タイトル:【初夢】らきすけしたいマスター:藤城 とーま

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2013/01/16 01:52

●オープニング本文


※このシナリオは初夢シナリオです。オープニングは架空のものであり、ゲームの世界観に一切影響を与えません。


●大変なことが起きていた。

「‥‥なんだ、これは」

 朝、目が覚めたシアンの第一声は疑問からだった。
 髪が妙に伸びている。寝ぼけて覚醒してしま――‥‥?
「あ‥‥?」
 声が、変だ。なんだか女の声がする。
 誰も横に寝てはいない。当然だ、自分の部屋だし、ロックもしてある。浮気の類もしていない。
 しかしシアンは、軍服をかけたハンガー近くに設置した、姿見に映る自分を見て、絶叫した。

「なんだこれはーーー!!」

 女だ。知らない女が鏡の中にいる。

 シャツの上からでもわかるほどに盛り上がる胸は、うむ、かなり巨乳である。
――いや、そうじゃない。
 頭を抱え、どうしたらいいかと悩んだシアン。
 ロビン少佐に電話をしようとして、止めた。
 恋人に相談しようとしたが、この状態で『シアンだ、女になっている』は信じてもらえるはずもない。
 むしろ逆に、目覚めたかと泣かれて友人たちに責められても困る。
「どうすれば‥‥」
 だが、仕事に行かないわけにはいかない。事情を説明しないわけにもいくまい。
 二日酔いではない頭痛に苛まれつつ、シアンは起き上がると軍服に手をかけた。

●小隊・赤枝内

「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥見るな」
 事情を説明した後、虹彩認証をして漸く信じてもらえたようだった。
 能力者としても力は残っているし、実戦では困らないだろう。
 だが、妙な顔をするロビン・ベルフォード少佐とその妻、ミネルヴァ曹長は楽しそうである。
「大尉、美人ですわ。軍服のサイズは大丈夫ですか?」
「全体的にだぼついてはいるが、胸元はちょうどいい」
 そうではなく、スカートですよと指摘されて、絶対に履かないと断固拒否するシアン。
 しかし、受難はとどまらないのである。

「おはようございますー!」
 ユキタケの声がした。反射的に体を隠しながらシアンが振り向いた先には――当たり前なのだがユキタケがいた。
「あれ、そちらは‥‥えっ!? 大尉!?」
 びっくり仰天といった顔でユキタケは、じろじろと無遠慮にシアンを観察する。
 いや、顔を見た後は身体を見ている。なるほど、ユキタケだ。
「‥‥大尉、実は女の子だったんですね‥‥!」
「違う」
 しかし、事情を説明してもユキタケには届いていない。恐ろしい予感と寒気がシアンの身体を駆け巡る。
「シアン、さん‥‥」
「変な呼び方をするな」
 がたりと席を立ちあがったシアン。じりじりとユキタケは近づいてくる。
「お、おっぱ‥‥ちょっとだけ触らせてください。ちょっとひと揉みだけ!」
「誰が触らせるか! ぶっ倒すぞ!」
「押し倒すなんてそんなっ、大胆ですね‥‥でも僕やってみたいことが一個あってですね」
 これはまずい。そう思った瞬間、ユキタケが何もないところでつまずいて、シアンに倒れかかろうとしてきた!!

「許せ、ユキタケ!!」
 倒れてくるユキタケに、思い切り回し蹴りを食らわせてしまった。
 がしゃんと、書類棚に激突して床に倒れるユキタケ。
「おい、シアン! やりすぎだぞ!」
 少佐に言われるまでもなく、ユキタケは一般人のはずである。シアンも覚醒していなかったとはいえ、これはまずい。
『UPC大尉(29)部下を暴行の上死なす』という恐ろしいニューステロップが脳内をよぎる。
 顔面蒼白で駆け寄った一同だったが、一瞬でその心配も吹き飛んでしまった。

「‥‥いた‥‥大尉、相変わらずですねぇ‥‥」

 そこには、妙に爽やかで当社比5割増しくらいカッコよくなっているユキタケがいた。
「‥‥ユキ、タケ‥‥なのか?」
「はい? そうですけど‥‥」
 しかも、妙にドキドキする。何故かミネルヴァ曹長と、シアンは顔を赤らめた。
「‥‥うおっ、なにこれ僕!? ヒャー、かっこいい! ついに真実の姿になってるんですね!?」
 ガラスに映る自分の顔をぺたぺた触っていると、突然通常のユキタケの顔に戻る。
「‥‥なんだ? 戻ったぞ」
「ユキタケ、SES武器を使ってみろ」
 エネルギーガンを渡すと、なんとユキタケはエミタもなしに使用したではないか!!
 驚愕するシアンたちを尻目に、何故か狂喜乱舞するユキタケ。
「僕も覚醒したんだ! しかもエミタもないのに! 新世界の何かになったんだ!!」
 多分凄い事なのだが、これでモテるとか口走っているユキタケ。どうにも真面目に使う気は感じない。
「だから大尉! 僕一度らきすけしてみたかったんです! やらせてください!」
「何が『だから』だ! そんなこと許すわけがないだろう! 独房にでも入っているがいい!!」
「何さ! クリスマスもいつも通りだと思ったら出番がなかった僕に対して、みんなあんまりだよ!
 リア充小隊なんか潰れちゃえばいいんだよぉぉおー!!」
 泣き出したり怒ったり、なんとも忙しい男である。
 対処に困っていると、ユキタケは肉食獣のようにシアンに両手を伸ばす!
「やらせるかっ!!」
 シアンも即座に避けて、事務所を飛び出す。
「くそっ、このままでは身の危険だ‥‥! 恥を忍んで、応援を要請するしかあるまい‥‥!」
 すると、何故かシアンの携帯に電話がかかる。相手を確認せずに電話を取ると、それは兄のキーツからだった。
「やぁ、シアン、お困りだね。既に手は打ってあるよ」
「キーツか。どういうことかはわからんが助かる。至急ユキタケの捕獲をお願いしたい」
「うん、でもね。シアンみたいに、性転換しちゃった傭兵さんもいるらしいよ。
 しかもユキタケ君は、覚醒すると異性を魅了するらしいね。惚れないようにみんなで力を合わせて頑張ってね」

――恐ろしい。

 うっかり覚醒したユキタケにラキスケとやらをされては、一生の恥である。
 しかし、性転換した女性傭兵・もともと女性の傭兵が、被害に遭っては困る。
「最悪だ‥‥」
 そういえば、自分は不幸によく見舞われていたのだったなと遠い目をしながら、
『らきすけさせろー』と駆け寄ってくるユキタケから胸を隠しつつ拳を振るい、懸命に逃げるシアンだった。

●参加者一覧

ロッテ・ヴァステル(ga0066
22歳・♀・PN
幸臼・小鳥(ga0067
12歳・♀・JG
相沢 仁奈(ga0099
18歳・♀・PN
ラルス・フェルセン(ga5133
30歳・♂・PN
リゼット・ランドルフ(ga5171
19歳・♀・FT
秘色(ga8202
28歳・♀・AA
鳳覚羅(gb3095
20歳・♂・AA
樹・籐子(gc0214
29歳・♀・GD

●リプレイ本文

●らきすけこわい

 嫌だと叫びながら逃げるシアンに、追いかけるユキタケ。
 出落ち感満載だが、どう見ても痴漢だ。
「一体‥‥どういう状況だと言うの‥‥?」
 ロッテ・ヴァステル(ga0066)が困惑するのも致し方ない。
 しかし、夢とはいえ本人たちには当然自覚はないし、シアンはあまりに不憫だ。
「ふ、ふぇ…!? い、一体何がぁ…?」
 幸臼・小鳥(ga0067)も泣きそうな表情でロッテを見やる。
「あの‥‥シアンさんを‥‥守ればいいのでしょうかぁ?」
「そうね‥‥放っておくのもちょっと気が引けるし‥‥乗りかかった船というか。此処は何がなんでも、守ってあげるようにしなくては」
 2人は頷き合い、シアンの傍へと走っていく。
(何かとっても‥‥嫌な予感がしますが‥‥頑張りますぅ)
 小鳥もシアンの横に並び、逃げる彼女に声をかけた。
「シアンさん! ‥‥とりあえず護衛しますから逃げましょぅ!」
「すまない! 救援に感謝する!」
 返事をしながら豊かになった胸もぷるんと揺れる。
「しかし、邪魔だな‥‥何より恥ずかしい」
 胸を片腕で隠すシアンに苦笑するロッテ。ノーブラなのでそれも仕方がない事である。

「大尉ィ! ひと揉みさせてくださ‥‥」
「え〜い!」
 恥ずかしいことを口に出すユキタケの後方から、突如前置きもなく瞬天速タックルをかます金髪美女。
 ギャーとか叫びながら床に顔面強打するユキタケ。
「痛たた‥‥ちょっと何すん――誰!?」
「ラルスですよ〜。
 実は目が覚めたらー、何故か、私もー、女性にーなってー、いたのですよ〜。
 一瞬、鏡を見てー、母かと思いました〜」
 腰まで伸びている、ゆるやかなウェーブがかかる金髪を片手でかきあげながら、ラルス・フェルセン(ga5133)はにこりと微笑んだ。
 この隙に、ロッテたちはチャンスとばかりに逃亡している。
「‥‥あのですねー‥‥ユキタケ君ー、らきすけをー、強制しては、いけませんよ〜?
 がっつかなくてもー、偶然起こりえる、ものなのですから〜」
 ほら、このように‥‥とは言わないが、ユキタケの上にのしかかっている女体ラルスの、細身ながらしっかりとした質感の胸部主兵装が押し当てられている。
「‥‥う、お‥‥!」
 これにはユキタケも鼻息荒く歓喜に震えるしかなかった。報告官は既にもうユキタケを直視できない。
「ラルスさん、僕ぁもう辛抱たまりません‥‥!」
 覚醒したユキタケ(違うほうにも)は、がばっとラルスを床に押し倒し――たところで。
「すみませんね〜‥‥なんだかー。恥ずかしいです〜」
 ラルスは頬を染めつつ、ユキタケの腹へと容赦ない膝蹴りとグーパンを見舞う。GJである。
 悶絶したユキタケは『ラルスさん怖い! 鬼嫁!』と意味不明なことを口走り、痛む腹を抱えて立ち上がる。
「ユキタケ君〜‥‥他の人の所に、行くなんてー、許しませんよ〜?
 よそ見せずにー、私の側に〜いればいいのです〜」
 ギリギリと首をマフラーで締め上げる、まさかのヤンデレ。
「いやああ、ごろされる!」
「死んでも〜側に、ですよー。うふふ〜」
 まだ存命のおばあちゃんが花畑で手を振っているのが見える程度にやばくなってきたユキタケは、ごめんなさいと謝ると男の力でラルスを突き飛ばして駆けだした。何故か瞬天速も使えている。
「待ちなさい〜。次はー、両手両足をー、縛りましょうか〜」
 ラルスが追いすがるのを巧みにかわし、逃げ惑う。


「ああ、怖かった‥‥みんなどうしたんだろ‥‥もしかして僕の格好よさに今頃!?」
 ウフフとか口に手を当てて笑い始めるユキタケ。正直キモイ。
 しかも、周囲をよく見ていなかったため――曲がり角で相沢 仁奈(ga0099)と衝突した。
「うわっ!?」
 あろうことかユキタケも、勢い余ってそのまま仁奈を押し倒すような体勢でもつれ込む。
 そして、ラッキー極まりないことに、仁奈の胸に掌がジャストフィット。
「やぁん、お兄さん、ウチのおっぱい触らんといてやぁ‥‥?」
 声も猫なで声ではあるし、何より顔が喜んでいないか、仁奈!
「あわわわ、ごめんなさい! でも手が離れずに‥‥もうこの右手め! いいぞもっとやれ!」
 心の声まで口に出してしまいつつも、邪な刺激にユキタケはつい覚醒してしまっている。
(にしても、このお兄さん、よう見たらえらい素敵やん‥‥♪)
 ユキタケの顔をじっと見つめる仁奈は、やがてうっとりとした顔で甘く囁く。
「なぁ、ユキタケさん‥‥やったっけ? イケナイコトしたかってんなら‥‥ウチ、ええんよ‥‥?」
 仁奈はユキタケの手を、ますます自分の胸に押し当ててくるではないか!
「その、ウチの一番大事なトコも‥‥ええよ‥‥?」
「イケナイこと!? 初対面なのに、もにょもにょしていいんですか!?」
 鼻息荒くするユキタケは‥‥背後に恐ろしい寒気を感じた。
「あら〜? ユキタケ君〜。私というものがー、ありながら〜‥‥許しませんよ〜?」
 オーラでも流れていそうなマフラーを振り回し、ユキタケの首に巻きつけた。
「げぇっ!? ラルスさん!?」
 急いで仁奈の腕を振りほどき、首に巻かれたラルスのマフラーを掻きむしる。
「あん、ユキタケさん待ってやぁ! 置いてかんといて‥‥! もっとえっちなコトして欲しいねんからー!」
 追いすがり、腰にしがみつく仁奈。ユキタケも出来れば振りほどきたくはない、のだが。
「ユキタケ君〜。浮気者にはー、お仕置きがー、必要です〜」
 いつもの優しいラルスはそこにいない。捕まったら変なボートに乗せられるかもしれない。
 ごめんなさいと泣きながら謝って、仁奈を必死に振りほどきユキタケは爆走する。
「んもう‥‥! せやったら、実力行使しかあらへん!」
「あら〜、ユキタケ君に〜、おいたはー、させませんよ〜」
 2人は視線を交わらせ、ラルスと仁奈は瞬天速を用いてユキタケを捕獲するため追いかけるのだった。


「はぁ‥‥ここまで来れば、もう大丈夫か‥‥」
「たぶんっ‥‥」
 壁にぴったり背をつけながら、荒い息をつくシアンと小鳥たち。
 そこへ、迫る人影。思わず『誰だ』と鋭く叫びながら身構えるシアン。
「シアンさん、本当に女性になっちゃったんですね‥‥!」
 恋人であるリゼット・ランドルフ(ga5171)と、同じく女性と化している鳳覚羅(gb3095)がいた。
「鳳君は‥‥普段と大して変わらないな」
「大きなお世話だよっ!
‥‥しかし、面倒みている子供達がハグしてきた後に、ガッツポーズで『これでかつる』とか『私の未来設計がぁぁ』と落ち込むやら、わけが解らない状況なんだけどどうしたものだろうね?」
 その手の事には疎い覚羅。疎さはシアンも大差ないが、人の事は何故か分かるようだ。
「‥‥ともかく、巻き込んですまない‥‥」
 己の腕をきゅっと握って、憂いある表情をするシアン。どこからどう見ても女子である。
 そんなシアンを、リゼットは困惑顔で眺め‥‥自分の胸に手を置いた。
「小隊からお話を伺った時はびっくりしましたが‥‥シアンさんの胸、私より大きいような気がします‥‥」
「リゼットのは‥‥失礼のないように見た位だが、小さくないと思うぞ?」
 いつ見たんだ。
 意味深な発言はさておき、リゼットは『じゃぁ、触って確認しますか?』と上着に手をかけたが、シアンは彼女の手を止めさせる。
「こほん‥‥触らせてくれるのはとても嬉しいが、2人きりの時に是非お願いしたい。今は――」
「リア充の匂いがしたっ! そこだな大尉ェ!」
 その嗅覚、獣の如き。物陰から現れたユキタケは、曲がり角にある観葉植物に躓いて転倒‥‥する前に、手前にいた覚羅の胸に顔ごとダイビング!
「うわっ‥‥と」
 思わず受け止めた覚羅だったが、胸にユキタケの顔が埋まるのを見てしばし固まる。
「ひゃーっ、覚羅さん柔らかいです! フッカフカ!」
 謝っているように聞こえないユキタケの言葉に、覚羅が黒く微笑む。
「ゆっきー‥‥此れは『らきすけ』じゃなくて痴漢行為だと俺は思うんだけどね?」
 ゴゴゴと地鳴りのような音が聞こえる。
「あの? 伍長さん? ‥‥あなた覚羅姐様に何をするんですか!!」
 豪力発現で腕を掴み、ユキタケにベアハッグを食らわせるリゼット。その後、前と後ろから覚羅と共に息ぴったりのラリアットを食らわせる。
「ふぅ‥‥天国、みえました?」
 爽やかに言ってのけるリゼットを見て――喧嘩はしないようにしよう。シアンがそう思ったかどうかは不明だが、
 再び地面に倒れたユキタケへ若干引き気味のシアンが『大丈夫か、伍長』と数歩近づいて声をかけた。
「‥‥うわあぁぁん、シアンさんの鬼嫁怖いです!」
「ぎゃーっ!?」
 泣きながら抱き着こうとするユキタケに、シアンも可愛くない悲鳴を上げる。
――が、リゼットが迅雷で間に割り込むと‥‥メガネに容赦ないグーパンをぶち当てた。
「‥‥いけませんと言いましたよね?
 もしシアンさんに指一本でも触れたら、切り落として擂り潰して、女の子になって貰ってから、オカマバーに放り込みますよv」
 魅了が‥‥効いていない、だと‥‥!? しかも切り落としてすり潰すって何を‥‥!
 彼女の後ろに見たこともないようなどす黒いオーラが見え、ユキタケも鼠のように震えている。
 とてつもない笑顔なのに、一体どうなっているんだ。
 不安そうなシアンは覚羅に助けを乞うように振り返ったが、彼女もガクブルと震えていた。
「さすが庭園漢闘女随一と言われるだけはある‥‥」
 それはいったい、と言おうとしたシアンの腕を、ロッテが引っ張る。
「早く! ここは彼女たちに任せて!」
「あ‥‥ああ‥‥」
「おっと、そこやねっ、ユキタケさーん!」
 仁奈がロッテたちの逃げようとする方向から瞬天速で飛び出してきた!
「ちょ‥‥仁奈!?」
 驚愕するロッテの目の前には仁奈。結果的に‥‥おっぱいプレスの餌食となった。
「仁奈‥‥貴女と言う娘は、如何してそう‥‥!! あら、ちょっと大丈夫?!」
「ふえぇ‥‥苦しいですぅ‥‥」
 まだ少女である小鳥が潰れないようにと配慮した結果、シアンはロッテと仁奈の胸に挟まれている。
「大尉、何してるのさ‥‥挟まれる相手が違うでしょうに‥‥!」
 呆れつつ覚羅がシアンをずるずると引っ張り出すのだが、シアンの後頭部に覚羅の胸が当たり、
 シアンはなんだか気まずくも後ろめたい気持ちになる。

「なんだかシアンが可愛くなってるって聞いて、お姉ちゃん居てもたってもいられずに飛んできたわよー!」
 そこへ最強の客が現れた。
 巨大なスーツケースに腰かけ、突如やってきた樹・籐子(gc0214)はシアン達に手を振る。
「あらあら‥‥うんうん、流石に元も良いものだから、現状も素晴らしい女の子状態なのよねー♪」
「嬉しくないが‥‥」
「そう言わないの。こういう美女は世界における本当の宝なのだからー♪ 保護隔離した上で、愛でるのが一番良いのよねー?
 なのでその保護者にお姉ちゃんが立候補するわよーっ! 楽しませてもらうわ!」
 と手をワキワキさせながら言う言葉に恐ろしいものを感じ取ったシアン。
 後退りしたが、籐子に腕を掴まれてそのままどこかに連行されていった。

 嫌だという嘆きの声が遠ざかっていくのを聞きつつ、
 何やら楽しいことになっておるのぅ、と秘色(ga8202)が女性たちにいろいろされているユキタケに目を向けた。
「ほれ、ユキタケ。まずは此れを受取り、気を鎮めるが良い」
 そうして秘色が取り出したのは【Roi Crois】のブリーフ。誕生日プレゼントだというのだが、
「‥‥こんなものを渡すなんて、いけない未亡人‥‥!」
 ユキタケは誤解しているようだ。ちなみに、秘色に他意は何もない。
「のぅ、ユキタケ。ちと考えてみんか。
 おぬしがしたくて堪らぬ、らきすけとは『する』ものではなく、偶然に『起こる』ものじゃ。
 つまり、何が言いたいかというとじゃな。おぬしのように追い掛け回すのではなく――‥‥っ!?」
 諭そうとして一歩踏み出した秘色だが、何もないところでがくりとつんのめる。
 いかん、と思った時にはユキタケのほうに体が傾いていた。
 どさりとユキタケの腕の中に倒れる秘色は、あろうことか‥‥ユキタケの第三の足に手を添えてしまっていた。
「ひっ、秘色さん‥‥! なんて積極的な!」
「違うのじゃが、これは‥‥これが、らきすけというものじゃ‥‥」
 なんということでしょう。どういうものがらきすけというか、身を以て教えてしまう結果になっていた。
 ちょっとイケナイ刺激に、ユキタケはイケメン覚醒してしまうし、
 それを間近で見た秘色は不覚にも高鳴る胸を押さえる。
「くっ、ユキタケの分際で‥‥わ、わしには死んだ旦那が!」
 秘色は照れ隠しに手刀でソニックブームを叩きこむ。
 衝撃に吹き飛ばされたユキタケは、ロッテたちの側に倒れ込む。
「あれ‥‥メガネ、メガネ‥‥」
 衝撃で外れてしまったメガネを探し、彼の手はあちらこちらを忙しなく探る。
 もにゅ、と、ロッテの豊満な胸を触ってしまい、思わず可愛らしい悲鳴を上げたロッテ。
 まだイケメン覚醒の終わらないユキタケに、何故か胸の鼓動が跳ね上がる。
「こんなの、違う‥‥! ただの気の迷い、私には好きな人がいるじゃない‥‥!」
 ぶんぶんと首を振るロッテ。
「ロッテさんから離れてください〜! それ以上の‥‥接近は禁止‥‥なのですよぉ!」
 ピコハンを振り上げ、ユキタケの頭を何度も叩く小鳥。
「やめてやぁ! うちのダーリンに何てことすんの!」
 仁奈が割って入り、ユキタケの首にしがみつく。
「‥‥仁奈さ‥‥みゃいんっ!?」
 慌ててピコハンを止めようとした小鳥は、振りかぶったままバランスを崩して尻もちをつく。
 偶然が重なる‥‥というのは恐ろしいことで、ユキタケはまだメガネを探しており、
 裸眼でほとんどよく見えぬ彼の手は、小鳥のスカートへと侵入した。
「えっ? ‥‥きゃぁぁぁーー!?」
 スカートを押さえた小鳥の絶叫。
 少女に手を出すなんてと怒りのリゼットは釘バットを持ち出し、殴りかかる。
 ヤンデレラルスのマフラーに、仁奈の首絞め。(抱きつかれる的な意味で)

 一方、リゼット達が迎えに行くまでのシアンは‥‥保護という名目で籐子の着せ替え撮影の玩具になっていたらしい。
 部屋にはドレスや女性用制服などが散乱しており、
 当のシアンはこの世の終わりのような顔をして、ウェディングドレスを着ていた。
 そして籐子は、とっても満足げにうふうふ笑っている。
「大尉、とっても似合っていて綺麗ですよ!」
「でしょ? 楽しかったわ〜‥‥あ、リゼットちゃん、着替え途中の画像も送るわね♪ ほとんど裸だけどっ」
「それだけは――やめろォォオ!!」
 シアンの絶叫が、響いた。

「‥‥最悪な夢だ‥‥」
 翌朝、重い気持ちで職場に行ったシアンは、なんだかいい夢を見ましたという嬉しそうなユキタケに本気で殴り掛かっていったとか、いかないとか。