●リプレイ本文
今日のカンパネラ学園では、ある意味堂々としているが名目上は『秘密裏』という作戦が展開されようとしていた。
各担当戦域に出発した生徒、聴講生の背中を見送ったジャック教官は大きく伸びをして頭を掻いた。
「さて‥‥と、飯の用意でもするか」
この事件が起こり、あらぬ疑いをかけられている不運な生徒もいた。
「ガルさん、罪が重くなる前に出頭した方が良いですよ?」
「ガルさん、自首して下さい! 今なら間に合うよ!」
「モテない男がロボット使ってスカート捲り、恐ろしいほどお前に当てはまるな」
勿論冗談だが、あまりにも冗談に見えない表情で言った諌山美雲(
gb5758)、オルカ・スパイホップ(
gc1882)、巳沢 涼(
gc3648)の三名の言葉に嫌疑をかけられたガル・ゼーガイア(
gc1478)は必死になって言い返した。
「俺は犯人じゃねぇ!! 俺のロボガルはもっと高性能だ!!」
偶然ロボットを作る趣味があったから、偶然ちょっと同じことをしてみたいとか思っていたからと言ってこの疑われっぷりは傍目に哀れである。
「くそ‥‥! 見てろよエロ猿! こうなったら俺のロボガルのパーツにしてやらああああ!!」
言うなりガルは先陣を切って屋上へ向かって走り出した。
エロ猿のパーツを使ったらロボガルも変態になるんじゃないのか、という誰かの独り言は‥‥多分聞こえていない。
●マイペースな文化部棟
「闇の生徒会の皆さんに緊急連絡! 不埒な鉄人形を至急排除して下さい」
学園中に鬼道・麗那(
gb1939)の凛とした声が響く。その声を掻き消すように、多くの猿方ロボットが餌食を求めて棟内を徘徊する音が聞こえた。
放送室を出た鬼道にもその魔の手が迫っていた。部屋を出るなり、のっそりと猿が廊下に出てきたのである。妙に長い手をぬるりと伸ばして、一直線に彼女のスカートを狙ってくる。
ひらりと腕を躱した鬼道は、カウンターよろしく猿の心臓部に正拳突きを叩き込んだ。
「私のハートが光って唸る‥‥吼えろ必殺の閃光拳!」
実に見事な攻撃に、猿が仰向けにぶっ倒れた。あちこちからプスプスと音を立てている。
「絶対無敵のトラブルシューター、この闇の生徒会を舐めて貰っては困りますわね!」
ふんぞり返った鬼道だが、後ろの方から送られる畏怖の視線に気づいたのか、慌てて取り繕うように微笑んだ。
「あらいやだ私とした事が、オホホホ」
その笑いが怖い。
彼女を見守る人々は何となくそんな感想を抱いて、男性陣は絶対にスカートを捲らないようにしようと心に決めた。
一方、所変わって最上 憐 (
gb0002)は料理部なるものがありそうな――つまり食べ物の気配がしそうな場所へ歩いていた。
その時だ。後ろからにゅっと伸びた手が彼女のスカートに触れたのである。
あっという間だった。ぶわっと最上のスカートが捲れ上がり、ドロワーズが完全に見えた。偶然通りかかった生徒達は一瞬で硬直したが、最上自身は我関せずといった様子で大鎌を振り回した。
「‥‥ん。問題無い。脱がされても。ちゃんと。パンツ履いている」
そういう問題じゃねえええ! と生徒達は心の中で突っ込んだが、無惨に一刀両断された猿を見せられては何も言えない。
その後も度々スカートを捲られた最上だが、全く気にする様子もなく次々と猿を斬り飛ばし、ようやく料理部が使用している厨房に辿り着いた。
「‥‥ん。食べ物。発見。ロボットの。罠かも。しれないので。毒味を。開始」
実はこっちが目的だったと言わんばかりに、最上は猛然と摘み食い――毒味を開始した。
「妊婦のスカートなんか捲って、何か楽しいですか‥‥?」
チェック柄の可愛らしいパンツを晒された諌山は微笑みながら、勇敢にも妊婦のワンピースを捲った猿に関節技をねじ込んだ。関節が確かに外れるのを確認すると、長ったらしい腕をひっつかんで思いっ切り投げる。
「ぎゃああああ!!」
諌山のパンツを拝むという幸運を与った男子生徒に猿がクリーンヒットした。
「ごめんなさい。大丈夫でしたか? パンツ、見てないですよね?」
と言いながら、後ろから迫ってきた猿の所謂股間を弓で射抜いている。にこりと愛らしく微笑んでいるが、しっかり青筋は浮かんでいるのだ。
鬼畜だ、鬼畜過ぎる。
男性陣は母になる女性の恐ろしさを垣間見た。
「サァ、スカートを戻せ、ズボンをはけ、ハリーハリーハごッ」
スカートを捲られズボンを取られ、大惨事になっている生徒達にはラサ・ジェネシス(
gc2273)がきびきびと指示を飛ばしていた。
そこへ、またもや諌山の投げた猿が直撃する。ごつん、と音が鳴ってラサが前屈みになって頭を押さえた。
「イタタ…花がないと即死だったゼ」
んなことを言っている場合ではない! と生徒の一人が叫ぶ前に、もう突進してきた猿がラサのワンピースをこれでもか、と言わんばかりに豪快に捲ったのである。後ろだったからマシだが、花柄のパンツがひらりと見える。
「侮るなヨ! この程度でこの我輩がひるむと思うノカ?」
がっしと猿の腕を掴んで床に引き倒し、腕ごと捻りきる。不要になった体は投げ飛ばして、何事もなかったかのように彼女は言った。
「その三、止めを刺す時は躊躇しなイ」
彼女の言葉を実行するように間合いを詰めたエイミー・H・メイヤー(
gb5994)が巨大ハンマーで猿を力一杯殴り飛ばした。
「迷惑行為防止条例違反、判決は死刑です」
どっこどっこと猿を潰していく。
スカート捲りにしてはあまりにも大きな代償を払わされた猿達の残骸を踏みつけて、彼女は被害に遭った少女――男は無視だ――にそっと跪いて囁いた。
「非礼な輩はあたしが成敗したのでご安心を」
ぼん、と女子生徒の顔が赤くなる。
ああ、これは惚れたな‥‥とその場の全員が思った。
所変わって。
「この俺の逆鱗に触れたことを後悔させてやる」
水橋 準(
gc2202)は近づいてくる猿を刀で斬り捨てた。男だろうが何だろうが猿は寄ってくる。それらを刀一本で薙ぎ倒しながら、彼は後方で戦う仲間に視線を向けた。
「そっちに行くぞ」
難を逃れた猿がそろそろと和泉 澪(
gc2284)の背中に近づいていく。猿は声を掛けられて振り返った澪の和服を盛大に捲った。チェック柄のパンツが強制的にお披露目される。
途端に澪は怒髪天を衝く表情になって直刀を振り翳した。
「っ!? 機械の分際で破廉恥な事しないでよね!」
弧を描くようにして猿を叩っ斬った澪は続けざまに迫っていた猿を蹴り飛ばした。
そそくさと和服の裾を直して、澪は大きく溜息をついた。
やっぱりスカート捲りは屈辱である。
女性陣が暴れている場所に戻ろう。
「ジャック先生ー。ユウ、またジャック先生のお料理、食べたいな♪」
『今作ってる。さっさと片付けて食いに来い』
通信機で教官と会話していたユウ・ターナー(
gc2715)は前方から来る猿をがんがん撃ちまくっていた。背中合わせに立つ和泉 恭也(
gc3978)も少し呆れるくらいの乱射ぶりである。
「っ、ユウッ!」
諌山が放った矢が恭也の頭にヒットする。ごめんなさいー、と遠くから彼女の声が聞こえるが、そんな青筋を浮かべた顔で言われても怖いだけだ! と彼は心の中で絶叫したが、とりあえず笑みを浮かべて取り繕ってみる。
「‥‥いや、避けてはいけないと思いまして」
「わー、恭也おにーちゃん、格好良いゾ!」
喜んだユウが御礼と言わんばかりに恭也に迫っていた猿に援護射撃を放つ。
「‥‥パンツ。パンツ、ミルゾ」
「ユ、ユウのパンツは見せてあげないんだからッ」
真っ赤になったユウが抱きついてきた猿を銃身で殴って突き飛ばす。離れたところを恭也が拳銃で穴だらけにしてやった。
「スカートというか‥‥パンツを狙って来てないか?」
そんなことを呟いた恭也である。まあ、強ち間違ってもいないわけだが。
勿論、この美味しい状況下で不運な目に遭う男子生徒も多数居る。
「みくぅ‥‥やっぱり恥ずかしいですよぉ‥‥」
「似合いますよ、天莉くん」
呼び出されたのは良いが、なぜか女装させられる羽目になった張 天莉(
gc3344)は真っ赤になってスカートの裾を押さえている。太股の辺りがすーすーする。
彼を連れて歩く高梨 未来(
gc3837)は早速猿ロボットを見つけた。向こうもこちらに気づいたらしく、長い腕をぶらぶらさせながら近づいてくる。
「行きますよー、天莉くん」
「うぅ‥‥恥ずかしい‥‥」
ぬっと手を伸ばしてきた猿を躱して、高梨は篭手で猿の顔面を殴った。しかし意外に堅いらしく、バランスを崩して彼女は後ろに大きくよろけたのである。
「はわわ! こっちにも‥‥はわっ! あっちにも‥‥ふお!?」
高梨はあちこちにいる猿を巻き込んで盛大に転んだ。予防線に履いている、短く切ったジャージがちらっと見える。
「みく! って、ぃ――――っ!?」
ひらりと後ろから来た猿が張のスカートを捲ったのである。本当に見境がない。
だが、張にも秘策があった。何と彼もスカートの下に切った短いジャージを履いていたのだ。
「ふふ‥‥どうですか。これで――」
パンツはお預けです、と言いかけた張を無視して猿はもう一本の手で彼の履いていたジャージをずりおろしたのである。
さっと張が青ざめた。
「にゃ!? っっぃゃあぁーーーっ!!」
女子並みの悲鳴を上げて張は高梨を襲っていた猿ごと数体まとめて盾で殴り飛ばした。
「‥‥く、屈辱‥‥」
ぐったりした張である。慰めるように高梨が彼の肩に手を置いた。
刹那、教室棟からド派手な破壊音が轟いたのである。
●修羅の居る教室棟
カオスっぷりで言うなら教室棟は他の追随を許さないに違いない。
「あれ?こんな所にロボッ‥‥ふにゃ〜っ!」
ピンクのパンツが廊下で休んでいる生徒達の目に入った。事情を知らずに図書館から帰ってきたエレナ・クルック(
ga4247)のスカートが捲られたのである。
真っ赤になり、ロケットパンチで猿を潰したエレナを落ち着かせるように、 事前に言うよう指示されていたのだろう、生徒の声が校内に響く。
「教室とエレベーター前、文化部棟入り口、教室棟B入り口に猿ロボに狙われそうな服装をした人たちがいる。至急保護せよ」
「遅いです〜! もうお嫁に行けないです〜」
恥ずかしそうに頬を染めたエレナは教室棟を徘徊する猿を壊して回った。
「天罰っ!」
超機械で猿の動力部分を壊し、ひたすら前だけ見て――つまり後ろはがら空きだったわけだが――スカートの裾を押さえながらずんずんと廊下を進んでいく。
「う〜、早く事態が収まって欲しいです〜」
一方、文化部棟入口から教室棟へ向かう廊下にて。
「っはー‥‥眼福だったでゲスよ。女装たるもの、あああるべきでゲス」
仲間の嵐 一人(
gb1968)の完璧な女装姿を思い出した夏子(
gc3500)は溜息をついた。教室棟に向かっている途中に、予防線のズボンをふんだくられてしまった自分とは違う。
「あ、教壇」
猿を轢いた秦本 新(
gc3832)はバイクを止めて、外へ吹き飛ばされた教壇を見た。だがしかし、なぜ教壇なのか。
「って、ちょ、秦本さん。後ろ! 後ろでゲス!」
夏子が慌てて言ったが、少し遅かった。猿が教室から飛び出して秦本の履いていたスカートを捲ったのである。
何でふんどしなんでゲスか、と直視してしまった夏子は咄嗟に思ったが、そんなことは今はどうでも良い。
すかさず秦本の目が鋭く光った。
「いやーん。‥‥野郎のスカートなんて捲って楽しいですか? おらっ!!」
ガン、と猿をバイクで押しつぶした秦本である。援護に来た猿は持っていた槍で薙ぎ払う。
硬直している夏子を余所に、秦本は叫ぶ。
「こうなりゃ、ヤケクソです! まとめて掛かってきなさい!!」
バイクで猿に片っ端から突撃している。
一方、我に返った夏子は身を翻して猿の腕を槍斧で叩き落とした。そのまま勢いに任せて猿の胴を突く。
「捲られなきゃそれでいいのでゲスよ!」
その前にスカートを履いたことへの恥辱心はどこへやれば良いのか。
派手に暴れるせいで軽い素材のワンピースがひらひらと勝手に捲れる。そこから覗く足がまた綺麗で、脛毛のないあたりが周りで戦う生徒達を妙に安心させたのだった。
教室棟Bへ繋がる通路には女装したイレイズ・バークライド(
gc4038)と男装した天戸 るみ(
gb2004)、そしてどう見ても女にしか見えない嵐が居た。
教室棟は猿の被害にあった生徒達が多数おり、パンツだらけの阿鼻叫喚、地獄絵図と化している。
「あらあら‥‥何か大変な事になってますね」
苦笑した天戸は嵐に近づいてきた猿を居合いの一閃で切り裂いた。傍目には身長の低い少年が美少女を守ったようにしか見えない。
「どうして‥‥こうなった。どうしてこうなった。どうして‥‥」
嵐は未だに一人で呟いているが、彼を知らない生徒からすれば少女が震えているように見えたことだろう。
「大丈夫だ。似合わない俺よりマシだろ」
生徒達を別の教室棟へ誘導しているイレイズがさらっと言った。こちらは普通の女装――最早、普通の女装とは何であろうか――なので生徒達に懐疑的な視線を向けられている。
「く‥‥っ、男のを捲って何が楽しい!」
スカートを引っ張ってきた猿を曲刀で斬り捨てたイレイズは怒気を孕んだ声で言った。というか、エロ猿に女装が好評も嬉しくない。
その後も、一人で猿をずたずたにしていたイレイズの背後では、猿の魔の手が天戸に伸びようとしていた。
刹那、大人しそうにしていた嵐の表情が変わった。猿を蹴倒して脚爪で踏み潰し、機械剣で猿の頭を突き刺した。
「てめえ‥‥るみに手出そうとしやがったな‥‥!?」
怒れる少女‥‥もとい少年は天戸の前にしっかりと立っている。どう見ても立派なカップルの二人には、リア充に憎しみを持つ主犯Aの子どもとも言える猿がわんさか寄ってきた。
「それもこれも、こんなエロザル作る奴のせいだー!!」
半ば自棄になっている嵐の悲痛な叫びと共に、三人は迫ってくる猿を端から撃破していったのであった。
エレベーター前からは巳沢、Taichiro(
gc3464)、そして亜(
gb7701)の三人が掃討に向かっていた。
「に、似合ってますね‥‥」
「言うな、亜さん。それ以上言わないでくれ‥‥!」
セーラー服を着ている巳沢が項垂れた。本物の女の子である亜もセーラー服を着ているだけに余計目立つのだ。
思わず笑いそうになった亜は視線を泳がせて、こちらに向かってくる猿を見た。
唯一女装していないTaichiroは何とも言えない目で相棒の巳沢を見つめている。
ともあれ、猿を潰さないことには何も解決しない。猿ロボの前に立った巳沢は息を吸って大声で言った。
「いくぜタイチロウ! 変身だ!」
「はい! 変‥‥身っ!」
バッとポーズを決めて、二人はAU−KVを装着した。ちゃっかり巳沢はセーラー服を脱ぎ捨てている。
AU−KVという鉄壁の守りを手に入れた二人は猛然と猿の処理を開始した。ぽいぽいと巳沢が猿を投げ飛ばし、Taichiroが動力部分を潰す。後ろからは、亜が超機械で仕留め損ねた猿を端から片付けていた。
そこへ、最も小さい猿がこそこそと駆け寄って来たかと思うと、男二人が止める間もなく亜のスカートを前から捲ったのである。
「うわっ!」
男二人は見たかったが必死になって視線を外した。対する亜は一拍遅れてわざとらしく「きゃーっ♪」などと叫んでみた。ボーダー柄のパンツが視線を落とせば自分でも見える。
「ま。良い経験しましたよね」
あっさりと言った亜は猿を蹴り飛ばした。慌てて巳沢とTaichiroがそれを受け止めて止めを刺す。
手早く見つけられるだけの猿を見つけて倒してしまった三人だったが、まさにそこへ凄まじい音が同じ階に轟いたのであった。
「拙い、魔界程度と踏んでいたが‥‥大魔境かここは」
女装した諷(
gc3235)が思わず呻いたのも納得できる。
彼らが到着したのと同時に、教室から教壇が窓の外目がけて猿ごと吹っ飛んだのである。
しばらくして、一人の少女が髪を乱してゆらりと出てきた。その右手には刀を持ち、左手には猿の長い腕。
軽くホラーである。
しばらくして他の班の何人かが合流したが、反応は彼らと同じだった。
「にゃーん! まつりちゃん元気?」
色々な意味で勇敢だった過月 夕菜(
gc1671)の声が届いたのか、廊下の幽霊少女――三枝 まつりは彼らの方を見た。なまじ髪が長い分、変に怖い。
「‥‥元気です。すこぶる元気です。こいつらを引き裂いて屋上から吊すくらいには元気ではないでしょうか」
語気が変わっているのは覚醒しているからか。完全に目が据わっている。
「まつり。気持ちは分かるが、とりあえず落ち着け。学園が壊れる」
既に呆れている須佐 武流(
ga1461)の言葉にまつりは持っていた腕を窓の外へ投げ捨てた。拒否の意思表示らしい。
「まつりの事が段々と手間の掛かる娘のように‥‥」
神棟星嵐(
gc1022)が溜息をついてAU−KVを装着する。
暴れるまつりの制御は他に任せるとして、女装したソウマ(
gc0505)はよく似合うゴスロリ風の衣装――完璧に女装している。男だと思えという方が無茶なくらいである――で猿を引きつけていた。
「勘違いしてるみたいですね。僕は男ですよ」
少女のようにふっと微笑んで、ソウマは猿を地面に投げ落とした。
後ろから飛び掛かって抱きつこうとした猿は、何故か勝手に動力部分が爆発してぶっ倒れる。おそらく何かしらの攻撃をしたのだろうが、早すぎて見えなかった。
「修理費は学園持ちと、ジャック教官の言質がある」
教室から椅子を引っ張り出してきた諷はそれで猿を殴りつけている。こんなものだが、耐久力が弱いことを除けば立派な武器になるのだ。
何体か破壊し終えて手を休めていた諷だったが、そこで猿の餌食となった。見事にスカートが弧を描き、パンツが仲間の視界に晒される。
「男だ。残念だったな‥‥ふっ」
いつも通り微笑んで――内心大ショックだったが――諷は椅子を猿の頭に叩きつけた。
「うにゃん? いい度胸してるね〜」
過月はスカートを捲りに来た猿を長弓で射抜いた。パンツを見られるのは流石に恥ずかしいので、何とか捲られないように腕を躱し、すれ違い様に矢を直接持って猿の動力部分に突き刺した。
「にゃーん。あっちはどうかな〜?」
後ろを見れば、須佐がまつりを抑え込んだところだった。散々抵抗したのか、二人のど突き合いの仲裁に入った神棟が疲れた顔で壁に寄りかかっている。
須佐がまつりのAU−KVを指差して言う。
「ほら、脱いでめくられる準備をしてくれ」
「何ですか、変態発言ですか」
「殴るぞ」
「いっそ殴った方が良いですよ、須佐殿‥‥」
一字一句間違えることなく、過月はこの会話を猫の手帳に素早くメモした。良いネタを手に入れたようだ。
かくして、囮の人間が増えた彼らは再び猿の掃討を開始した。
女性陣(女装含む)に寄ってくる猿という猿を壊し尽くし、かつ学園の損壊も最小限に抑えることにどうにか成功したのである。
だが、正気に戻ったまつりには更なる不運が待っていた。
「ま、なんだ、災難でしたね」
「今回は珍しく頑張ったじゃないか。偉いぞ」
亜に慰められ、神棟に頭を撫でられたまつりは思いっ切り凹んでいた。消えてなくなりたい、と小声で呟いて膝を抱え込んで半泣きでいる。余程スカートを捲られたのが効いたのだろう。
しかし、落ち込んでばかりでは迷惑がかかる。
「あ、あの‥‥手伝ってくれてありがとうござ――」
気を取り直して顔を上げたまつりは思いっ切り硬直した。それもそのはずで、似合っているのはともかく、視線の先に女装した面々が立っていたからである。
「まあまあ、元気出して下さい。美味しいものでも奢りますよ?」
近づいてきた秦本にまつりの我慢が切れた。
「いやあああああああっ!!」
「グハッ!」
綺麗な正拳突きが秦本の腹に入った。
「――って、何で女装して‥‥じゃなくて、ごめんなさいっ!!」
まつりは慌てて謝った。
彼の方も覚悟はしていたので受け身の姿勢をとったが、流石にちょっと効いた。
ああ、やっちゃったよ‥‥とその場に居た全員が顔を覆う。
「あれがまつりちゃんか、噂にゃ聞いてたが凄ぇな‥‥」
追いついた巳沢が惨状を目にしてそんなことをぽつりと言った。
●地下のお茶会
「ふざけた玩具ですね‥‥破壊を開始します」
淡々と言った有村隼人(
gc1736)はすかさず飛びつこうとしてきた猿を小銃で撃ち抜いた。猿に性別の判断能力があるのかないのかよく分からないが、やたらに抱きつきに来る。
「その行動は無粋というものです‥‥」
猿に群がられても嬉しくない。有村は小剣に持ち替え、腕を広げて迫ってくる猿を斬りつけた。
そこへ一拍遅れてドラグーンのエリザ(
gb3560)が生身で到着した。AU−KVを頼りにしていたが、実は整備中なので使えないというオチである。
「AUーKVはありませんが、スカートは渡しませんわっ!」
AU−KVさえあればスカートの心配はしなくて良いのに、とエリザは自分の判断ミスを呪った。これで捲られでもしたら堪ったものではない。
「こちらですわよ!」
恥ずかしさを押し殺してスカートをひらひらさせながら猿を誘導するエリザを見つつ、自分の愛機があることを確認した布野 あすみ(
gc0588)はほっと胸を撫で下ろした。
そこへ俊敏な動きの猿が飛んできたのである。背後取ったり、と言わんばかりに思いっ切り布野のスパッツをずり降ろしたのである。言っておくが、スパッツは生スパッツである。
ぶっつん、と布野の中で何かが切れた。逃げようとする猿を捕まえて素手で滅多打ちにした彼女は、言葉にならない怒声を発しながら愛機に飛び込んだ。
「もう怒った! あんたら絶対許さないからね。ウキャッキキキキーッ!」
超人的速度でKVを起動し、機杖で猿やら何やら諸共殴り飛ばした布野である。
「そこのお嬢さん方、敵をある程度まとめる様に動いてくれ。槍でまとめて薙ぎ払う」
誘導しているエリザや生徒達にKVの中から声をかけたヘイル(
gc4085)は後ろの方で盛大に暴れる布野機を見やった。
「それにしてもあれは猿、か? いろんな奴がいるな」
色んな奴が色んな方法で暴れている地下階である。おかげでかなり数は減っているのだが。
「待て、二・三機は鹵獲したい。手足を狙って行動不能にしてくれ」
後で晒し者にしてやりたいので、全体破壊されても困るのだ。
指示を出したヘイルの脇を別のKVが猛スピードで駆け抜けていく。ハーモニー(
gc3384)だ。
「女の敵に手加減はしません!!」
KVに搭乗したハーモニーは多連装機関砲でひたすら寄ってくる猿を蹴散らしている。ライフルに持ち帰ると、遠くでエリザに襲いかかる猿を撃ち抜いた。
一方、猿とは関係のないところで被害を受ける人々もいた。
「神宮寺真理亜、目標を殲滅する」
KV内から勇ましく宣言した神宮寺 真理亜(
gb1962)だったが、視界の端にカサカサと動く小さなものを見つけて瞬時に顔が強ばった。地下、それも暑苦しいじめっとした格納庫だ。いない訳がない。
ぷるぷると震えていた神宮寺だったが、あっさりと我慢の限界を突き抜け叫んだのである。
「うあぁぁぁぁ!! 消えて亡くなれぇぇ!!!」
錯乱した神宮司のガトリング砲が炸裂する。敵味方問わず、ただひたすら黒いゴキ――変態と並んで挙げられるであろう世界共通の敵を殲滅せんと、撃って撃って撃ちまくった。
「ぎゃあああああっ!!」
当然、照準はでたらめなので仲間にも弾は飛んでいく。当たらないのが不思議なくらいの至近距離に着弾するので、流石に仲間や生徒達は悲鳴を上げて逃げ回った。
この混乱に乗じて犬彦・ハルトゼーカー(
gc3817)が動いた。
「せんぱーい! 大至急でてこい、じゃなくて出てきて下さい」
「何かありましたの?」
折角KVに乗ったのに、とファリア・レンデル(
gc3549)が顔を覗かせた刹那、犬彦は彼女をKVから引きずり落とした。
「騎士道、地に落ちたり」
胸を張って言った犬彦は近づいてきた猿に気づいて、さっと身を隠した。落とされたファリアは気づくのが遅れて、猿にスカートを掴まれた。
「きゃあああああ――――っ!!」
悲鳴を上げて迅雷を使いKVの中まで飛んで帰る。強引に引っ張ったせいでスカートが破れて、チェック柄の可愛いパンツが丸見えとなった。
「おのれ〜女性の敵め〜!!!」
間違いなく犬彦のせいだが、ファリアはKVを起動させてディフェンダーで猿を吹き飛ばした。鬼神と化した彼女は、乱射する神宮司と相まって非常に危険な存在となったのだ。
まんまと作戦を成功させた犬彦は喜び勇んで自分に近づいてくる猿を巨大ピコハンで叩き潰した。先日、なぜか支給されたブブゼラを吹き鳴らして地下を駆け回る。
猿がうろうろするので、それぞれの攻撃がバラバラになって危険域が広がっていく。見かねたヨハン・クルーゲ(
gc3635)が猿の集団を殴り飛ばした。きっと猿のせいだ、そういうことにしておこう。
「怯えろ! 竦め! 自身の存在意義すら発揮できぬまま壊れて行けー!」
日頃ストレスでも溜まっているのかと言わんばかりに猿を薙ぎ倒していく。
「破片に当たらないよう注意してください」
思い出したように発せられる警告だが、ヨハン一人が慎重に攻撃しても既に怒れる女性が居るのであんまり意味はなかったりする。
生身戦闘の人々にとっては、猿からスカートを守るより、KV班の攻撃を避ける方が余程大変だったのである。
「済まぬ。私はアレが苦手なのだ‥‥」
何だかんだで一番猿を壊し、一番攻撃していた神宮司はKVを降りると素直にそう言って謝った。
敵を殲滅した彼らは、時間も丁度良いのでハーモニーが開いたお茶会の最中である。
「犯人に呪いでもかけておきますか‥‥」
最後に見回りをして不審者が居ないことを確認した有村が帰って来た。どうぞ、とハーモニーが珈琲を彼に差し出した。
「良い年してモテないからってパンツめくりだなんて、主犯Aの顔を見てみたいものです。その心意気を評価するのはやぶさかではないですがね」
などと笑いながら言うハーモニーである。
「はぁ、なんとも間の抜けた騒動でしたねぇ‥‥それにしても、犬彦様とファリア様はまだやっているのですか‥‥」
珈琲を飲むヨハンは横目で、彼らから離れた場所にいる一人と一機を見やって溜息をついた。
「先輩、お疲れさまでしたぁー!」
『い〜ぬ〜ひ〜こ〜!! 憶えてなさい!!!!!』
大音声で怒鳴るファリアの機体を犬彦はブブゼラを噴きながらピコハンで叩いている。余裕綽々の犬彦は、お茶会をしている彼らの周りでもブブゼラを吹き鳴らした。
KVを降りて追ってきたファリアに捕まり、こっぴどく犬彦が叱られるのはその数秒後である。
「お疲れ様。ドラグーンということはここの生徒だよな? 鹵獲したこいつらを責任者に引き渡したいのだが、なにぶん学園内は初めてでな。道案内が欲しいのだが頼めるか?」
神宮司とエリザに声を掛けたヘイルは彼女達を含め、飲み物を持っていない人々に飲料物を配る。一仕事終えたような表情をしているのは、先程まで彼が猿を逆さづりに吊していたからだ。
吊された猿のところへ行った布野は、そいつに思いっ切り珈琲をぶっかけてやった。
「誰を相手にしたか、分かった?」
コノメカ、ヘンタイニツキケイニショス。そんな張り紙がされた猿はぶらーんと吊されている。猿にちゃんと知能があったならここで言ったはずだ。もうしませんごめんなさい、と。
地下階、完勝である。
●電波発生装置を壊せ!
校内に再び放送が流れた。
「主犯A、お前は間違っている。ロボットの開発・量産技術は素晴らしい物があるが、スカート捲りをした所で桃色を破壊する事にはならんぞっ! 微妙に使い方が間違ってる! 我らしっと団なら、そのロボを有効に使えると約束しよう。リア充絵を殲滅したいなら僕らと共に戦え!」
一見まともに説得しているように聞こえるが、よくよく考えればとんでもない放送内容である。
マイクから手を離した白虎(
ga9191)は放送室を出ると、少年を襲わんと寄ってくる猿をハンマーで蹴散らしながら屋上へ一人で向かった。主犯Aは学園内にいる、そんな推測が彼の脳裏を過ぎる。
電波発生装置がある屋上には猿がわんさかいた。これでは装置に近づけそうにない。
フローネ・バルクホルン(
gb4744)を見つけた水無月 春奈(
gb4000)は首を傾げた。
「若い振りしてスカートなんかはいて‥‥いい年なんですから自重してください」
「‥‥若いフリ‥‥だと‥‥ふっ‥‥凹凸の無いようなちんちくりんの僻みか‥‥」
フローネの切り返しに春奈は笑みを引きつらせて、スカートを引っ張る猿を蹴り飛ばした。
「ちんちくりん‥‥。言うに事欠いて‥‥ちょうど目の前にイイモノがいることですし‥‥どちらが魅力的か‥‥証明するにはちょうどいいでしょう‥‥」
大鎌で数体まとめて薙ぎ払ったフローネはにやりと笑う。
「‥‥ほぅ‥‥この木偶を判定代わりに使うというのか。よかろう、大人の魅力というものを見せ付けてやろうではないか」
女の勝負が展開される中、リティシア(
gb8630)は鬼神のごとくハンマーで片っ端から猿を潰していた。
「あはっあはっあはははっ撲殺〜♪撲殺〜♪」
叩きながらちらちらスカートが捲れるのだが、スパッツを履いているとはいえ、非常に良い眺めである。
若干その様子を気にしている後ろのガルは、彼女が潰した猿の四肢のパーツを斬り落として黒いゴミ袋に入れていた。
「お前はロボガルの一部として生きるんだ‥‥光栄に思えよ‥‥」
そしていつかは完璧なロボガルを製造してスカート捲りを‥‥などと呟いている。にしても、同じロボット製造者として無性に腹が立つ。何かむしゃくしゃしてきた。
丁度そこへ、一人の女子が通りかかった。すわっと目を光らせたガルは竜の翼で接近し、彼女のスカートを思いっ切り捲ったのである。
「てめぇも俺を犯人だと思ってんだろう!! 俺はスカート捲るのにロボットは使わないぜ!!」
振り返ったのは、それはそれは可愛い人形のような少女だった。
スカートをめくられ、くまのパンツを晒された舞 冥華(
gb4521)はきょとんとしてガルの胸倉を掴んだ。
「きょーのぱんちゅはくまさんだから、見られても気にしなーい」
「え、あ‥‥ちょ‥‥!」
ぷるぷる震えるガルに、舞は竜斬斧の刃部分を持って柄を振り下ろした。
「ぎゃああああああっ!!」
自業自得の男子生徒が後ろの方で自滅したらしい。
少し遅れてそんなことを聞いた先鋒の水無月 神楽(
gb4304)は溜息をついた。こっちは忙しいというのに‥‥。
「僕が先鋒として斬りこみます。援護、頼みます!」
そう言って神楽は真っ先に猿集団に切り込んだ。得物を回転させて猿を端から斬りつけていく。
「レディとして見られて困るようなものを身に着けてはいませんわ。ただし辱めの代償はとても高いですわよ」
彼女の後に屋上入りしたミリハナク(
gc4008)はスカートをめくられたが、全く動じることなく斧で猿の四肢を斬り落とした。ついでに倒れた猿を踏んでやる。
「僻み嫉みはみっともないっていうのが分からないのかねぇ、コレを造った阿呆はぁ」
円閃で猿を斬り飛ばしたレインウォーカー(
gc2524)は呆れたように言う。後ろからのし掛かってきた猿は一度殴りつけて、距離を取ってから斬りつける。
「また奇抜な格好でたたかうんですか〜?」
猿の集団を脚一本で掃討したオルカは傍にいる功刀 元(
gc2818) と御剣 薙(
gc2904)を見た。
「そうですねー。ふはははーっ!! どんどん捲れ! めくった奴から粉みじんにしてくれるわーっ!!」
AU−KVを装着した上からメイド服を着るという上級者向けの女装をしている功刀は宣言通り、片っ端から猿を粉砕している。最近できた恋人が隣にいるというのに、全く恥じらっていないのは流石としか言えない。
「元君、頼りにしてるからね」
少し照れたように言う御剣に、誰も「彼氏の衣装は良いのか、衣装は」と突っ込めなかった。男装した彼女は迫ってくる猿を脚爪で蹴散らした。功刀と背中合わせに立ち、左右に分かれて猿を撃退している。
そんな時、頃合いを見てネオ・グランデ(
gc2626)が叫んだ。
「照明銃!」
「了解!」
猿に向けて海原環(
gc3865)が発砲した。目眩ましの一発を放った彼女は、次いで制圧射撃で一斉に猿を駆逐する。
リゼット・ランドルフ(
ga5171)とネオがそれを合図に猿集団に突撃した。リゼットは鞘に入ったままの刀で猿を殴りに殴っている。
「スカートめくりロボだなんて、不埒です!」
「やれやれ。一々相手はしてられんな」
疾風脚で猿をまとめて吹き飛ばしたネオは息を吐いて横に移動した。彼の背に隠れるようにして立っていた海原が小銃で猿を撃ちまくる。
「やったぜベイビー」
抑揚のない声で海原は言って親指を突き立てた。
大方片付いただろうか、電波発生装置には覚醒した吹雪 蒼牙(
gc0781) と守剣 京助(
gc0920)が辿り着いた。
「邪魔した奴に報復しねぇと気がすまねぇ‥‥眠りを妨げた罪、その身で持って償え!!」
植物園での昼寝を奪われた吹雪の機嫌はすこぶる悪い。大剣で装置を頭からぎったぎたに刻んでいる。時折破片が守剣を掠めた。
装置を壊させまいと、ここにも猿がうようよ現れ始めた。やっと出番か、と呟いて守剣は大剣を構え、猿に向けてそれを振り下ろした。
「はっ、はあああああああああ!!!」
裂帛の気合いと共に猿を一刀両断に斬り伏せる。
「京助さんなら当たっても文句言わないだろう。いや言わせねぇ‥‥!」
「蒼牙、当たってる! 剣先が俺に当たってる!」
守剣の悲痛な叫びを全く聞き入れずに、吹雪はひたすら装置を殴りに殴っている。
やがて、装置から黒い煙が立ち上り始めた。所々がショートし始め、小さな爆発音が装置から溢れ出す。
刹那、装置から録音された声が響いたのである。
「どうも、主犯Aです。しっと団の皆さんのメッセージは確かに受け取りました」
何人かが既に手ひどい制裁を受けているガルの方を見た。俺じゃねえええ!! と彼が叫んでいる間も、主犯Aの声は流れ続ける。
「学園中のイケメンリア充共。どうやら今回は僕の作った装置の破壊に成功したようだな。だが、聞け。この崇高なる僕の行動により、女子のパンツ柄の傾向が判明した。モテない我が同志よ、聞くが良い。今年、女子のパンツ柄の流行は【Luneria】の――」
ガンッ、と吹雪と守剣が同時に装置に大剣を突き刺した。これ以上は何となく言わせてはいけない気がしたのである。
完全に装置が停止し、スカートを引っ張っていた猿が動きを止めて地面に転がる。
一拍置いて、どこからともなく命知らずのモテない男子諸君の悲鳴が溢れ出した。
「き‥‥聞かせろおおおお!!」
「パンツの流行柄は何なんだよ、気になるじゃねえかあああっ!!」
「うわああああ!! もう捲るっきゃねえええ!!」
以上の発言をした男子はその場で女子生徒および女子を守る男子生徒諸君に粛正されたのである。
「うーん、やっぱり様子を見てたんだにゃー。スカウトし損ねたにゃ‥‥」
がっくり項垂れたしっと団総帥こと白虎にその後、主犯Aっぽい誰かから「しっと団に幸あれ」との手紙が届いたというのはまた別の話であるが、ともあれ、何とか学園の女子生徒(一部男子)に降りかかった災難は無事取り除かれたのである。
●事件終えて
やれやれ、と全員が力を抜いた彼らにジャック教官からの放送が入ったのはそんな時だった。
『学園にて猿ロボの掃討に参加した諸君、希望者は今から三十分以内に食堂に集合すれば、美味い飯をご馳走してやるぞ。というか、早く来ないと最上とユウが全部食ってしまうぞ』
既に文化部棟、教室棟を担当した生徒達は食堂に集まっているのだという。
「飯だあああっ!!」
「うおおおおお! 俺達の飯が無くなる――――っ!!」
教官の手料理を食べたことのある生徒達は猛ダッシュで食堂へ向かっていく。
「元君、おつかれさま。一緒に闇の生徒会に戻って一息入れよ」
御剣はそんな彼らの背中を見ながら大きく伸びをした。【闇の生徒会】所属の面々はこれから部室に帰って一服である。
「お疲れ様〜、終わった終わった♪」
怒りも収まり、すっきりした吹雪は守剣達をともない食堂へ向かうようだ。
一方、懲りて無さそうなガルは青空に向かって高らかに宣言したのである。
「次に騒動起こすにはロボガルを500! いや! 1000機は作んねぇとな!!」
さてはて、そんな騒動はもう起こって欲しくないが、どこかできっと主犯Aはこれを助言と勘違いして計画を練っていることだろう。
だが、しばらくは平穏な学園生活が戻りそうだ。
−END−