●オープニング本文

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　？？？
「カーペンタリア湾のカルンバが敵の手中に入りました」
「そう‥‥これも運命。物資は――東部沿岸から補給は可能ですか？」
　バグアの司令官に幹部が報告している。
「はい。カルンバから補給が必要な西部との隣接した『シェルター』の移送は既に終わっております」
「前に行った所も、確か受け入れの所でしたね。最も――あちらは幾つかある強化人間の研究所兼プラントという側面も有りましたね‥‥」
　バグアの司令官らしき人物は、クックタウンの「シェルター」の概要に目を落とす。
「えぇ。万が一を考え、貴重なスタッフである博士は既にコチラへ呼び寄せております」
「そう‥‥データさえ在れば生産も可能だと言ってみたいですね。そうね‥‥出来るのであれば‥‥巻き戻し出来れば‥‥」
　司令官は、強化人間の報告書に目を落とす。
「あら？　これは‥‥」
　其処には『自爆型』と書かれていた。

　●
　悪夢。
　１９ＸＸ年　ソビエト某所。
　戦場を戦友とともに駆けるエカテリーナ・ジェコフ（gz0490）其処は地獄だった。
　言うなれば一蓮托生。互いに頼り、互いにかばいあい、互いに助け合う。
　一人が三十二人のために、三十二人が一人のために。だからこそ戦場で生きられた。否、生きてこれた。
　小隊は兄弟。小隊は家族。血縁よりもきつい結束。
　だが、疑心に歪んだ暗い瞳がせせら笑う。
「クソッ！　包囲された！」
「内通者がいるな」
　優勢のはずが敵に囲まれる事態――味方は内通者を疑って居られなかった。
「嘘を言うなっ！」
　エカテリーナは考える。
　傲慢、怠慢、怠惰、思い上がり‥‥どれ一つ取っても戦場では命取りとなる。
　それらを纏めて無能で括る。誰が仕組んだ地獄やら‥‥政府か？　民族か？　それとも‥‥？
「クソッタレ！」
　何が「世界平和」だ。嗤わせる。
「お前も！　お前も！　お前も！　私のために死ね！」
　エカテリーナは包囲した敵兵を倒していく――自身のために。

　――。
　
「クソッ！　やな夢を思い出した」
　硬いベッドから起き上がるエカテリーナは顔の傷をさする。

　●
　エリミー抑留先
「ほれ。ガキと知り合いの傭兵からの手紙だ」
「ありがとう」
　エリミーに手紙を差し出すエカテリーナ・ジェコフ（gz0490）。
「ガキ共が『会いたい、会いたい』つってるが、強化人間では無理な現状だな」
「‥‥」
　現状を報告するエカテリーナ。
「ガキ共だけじゃない――他からの嘆願があればまた、元に戻る治療も別だろうが」
「でも‥‥」
「あぁ、そうだ。現状では声が少なすぎる‥‥」
　
　
　●
　カルンバ
　持ち込まれた依頼――
　コワマニャシェルター付近にある食料庫――周囲の「シェルター」への食料供給のために存在している為、大規模だった。
　上陸を受けて放棄されたように思えたが――。
　付近の「住民」がその食料庫の開放のためにULTの出張所へ依頼を持ち込んできた。
　彼ら「住民」は――シェルターに属していない、否、シェルターから除外され、貧しい暮らしを強いられてきた人々だった。
　
　
　●
　食料庫――
「奴らはきっと来る――そしていい実験台になるのだ」
　白衣をきた男――バグアがカーペンタリア湾の方を見ている――その隣には、目が虚ろな年端もいかない子供達。
　首には――チョーカーのような物が付けられている。
「さすがの奴らも――油断するだろう――其処をボンッ　だ」
　

●参加者一覧

●リプレイ本文

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　オーストラリア　コワマニャ　
　
　倉庫周辺――。
「今回の任務は、食料庫の解放ね。‥‥罪無き子供達は、何としても助けなければね‥‥」
　食料庫の開放と――子供を救出しようと考えているのは風代　律子（ga7966）。
「倉庫か‥‥さてどうするか」
　義手を戦闘モードに移行させる湊　獅子鷹（gc0233）。
　（バッテリー残量85パーセント、アイギス、CPU及び筋電位感知センサー通常モードから戦闘モードに移行）
「状況を確認しない事にはね‥‥」
　倉庫周辺を双眼鏡で確認している狐月　銀子（gb2552）。
「大きい組織みたいだしな。シェルターってのは」
　隠しカメラがないか警戒しているナスル・アフマド（gc5101）。
「バグアが子供たちを‥‥こんな事はもう何度目でしょう」
　立花　零次（gc6227）は双眼鏡使用でなるべく見つからないように伏せた体制で周囲を確認する。
　倉庫に入り口前に十人の子供達とモヒカンな強化人間が三人。位置としては子供達の前に強化人間がいる格好だ。
「何か、ひっかかるな。何かと言われても困るが強いて言うならうまくいきすぎている‥‥」
　幾多の依頼の経験から妙な引っ掛かりを覚えているのは美具・ザム・ツバイ（gc0857）。
「強化人間が3人だけで、キメラはなしか。妙に戦力が少なくないか？」
　ハンフリー（gc3092）もまた、この事態の奇妙さに違和感を覚えていた。
「‥‥子供を人質とか、もうやんなるね。そろそろ我慢できんくなりそう‥‥」
　憤りはするものの父の教えで怒らない様にしているのはクラフト・Ｊ・アルビス（gc7360）。
　
　様々な思いが交差し、倉庫前に着く。
　
　●交渉――
　倉庫前に対峙する交渉役の傭兵と強化人間。
　交渉班は――狐月、美具、立花、ハンフリーの三人だ。
「三人だけでやり合って勝ち目あると思う？」
　口火を切ったのは狐月――彼我の戦力差を武器に交渉に臨む。
「俺らは精鋭よ！　貴様らを倒すためのな！　ソレにこのガキどもがどうなっても知らねぇぞ！」
　一人の子供を突き出し、こめかみに銃を当てるモヒカンの強化人間。
「‥‥」
　（そもそも敵の目的が判然としませんね。利用価値の低い食料庫にわざわざ十人もの子供を人質に？　これは何かある、か）
　その様子を釈然としない様子で見ていた立花は強化人間と子供達をつぶさに観察する。
　（立てこもった強化人間と、人質の子供達。嫌というほど見てきたシチェーション‥‥）
　感じる違和感に腑に落ちない何かを見極める為に観察する美具。
　（揃いのチョーカーか‥‥何かあるな）
　装飾品――チョーカーに違和感を覚えるハンフリー。
「ホントにそうかしら？　子供を解放するなら逃がすわよ？」
「解放すれば倉庫には手を出さない」
　（共通のチョーカー？　そもそもなんで逃げないのだ？　そして、気力のない目をしている‥‥）
　更に狐月のフォローを入れながらも子供の様子に注意深く見る立花。
　（違和感が多すぎる――虚ろな目に揃いのチョーカー‥‥逃亡防止‥‥いや‥‥？）
　先頭に立ち交渉している後ろで美具と立花とハンフリーが互いに違和感について相手の強化人間に見つからぬように相談している。
「あ？　何言ってるんだ？」
　
　交渉は決裂した――。
　
　一方、強襲班。
　強襲班には風代、湊、ナスル、クラフトの四人だ。
　交渉開始時まで遡る。
「助けなきゃ‥‥」
　双眼鏡を使い子供達の動向に注意しつつ、建物や人員の配置等を調べている風代。
　子供達は年端もいかぬ少年５人，少女５人といった組み合わせだった。
「食料庫でガキを人質にとって立てこもりか、エゲツねえな‥‥」
　（立てこもってるって事はガキになんか細工をしている可能性があるか）
　バグアのやり口に言葉を漏らしつつも不測の事態を警戒する湊。
「鬼が出るか蛇が出るか‥‥」
（戦い、争えるならどんな結果でも構わん。邪魔をするなら人質でも排除するだけだ）
　交渉の行方を見ながら待機しているナスル――流血の予感をさせながら。
「オーストラリアをこれ以上侮辱するな‥‥もうちょっとだけ我慢しててね、すぐに何とかするから」
　行われている交渉を見て憤りつつも冷静さを維持しながら子供の救出を考えるクラフト。
「サクッとやりゃあいいんだがなぁ‥‥」
　『過去の』のテロリストとの対峙を思い出し、強硬手段を取ろうと考えていたのはエカテリーナ・ジェコフ（gz0490）。
　子供という存在を利用する、という手段はその現場に居る人間を惑わせる事がある。だが、子供にだって相手を殺害する術は持っている。油断をして倒されるのは、こちらなのだ。
「‥‥首元に全員同じチョーカーをしている？」
「ありゃあ、臭うな‥‥」
「逃走防止か、何かの装置か？」
　子供達がしている揃いのチョーカーを不審に感じたナスルと湊とエカテリーナ。
　他のメンバーにも其の情報を伝える。
「チョーカーね‥‥もしかしたら‥‥いえ‥‥でも‥‥」
　何か思い当たることでも思い出したのだろう、思いついては否定する風代。
「どうかしたか？」
　そんな風代の様子を気にした湊。
「バグアは‥‥いえ‥‥もし、強化人間だとしたら‥‥証拠隠滅の自爆があり得ると思ってね」
　強化人間には自爆機能があるものが多いことを思い出した風代。
「ガキどもが人じゃないだと？」
　ナスルは風代の言葉に聞き逃せないともう一度言うように言う。
「最悪ね、子供達も強化人間の可能性が否定出来ない――」
「何処までバグアは人類を――オーストラリアを愚弄するんだ」
「その時は――やるしか無い」
　一般人やUPC軍にとってバグアは、強化人間も含めて憎悪の対象とされている。仮にここで強化人間を助けたとしても、治療して助けてやる事は難しい。
　戦闘となれば、子供であっても容赦する事はできない。
「そうかどうか、交渉が終わって確かめればいいだけだ」
「だとしたら『敵』だ、容赦しちゃ、ガキでもこっちが殺られるぞ」
　風代の最悪の予想に憤るクラフトに止むなしと判断する湊と簡単なことだと言わんばかりのナスル、昔の紛争の経験から警告するエカテリーナ。
「だとしたら、あの強化人間が起爆装置を持っている可能性も否定できないな」
　強化人間を速やかに排除すべきだと言う湊。
　周囲を警戒しながらも、交渉中を利用して徐々に接近を図る強襲班。
　
　そして――。

「あ？　何言ってるんだ？」

　交渉は決裂する。
　
　●掬えぬ、こぼれ落ちるモノ
　
　交渉の決裂と同時に強襲をかける強襲班。
「お前達の敵はここにいる。美具を見よ、ついてこい」
　援護するように美具は『仁王咆哮』を使い、敵を引き付ける。
　さらに「制圧射撃」を仕掛け、「閃光手榴弾」も使う。
「はっはあぁぁぁ！くたばれやぁ！
　引きつけ、援護を受けているうちにナスルは和槍の「鳴神」で一人の強化人間の足を突いて無力化させる。
「てぇぃ！」
　敵の攻撃をしっかりと確認して「【OR】防御用義手『アイギス』」で敵の攻撃を捌き、掌打やバックブローなどの打撃のフェイントを混ぜ、もう一人の強化人間に肉弾戦へ移行する湊。
「せぇい！」
　「 脚甲「望天吼」」を駆使しローキックや前蹴りを混ぜた攻撃も繰り出して圧倒する。
　
　戦況は――圧倒的な状況で移行しようとしていたが――。
　
「離れろ！　テロ屋の手段だ！」
　
　刹那――辺りが閃光と爆発に包まれる。
　
　
　僅か少し前――。
　強襲と同時に「瞬天速」で子供達の背後に回ろうとする風代。
　そして。
「‥‥でもその前に、心は痛むけど‥‥」
　同じく、子供達に接近するクラフト。
「‥‥」
　二人の接近に反応する子供――そして、土埃により、子供達にFF反応が出る。
　
「離れろ！　テロ屋の手段だ！」
　最悪の事態が的中し絶叫するエカテリーナ。
　先手必勝と攻性操作を使い強化人間からの起爆阻止しようとするハンフリー。
　だが、「子供」は強化人間の自爆機能を使った自己自爆故に起動阻止ができなかった。
　とっさに「絶対防御」を使う美具。
　そして、次の瞬間――後ろに回り込んだ風代に反応し爆発する「子供」、否、「強化人間」。
　
　ほぼ同時に爆発した爆風は広範囲に味方の強化人間や風代、クラフト――強襲班や説得班を巻き込む。
　
　爆風が止む。
　
　爆音が嘘だったように静まり――。
　
　土埃が消えた後――其処には巨大なクレータが出来ていた。
　唯一、「絶対防御」で防いだ箇所を除いて。
　
　全ては無に還った――強化人間も、倉庫も。
　
　だが、無傷とはいかなかったが――傭兵達は無事だった。


　そう――「傭兵達」は。


　For　the　failed　mission，route　changes．


　To　Be　Continued‥‥