●リプレイ本文
「すみません! 我々の力が足りないばっかりに‥」
「こんなこと言える立場ではありませんが、よろしくお願いします!」
捕獲用の籠を差し出し深々と頭を下げる男達。
「爆弾魔‥許しがたいわね」
「責任重大ですね‥。皆さん、頑張りましょう」
その籠を彼らから受け取ると白と黒の影を追うように6人の傭兵たちが駆け出した。
街を人を命を守るために、爆弾魔という卑劣な男の野望を阻止するために。
●1ターン目
追跡する一行の目の前で住居区の人混みの中を白と黒の影が分れ別々の方角に走り去る、まる彼らをであざ笑うかのように。
「ここは手分けして追うのが得策ですね」
リュドレイク(
ga8720)の提案に全員がうなずく。
「犬のほうはたのむぜ。 その間に爆弾はなんとかする!」
レオン・ヌエボバジェ(
gb1351)は預かっていた捕獲用の籠を差し出す。
その籠を受け取ると他の4人はそれぞれの方向に走り出した。
●2〜3ターン目
時間のわりに人気もなくひっそりとしている倉庫群、郊外の工場区と軍事施設の中間に位置する地域だけあって非常事態連絡が十分に行き届いているのであろう。
「街中を動き回る爆弾犬か‥!」
犬を待ち伏せ地点に決めた倉庫群でホアキン・デ・ラ・ロサ(
ga2416)はポツリと呟いた。
その瞬間であった。彼の目の前に白い影が、そう例の爆弾犬が現れたのである。
2人(?)の間を一瞬緊迫した空気がつつみお互いに隙をうかがい牽制する、その中でホアキンの左掌が熱く赤く光る。わずかな時間であったが、2人(?)にどれくらいに感じられただろうか。先に動いたの白い犬「チック」、ホアキンを睨むと素早くその脇をすり抜けた。
そのはずだった。
「アイテール‥限定解除、戦闘モードに移行‥」
だがその先に待っていたのは金色の瞳の少女、緋室 神音(
ga3576)そして捕獲用の籠であった。
「残念、チェックメイト」
「まずは一匹」
神音がチックの捕獲を確認して籠の鍵をかける。ホアキンが隙を作り誘導その先に神音の籠、お互いの身体能力そして洞察力を駆使しての見事な連携であった。チックは鍵の閉まる音を聞くまで自分が捕らえられたことに気が付かなかった‥。
御山・アキラ(
ga0532)とレティ・クリムゾン(
ga8679)商業区に足を向けていた。
彼女たちはこの地区が爆弾犬を捕獲する地点に想定していたが商業地区だけに中々人が多かった。
この商業地域はこの都市の商業の一翼を担い、住居区を繋ぐ地域であるから当然と言えよう。
その人々の足元に疾走する黒い影、黒い犬「タック」を2人は見逃さなかった。
「勝ち逃げなどさせてやるつもりはない」
素早くアキラがタックの逃走経路を予測し先に回りこむ。
タックもその動きに即座に対応し、持ち前の動物としての俊敏な動きで方向を変え逃走経路を変更する。
その変更先に、タックの動きにあわせてレティも回り込む。
「取った!」
レティがそう思った瞬間であった。黒い影はあざ笑うかのようにレティの横をすり抜けるとさらに加速し人混みの中に姿を消した。
●4〜5ターン目
独立して行動していたリュドレイクとレオンはそれぞれ軍事施設と工場区に仕掛けられた爆弾を発見していた。早速支給された工具その他を使い爆弾の解体作業にはいる。
「責任重大‥、責任重大‥」
緊張した表情でリュドレイクは解体作業に専念する。幸いなことにホアキンからチックを捕獲したこと、こちらに向かっていることなどの連絡があった。厳しい作業には違いないが2人で作業すれば効率も上がるはずである。
「ふ〜〜 想像以上に厄介だな」
レオンも慣れない手つきで慎重にひとつひとつ作業を続けていく。チックを捕獲した神音も合流し着実に解体作業は進められていき、そして完了した。
「やっとオシャカになりやがった!」
額の汗を拭うレオンを見ながら冷ややかに神音が声をかける。
「まだ1個解除しただけ、次に行くよレオン」
レオンに少し遅れてリュドレイクとホアキンも解体作業を完了させる。解体された爆弾を前にホアキンは思案する。
「やはり標的は軍事施設なのか? 竹原がバグアに雇われているとしたら‥」
「十分考えられますね、急ぎましょう」
捜索地域を軍事施設と決めると2人は迷わず走り出した。
残る爆弾は2個!
商業区では捕獲作戦の第二ラウンドが始まっていた。今度はポジションを変更しレティが牽制、アキラが捕獲を担当することとなった。
人間の側が行動方針を変更しようともタックにとっては関係ない、彼の仕事は時間の限りこの街を駆け回ることだ。
「今度は負けない!」
レティはタックの動きを見逃すまいと全神経を集中する、背中に浮かび上がる漆黒の翼。だがそれを意にも介さぬようにレティをパスせんと疾走する。
「残念だったな、2度はない‥」
タックの動きを見事に捕らえたアキラの無駄のない動きがタックを追い詰める。そして数秒後に勝負は決着した。2人は籠の鍵が確実にかけられたことを確認して他の仲間に連絡を入れる。
これによりチックとタックの2匹の確保は完了した。後は設置された爆弾を発見し解除するだけである。
●6〜8ターン目
アキラの目は巧妙に仕組まれたカモフラージュを見破った。
商業区を始発とし住居区へ多くの人々を日夜運ぶ交通機関、交通の生命線とも言えるその高架にかかる鳥の巣がそれであった。これが爆発したらどれだけの被害が出るのか予想も付かない、それも竹原が予告した時間は最も交通が混雑する時間であった。
「街中で爆弾? 冗談じゃない。なんとしても止めてみせる」
機体作業は困難を極めた、いやらしいことにこの爆弾は高架につるした状態でないと解除が不可能であったからである。場所が場所である、制限された作業範囲と光源そして時間がさらに困難にしていた。
2人は冷静にそして慎重に作業を続け、かなりの時間をかけて解除に成功した。だがあと1つ爆弾は残っている、まだ気を抜けなかった。
レオンと神音の2人は慎重に探索を続けながら移動していた。そして彼らも都市の北側にそびえる倉庫群の中で爆弾を発見した。この倉庫群は軍事物資は少ないが一般市民の生活に必要な物資、食料や燃料などを多く蓄えていた。
この爆弾の解除も予想外の時間がかかった。想像以上に精緻に造られた起爆装置に難解な配線と外部装置。2人は精神を集中し一心不乱に解除作業に専念する。作業中に通信機が鳴るがでようともしなかった。それは仲間からの通信だと分っていたから、内容は爆弾の解除に成功した、という報告だとわかっているから。
時間はかかった、しかし2人は全ての仕掛けを看破し爆弾を解除することに成功した。
ここに設置された4つの爆弾の解除、及び2匹の爆弾犬の捕獲が完了したわけである。
●エピローグ
完了の報告を受け都市の警備隊や軍隊が用心に再度の探索を行ったが新たな爆弾は発見されなかった、ということだった。
6人の傭兵は解除された爆弾と2匹の犬と共に凱旋した。
「お疲れ様です。 今回の任務ご苦労さまでした」
彼らを送り出した男達、特殊警察部隊の隊長が労いの言葉をかけた。
彼の話によると竹原は即日拘束、送致されるということであった。彼の裏で糸を引いていたものは誰なのか、それはまだ分らないがバクアもしくは親バグアの類であろうという話であった。
「あの、すみません」
チックとタックを連れて行こうとした男にリュドレイクは1つの提案をした。それはその2匹を引き取りたい、という内容であった。帰ってきた言葉はありがちな役人じみた返答であった。
「自分の一存では返事しかねます」
だがひと言付け加えた。
「ご意向が通るように掛け合ってはみます。 この街の恩人のお願いですからね。 でもあまり期待しないでくださいよ」