タイトル:レッツ!フレンチマスター:文月猫

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/12/12 03:23

●オープニング本文


「あ〜〜あ。おいしいフレンチが食べたいなあ」
と日々のハードワークからつかの間でも解放されたいレニ。「フレンチ旨い店巡り」と表紙に書かれたガイドブックを片手になにやらブツブツと独り言中である。で、何枚かページをめくって。
「あ〜〜。このお店すごい素敵。」
とある店の紹介記事が目に飛び込む。これは絶対に食べに行きたい。と思ったが最後、いてもたってもいられず、休暇を申請するとそのまま本場フランスへ。片田舎の小さな町に向かう。

「え〜〜と。確かこの辺ね」
とガイドブックの地図を頼りに、とある店の前に。構えは多少くたびれてはいるが、得てしてこういう店の中に隠れた名店があったりするのである。ここもきっとそうに違いない。店の看板からしてそういった雰囲気がかもし出されている、と思うレニ。早速店の中へ‥‥と思ったのだが、どうも様子がおかしい。やけに人気がないのだ。まさか今日は閉店? でもガイドブックには「年中無休」と書かれている。だが「OPEN」という看板は店の前にかざしてない。にもかかわらず、店の扉は開いているのだ。小首をかしげるレニ。思い切って中に。
 中はかなり埃まみれになっており、テーブルや椅子はもうしばらく使われていない様子。棚にある装飾品は、なかば埃をかぶり壊れかけているものも。壁もところどころはげかけている。
「ひょっとして閉店してしまったのかな?」
 などと思い始めたときに、店の奥から一人の老婆が。
「おや? どなただい? すまんけど、今は休業中じゃ。すまんがのお」
 とさも申し訳なさそうに語る老婆。だが、何か様子がおかしい。どこか悲しそうな表情なのだ。
「あの、お婆さん。このお店ってガイドブックに出ていたお店では?」
 と持参したガイドブックのページをみせながら尋ねる。
「あ〜〜。これかいの。まあ、確かに何年か前までは、その筋ではかなりの名店と評判じゃったのだがのお。何せこんな時代じゃ。わざわざこんな店で料理を食べようなどという連中はめったにおらんようになった」
 と遠くを見るような老婆。さらに続けて、ポツリと語りだす
「ここにおまいさんがきたのも何日かぶりじゃ。実は、私の息子がこの店のシェフとして切り盛りしておったのだが、バグアの犠牲になっての。それ以来料理をつくるものがおらなんで。よって休業中というわけじゃ。もっとも、永遠に休業中かもしれんがの」
 老婆が悲しそうにしていた理由がわかった。愛する息子がいない今、もはや店は続けられないということなのだろうか?
「何故、扉を開けているんですか?」
 と思わず問いかけるレニ。その老婆の姿があまりにも哀れを感じたからだ。
「ああ。わしが玄関代わりに使用してるからじゃ。母屋はもうかなり傷んでいるからのお」
 と淡々と答える老婆。そんなレニの言葉に多少の親近感を得たのか、こう続ける。
「それだけじゃないて。誰か代わりのシェフなり料理人がおれば、店を再開してもいいとおもってるんじゃが。なにせこんな時代じゃ。そんなに簡単に代わりが見つかるわけでなし。ましてやこんな田舎じゃ」
 と伝える。
 その時レニの脳裏にあることが走馬灯のように駆け巡った。それは直ちにレニの決意へと変わった。
「おばあさん。私に少し時間をくれます? できる限りのことはしてあげられるかも知れないから」
 と自分の思いを伝えるレニ。その言葉になかば驚いたような老婆だったが。
「そうかい。なら期待しないで待ってるよ。みれば傭兵さんのようじゃが、なんかあてでもあるのじゃろうかの?」
 と微笑しながらレニを見つめる。その顔はまるで幼い子供のようにレニには見えた。
「あて、というかやってみようと思うの。うん。たぶんきっとお婆さんの役に立てると思うから」
 とおおきくうなずくレニがいたりするのである。

 それから2〜3日後。ULTにこんな依頼が表示された。
『料理好き、または人助けの好きな、宣伝上手な傭兵募集』
 そう。これがレニのアイデアだった。もちろんその字はレニの手書きである。

●参加者一覧

黒川丈一朗(ga0776
31歳・♂・GP
鯨井起太(ga0984
23歳・♂・JG
佐倉・拓人(ga9970
23歳・♂・ER
最上 憐 (gb0002
10歳・♀・PN
マルセル・ライスター(gb4909
15歳・♂・HD
ジェーン・ドゥ(gb8754
24歳・♀・SN
紅蓮(gb9407
18歳・♂・SF
祝部 流転(gb9839
19歳・♀・ER

●リプレイ本文


「安請け合いしちゃったけど大丈夫かなあ?」
 となにやら不安そうな表情のレニ。お婆さんに、何とかなると言ってしまった手前、なんとかしないといけないと思ってはいるのだが、実際にうまくいくかどうかはやってみなければわからないので、現地で1人待っている間も不安でしょうがないといったご様子。
 ‥‥そんな彼女から遠く離れた日本の地で、ひとり人探し風な傭兵の姿が。そう、黒川丈一朗(ga0776)である。一体こんなところで誰を探していると言うのだろうか?大規模作戦からの帰路、こちらに立ち寄った彼。彼の人探しの目的もまた今回の依頼におおいに関係あることはおいおい明らかになるであろう。
 フランス料理店「ヴアン・サンク」の復興と再開。レニが安請け合いした?その依頼を成功させるのは簡単そうで意外と難しいのかも知れなかったが、そこは傭兵達である。たぶんなんとかしてくれるに違いない、と期待されつつ続々とレニの元に集まってくる傭兵達。黒川を除く7人が現地に合流するのには大して時間はかからなかった。
 今回やらなければならないことはいくつかある。何せしばらく埃をかぶっていた店である。簡単にまとめれば、

店の補修
宣伝
料理および食材探し
内装のリニューアル

といったところ。当然そういった事を行うことを目的としていろいろ案を持って集まってきた傭兵達である。さて、お手並み拝見といくことにしよう。


 まずは店の補修である。閉店してから何年かたっているので、当然あちこち痛みがすすんでいる。特に内外の壁、照明、厨房器具は、優先的に補修が必要な状態であるので、早速、祝部 流転(gb9839)が中心になってとりかかることに。
 補修全般が得意な祝部がテキパキと作業を仕切ってゆく。フランス人とのハーフの彼女、フランス様式にも造詣があるので、照明や装飾のデザインにも手を掛け、リニューアルにふさわしい店舗に仕上げていく。
 そのポイントとなるのは、本人曰く、「暖かみのある空間」ということで、古さをよきものとして残しつつも、暖かみのある色を基調にした内装に仕上げていく。メインカラーはクリーム、黄色、緑である。机、椅子といった備品は素材の天然の風合いを生かしつつ、クリーム色に仕立てられたテーブルクロスが実にいい感じである。
 さらに痛んだ内装を補修しつつメインカラーをアレンジした雰囲気ある内装に。あわせてその内装にマッチするように外装も補修する。窓辺には観葉植物、を配置し、佐倉・拓人(ga9970)の協力を得てそれにフィットした照明や器具をデザインし、配置していく。天井から吊り上げられ、テーブルには適度な間隔を持って配置されたたアンティークな雰囲気をかもし出す店内の照明器具が、店の雰囲気をいっそう引き立て、新規に作成された店の店名入り看板は、流れるような書体のフランス文字によって新調された。
 結果、彼女の洗練されたセンスと巧みな手さばきによって、店内はまるでまったく新しくできた店のようになり、あのレニが最初に訪れた際のみすぼらしさはすでにどこにも感じられなかった。
「おやまあ。なんとも立派になったのお」
 とその変貌振りに驚きの表情を見せる老婆。きっと彼女の想像以上だったのだろう。そんな彼女に昔の雰囲気を聞き出そうとする最上 憐 (gb0002)。少しでも当時を再現したいとの思いからか、熱心にいろいろ根掘り葉掘り聞きだそうと奮闘中。


 お次は店の宣伝である。閉店して久しい為に、すでに多くの人々の記憶から忘れ去られようとしているので、それを再度思い出してもらえるような宣伝が必要である。その労を負ったのがジェーン・ドゥ(gb8754)であり、最上、紅蓮(gb9407)といった面々である。
 まずはマスコミを最大限に利用しようと企むジェーン。いつぞやの依頼で世話になった、某女史が記者を勤める某週刊個人雑誌のツテを利用するというもの。かつてそこが出版した特集号に掲載された自身グラビアの反響の良さを利用して、「ヴァン・サンク」の店名とそのPRを行おうと出版社にコンタクトをはかる。
「あの○○が、今度はフランス料理店に!」
 などというキャッチフレーズでの売り込み、事前の情報の垂れ流しで、なんとか記事にしてもらおうと掛け合う。
 さらにはレニをも巻き込んでのPR作戦に打ってでる。当然そのためならコスプレもいとわない。自らもウェートレスの衣装を身にまとい、
「言いだしっぺは、まず宣伝ですよね〜〜」
 と言葉巧みにレニを巻き込もうとする。言いだっしっぺ、というか自分が撒いたタネ?である。今回ばかりはいやいやながらお手伝いしないわけにはいくまい。というわけでレニもいやいや?ながらコスプレで客引きに借り出される羽目に。フランスの片田舎でコスプレ三昧での客引きは目立つことこの上ない。2人ともお似合い。
「‥‥ん。目立ちそうな。格好をして来た。これで目立つかな?」
 同じくコスプレで身を固め宣伝にいそしむのは最上。ただしこちらは完全な萌え仕様。すなわちウサ耳、メイド服のズバリ定番スタイル。
「‥‥ん。掃除。掃除。全力で。掃除」
 と箒片手に店の前を掃除しつつ、
「‥‥ん。ヴアン・サンク。リニューアルするよ。営業再開するよ」
 さらに客引きを行おうと企む。それもこれも
「‥‥ん。食べ放題の為に。頑張る」
 だそうである。
 だがここはフランスの片田舎、まさか萌え仕様が理解されるのか? と思われたのだが、これが逆にかえって人目をひく結果に。う〜〜ん。さすがオタク天国といわれるフランスである。ちなみに何故か覚醒している彼女。戦闘でもないのに。その理由は後ほど。ついでにホールスタッフ様も募集である。
 こちらは大道芸で客引きの紅蓮。なるほど、フランスは大道芸文化では先進国らしいので、ソレをおおいに利用しようということか。店の前は比較的人通りが多いので、あくまで目立つように玉乗り、ジャグリング、はたまたブレイクダンスまで。請われればかつて歌手を目指していたことから歌も披露したりで、道行く人の視線を釘付けするべく奮闘する。
 およそ店のPRとは思えない光景も展開されるが、それもこれも依頼に全力で遂行している結果と思ってほしい。
 

「面接手伝ってもらえませんか?」
 と祝部がコスプレ中のレニに声をかける。そう。最上の勧誘の成果か、はたまた単なる好奇心のなせる業か、給仕の募集に予想外の人数が。まあ、アルバイト2〜3人確保できればいいのだが、それに2桁を超える募集があり、人選に悩む結果に。うれしい悲鳴である。
 無事に採用が決まったものは、早速フランス料理店の作法やら様式やらを彼女自らがレクチャーする予定である。若くマジメそうでかつ容姿のほどほどの人員が確保でき、これで接客面でもなんとかなる目処がついた格好である。ここまでは順調。店の前ではさらなるPRが続く。噂が噂を呼んだのか、さらに人の輪が店の周りを取り囲むようにでき、中にはものめずらしそうにシャッターを切るものまで現れる。
 で、どこでどう噂を聞きつけたのか、地元のローカル紙の記者までが駆けつける始末。こういったマスコミ対応はお手の物のジェーンがコスプレのまま対応する。まだオープン前だと言うのに店の前は早くも人があふれかえる。


 その頃店内奥にある厨房。鯨井起太(ga0984)、佐倉、マルセル・ライスター(gb4909)達が、メインとなる料理の素材やらレシピやらと格闘中であった。
 鯨井はフランス料理には欠かせないワイン探しに専念。老婆に聞いた情報を元に過去の仕入先や小売店などを丹念にあたり、店のメニューや規模にあった最適なワインを探す。本来ならフランス各地にある格式高いワイナリーめぐりをすればいいのだが、時間もないので、まず当面は店で必要最低限のものをそろえることが先決と判断。
 するとそこへ新たな助っ人が。
「あの〜〜。黒川さんから紹介されてきたんですけど。このお店でしょうか?」
 と店の前にひょっこり現れる2名の男。そう。店に待望の料理人が到着したのだ。聞けば日本で黒川からスカウトされたのだという。なるほど。彼が日本で人探ししていた目的はこのためだったことが明らかになる。
 2名のうち1名は以前東京でフレンチの修行をしていたとかで、経験もあるらしい。もう1人はフレンチは未経験だが、関西で料理人としての修行をしていたそうで、どちらもすぐにこの店の貴重な戦力になってくれるであろう。でそんな彼らの意見も聞きながら鯨井のワイン探しのペースも上がる。
「繊細さと力強が同居した味」
 が狙いだそうである。
 一方、厨房の古くなった器具の補修やメンテナンスにも精力的に動く佐倉。幸い厨房関係は、使われなくなって年数はたっていたものの、思ったほど痛みもなく、器具も磨いたり錆を落とせば十分に使えるレベルであったのが幸いしたようで、これならすぐにでもフランス料理が作れそうである。
 一方、ドイツ生まれで料理好きのマルセル。厨房でなぜネコ耳メイド服姿なのかはさておき、安くおいしくをテーマに料理のアイデアと調理にいそしむ。特にパン料理が得意とする彼。ライ麦でつくったフランスパンには力を入れる。
「幼い頃パン屋になりたくて」
 と言う彼。きっとその頃の夢が詰まったパンなのだろう。ライ麦には人並み以上のこだわりがあるのだ。で、そんな彼らが持つ、メインディッシュへのこだわりとは。
 鶏肉とたまねぎ、のクリーム煮、牛筋のトマト煮込み、ザリガニの白ワイン蒸しといったように手に入りやすい食材中心で、フランス料理の定番の材料をあえて使わず、そこにあるものを生かした「新しい味の発見」につとめる佐倉。デザートにしてもソレは同じ。イチジクを使ったデザートは絶品の甘さである。多様性がフランス料理の基礎だそうである。
 一方のマルセル。低価格の高級志向を旨とし、赤身肉や、魚や動物の内臓を使ったりと昨今の食料事情を考慮して素材を工夫したメニュー考案。それらは先ほどの料理人達によって実に見事なフランス料理に仕上がる。
 さらにはこれらを賄い料理にもしてしまう。すでにお腹が危険レベルに達している傭兵だっているようだし。
 その頃になってようやく到着した黒川。
「あら、黒川さん」
 と顔なじみなのか、レニの表情も緩む。どこかうれしそうに見えるのは気のせいか?
 聞けば途中で花屋に立ち寄り、燭台やら蝋燭やらポインセチアの鉢植えやらを大量に買い込んできたらしい。そういえばもうすぐクリスマスだ。店を飾り立てるには格好のシーズンである。彼が持ち込んだそういった品々は早速店の装飾に彩を添える。テーブルには燭台とその上に蝋燭を立てそれに灯を灯す。また棚や空いているスペースには鉢植えをレイアウトだ。彼はひとつの花束を大事そうに抱え、店の奥へと姿を消した。
「‥‥ん。お腹。空いた」
 と客引きがひと段落したのか店内に駆け込む最上。お腹が危険レベルに達しているのは、他ならぬ彼女。
「はい、最上さん。どうぞ」
 とばかりふるまうマルセル。戦闘もしないのに最上が覚醒した理由、それは覚醒すると酷くおなかがへる、つまり味見と称してとことん料理を食べつくせるから。その為か食欲は極めて旺盛。
「‥‥ん。おかわり。おかわり。大盛りで」
 などと食べるわ食べるわ、味見かたんに食い溜めしているのか傍から見てはまるでわからない雰囲気である。
 だがそんな彼女がただひとつ気になること。それは食材に「キュウリ」が入っていないかどうか、ということ。なぜか? それはキュウリを食べると人格が変わるらしいのだ。この世でただひとつ苦手なものである。
「ん。かたつむり。はいってない。」
 フランス料理=かたつむりという思考が出来上がっているのかどうか知らないが、今回エスカルゴ料理がないことが御不満?の御様子。


「おやおや。おかげさんですっかり昔のような活気が戻ってきたのお」
 と思わず笑顔がこぼれる老婆。それもそのはず。傭兵達の周到かつ徹底した仕事ぶりにより、「ヴアン・サンク」はかつてそうであったような活気を取り戻し、すっかり店を再開できる状態になった。この頃になってようやく余裕が出てきたのか、そろそろ各自のお腹もいい具合にすいてきた。若干1名すでに本能に従っている傭兵を除いてはであるが。
 いつの間にかウェートレス風の服装のまま店内を歩き回るジェーン。店の外では開店をいまやと待つ近隣の人々。彼らには口コミでもなんでもあらゆる方法で、店のPRをお願いすることも忘れなかった。
「リニューアルオープンしま〜〜す」
 とこれまたうれしそうなレニ。そもそもが自分が撒いたタネ?だっただけにここまでこぎつけた達成感に満たされる。これで心置きなくフレンチが楽しめる。それはお手伝いした傭兵にも当然振舞われる。
 程なく店は開店し、さして広くない店内の席はたちまちお客様で埋まる。その為厨房の片隅ではあるが、傭兵達もおいしい出来立てのフレンチを食すことに。
 多少量が少なめなのは、だれかさんがすでにたらふく食べたあとだということには触れないでおこう。
 と、そんな店内の雑踏にまぎれて、黒川とレニがいない‥‥いや、目立たぬように花を抱えた黒川とレニが店の隅でなにやら差し向かいで2ショットでフレンチを味わっているのに気がつくものはほとんどいなかった。まあ、黒川がどうやら誘ったらしいのだが。
 なにやら2人ヒソヒソ内緒話中である。多少赤面している2人。こういったことにはあまり器用ではない黒川。不器用なりに精一杯振舞おうとしているのがよくわかる。
「‥‥過去は過去。こだわってはいないし、そのつもりもないわ。今どう見えるかよ」
 そんなレニの声が聞こえてくる。
「‥‥本気でそう思うのか」
 コレは黒川の声。う〜〜ん。この2人あんなこんな何かありそうなのだが、どうなのだろう? 男と女の関係はよくわからない。
 何かにとまどっている、過去を捨てきれない黒川。そんな印象が見えるのは気のせいか?
 レニがいつにもましてどこか楽しそうだったのは気のせいか? それとも‥‥。


 たらふく食べ、飲み、すっかり満足した傭兵達。そんな傍らでは、
「‥‥ん。おかわり。おかわり。大盛りで」
 とさらに要求する最上と、あまった食材の有効活用を図る恰好のチャンスと喜ぶマルセルのある種絶妙なやりとりが延々と続く開店当日であった。