タイトル:戦中休暇マスター:藤城 とーま

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2013/02/08 04:04

●オープニング本文


●いつも電話は来る。

 明日はようやく休日である。
 この大事な時期、やるべきことも多くあるし、
 そもそも休んでもいられないのだが――休暇はきちんと取らないと、過労で倒れてしまってはそれこそ元も子もない。
 重大な戦いを控え、心身のリフレッシュをと頭を切り替えたシアン。
 空いている人たちを交えて、旅行にでも――と考えたのだ。
 券の手配を考えていると、卓上の電話が鳴る。
「‥‥このタイミングは‥‥」
 いつものパターンでは、兄キーツが電話をかけてくるのだが。
 電話交換手に繋ぐなと言っているのだが、
 アイルランド支部に大量の酒類をかなり安価で入れてくれているマクニール社を無碍にすることは、基地全体の士気に関わることなので無理だと反論された。
 それを言われると、シアンも酒は飲みたいほうなので黙るしかない。
 酒をやめるか軍人をやめるかと問われたら、真剣に悩む程度に酒好きなのである。

 そろそろと手を伸ばし、受話器を取ると耳に当てた。
「‥‥マクニールだ‥‥」
『やぁ、シアン。明日は空いてるんだよね』
 やはりおまえか、とシアンは毒づき、また眉間の皺が寄っているにも関わらず嫌そうな声を上げる。
「明日は出かける。暇なら旅券を手配してくれ」
『あ、そう。別にいいけどフランスはどう?』
「ふむ‥‥悪くないな」
 シアンがそう返事をしてしまったのが運の尽き。
『じゃあ、納品もついでにお願いするね。ちょっといっぱいあって、困ってたんだよ』
「‥‥空輸しろ」
『初めてのところだから、ご挨拶もいきたいんだよね。
でもあいにく明日は業界の会議に出なくちゃいけないんだ。
スーツ持参で納品お願いするよ。ちゃんとやってね』
「スーツ‥‥。他の営業を向かわせろ! 俺は――」
『頼んだよ。後で旅券は届けるから』
 ぶつ、とそこで電話は途切れた。
「くそっ! してやられた!」
 がちゃん、と乱暴に受話器を置くと額に手を置いてため息をついたシアン。
「いつも通りじゃねぇか」
 ロビン少佐は咥えたばこのままそんな兄弟の観察をしていたようだ。
「ま、ゆっくりしてきな。土産は絵はがきでいいぞ」
 気持ちよく送り出されたはいいが、と届いたメールを渋々開いたシアン。
 泊まる予定のホテルはかなりいいところだ。
 エステやらスパやら、バーやレストランは夜景が云々。
 美術館も近いという最高の立地。
「‥‥軍人を止めたときのことも考えるべきか」
 退役までいられるかもわからないしな、とぼやきながら、
 シアンは少々長くなった髪をつまみ、多少切りそろえておくべきだなと思っていた。

●参加者一覧

弓亜 石榴(ga0468
19歳・♀・GP
ラルス・フェルセン(ga5133
30歳・♂・PN
リゼット・ランドルフ(ga5171
19歳・♀・FT
宵藍(gb4961
16歳・♂・AA
ヤナギ・エリューナク(gb5107
24歳・♂・PN
鈴木悠司(gc1251
20歳・♂・BM

●リプレイ本文

●ラグジュアリーおフランス

 開口一番、シアンは皆に礼を言われる羽目になるのだが、本人にすら代金の出所は分かっていない。
 楽しんでくれ、と、気前良い発言をした金持ちを妬むユキタケに、弓亜 石榴(ga0468)が笑顔で声をかけた。
「ユキタケさん、欧州にいるから詳しいでしょ? 私、純粋な海外旅行は初めてで‥‥」
 何故かポッと頬を赤らめる石榴に、お任せくださいと胸を張るユキタケ。
 手を握られてギクシャクしながら、早速おすすめの観光地へと出かけたようだ。

「芸術の都、フランス‥‥いいねェ。絵画だけじゃなく、デザインや音楽を学ぶにも良さそうだ」
 たまにゃ俺も、ロック以外のモンを聴かねーとな。
 曲の深みを出すためにも――あらゆるものからヒントを受け、自分の中で一段階上の物へと昇華させるために。
 ヤナギ・エリューナク(gb5107)は楽しげに眼を細め、フランスの街並みを見つめる。
(ま、良いものを作るためにも一級品にお目にかからねーとな?)
 ありふれた人々の仕草・言葉などにもいつもより気を向け――どことなく軽い足取りで美術館への道を進む。
 幸いにしてフランスには有名な場所から小ぢんまりしたものまで美術館が無数に点在しているから、選ぶにも迷うところであろう。


「シアンさん、お仕事ですか‥‥」
 リゼット・ランドルフ(ga5171)はチラチラとスーツ姿のシアンを見ては視線を逸らすを繰り返しながら尋ねる。
「約束だから行ってくる。帰ってきたら出かけよう」
「はい‥‥あ、待ってください。ネクタイ曲がってます」
 直した矢先に、ティリスから『新婚さんみたいねぇ〜』とからかわれて頬を赤らめるリゼット。
「こら、ティリス。おばさんみたいな茶々入れちゃだめだ」
 彼女の腕を引いて、宵藍(gb4961)は荷物を置いたら街に出かけようと誘う。
「きゃー、宵藍さんとお買い物! やーん大好き〜♪ 何買ってもらおう」
「買わせる気満々過ぎだろ!? いいけどさ‥‥」
 フェミニストなのか、惚れた弱みか。
 宵藍は強く否定することもなく、ティリスの重いスーツケースを引いてやる。

「‥‥ラルス、聞きたいことが」
 先ほどティリスに奪うように交換された鍵を見て、ユーディーはどうしたものかとラルス・フェルセン(ga5133)に訊ねた。
「部屋の鍵‥‥私とティリス、同じ部屋なのに違う番号だったから‥‥」
「おや〜、僕と同じ、ですねぇー」
 しかし、ラルスの兵舎一室を間借りしているユーディーにとっては、普段の延長のようで別段緊張を強いられる様子はない。


「ん〜‥‥気持ちいいなぁ‥‥!」
 見知らぬ土地で、ゆっくり羽を伸ばすつもりの鈴木悠司(gc1251)。
 折角なので広い所を散歩でも、と思い立って公園に向かってのんびり歩いていると‥‥見たことのある人物に遭遇した。
(あれは‥‥宵藍さん、と、彼女さん?)
 声をかけようか迷った悠司だが、邪魔しちゃ悪いかなと遠慮し、宵藍に会釈をしてそっとすれ違う。

「――可愛いアクセサリー! ピンクがあればもっと私に似合う〜!」
 と、早速ウィンドウショッピングに勤しむティリス。
 宵藍が店員を呼び、流暢なフランス語で何やら訊ねているではないか。
「‥‥ほぇ? 宵藍さん、数か国語できるんですか?」
「あー、俺、ラストホープに行くまでは、実家の道場の欧州支部にいたからさ。欧州の言葉は大体話せるんだわ」
「すごい! 語学のほうに伸びたんですね!」
「‥‥‥‥」
 コンプレクスをズバリ射抜かれ遠い目をする宵藍ではあったが、ふとティリスの出身が気になったらしく、訊ねてみるとポーランドらしい。
「でも、親が転勤ばっかりだったせいで、実際は国籍だけですよ」
 友達がいないのは、そういう理由もあったのだろうか‥‥


 ラルスはホテルの中にある施設や調度品などを眺めている。
「おや〜、可愛らしいー、お店もありますねー」
 土産やアクセサリーなどを置いてある、どちらかと言うと女性向けの店などもホテル内に入っている。
 夕食まではだいぶ時間がある。初めてのエステを受けているユーディーが戻ってきたら、近くのカフェまで散策に行ってもいいかもしれない。
 そんなことを思うせいか――いつもの柔和な微笑みが崩されることはなかった。


「‥‥あれ?」
「お? 悠司か?」
 ばったりと、公園でストリート音楽を堪能しようとしていたヤナギと‥‥悠司は出会ってしまった。
「やだっ、なんでヤナギさんがいるの〜これも運命!?」
「おい‥‥変なこと言うんじゃねーよ。つぅか、ここでお前かァ‥‥」
 なんか変な予感があったんだよなと毒づくヤナギに、にっこり笑顔の悠司は『取り合えず遊ぼうよ!』と誘ってくれた。
「一人だとつまんないしさ、というか何か、一人だと肩身が狭いんだよね‥‥」
 苦笑いの悠司。そこには深く共感せざるを得ない。
「はぁーあ‥‥またお前と一緒か――‥‥っていつも通りじゃねーかよッ!」
 がっくりと肩を落とすヤナギと、どこか嬉しそうにどこ行こうかと話を振ってくる、楽しそうな悠司。
 男二人で情熱の街を闊歩する姿を想像したらしきヤナギは、少々嫌そうな表情を浮かべた。
「昼間っから酒っていうか、軽いもんでも食わねえ? 折角のフランスだし、ブラッスリ行こうゼ。酒も飯もあるしよ」
「ん? ブラッスリー? なにそれ、美味しいの?
 取り合えず行く行くー! 地ビールとかもあるかな。
 夕食は豪華らしいから、食べすぎないようにしなくちゃね〜」
 美味しい料理がありそうで、雰囲気の良さそうなブラッスリ探しをすることになったようだ。

●思い出と夜景

 ディナーを楽しみにやってきた面々。

「ユキタケさん、お待たせ! どぉ?」
 石榴は鮮やかな朱いドレスを着て、ユキタケの前に現れる。
 これは先ほど買ってもらったばかりのものだ。
「おお、素敵ですよ石榴さん!!」
 鼻息荒く、女性を褒めるユキタケ。
「ありがと。ユキタケさんってスーツ着ると七五三みたいね〜、カワイイ〜」
「ああ、そうですか? よく若いって言われるんですよ〜」
 待て、ユキタケ。褒められてないんだと思うぞ。
 そんなことも分からないまま、ユキタケは石榴をエスコートする。
 席はそれぞれ‥‥別だった。
 とはいえ、近くの席には配置されているので、横を向いたりすれば話も出来るのだが。

「宵藍さん、今日はありがとうございました♪」
 きっちりとスーツでキメてきた宵藍と、ピンク色のカクテルドレス姿のティリスは、にっこりと微笑んだ。
「‥‥ティリス、言いたいこと、ありそうだな‥‥」
「ふぇ!? あ、ありませんよ? かっこいいな、って!」
「いいんだ‥‥怒らないから、正直な感想を言ってみろ」
 しばし沈黙した後。
「‥‥身分証、もっていたほうがいいと思いますぅ‥‥」
「‥‥うん、自分でも学生のブレザー姿みたいだとは感じたんだが、やはりはっきり言われるのは辛いな‥‥」
 自虐ネタを振りつつも、ティリスの椅子を引いてやる宵藍。


「おや、ユーディットのー、ドレスアップした、姿はー、初めてですね〜。
 よくお似合いーです〜」
「‥‥ラルスも、いつも以上に、素敵だと思う」
 珍しいことを言うユーディーだったが、ありがとうございますと素直に礼を言う紳士、ラルス。
「貴女を家族に迎えてからー、初めての旅行です〜。
 明日もー、楽しみたい、ですね〜?」
「今日‥‥楽しかった」
 二人は街の夜景を眺めながらグラスを傾ける。
 話題に上がるのは猫の話ばかりだったが、その中で思い出したのだろう。
 それでですね、とラルスはユーディーの目を見て話を切り出した。
「妹達から、言われているのですがー、ユーディットは『お嫁さん的な家族』なのかと〜。
 素敵な、お話なのですが〜将来的には、如何ですか?」
 微笑みを向け、衝撃的発言のラルス。ユーディーも流石に動きを止めた。
「‥‥それは、冗談なの‥‥本当なの?」
「勿論〜、からかっている訳ではー、ありませんよー?
 かといって〜深刻に考えたりもー、しないで下さいねー?」
 とりあえずユーディーはこくりと頷き、しばし黙った。
「‥‥ラルスは、私の側に、ずっといてくれて‥‥。
 辛い時も、テオに疑われた時も、守ってくれた‥‥」
 それに何度励まされて、何度救われたことか。
 酒のせいだけではない動悸の激しさに、ユーディーは胸をそっと押さえる。
「‥‥わ、私は‥‥。ラルスの事、大事に思ってる‥‥。
 親バグア派の兄を持つ‥‥私がお嫁さん、になるっていうのは‥‥ラルスに迷惑ではない‥‥?」
「おや〜。僕はー、彼をお嫁さんに〜するわけではー、ありませんし〜。
 ユーディットを家族として守ると〜、誓いましたからー」
 その時はそういう意味ではなかったかもしれませんが、と笑っている。
「‥‥少し時間を貰って、前向きに考えさせてほしい‥‥」
 嬉しくも恥ずかしい気持ちは一体どうしたらいいのだろう。
 ユーディーは、それを鎮めようと涼しげな色のカクテルへ口を付けた。


「いつもと違うケド、これもなかなか様になるってンだから、俺ってイイ男!」
 ダークスーツにループタイ。銀の留め具を調節して鏡に映る姿を満足そうに褒めているヤナギ。
 そこへ、きょろきょろとヤナギを探しに来た悠司が『わぁ』と歓声を上げた。
「着替えたら違う人みたいに見えたよ〜! うん、キマってる〜」
「そういう悠司クンこそ、馬子にも衣装じゃねーの。なかなかいいゼ?」
 互いの容姿というか衣装というか‥‥それを褒め、二人はブラッスリで引っ掛けた後もまたここで楽しく飲んだり食べたりするようだ。
 まずは先ほどと同じく、最初はきちんと乾杯から始める。
「――さっきの家庭的な味とは違うけど、旨いモンは旨いと素直に食うべきだよな」
「うん。さっきよりは緊張するはずだけど‥‥そうでもないな〜。お酒のせいかな?」
 うふふ、と笑う悠司をジト目で見るヤナギ。
「おいおい。変な笑い方すんなよ‥‥って、潤んだ目で見んなッ!」
「えぇ〜? なんか、楽しくてさ〜‥‥昼間、ささっと見せてくれた譜面も良かったし。
 来てよかった〜って」
 へにゃ、とかわいらしく笑う悠司に、ヤナギはマティーニを口に運びながら――
「ああ。サイコーな一日だったぜ」
 と、クールな笑みを見せたのだった。


「そう言えば、まともなデートってこれが初めてか‥‥」
 ワインを口にしながら、思ったことをぽつりと漏らす宵藍。
「そうですねぇ‥‥。でも、宵藍さんと一緒ならいつでもデートみたいなものですよ」
 ぽっ、と頬を染めるティリスに、宵藍はまぁ、その、と言葉を濁している。
「今更で遅いと言われるかもしれないけど、ティリスの服、よく似合ってる、ぞ‥‥」
「元が良いからですぅ」
「‥‥まぁな‥‥」
 ぶりっこしなくてもティリスはティリスだ、という見解を改めてくれただろうか、宵藍。
 それでも‥‥間に漂う雰囲気は甘いのだから、まぁ、爆ぜろとしか言いようがない。


「あの。シアンさん、少し眉間に皺が寄っていますよ」
 つ、と自分の額に指を乗せ、そう指摘するリゼット。
「ん‥‥なんだかスーツを着るのは久しぶりで、堅苦しい。早く普通の服に着替えたいな」
 いつも軍服ばかり着ているから、と笑うシアンだが、軍服も十分堅苦しい。
「今日は、なんだか‥‥久しぶりにゆっくり過ごせたような気がします」
「それなら良かった。君もだいぶ多忙だったようだし――」
 そこで言葉を切ると、シアンは済まなそうに呟いた。
「恋人らしいことも随分しなかったから‥‥悪かったと思っている」
「そんなこと‥‥お仕事でしたし‥‥」
 しょうがないですよ、と応えるリゼット。しかし、ちくりと胸に僅かな痛みを覚え、言葉を途中で止めた。
「‥‥あの‥‥」
 色々考えている事を相談してみようかと顔を上げたリゼットは、それでもかなり躊躇している。
 どうしたと数回訊ねられてから、リゼットは拒まれたらどうしようという不安を覚えながら――唇を開いた。
「傭兵を辞めたら、実家に帰ろうかと思っていたのですけど‥‥
 最近はダブリンに移住してしまおうかなと、悩んでいます」
 シアンの青い瞳が見開かれ、ぎくりとしたリゼットは、膝の上に置いた手をきつく握る。
「私の我儘なのも分かっていますが、その‥‥遠距離恋愛は十分しましたので、今度は顔が見れる距離にいたいな、と思って‥‥」
「‥‥ありがとう、リゼット。俺の正直な意見も聞いてくれないだろうか」
 なんだか切り出し方が怖い。ますます萎縮するリゼットを見たシアンは、慌てて『楽にしてくれ』と告げた。
「‥‥俺と一緒に居ることについて君の返事は、肯定という事か?」
 なかなかに硬い質問である。だが、リゼットもこくりと頷いた。
「それでは、その‥‥」
 と、シアンがぎこちなく取り出したのは、小さなケース。中には‥‥ダイヤモンドのリングが入っている。
 はっとして言葉を詰まらせたリゼットに、シアンは優しく頷いた。
「ずっと待たせてしまった。遅すぎるきらいはあるが、受け取ってほしい。
 寂しがらせたりはしないよう努める。互いに幸せになれるよう、支え合っていこう。
 どうか‥‥俺と、結婚してはくれないだろうか」
「シアンさん‥‥」
 何かを口にするのだが言葉にならない。たちまち、リゼットの目に大粒の涙が溜まる。
 彼が緊張しているのを見て取り‥‥微笑みを向けて返事としたようだ。

「‥‥なんか、桃色の刺激臭がするんですが‥‥」
 とくに大尉から、と目を吊り上げるユキタケに石榴は気のせいよと笑う。
 そして、石榴の苦手な食材を『あ〜ん♪』で食べさせられているユキタケ。
「今日はいっぱい歩いたし、美味しいものも食べたし、いっぱい買い物したし、すっごく楽しかった!」
「僕もです! 腕組んだり、手をつないだり、恋人みたい、ていうかそうとしか思えない!!」
 全ての代金を払ったのはユキタケである。しかし十分すぎる幸せな時間を過ごし、それはもうだらしない笑顔満載だったのだ。
 一人で悦に入り、ベラベラ余計なことまで喋っているユキタケにうんうんと適当極まりない相槌を打ちつつ、
 石榴はシアンとリゼットのほうを盗み見し‥‥優しい笑みを浮かべている。
(うまくいったみたい? シアンさん、リゼットさんとお幸せにね‥‥)
 ぽっ、と何故か顔を赤らめる石榴。と、それを見てドキドキするユキタケ。
「あ、あの、石榴さん? 僕の魂のお願いを叶えてくれるって言ってましたけど、なんですか‥‥?」
「やん♪ ガッつかなくても、わかってるから‥‥ね? 明日まで辛抱よ」
 人を惑わす小悪魔系、石榴。既にユキタケは鼻息荒く勝手な想像をしており、見苦しいことこの上ない。

 二日目も観光に興じる者もいたようだが、
 それぞれに、この旅行は楽しかったようである。

 束の間の休日が、良き日にならなかったのは――ミニスカ魔法少女衣装を着せられたユキタケだけであってほしい。