タイトル:慰問団で僕と握手!!マスター:眼一坊

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/07/14 21:02

●オープニング本文


 ―――くだらない‥‥、どれもこれも。
 彼は提出された企画書の束をを投げ出すと、机の上に足を投げ出しボーっと天井を見上げた。
「戦意高揚ねえ‥、こんなんでどうしろってんだよ」
 彼の目から見ても戦意は上がりそうに思えない企画書ばかりが所狭しと並んでいる。
 彼の名は福中恵一郎、前線慰問企画の担当者である。
 担当者と言っても前任者が神経性胃炎諸々を併発し入院した結果お鉢が回ってきた仕事だ。
 だからと言って手を抜く気は無かった。
 戦意高揚のため? それとも前線の兵士のため?
 そうではない。彼の演出家としてのエンターテイナーとしての血が魂がそうさせていた。
 提出された企画書のような三流メロドラマやラブコメなんか(注・あくまで彼の視点であるが)やっても面白いと思えないのだ。そう面白いもの、それが彼のやりたいものであった。
「どうすっかな、こうなったら自分で企画を上げるか‥‥」
 とはいえ今特に腹案があるわけでもない。
 彼が窓越しに見た空をKVが颯爽と飛び回っていた。と、同時に何かが頭の中を駆け巡った。
「あれ、使えねえか? そんな気がする」
 福中の思考回路が全速力で作動する、彼の知識を記憶をそして夢を絡めあわせ1つの”モノ”を作り出そうとして。その”モノ”はやがて彼の脳から彼の手に指令を与え、その手は無心にキーボードを叩き続けた。
 そして数時間後彼の手が動きを止めたとき1つの”モノ”が彼の前に出来上がった。
 完成した”モノ”を手にし満足そうに微笑むが、1つの不安が生まれた。
「さて、どうやって認可をもらうかな‥‥」
 企画自体はダミーの企画書を出せばなんとかなるだろう。問題は、人であった。
「VKを使いたいんだがうちのスタッフには使えるやつがいねえ。 軍の協力は無理だろうな、そうなるとやっぱり傭兵達かそれもノリのイイやつらが必要だ。 イキのいいヤツが来るといいんだがな‥‥」
 彼はそういって立ち上がった、この企画を成立させるために。
 手に持った企画書のタイトルはこう書かれていた。
『防衛戦隊エミタレンジャー 悪のバグアニアン帝国を倒せ! 最凶キメラ獣出現!』

●参加者一覧

鳥飼夕貴(ga4123
20歳・♂・FT
虎牙 こうき(ga8763
20歳・♂・HA
キャンベル・公星(ga8943
24歳・♀・PN
最上 憐 (gb0002
10歳・♀・PN
陽ノ森龍(gb0131
20歳・♂・DF
フィオナ・フレーバー(gb0176
21歳・♀・ER
片桐 恵(gb0875
18歳・♂・SN
虎神 大護郎(gb1560
21歳・♂・GP

●リプレイ本文

 見事なまでに晴れ渡った青空、それでいて暑すぎず適度な風が吹いていた。まさにステージ日和と言ってよい日であろう、まだ開場前であるが兵士や現地の子供達が集まりバーベキューをしたりとかなりの賑わいとなっていた。
「みんなー今日は集まってくれてありがと〜」
 フィオナ・フレーバー(gb0176)はきはきした声が会場に響く。それに呼応して開場の観衆達が元気な声を上げる。
「今日のステージは‥『防衛戦隊エミタレンジャー 悪のバグアニアン帝国を倒せ! 最凶キメラ獣出現!』だよ〜」
 軽快に進む司会の裏では出番を待つ他の出演者、エキストラ参加する兵士たちがそれぞれの表情で準備をしていた。
「そんなに緊張するこたぁないぞ。 気楽に行け気楽に!」
 福中が皆にハッパをかけるがどれほど届いているか‥、だが福中はそれほど落胆も心配もしていなかった。思いつきで生まれたような企画だ、失敗してもともとと思うところもある。こんな企画に無謀にも参加してくれた傭兵たちの度胸に期待している、というのが今の気持ちであろうか。
 司会の解説が進み、会場の雰囲気がいやおうにも高まる。そして高らかにフィオナが宣言した。
「それでは、“防衛戦隊エミタレンジャー”はじまりま〜す!」

●開幕
 セット及び会場に設置されたバーベキュー会場。皆が仲良くバーベキュー会場に現れたのは‥‥。 
「‥ハム」
 巨大なハムスターであった。
「キャー!! かわいー!!」
 黄色い声が会場をつつむ。つぶらな瞳に、モフモフとした毛に皆の気がひきつけられる。あっという間にハムスターの周りは黒山の人だかりとなる。
 だがその直後、キラリとハムスターの目が光った!
「肉を食べるのは不健康ハム! 肉ばっかり食べてるとメタボになるでハム〜!」
 いきなり近くでバーベキューをしていたテーブルから肉の皿を取り上げる。
「お前、太りすぎハム〜! 野菜をもっとたべるでハム〜!」
 強引に太っている男(当然エキストラ)の口に無理やり野菜を詰め込む。かわいらしい外見と声からは想像もつかないワイルドな行動に、観客は引きつった喝采を上げる。
「あ、あれはバグアニアンのキメラ獣、ゴールデン・ハムスター・キメラ!」
 タイミングよくフィオナが怪人の名を告げる。
「な、なんだって」
「うわあ、キメラ獣だ」
「にげろ、くわれるぞ」
 打ち合わせどおりエキストラの兵士たちが見事なまでの棒読みで合いの手を入れ、逃げ回る。観衆達も当然演出と分っているが悪乗りして騒ぎまくる。
「食事の後は運動だハム〜」
 それに合わせてスーツアクターを担当しているキャンベル・公星(ga8943)はノリノリで戦闘員(もちろんエキストラ)を引きつれ巨大ヒマワリの種を持って大暴れだ!

●ヒーロー登場!
「そ、そこまでだ! キメラ獣、ゴールデェン・ハムスターぁ!」
 どこからかいきなり雄たけびが響く!
「だれだハム!」
「ここだあ!」
 一斉に皆が目を向けたところにいるのは、セットされた高台にいたのは赤いバンダナに赤いジーンズの熱血漢、レッド役の虎牙 こうき(ga8763)!
彼は颯爽とセットから飛び降り、名乗りを上げるはずであった。
「熱き烈火のけぇ‥」
 ずどおぉん!!! 
 だが、見事なまでに着地は失敗する。
「あぁ‥熱き烈火の化身!、エミタフレイム参上!」 
 やっちまった感MAXな顔で一応見えはきり終えた。会場には微妙な空気が流れていたが‥。
「俺たちが来たから、もう安心だよ。」
 そんな空気を一切気にせずクールに倒れた女性を助け起こす。
「水のように穏やかに、ときには激しく荒れ狂う エミタアクア」
 水色の大きめサイズのTシャツにGパン、ブルー役の鳥飼夕貴(ga4123)はその端正な表情のままさらりとした名乗りをあげると、女性客であろうか一部で黄色い声が上がる。
「‥‥ん。 カレーに代わってお仕置き、エミタカレー参上」
 上手からイエロー役最上 憐(gb0002)も黄色をベースの衣装でさりげなく登場。
「おのれえ、エミタレンジャー! お前達は永遠に走り続けるハム」
 ゴールデン・ハムスターの特殊攻撃が炸裂する!突然現れた巨大なハムスター回転車にレッドとイエローはとらわれてしまう!ブルーは華麗によけたはずだった。
「おや? これはどうして」
 彼の横には先ほど助けた女性が立っていた。
「まんまと引っかかっっりましたわねエミタアクア! わが名はバグアンクイーン」
 その女性(?)悪の女幹部バグアンクイーン役の片桐 恵(gb0875)はばっと衣装を脱ぎ捨てる。その下から現れたのはいかにも悪の幹部とわかる黒を基調とした露出度の高い衣装であった。またもその中性的な魅力(?)に微妙な歓声が上がる。
「さあ、やっておしまいなさい! ゴールデン・ハムスター!」
「ハム〜! 回転数アップだハム!」  
「ちくしょう、なんてやつだ!」
 回転数の上がった回転車の中で走り続けながら叫ぶこうき、他の2人も走り続けている。だが3人は1つの結論を導き出し大声で叫んだ。
「へ、変身!」
「変身」
「‥‥ん、変身」
 3人のエミタが輝く!
 そこ現れたのは赤いバンダナに赤いシャツ、炎の模様のジーンズのエミタフレイム! 露出度の高い青い衣装に変わったエミタアクア!
 そしてなぜか衣装は変わらないが手にカレーを持ったエミタカレー!
「‥‥ん。外見変わって無いのは気にしない。 カレーが黄色。 気にしたら負け」 
「変身してしまいましたか、ええい行きなさい! 戦闘員達、ゴールデン・ハムスター」
「えい! ヒマワリの種攻撃ハム!」
「く、くらえ爆裂キック!」
「アクアカッター」
「カレーイリュージョン」
 ゴールデン・ハムスターの攻撃を避けつつ、戦闘員(当然エキストラ)たちを次々と撃破していく3人。そして残るはゴールデン・ハムスターとバグアンクイーンのみ。
「ええい、忌々しい! やりなさいゴールデン・ハムスター!」
「ハムハム‥‥」
「ゴールデン・ハムスター?」
「ハムハム‥‥」
 夢中でヒマワリの種を食べているゴールデン・ハムスター、彼の目はあるものを捕らえていた。そう、エミタカレーが手に持つあるものに。
「‥‥ん、ヒマワリの種はカレーの付け合せにサイコー‥」
 引き寄せられるようにニジリニジリと歩みを進めようとするが、悪しいが短いためになかなか進まない。
「カレーアタック」
 その足をめがけて見事な足払いが入る。
「足払いとは卑怯ハム〜。 起き上がれないでハム〜」
「バ、バカキメラ! 早く起きなさい!!」
 ひっくり返り手足をじたばたするゴールデン・ハムスターをなんとか起こそうとするバグアニアンクイーン。あまりの慌てぶりに会場が笑いの渦が起こる。
 この隙を3人は見逃さない、必殺技を一気に繰り出す。
「必殺!」「合体!」「エミタボンバー!」
 3人のエミタが一度に輝くとゴールデン・ハムスターが3色の爆炎につつまれる。会場に大喝采が起こる。
 その爆炎の中から抜け出したバグアニアンクイーン。
「おのれ、エミタレンジャー! ええいキメラ大復活の術! 復活せよ巨大ゴールデン・ハムスター!!」 

●そして巨大ロボ登場
 舞台裏で陽ノ森龍(gb0131)と虎神 大護郎(gb1560)は恵の台詞が聞こえてきたことで自分達の出番がやってきたことを理解した。
「しっかしまあよく作ったもんだよな、こんなの」
「全く全く」
 舞台裏に用意された2体のVK、といってもハリボテが全身を埋め尽くしていてどう見ても巨大ロボと怪獣にしか見えない。しかし驚いたことに全くと言っていいほど動きを阻害するものがなく自由に動かすことができた。
「ほんじゃまあ、いってみますか」

 会場には巨大化したゴールデン・ハムスターが登場し大喝采を浴びていた。
 負けじと3人も巨大ロボを呼ぶ。
「緊急出動だ、エミタロボ!」
 彼らの呼び声にあわせてエミタロボが登場、またまた大喝采である。
 そして始まる大戦闘!
 巨大ゴールデン・ハムスターはその巨体に似合わぬ俊敏な動きでエミタロボを撹乱する。見事なまでのヒットアンドウェイを繰り返しエミタロボを追い詰める。
 だが巨大化しても弱点は変わらなかった。エミタロボの反撃を足に受け会場を揺るがすほどの衝撃でひっくり返った。
「なにをやってるんです! なんで大きくなってもダメなの!」
 バグアニアンクイーンの悲鳴もむなしく、エミタロボは必殺剣を抜き放つ。
「エミタブレード! 地球防衛エミタ切り!!」
 必殺の一撃を受け、巨大ゴールデン・ハムスターは大爆発を起こす。今までで最高最大の規模で。
「くやしい〜、お、覚えてなさい〜!」
 お決まりの捨て台詞を放ち退場していくバグアニアンクイーン、その姿に笑いと拍手が起こったのは言うまでもない。

●閉幕
「みんな〜、お肉はしっかり行き渡ってるかな〜」
「あ、悪のバグアニアン帝国は追っ払った、ぜ」
「後はゆっくりバーベキューを楽しんでください」
「ん‥‥、あとカレーも」 
 会場はカーテンコールが始まり拍手につつまれていた。
「まあなんとかなったな」
 そでで福中は呟いた。お客は楽しんでくれた、傭兵達もいい動きをしてくれた、それに何より自分が楽しかった。それで十分じゃないか。
 そして福中は決めたのである。

 次から慰問団はこのパターンでいこうと。