●リプレイ本文
●反撃開始〜
騎兵突撃のラッパに見送られ東オーストラリアの空をヘリが征く。
15班からなる侵攻部隊は傭兵を載せたヘリと護衛のヘリを合わせて4機編成となっていた。バラけるとはいえ60機からなる大部隊による作戦であった。
エカテリーナ・ジェコフ(gz0490)一行の傭兵達を乗せたヘリもその中の一つだった。
「そろそろ、オーストラリアから戦いを除かないと…」
クラフト・J・アルビス(
gc7360)はヘリのドアから見えるオーストラリアの大地を見て呟く。
出来るのであればこのオーストラリアの地で血を流すことは避けたいとも考えていた。
「がんばろうね、クラフトさん」
その呟きに答えたのはクラフトの恋人であるモココ(
gc7076)だ。
(あの士官‥‥それに争いを食い物にするあの傭兵‥‥でも、自分もそうでなければ生きていけない‥‥)
クラフトには悟られないようにしながらもモココはブリーフィングの様子を思い出し苛立っていた。
「‥‥」
(何をそんなに怒ってるんだろ?)
様子を盗み見ていたエレナ・ミッシェル(
gc7490)。
「アノ時は申し訳なかったね〜。地球の生命からの頼みごとがなければ我輩も君と同じ考えだったのだがね〜」
ドクター・ウェスト(
ga0241)がエカテリーナに前の依頼について謝罪してきた。
「あの状態じゃ仕方ない。気にしてないな」
結果としては判断が間違っていなかった為、エカテリーナは気にしていないようだった。
「ヘリか‥‥落下傘が懐かしい」
そう呟くのはクラーク・エアハルト(
ga4961)。
「お、空挺か?」
エカテリーナがその呟きに興味を示し様だ。
「USA陸軍第82空挺師団所属だった」
「へぇ、あたしはロシア内務省特殊部隊さね」
しばし、歓談する二人だった。
「よーっす、エカテリーナ。よろしく頼むぜ?」
「リック、今回もよろしくな」
リック・オルコット(
gc4548)がエカテリーナに声をかける。
「AUKV着込んだのが二人もいると、流石に狭いね?」
ちなみに着込んでいるのはリックと大神 直人(
gb1865)だ。
「ま、仕方ないさ。その分期待してるからな」
AUKVを着込んでいるリックの肩を叩いて答えるエカテリーナだった。
「よーし、制圧制圧♪ 殲滅するだけって他に考えなくていいから楽でいいよね!」
どこかネジの外れた天真爛漫な発言をしたのはエレナ。
「ピクニック気分だな」
皮肉でもなんでもなく聞いたままの感想を言うエカテリーナ。
「うん! でもやっぱり戦争終わっちゃうと世界はつまんなくなっちゃうのかな? 少なくともお金稼げなくなるのとスリルが無くなるのは確かだよねー」
「三文小説のように最後の敵は人‥‥相手がバグアから人に変わるだけかもな」
エレナの言葉にエカテリーナはポツリと呟いた。
●襲撃
ヘリが目的地へと接近しつつあり、高度を下げていく。
「目標を発見」
ヘリパイが搭乗している傭兵たちへ連絡する。
地上の「シェルター」に併設され、塹壕で防御された警備施設を目視することができた。
一方――友軍機
「神経戦だ!」
意気揚々と音響のスイッチを入れる――。
友軍機のヘリから大音響のクラシックが流される。
「おい! ここはベトナムじゃねんだぞ! 音楽を止めさせろ! クソッタレが!」
あまりな行動にキレるエカテリーナ。だが、音楽は止まらない。
「見つかったようだね〜、早く降りて迎撃なりしたほうがいいのではないかね〜」
傭兵たちの襲撃に慌てた様子の強化人間をウェストが発見し着陸を急がせる。
「ドアガンナー代わりでもやってますよ」
大口径ガトリング砲をドアから向けたクラークが地上に向けて攻撃を開始する。
「元KV用兵装からの転用、自分くらいですかねこんなの担いでるの‥‥HWが出てきても対抗できますよ」
そう、クラークが手にしてるのは元はといえばKV用のガトリング。それで強化人間を攻撃をすれば‥‥。
「‥‥ミンチ・メーカーとでも名乗るか。人に向けて撃つものじゃないね」
けたたましい音と激しく排莢されて薬莢が跳ねる。銃撃音とクラシックの旋律が木霊する。
塹壕に設置された銃座を狙い、短SAMを背負っ
強化人間をミンチに変えていく。
護衛のヘリがチャフとフレアを撒き、ロケット弾で攻撃して傭兵達の強行着陸を援護する。
あちらこちらに上がる爆発と煙。爆煙をスモーク代わりに強行着陸を図ろうとするヘリ。
「RPG!」
クラークが叫ぶ。強化人間がRPGを発射するがヘリがすんでの所で回避、回避したRPGの遅延信管が起動し明後日の方向で爆発する。
着地寸前の高度に差し掛かった時――
モココが飛び降り着地する。
「おいおい! FAC(前線航空管制官)の真似事か!」
我先に飛び出したモココの行動に突っ込むエカテリーナ。
着地したモココは機動力を生かして敵の攻撃を集中させている。
モココの作ったその隙にヘリは砂埃を上げながら着地する。
「GO! GO! GO! MOVE! MOVE!」
他の傭兵の展開をガトリング砲で援護しているクラーク。すぐに展開するように掛け声をかける。
その掛け声に続々と残りの傭兵が駆け足で降りてくる。
ウェストが、大神が、リックがエカテリーナと共に、クラフトはすぐにモココの元へ駆けつける。
「行け!」
「いくよー」
最後まで共に援護していたエレナを行かせるクラーク。
最後のエレナを見届けると自身もヘリから降りていくとすぐさま離陸していく。
先見の目を発動させたウェストが敵へ向かって走って突撃を開始。
「まあ、油断せずに行こうか? 終わったら、また飲もうや」
「ああ」
エカテリーナとペアを組んだリックは互いに攻撃を仕掛ける。
「雑念は命取り‥‥だったよね」
一手に敵を引き受けていたモココを守るべく側に向かうクラフト。
「ありがとね、モココ。オーストラリアで戦ってくれてて」
自分の国のために戦ってくれているモココに感謝の念を伝えるクラフトだった。
モココを傷つけぬように共に戦うクラフトであった。
「‥‥これ以上オーストラリアを汚すな‥‥」
囮として動いていたモココは仲間の傭兵が展開したことを確認すると、攻勢に出た。
ちょうどその時、クラフトに感謝の念を伝えられるモココ、そして、クラフトと共にペアで戦う。
踏み込むフェイントを使って空振りさせ、その隙にクラフトが、モココ自身が、死角に回って止めを刺す。
「邪魔だからさっさと死んでくれないかなっ!」
覚醒している為か、強化人間を倒すことには戸惑いがないモココであった。
「‥‥」
(モココさんはどう動くのかな?)
エレナは攻撃しながら、囮になりクラフトと共に戦いっているモココの様子を探っていた。
「称号は伊達じゃない!」
二丁拳銃で「援護射撃」を発動させて銃撃をしているのはエレナだ。
「落とす!」
「撃ち落し」を使い、塹壕から発射されたRPGを撃ち落とすのに成功した。
そして、確実に倒すために二丁拳銃で強化人間の頭部を狙う。
「尋問用に――」
エレナは情報源として隊長らしき強化人間を抵抗できないように確保するが――。
「自爆されると厄介です」
「自爆されるのがオチだ」
「あっ!」
だが、自爆を警戒するクラークとリックによってエレナの目の前で倒される強化人間。
大神とクラークは後衛として攻勢の支援に回る。
「鉛玉をたっぷり喰らいな」
制圧射撃をして敵を牽制しているクラーク。お陰で敵の攻勢を削ぐことに成功した。
「けっひゃっひゃっ、『地球の生命』の味方、我が輩はドクター・ウェストだ〜」
電波増強で知覚を上昇させエネルギーガン、機械剣で執拗に敵を屠るまで連続攻撃を繰り返すウェスト。バグアに対する憎しみがウェストを突き動かしている。
「引き籠られると厄介だからね。さっさとつぶすとしようかね?」
「だな」
塹壕と施設を一瞥して言うリックはウェストのスキルの範囲内で射撃しつつ刀で近接の応戦を行なっている。
「悪いが、報酬の為に死んでくれ」
武器を持つ腕や武器を狙い、無力化させてから自爆するような隙を与えずに倒すリック。
「使えるものは何でも使うさね。生き残る秘訣さ」
ただ闇雲に攻撃していた訳ではなく、塹壕や遮蔽物を利用しつつ、ペアのエカテリーナと共に互いの死角をカバーしならリックは戦っていた。
「我輩には不要だというのに〜」
時折、どこからか援護を受けるも、必要ないとばかりに不機嫌だと主張するウェストだった。
施設の制圧するため向かうモココとクラフトのペア、エレナ、リックとエカテリーナのペア
施設突入を援護するクラークは塹壕に向かい跳弾を使用し潜む敵を攻撃し、大神も小銃で援護する。
クラークは大神に援護を任せて施設の制圧する傭兵達と合流する。
塹壕を超え、施設へ侵入する傭兵達。
「伏せて!」
施設内で抵抗を受けるが――閃光手榴弾を使って敵を牽制し攻撃する。
「クリア!」
施設の制圧は軍事経験のあるクラークがメインになりエカテリーナが補助をして、制圧を行なっていった。
小規模な建物故、幾つかの部屋をクリアリングすると通信機器のある部屋を見つけることができた。
増援阻止と次の襲撃の警戒阻止の為、通信機の破壊をモココは行う。
「ん?」
クラークが書類らしきものを見つけ、確保したようだ。
施設の制圧を終えて施設から出てくるとちょうど戦闘が終わったようだ。
一方――
施設突入前に遡る。
施設突入組とは別に大神、ウェストが残って戦闘を継続していた。
「強化人間は『バグア』だろ〜 『バグア』は滅ぶのだ〜」
恨みが故か敵に執心なウェスト。言葉通り、息の根が止まるまで攻撃をやめない。
「援護は‥‥」
大神は援護されるのが嫌いなウェストの為、極力緊急事態ではないときは援護を行うことにした。
そのせいか、ウェストは傷つきながらも自分で錬成治癒で治療しながら戦闘を行い、危機状況では大神が援護するという状態が続いていた。
そして突入組が戻ってくる頃になると外部を守っていた強化人間の始末が終わっていた。
「もっと‥‥もっと早く助けに来てあげられなくて‥‥ごめんね‥‥」
施設から出て来て一旦、覚醒を解いたモココは外の惨状を見て言葉を漏らす。
「敵対する以上、手心を加える必要もないでしょ?」
そう、クラークは自爆の可能性もあるために捕虜を取らずに殲滅していたのであった。
「制圧完了と‥‥」
クラークは制圧した施設にスプレーでわかるようにマーキングを施す。
「制圧完了した。次に向かう」
無線で周囲の班に攻略した事を伝えるリック。
数分も経たないうちに傭兵達を載せてきたヘリが目の前で着陸した。
「急げ!」
ヘリパイに急かされ乗り込む傭兵達。
「自分で直したまえ〜」
ウェストが傭兵達に救急キットを渡す。
「応急処置をするよ!」
エマージェンシーキットを持ってきたエレナは渡された救急キットを使い他の傭兵の応急処置を行なっていく。
ヘリ爆音がだけが響く機内。
様々な傭兵の想いをのせて次の目標へ進む。
●二度目の襲撃
治療が終わる頃――。
「目標を確認」
攻略対象の施設をヘリのドアから視認出来る。
通信機を破壊していたのが功を奏したのか敵が迎撃に上がる様子は見られない。
友軍のヘリの援護のもと強行着陸する傭兵達を載せたヘリ。
爆音と銃撃が響く戦場音楽の中でクラークのガトリング砲による援護下で展開する傭兵達。
慌てて施設から出てくる強化人間をエレナが、リックが、銃撃しクラフトとモココのペアとウェストが近接し攻撃を仕掛ける。
「できればやだけど、このままのオーストラリアはもっとやなんだ」
本当ならしたくない――だが、やらなければならない葛藤の中で戦うクラフト。
「こんなオーストラリアでいいと思ってんの?」
回避中心の戦闘ながら容赦はしない――この地から争いを取り除くためにも。
「あー、ごめんね。出来るだけ速くおわらせるから‥‥」
ペアのモココが作った隙にせめて苦しまずにとばかりに急所を狙い倒すクラフトだった。
「危ないっ!」
大神がブリッツストームを使い扇状に小銃を乱射し死角から攻撃してくる強化人間に攻撃をする。
ブリッツストームで敵を察知した傭兵達――クラークが、リックが、エレナが続いて銃撃し、討ち取る。
あらかた外の敵の掃討を済ませると、外を大神とウェストに任せて残りの傭兵達が施設の制圧に動いた。
傭兵達の攻撃で銃撃音が、打撃音が施設の内外で響き渡り――。
手際よく恙無く制圧された施設。
一度目の襲撃に比べて確実に時間を短縮させている。
拠点制圧の連絡を入れ、迎えに来たヘリに乗って次へと進む傭兵達――。
結果――
ノルマの2拠点と追加で2拠点――計4拠点を制圧することに成功した。
帰りのヘリ――
「出来るだけ、傷ついた人は少ないよね‥‥」
祈るような気持ちのクラフト。
「仕事終わりに飲む酒は格別さ。なんなら全員分おご‥‥未成年いたか?」
「あたしぐらいだな‥‥」
残念ながら飲めそうなのはリックとエカテリーナの二人だった。
ざまざまな想いと思惑を乗せたヘリが基地へ帰投する。
Fin