●リプレイ本文
●オープニング
「隊長! 第一部隊、配備完了です!」
「第二、第三部隊も配備完了です!」
「全部隊配備完了したしました!」
隊員達が大きな声で報告する。
「よし! 聞けお前ら!」
隊長の声に集合した隊員達は身構える。
「我々の仕事は彼ら傭兵達が戦いやすいように球場近くに他の敵を近寄らせないようにすることだ! われらの心意気をくんでくれた彼らのためにも決して気を抜くな!」
波のような歓声があたりを包む。それを聞きながら全体を見渡し、そして隊長は大声で叫んだ。
「作戦開始! お前らもう1度必ずあの場所で、俺たちの夢のダイヤモンドで会おうぜ!!」
隊員たちは大声でその叫びに答え、駆け出していった。
●戦闘開始
球場に覆い被さるように2匹のキメラ、亀のようなキメラと蛇のようなキメラは静かに佇んでいる。球場全体を覆う甲羅はまるでドーム球場の屋根のようにも見える。
傭兵達は当初に立てた作戦通りに分散し三方から球場に、キメラに訓練された見事な身のこなしで迫る。
正面からA班、漸 王零(
ga2930)と相良風子(
gb1425)が接近する。
だがキメラたちもこれを察知する、亀キメラは上体を上げる。その甲羅からはえる頭と四肢は醜悪な色と形であった。亀キメラの周りをウネウネとうごめく蛇キメラは正面から駆けてくる2人を確認するとその大きな口をさらに大きく広げる。
「亀と蛇か。 まるで玄武の様だな」
「巨大な亀と蛇‥ 投下でもされたのか、空でも飛んできたのか、想像は尽きないわね‥」
2人が各々考えているところに蛇キメラの口から高速の水弾が射出される。
圧倒的なスピードで2人に迫るがこの水弾を2人は容易く回避する。
蛇キメラは次々と水弾を射出するがこれを2人は軽々と回避していく。
その隙を突いてキメラの後方に回り込んでいた6人が左右の後方から接近する。
「青春と友情と栄光の場所を荒らすキメラ! 絶対赦さないぜ! 俺たちが退治してやる!」
「紅天弓姫参ります!!」
B班の棗・健太郎(
ga1086)、王 憐華(
ga4039)、早坂冬馬(
gb2313)の3人は左後方から接敵する。
「野球は大嫌いだった」
蛇キメラに切りかかりながら冬馬は苦笑いした。かつて運動神経の悪かった彼にとって球場などという場所はろくな思い出がない、あったのは罵声と嘲笑。
「だが、それとこれとは関係ないな。 男たちの暑苦しい情熱は嫌いじゃない」
正面を攻撃していた蛇キメラは避けることもできるはずもなく、冬馬の攻撃をその身に受ける。冬馬の機械刀が蛇キメラの体を容赦なく切り裂く。
「甲羅の隙間発見!」
健太郎が亀キメラの甲羅の隙間を狙って刀を振り下ろす。それを援護するように憐華も弓を放つ。
――ガッキィィィ
しかし返ってきたのは鈍く、硬い音そして刀から伝わる痺れだった。攻撃を受けた箇所からは多少の体液は噴出している、ダメージが全く無いわけではないようである。
「やはり甲羅は硬いようなのです、それではこれなのです」
右後方から接敵していたC班のシーク・パロット(
ga6306)は稲妻のような露汰で亀キメラに切りかかる。甲羅の表面を電撃が走りその一部を砕く、そして悲鳴を上げる亀キメラ。その声は痛々しい苦しみがこもっていた。
これで彼らは確信した、この敵のこのキメラの弱点を。
「高校球児の夢ねー‥。 蛇トカゲどこかなーっ♪」
「まずは、こっちから! 」
蛇キメラに狙いをつけた風花 澪(
gb1573)が仕掛ける。それに合わせてフィオナ・シュトリエ(
gb0790)も仕掛ける。
2人の攻撃は確実に蛇キメラにダメージを与える、蛇キメラの表皮が切り裂きちぎれ体液を辺りに撒き散らす。
だがその傷の一部がみるみると再生していく。その姿には恐ろしいまでの生命力を感じさせるものがあった。
「さて、始めましょうか‥」
しかし水弾を避けきり接敵した風子が蛇キメラに強烈な一撃を加える。この一撃も確実に蛇キメラの体を切り刻み、ダメージを与えていく。
蛇キメラは傷つきながらも自分に傷をつけてきたもの、傭兵達に最後の力を振り絞り反撃を試みる。だがしかし彼らはそのことごとくを華麗に回避する。そして冬馬の次の一撃が蛇キメラにとどめを刺した。その体を一度棒のように硬直させると亀キメラの甲羅の上を朽ちた荒縄のように、すべるように場外へ落ちていきそして動かなくなった。
「思ったほどではなかったか、後は亀だけだな」
全員の目が視線が亀キメラに注がれる。
亀キメラはその気配を察知したのか攻撃することも放棄して防御体制に入る。その姿は完全にドーム球場であった。球場の上面は完全に甲羅で覆われ中を覗くこともできず
側面の隙間もほとんど確認できない。
傭兵達は一応甲羅の上から攻撃を仕掛けてみるが思ったほどの効果は出ない。それどころか傷ついた一部の甲羅は徐々に再生していく。球場への被害を考えると今の状態では効果的な攻撃は望めないと判断し一時攻撃を中断し様子を見てみることになった。
その後何度か亀キメラが頭を覗かせた時に攻撃を仕掛けてみたがこれもまた効果的な結果を残せなかった。
そして一度合流して検討することとなった。それによって出た結論は『多少の被害を考慮しての攻撃』であることなった。行動としては至極簡単であった。
球場の入り口から球場内部へ侵入し攻撃するというものであった。
彼らは即行動に移る。入場ゲートをくぐり抜けグラウンド内に足を踏み入れる。
「これが夢の舞台、ね‥」
誰かが呟いた。夢の舞台には4本の醜悪な柱が、亀キメラの巨大な四肢がそびえ立っていた。
「さあ、ダイヤモンドのカメさんを鼈甲細工にしてしまいましょうか」
「さっさと立ち退いてよね!」
「この突きをくらえええ!」
一斉に攻撃を開始する。さすがに甲羅のない腹部への攻撃である。甲羅を攻めた時とは違いあっさりといえるほど簡単に切り裂かれる。
突然の攻撃に亀キメラも応戦を試みる。しかし真下の敵を攻撃するには自身の体は巨大でそして亀キメラにとってグラウンドは非常に狭かった。
そして亀キメラは最後の手に打って出た、逃げるという手に。その四肢を甲羅の中に収めるとその巨体を回転させながら浮遊を(原理は不明)始めたのである。
それを見逃さずに王零と憐華の2人が追撃をかける。
「逃がしはしない!! 流派一刀参式‥‥跳翔閃!」
「亀なら亀らしく‥‥地面の上に這い蹲っていなさい!!」
二人の攻撃を受けて浮遊もままならなくなったのか亀キメラは地上めがけて落下を始める。そして三塁側アルプススタンドの一部を破壊して場外に落下した。奇しくも先ほど落ちた蛇キメラの上に、そして裏返しに。まさに手も足も出ない状態であった。
言うまでもなく数分後、亀キメラも生命活動を停止した。
●エピローグ
「俺たちの‥」
「俺たちの夢の舞台が‥」
「帰ってきた‥」
戦闘の終了した球場に続々と隊員たちが集まってくる。
集まってきた隊員達は自分達の負傷も忘れて涙を流していた。周辺はキメラの死体処理もすんでいないためにかなりの異臭と惨状なのであるが彼らには関係ないようであった。
「兄ちゃん達、悪い奴は滅んだよ! これで目指せ栄光の場所に!」
健太郎の手を取り何度も俺を言う者、シークや憐華と一緒に球場の修理や整備に向かう者。個々の行動や反応は様々だが、誰からも喜びのオーラが湧き出していた。
帰ってきた夢の舞台、取り戻した夢の舞台。
この夢のダイヤモンドが彼らのオーラで鮮烈な輝きを放っていた。