●リプレイ本文
●出撃
KV空母〜
艦内も、甲板もまた敵襲を知らせるアラームがけたたましく鳴り響く。
「まさか、本当に襲われるなんて‥‥出番がなければ良かった。でもなってしまった以上、民間人の為に早急に抑えないと‥‥」
遠石 一千風(
ga3970)は鳴り響くアラームの中で久々の水中KVでの戦いで若干緊張しつつも「アクアリウム」の仲間に心強く思いながら気持ちを戦闘態勢へ切り替える。
「回せ―!」
小隊メンバーで依頼を受けていた「アクアリウム」小隊の隊長である鯨井昼寝(
ga0488)が掛け声を上げる。
KVへ乗り込み、システムを起動させてコックピットでチェックが終えると動力がかかり、誘導員の誘導に従いタキシングするKV。
次々とKVが甲板から離陸していき、整備員が帽振れで見送る。
輸送艦隊の命運は彼らの双肩に掛かっている。
「‥‥事は一刻を争うな。居合わせたメンバーが水中戦のベテランばかりなのが不幸中の幸いだが、この状況はまずいよな‥‥とりあえず招かざる客にはとっととお引き取りを頂く事にしようぜ」
威龍(
ga3859)は共に出撃しているメンバーを見て安堵しつつも気を引き締める。
「夏と言えばやっぱりボーナスよね!」
予想外の出来事に上手く行けば特別ボーナスを期待しているのはゴールドラッシュ(
ga3170)、取らぬ何とかの皮算用である。
一方――
「あ奴らが出てきおったわ!」
生嶋 凪(gz0497)が操る白いパピルサグの「MOBY DICK」 は増速して傭兵達へ向かう。
「総員、目標は敵船団――輸送船を狙うぞ!」
ジョン・レイブンウッドは漆黒のビーストソウル改「Bloody Orca」を駆り、有人の水中ゴーレムを指揮する。
輪形陣をとって護衛するほどのモノ――ジョンは重要な物を運んでいると勘案し輸送船に狙いを定める。
●開戦
護衛艦護衛組
「護衛艦はソナーで索敵をお願い。敵の数がはっきりするまでは、ノイズが入るから爆雷の投下は控えて!」
赤崎羽矢子(
gb2140)は複雑に入り組んだ海底を確認すると護衛艦に対してソナーによる支援と爆雷使用を控えるように要請をする。
「伏兵が一番怖い。不意を討たれて抜かれない様に警戒お願い!」
赤崎は輸送艦の直掩に当たりつつ警戒を怠らない。
「陣形変更を願いますであります」
美海(
ga7630)は護衛船団へより守りやすくする為に陣形の変更を要請した。
KV空母と輸送船を含む船団前方を分離して戦線を離脱させようとする。
美海もまた輸送艦の直掩だ。
後部艦隊は敵を包囲するように移動させる――赤崎は輸送艦の直掩の為、後部艦隊単独となり、護衛は居ない。
接敵
「あ奴ら、こっちに向かってきているようじゃの‥‥」
「手はず通り初撃後、船団へ向かいます」
凪はジョンとゴーレム6機を随伴させてながら海底の複雑な地形を利用して向かう――。
「我は生嶋 凪じゃ。此奴は『MOBY DICK』で相手してくれよう」
「私はジョン・レイブンウッド。愛機の『Bloody Orca』だ。」
まだ、両者射程範囲外で姿は見えないが凪達が名乗りを上げる。
「ボスがモービーディックでその下にオルカっていうのはうちと被ってるんで、すいませんけど沈んでください」
鏑木 硯(
ga0280)がその名乗りに対して挑発したような言い方をする。
「彼の白マッコウの名を機体に冠する資格を有するのは、七海にただ一人。悪いけどそれだけは譲れない」
鯨井昼寝(
ga0488)も不敵な笑みを浮かべて名乗りに答える。
「オーケー、ボス。サポートは任せて」
ゴールドラッシュは鯨井のサポートに回る。
「鹵獲KVかな? 亡霊さん達思い出しますね〜‥‥約束したんだ!海を守るって!!」
オルカ・スパイホップ(
gc1882)は凪達が操る機体を見て嘗てのことを思い出す。
「相手になるわ。輸送艦は守りきる」
遠石は威龍やオルカ、鏑木と共に黒のビーストソウル改を狙う。
「蟹のくせにモビィデイックなんて、とんでもない原作凌辱であります。カニ鍋確定なのです」
美海は凪の機体名と愛称にツッコミを入れずにいられなかった。
「カカカ! よく吠えるわ!」
傭兵たちの反応に笑い飛ばして一蹴する凪。
「何処にいる‥‥?」
声はすれど姿が見えない凪達を護衛艦のソナーをフルに使って警戒する赤崎。
だが、艦隊行動しながらの曳航式ソナーでの索敵はKVよりも精度はいいものの本来の能力を出し切れていなかった。
それが彼等、凪達を補足できていなかった原因でもあった。
相対距離は600mを切る直前――先に攻撃してきたのは凪達であった。
「貴様らの戦法を使わせてもらうぞ!」
カスタマイズされた凪のパピルサグとジョンのビーストソウル改の両機から2スロットずつで計4スロットの射程の長い大型多連装魚雷が傭兵たちへ向けて発射される。
6スロット分――相当数の魚雷が幾条の雷跡を伸ばして傭兵達を襲う。
傭兵達に向かっていく魚雷をソナーで捉えたのは護衛艦。
「魚雷‥‥多数!?」
赤崎のコックピットに映し出される戦術マップに多数の接近するモノが映り込む――速度からして魚雷と判断できた。
魚雷多数が接近の知らせを受けた傭兵達はすぐさま行動を取る。
「ここです! 威龍さん!」
小型魚雷ポッドで誘爆を狙うオルカ。
「ぬ‥‥」
威龍もこちらに向かってくる魚雷に対して小型魚雷ポットで迎撃を図る――。「散開!」
鯨井、鏑木、遠石、ゴールドラッシュは回避を選択する。
が――。
「敵補足!」
初撃の魚雷攻撃後、向かってくる凪達を補足することに成功した護衛艦と赤崎が直ぐ様、他の傭兵達へ情報を連携する。
「カカカ! 甘いわ!」
更に襲い掛かる魚雷を先頭に凪達が全速力で突貫し、更に1スロットずつの魚雷を第二射として散開して回避した傭兵達に向けて発射する。
「マネしたんだね〜」
「ちぃ!」
だが、数の暴力とも言える多量の魚雷の前ではオルカと威龍の二人だけの迎撃では追いつかない為、第二射の魚雷と凪達への対処が疎かになる。
そして、散開した傭兵達へも第二射が殺到する。
「撃て!」
更に纏まったゴーレムのプロトン砲が、ジョンの統制下で二射、三射と連続して傭兵達へ襲いかかる。
プロトン砲の光条が幾条にも伸びる。
多数の魚雷とプロトン砲――何方か、もしくは両方の攻撃を受ける傭兵達。
先制のイニシアチブを敵に取られてしまった。
この戦況でも生き残っている敵――それは生き残っているのにはそれなりの理由があるのだ。
何処か心の隅で敵を甘く見ていていた傭兵達は手痛い勉強代を支払う事となってしまった。
持ち堪えられたのはオルカ機、鯨井機の2機はまだ若干の余裕を残してコックピットに表示される表示はグリーンゾーン、だが油断はできない。
威龍機、ゴールドラッシュ機、鏑木機の3機はイエローゾーンへ突入し、レッドゾーン一歩手前だ。
遠石機は――レッドゾーンへと突入し、非常照明に切り替わったコックピット内では機体損傷の箇所の警告が表示されアラームが鳴り響く、だが引くことは出来ないと決意する。
対凪は鯨井を中心に、対ゴーレム・ジョンはオルカを軸に体制を立て直す――流石、素早く対処するのは歴戦の彼等だ。
対凪――
我武者羅に突っ込むように見せかけながら、水深が100メートルを超える深部へ凪を誘導する鯨井。
その鯨井をガウスガンによる射撃で援護するゴールドラッシュ。
「猪口才な! 鬱陶しい!」
ゴールドラッシュのガウスガンを回避しながら鯨井を追う凪。
「ぬ! 危ない、危ない」
だが、計器から危険を感じた凪は鯨井の追撃を辞めて援護していたゴールドラッシュへ目標を替える。
「ボス! 今!」
敢えて引き付けることにより挟撃を仕掛けようとするゴールドラッシュ。
「生嶋、自分が相手だ!」
鯨井の一撃を水中機槍斧で受ける凪。
両者による水中練剣と水中機槍斧による剣戟と鍔迫り合いが続く。
隙を作ろうとするゴールドラッシュ。
「チィ!」
距離をとってガウスガンで援護しているゴールドラッシュの排除に動き出す凪。
一旦、後退して鯨井から離れるとゴールドラッシュに迫り攻撃を繰り出す凪。「なんていうか‥‥フツーに強いわね」
蛍雪で凪の攻撃を受けるゴールドラッシュ。
「戦況ゆえの調整不良か‥‥」
幾度と無く打ち合いを行なって機体の違和感を感じた凪はゴールドラッシュに威力不足で攻撃を受けらたのを切っ掛けに調整不良を確信した。
「もらったわ! ボス!」
「離せ!」
離すまいと凪の機体の腕をつかむゴールドラッシュ。
「喰らえっ!」
インヴィディアで威力を増した大蛇の一撃を食らわせる鯨井。
攻撃の衝撃が辺りに伝搬する。
「全力で戦えないのは白けるの‥‥仕方ない。撤退じゃ」
ダメージを受けた凪は機体の調整不良もあって全力を出せないことを悟ると撤退を決意する。
「!?」
無理矢理ゴールドラッシュの機体から離れる凪。
吹き飛ばされたゴールドラッシュ」を受け止める鯨井。
「カカカ! 貴様らは良くやった! 次の戦いを楽しみにしておくのじゃ!」
追撃してくる鯨井とゴールドラッシュに目もくれずに後退し、上空に上がる。
鯨井の攻撃の跡が見え、無理矢理離れたために凪の機体の腕がもぎ取られる状態だった。
「敵が上空に上がりそうだよ! 対空迎撃お願い!」
上空に逃げようとする凪を攻撃するように要請する赤崎。
海上で赤崎の要請より、護衛艦の対空攻撃を受けつつも撤退した凪であった。
一方――
ジョンとゴーレムを迎え撃つ鏑木、威龍、オルカ、遠石の四人。
「とっとと落ちろ!!」
出来るだけ輸送艦に被害が出ないようにまずは離れた状態で迎撃を行う威龍。
対潜ミサイルR3−Oで攻撃しゴーレムの編隊に楔を打ち込むことに成功し、首尾よくゴーレム一機を落とす。
「いくよー」
アンカーテイル打ち込んでそこからブーストで円を描きながら加速するオルカがゴーレムへ突っ込んでいく。
渦を巻いて突っ込んでくるオルカにゴーレムはプロトン砲を集中させて攻撃をする。
「やったなー」
プロトン砲に多少のダメージを受けたオルカは仕返しとばかりに全速力で機動を変えつつ吶喊する。
吶喊したオルカの高分子レーザークローでの攻撃は、ゴーレムがまるで熱したバターの様に容易く装甲を引き裂さかれて撃破された。
「水中戦の年期の違いを見せてやりますよ」
一方、敵の意識が輸送船に向かわないように、また、ジョンが指揮を取りにくくするために牽制としてDM5B4重量魚雷をゴーレムとジョンの両方に発射する鏑木。
発射後、移動形態で一気に距離を詰めて、人型に変形してゴーレムに対して氷雨で接近戦を仕掛ける鏑木。
ゴーレムが氷雨の斬撃で袈裟斬りに切られて撃破する事に成功した。
「orcaの名は貴方には相応しくない」
鏑木はジョンを挑発するが、どうやら反応は芳しくないようだった。
「‥‥バグアの手先風情が俺達の希望であるKV使っているんじゃねえ! そいつは誇り高き海の戦士達への冒涜以外の何者でもねえ!」
其処にゴーレムを撃破した威龍も参戦する。
威龍としては敵が鹵獲したKVを使っていることに憤りを感じているようだ。
「ほら、こっちよ」
遠石もまたゴーレムを輸送艦へ行かせないよの立ち塞がる様にして小型魚雷ポッドと熱源感知型ホーミングミサイルを使いゴーレムを攻撃する。
小型魚雷を避けようとした隙にホーミングミサイルがゴーレムに当たりダメージを受けて止まった所へガウスガンで攻撃して撃破する事に成功した。
一方、赤崎と美海達も向かいつつ有るゴーレムの迎撃に当たる。
ガウスガン で攻撃する赤崎、七十式多連装大型魚雷をリロードさせながら弾幕を張る美海。
接近戦へ移行する頃には魚雷のダメージのせいで損耗させることに成功していた。
輸送艦に接近させることなく二人はゴーレムを撃破することができた。
ジョンと鏑木、威龍は戦闘を繰り広げていた。攻防は二人相手にジョンが押され気味になっていく。
「‥‥ゴーレム隊が全滅」
残りのゴーレムもオルカ、遠石、赤崎、美海によって撃破されてしまった。
「今度はそっちが襲われる番だよ!」
ゴーレムを倒し、参戦してくる赤崎。
それに続いて美海、遠石、オルカも参戦してくる。
「‥‥撤退する」
彼我戦力比の不利と凪が撤退したことを受けてダメージはさほど受けていないものの撤退を決意する。
ジョンは傭兵達の攻撃を受けながらも最大戦速で離脱していった。
傭兵達は伏兵の奇襲を警戒して深追いする事はなかった。
「敵影なし」
護衛艦と遣り取りをしている赤崎が皆に知らせる。
船団と彼等を襲った凪達は撤退していき、静かな海が戻ってきた。
初戦、先制を取られるもリカバリーにより凪達を撤退させることに成功した傭兵達。
「皆、無事のようであります」
輸送船と連絡をとった美海は皆に乗船していた人々が無事であった事を告げる。
彼等、傭兵は人々だけでなく誇りもまた守ったのかもしれない。
「うぬ‥‥整備のために同型機を鹵獲する必要があるようじゃな‥‥」
「次こそは万全の体制を整えたいものです‥‥」
Fin