●リプレイ本文
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くだんの傭兵君には申し訳ないが、予定どおり「合コン」は開催されることになった。まあ先方が有名人なので致し方ないのだが。さぞや無念な思いで病院のベットにいることだろう。あんなこんな光景を思い出しひとり人目を忍びすすり泣く。
指定されたレストランはなんとこの日のために貸切。つまり10人と10人、合計20人以外は誰一人いないと言うわけである。こんな状況での合コンである。ましてや相手が一流芸能人。動揺と緊張が顔にあからさまにでる傭兵もいるわけで。
「ぼっ、ぼくは古井安男です、古くて安い、な、名前からしてもう負けちゃってます。ごっご合こんは初めてです。っていうかおっおっ女の人と一緒に会話するのも初めてです」
う〜〜ん。あきらかに動揺しすぎなのがわかる古井安男(
ga0587)。まだ15歳だから無理もないが。だって異性そのものに免疫だって少ないだろうし。
「ど、どうも、は、初めまして、よ、よよ、陽山神樹だ。よろしく‥‥な」
相手の有名人の顔を見るなりあまりのイケメンと美女の集まりに緊張したのか、舌がもつれ気味の陽山 神樹(
gb8858)。それからおよそ5分間隅っこで落ち込んでいたのは内緒である。だがすぐに気を取り直したのか、片っ端から目の前の料理を食べ始める。基本アルコールは苦手だそうである。
もちろん場慣れ?した傭兵だっていることはいる。が多くの場合は戦場での場慣れであって、こういう場所での場慣れとはおよそ無縁な者たちが多い。
「さて、どうしたものか。私にはパーティと合コンの差がよく判らんのだが」
と黒を基調のいでたちで参加した、UNKNOWN(
ga4276)。およそ合コン体験はほとんどないのであろう。それは彼ばかりではない。
「お招きいただきありがとうございます。リーゼロッテ・御剣です。リーゼって呼んでください。」
と自己紹介はなんとかそつなくこなすものの、目の前のイケメンにほとんど鼻血もののリーゼロッテ・御剣(
ga5669)。宇宙への夢を追いすぎるばかりに合コンどころか浮いた話ひとつないまま不遇の学生時代をすごしたそうな。可愛そうにまともに視線すら合わせられないご様子。
そんな今回の合コンのお相手は今をときめく一流のスター集団。どうやらこの事務所かなりのヤリ手の様子。これも敏腕マネージャーのなせる業か。傭兵側の参加メンバーに合わせ、男優さん3名、女優さん3名、男性歌手3名、そしてタレント側最年少の売り出し中女性アイドルが1名といった按配。皆、TVやらスクリーンやらで今もっとも旬なメンツである。だとすればなおさらこれを機会にお近づきになりたいと思うのは参加した傭兵だれでも思うことか。
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この機会に自分の売り込みを図る傭兵も今回いたりする。 乾 幸香(
ga8460)は以前には音楽業界から一目置かれたインディーズのバンドのキーボード奏者だった経歴の持ち主。現在も徐々にバンド活動再開中であり、せっかくのこの機会を利用しない手はないと考える。合コンとはすなわち業界情報収集の場なのである。それが証拠に自身プロデュースした曲を歌手の皆様に後日プレゼントする約束まで交わす。
「プロの方達にはちょっと及ばないかも知れませんけど、これでもライブハウスとかで自作の曲を披露していたんですよ〜」
なかなかにしてしたたか?である。
そしておおいに楽しむことを目的とした者も。
「合コンは初めてかな? 何にせよ偶にはこういうのも良いね。存分に楽しませて貰おう!」
男装の麗人 9A(
gb9900)ことアンジェラ・レノックスである。ちなみに彼女「両性愛者」らしい。しかも女性のほうが好みなのだとか。今日は魅力的な有名人女性が多い。さぞや楽しめるだろう。
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さて、この無国籍レストラン。イタリアンがメインらしいがそこは無国籍。オリジナリティあふれる食欲をそそる料理の数々。しかも参加費1000Cなのだから楽しまない手はない。それは合コンの趣旨を完全に勘違いしているエミル・アティット(
gb3948)にとってはうれしいことこの上ない。17歳の彼女。当然未成年なのでアルコールは飲めない。それはともかく、合コン=おいしいものがいっぱい食べられる、というどこで仕入れたのか間違いで固まった知識を持っている。
「エミル・アティットっていうんだぜ。よろしくな〜」
いまだ子供っぽさが抜けておらず天真爛漫、恥じらいがあまり無いおてんば。おまけに初対面にも妙に馴れ馴れしい態度。よって、
「あむあむ〜♪ うまいもん一杯食べれるってのはいいもんだぜ。」
などとひたすら食べることに集中している。合コン本来の目的はまったく気にしない食べっぷりである。
だが未成年でもそれなりに、とはいかない参加者もいたりするのが今回。10歳のアーク・ウイング(
gb4432)である。
「なんか面白そうだから参加してみたけど、何をしたらいいのかな? うーむ、お子様お断りの光景が繰り広げられたらどうしよう。まあ、そのときはそのときで」
と暢気に構え、トランプでもやろうかと持参している。まあ要はお子様的思考?といえなくもないのだが、どっこい酒の席を借りて考えることは大胆。タレントの人たちにこれでもかとお酒を勧めて、マスコミにでも知られたらタレントとして終わりなくらい危ない内緒話を聞きだそうとする。自分では単に楽しむだけのつもりらしいが、事務所的には真っ青な話である。いくら相手が子供でも危険だと思う。
そしてもうひとり、別の意味で危ない?のが佐賀 剛鉄(
gb6897)。その服装からして12歳の子供にはふさわしくない、というかそこまでしていいのか?という服装。いくら子供でも女の子ですから‥‥。節度は持ちましょう、としかいいようがないのである。普段決して見せてはいけないところが‥‥(以後表現できず)。
しかも。飽きたみたいな態度をとったりと相手を焦らす様な大人の女の接し方をする始末。一体誰がこんな事を教えたのか?見当はおよそつくが、これって教育上‥‥。あまつさえ、今回参加している有名人をほとんど知らなかったりする。まあコレは仕方ない?!のか!?
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さて、うまい料理があれば当然アルコールも進む。さすがに未成年のエミル・アーク・佐賀の3人は飲むわけにいかないのでノンアルコールで我慢してもらう。
「えーと職業はファイターです、普段はひっそり生きています‥‥」
などとどうしても動揺が隠し切れず?延々と自己紹介のような会話が続いてしまう古井。しぶといのがとりえとか、乾布摩擦を欠かさないとか、趣味は登山だとか、この招き猫可愛いですね、とかお見合いの席のような会話が延々?と続く。ほとんど口調はしどろもどろで明らかに滑っているのがはたから見てもわかるのはちょっと可愛そうな気もする光景。しまいには隅っこに隠れてしまった。それはそれで可愛いのだが。そういうところが好きそうな一人の女優さんに弄られている様子。なにやら傍目にはほほえましく見えなくもない光景である。
かたや。咥え煙草にダンディズムを決して忘れないUNKNOWN。大人の魅力オーラが全開?である。
「煙草、いいかね?」
とあくまでクールに決め、ワインを優雅に嗜む。これぞ男の美学。手に携えたバイオリンで1曲奏でる余裕も。
古典、クラシックに造詣の深い彼。今回はそちら関係のスターこそいないのだが、それでも同じ芸能関係。
「すまん。私はあまりそういうのを見なくて、判らんのだよ。どういう世界なのか、教えて貰えんかな?」
あくまでクールに礼節を尽くす仕草は、合コン相手の女性スターを虜にする魅力十分であろう。絵画やワインについての造詣も深く、その話は聞くものを思わず引き込む力が。黒・白・紅・銀の4色を巧みに配した衣装とあいまってこの場でひときわ存在感が光るUNKNOWNであった。合コン経験が浅いとはとても思えない。場慣れしているのは戦場だけではないようだ。
真っ赤なドレスでこの場に臨むリーゼロッテ。イケメン芸能人を前にして、会話できないぐらい恥ずかしい自分を想像していたようだが、以外?にも自然にその場の雰囲気に溶け込んで、傭兵についてどう思ううかなどとスターの皆様にいろいろ聞いている様子。ちび、○乳、だった学生時代、まったく縁がなかった合コンと告白しているが、これからはたぶんこういった機会も増えるかもしれない。
その傍らで料理・酒を楽しんでいる乾。当然話の中心は歌手の皆様。最近の音楽の傾向とかヒット曲とかの話を盛んに振る。その一方で料理を取り分けたり、お酒を勧めたりと甲斐甲斐しい。その見た目も意外と地味。もしプレゼンした歌がヒットでもすれば一躍スターの仲間入りかも知れないが。
「にゃはは♪ あんまり冗談ばっかり言ってちゃだめだぜ〜。」
とさっきから異様になれなれしいエミル。相手の背中をバシバシと。相手がスター様だろうと誰だろうとおかまいなし。コレには苦笑いするしかないスター様。なにせ相手は天真爛漫なのだから。
「む! こ、これは‥‥うまいぜ」
無理やり料理を勧められても表面上はいやな顔ひとつせずにお相手するスター様。さすがに人気商売である。だがどこかうれしそうなのは、この天真爛漫さが憎めないからであろう。芸能界の裏を知り尽くしたスター様にとって癒しなのかも知れない、ある意味で。
「見た目はなんだけどこれでも女の子なんだ。一応ね」
と9Aことアンジェラ。元舞台役者の彼女。男優女優様を中心にアプローチをかける。本人は純粋に芝居好きなので、その手の話題になるのは当然か。さらに酒が進むと、顔突合せ?演劇談義に花を咲かす。
「あの演技は素敵だったなぁ。そんな人とグラスを重ねられて。光栄だ」
その話は延々と続いたらしい。
「アンジーと呼んでね」
宴が終わる頃はすでにすっかり和気藹々と打ち解けた様子がみてとれた。
参加者最年少のアーク。そろそろ飽きてきたわけでもないのだろうが、ポーカーでもやらないかと言い始める。
だいたい合コンは飲み食いか騒ぐかがメインなのだろうが、あまりトランプ遊びをすると言う話は聞いた事ない。
がまあ、そこはお子様相手。周りは皆大人。空気は十分にわかる人たちであるから適当に付き合ってくれるし、女優さんの膝の上にも座らせてくれる。
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そんな華やかな若者たち?の雰囲気があふれる中に何故か一人極めて御高齢と見受けられる御老人が。はて?
くだんの傭兵君。このような老人にまで声をかけたのだろうか?
霧雨仙人(
ga8696)。年齢不明、正体もはっきり不明?のこの御老体。どうみても100歳は超えているようにしか見えない。のだが若い女性が大好きと来ている。そのくせすでに若干ボケ気味なので、空気を読むなどは無縁。
美人と酒が飲めるから、という理由以外ろくに何もなくひょっこりやってきたらしい。見ればスーツこそ着ているが、全身あろうことかレオタード姿。この爺さん。若干どころか完全にボケているに違いない。そのくせ大食いで酒飲み。自称仙人というところからしてボケ確定?なのか。
でこの霧雨仙人。会場に入るなりコートとハゲかつらを脱ぎハゲ頭に。むろん他の参加者はどう思ったかはともかく見て見ぬふり。だが本人まったくのKY。いきなりテーブルの酒をひとりあおり始める。あっけにとられ、いやもはや空気としか思わない他の参加者達。そうこうするうちに女優さんの一人を捕まえて傭兵の仕事の話を始める。
さぞや内心迷惑だろうと傍目には見えるのだが、そこは女優、露骨な対応をすることもなく持ち前の演技力で対応、と思ったのだが、それにしては様子がなにやら親しげ。え?なんだこの空気は?
「この人、死んだおじいちゃんにそっくりなんです。私おじいちゃん子だったもので」
と当女優様曰く。えええええ。そんなのあり? というか恐るべし老人の魔力。懐かしそうに笑顔で応対する女優様の表情を見るにつけ改めて実感するその恐ろしさ。さらには、
「傭兵は花見とかパーティに参加してるだけでも給金がもらえる素敵職業じゃよ。」
とのたまわく霧雨仙人。まずい。ウソではないがあからさまに公言できることでもない。
さらに飲み続け酔いが回る霧雨仙人。いきなり何を思ったのかスーツの上着を脱ぐ。そこには世にもおそろしいもの‥‥ではなくレオタード姿の○○○な老体の姿が。それは目を覆わんばかりの光景。だが御老体、
「仙人仙術の手品をご覧に入れる」
と言うが早いか、どこにしまってあったのか出るわ出るわ、なんと100個ものペイント弾。体中のいたるところから出してはまた仕舞い、それを繰り返す。確かに手品と言えば手品だがその前にわざわざこの為に100個もペイント弾を用意してくるとは。う〜ん。まさに恐るべし。皆拍手していいものやらどうしていいか呆然。だが本人、そんなことはお構いなし。本当にボケてるのかこの爺さん。
‥‥気が抜けるような間をおいて沸き起こる微妙な拍手。イタイ。イタすぎる。
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あまりのカオスっぷりに時間がとっくに過ぎているのも忘れている参加者。これほど時間の概念がなくなるのも全員が飲みすぎていたからなのか? 90分の時間がまるで永遠の時間のように思えた頃、合コンはようやくお開きを迎えた。テーブル上には想像を絶する程の空き瓶が転がっていたりする。とくに霧雨仙人の前にはうず高く積まれた空き瓶の山。どれほど飲んだんだ? この老人。
「は〜。食べた食べた〜。お腹一杯だぜ〜」
こちらは空の食器が目の前にうず高く積まれたエミル。ひたすら食っていたこの娘。どのくらい食ったんだ? 誰かこの娘に合コンの正しい意味を教えてあげてほしいものである。
「ふ〜〜。満腹満腹。合コンの空気は掴んだし」
と満足そうな陽山。お疲れ様でした。
と霧雨仙人。なにやら取り出したのは大量のオルゴール。どうやら女性芸能人へのプレゼントのようである。
「コレも何かの縁じゃ」
と手渡しする。なんという用意周到さ。さらには、
「あとワシはイケメンも好きじゃから野郎どもにはこれをあげるぞぃ」
と男性芸能人にはウヲッカまで用意しているではないか!
絶対ボケてないぞこの爺さん。
こうして未成年者以外全員が完全に酔いつぶれたであろう状況で「合コン」はその宴を終えたのである。が。
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後日。無事退院したくだんの傭兵君。自分が参加するはずだった合コンの参加者宛のメールを改めて見直す。
といきなり、
「あああああ。メールアドレス間違えた〜〜」
と叫ぶ。見ればとある傭兵へのメールアドレスが1文字だけ違っていることに気付く。でその違ったメールアドレスの持ち主は‥‥。例の御老体であったことは知る由もなかった傭兵君であった。
でその御本人。財布の中身を見ながらなにやら。
「いや〜、安く飲めたのは良いが衣装含め下準備に20万Cほど使ってしまったわい」
‥‥‥‥。
了