるが、なかなかすんなりとはいかない。
 みればゴーレムはTWに囲まれるように立ち、完全にしきっているように見えた。


 その頃B班の状況。まず、他者の援護を優先している王と神宮寺。他のメンバーがわたり終えるのを確認して、最後に渡河すべく支援に徹している。王はA班上陸時、その主武装であるDR2荷電粒子砲を左右に1発づつ放ち、TWの出鼻をくじいたのだが、渡河後は常に敵との距離をとりつつ、高分子レーザーで支援を行うつもりである。
「この純天銀穹姫、中距離での支援に徹します」
 自分の白銀の愛機を「純天銀穹姫」と名づけ、愛用しているのだ。その銀翼を大きく展開した姿は見た目にも美しい。
 かたや、神宮寺。対岸に残り、位置を変えながらスナイパーライフルでTW中心に支援しているのだが、TWの先制攻撃を受けた際、不運にもその4脚の一部が損傷し、行動力、速度が落ちてしまっていたのだ。そのため、動きが思うに任せず、ともすればTWの的になりかねない状態に。さらには、混戦のさなか、味方との同士討ちの危険があり、むやみに撃てない状況に。前方の橋にたどり着いたときには、彼女のリッジウェイにはあきらかに見て取れるダメージが。
 やむを得ず、王に単独で渡河するように依頼し、橋の周辺で支援する。行動に制約があるので、思うように支援できない状態がもどかしい。コクピット内で忸怩たる思いかも知れない神宮寺。


 そのころ。前線では戦況が動いていた。そう、手ごわかったTWが、傭兵達の攻撃によって、徐々に陥落していったのだ。
 まず、井出がフォローを受けつつ、TW1機撃破。続いて、ヨグが渡河してきた王の支援を受け、TWを破壊した。
「亀に、槍でガンホー」
 そんな声が、コクピットから聞こえてきた。
 これでTWは2機。その傍らでは、龍深城が、単騎ゴーレムに弾幕を張りつつ交戦している姿が。接近戦に持ち込んで、ケリをつけようということらしい。
「まって。ゴーレムは単騎は危険です。連携しましょう!」
 と叫びゴーレムに射程をあわせるヨグ。接近戦なので、相手もプロライドソードで仕掛けてくる。‥‥グシャ、という何かがつぶれるような音。シュテルンにゴーレムのソードがめり込むようないやな音。だが、構わず仕掛ける。
 その反対側からは、さらに援軍が。そう。井出がゴーレムにそのソードウィングで突撃してきたのである。
「いけ! これが阿修羅改の必殺技、サンダーテイル!」
 というなり、その長い尾をゴーレムに伸ばし、強烈な電磁パルスを叩き込む。ゴーレムはプロライドソードで防ごうとするが、防御無視のこいつには効かない。グラリとゴーレムの巨体が揺れた。さらに、追撃でソードウィング。このコンビネーションによるダメージは絶大であった。あのゴーレムがおおきく揺らいだのだ。
 で、井出は返す刀で、自分の方に頭をもたげた、別のターゲット狙いのTWにも一撃。TWは大きくひしゃげた。それに魔神が追い討ちをかける。だが、その直前後方で起きていたことは‥‥。


 「!」
 とっさに気がついたのは、TW1機をなぎ払いつつあった加賀であった。みれば、神宮寺のリッジウェイにTWのプロトン砲が命中。そうそのTWこそ、この直後に井出がひしゃげさせたTWである。ついにリッジウェイは完全に機動するのを停止してしまっていた。とっさに状況を察知する。
「神宮寺さんが危ない」
 そう判断したのか、まず徹甲散弾をゴーレムに発射し牽制すると同時に、神宮寺のすぐ目の前に迫ったTWの前に出る。そう。橋の上で危険な状態の彼女の盾になるためだ。
 神宮寺を狙っていたTWは目の前に現れた加賀に思わず驚いたのか、バランスを崩す。其の隙に徹甲散弾を至近距離でお見舞いする。それは、TWのプロトン砲を破壊し、TWは轟音とともに爆裂した。あたりどころがよかったのかも知れない。神宮寺の危機は脱した。どうやら、中の本人は無事のようだ。もう少し遅ければ本当に危なかっただろう。


 「こいつでおわりだ!」
 突然すさまじい轟音がとどろく。みれば、ゴーレムと龍深城がクロスするような体勢ですれ違う。次の瞬間、双方の動きが停止した。どうやら、お互い機体機能に致命的損傷があった模様で動く気配がない。雷電は見た目大きなダメージはないのだが、どこか急所をやられたようだ。ゴーレムはゆっくりと崩れ落ちていく。
「寄らば、大きな的だな」
 とばかりそこへ間髪いれず接近する皇。トドメのライフル全弾発射。先ほど以上のすさまじい爆発音とともに、ゴーレムは爆裂した。
 どこからともなく沸き起こる歓声。コクピットのモニターに映る傭兵達の安堵の表情。コンソールに手を置く井出。‥‥こうして一人の犠牲者をだすこともなく、困難と思われた作戦は無事に終了したのである。これはひとえに、傭兵達のチームワークと練りに練った作戦の成果である、といわねばならない。そんな中‥‥
「覚醒のたびに大きくなる胸。なんとかならないですかね」
 と無事帰還後、ひとり困惑する王がいたりするのである。