●リプレイ本文
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東オーストラリア カルンバ
ここに、ケビン=ルーデル(gz0471)とそのスポさんサーの元、新しく孤児院が開設されることになった。
ハコとしての施設ができたものの。重要なのはそこに働く人間だ。
ケビンは、一人でも信頼の置ける人を雇おうと依頼を出した。
早速、孤児院の戸を叩いたのは伊万里 冬無(
ga8209)、大鳥居・麗華(
gb0839)、L3・ヴァサーゴ(
ga7281)という何時もよく行動している三人だ。
「こんにちわですわ♪」
冬無はこれからをどうしようかと考え、今回の依頼の話を聞いてやってきた。
「‥‥居る‥‥?」
何時も冬無や麗華と行動を共にするヴァサーゴ。今回は自身の思いもあって共に参加することになった。
「ケビン? いますの?」
冬無やヴァサーゴと共に行動しつつも、自身に思うところがあって参加する麗華。
三人は共に行動しつつも、其々の思いを胸にケビンの呼びかけに応えた。
「‥‥どちら様です?」
孤児院の開設のために奔走したのか多少、目の下に隈を作ったケビンが現れた。
「孤児院開設おめでとう、ですかしらね? でも、此処からが大変ですわね」
「ありがt‥‥ぶぱっ」
麗華は現れたケビンに祝辞を述べ。胸元へ抱き寄せる。
中へ通された三人。
簡素ではあるが応接室の様な部屋で三人と対峙するケビン。
「‥‥職員を希望なんですね」
その決意を、意志を確かめるように、三人の目を見るケビン。
「バグア‥‥去りし世界‥‥でも‥‥傷跡、残っている‥‥」
そう、ポツリと声を上げたのはヴァサーゴだった。
「‥‥戦い、終わってない‥‥我の如き者、もう出ること無きよう‥‥力、尽くしたい‥‥」
ヴァサーゴが紡ぐその言葉は――彼女の本心。
この境遇の連鎖を止めたい、その心から。
「ヴァサーゴさん‥‥気持ちはわかりました」
然りとケビンはヴァサーゴの目を見て応える。
「可愛い子達は私大好きですわよ♪ まあそれに‥‥私も戦争で家族を失った口ですしね。これ以上同じ境遇の子達に辛い思いはして欲しくありませんわ」
次に理由を語ったのは麗華だった。麗華もまた自身の思いを語った。
「麗華さん‥‥そう、ですか」
ヴァサーゴの時と同じように麗華の目を見て応える。
「孤児院‥‥良いじゃないですか、良いじゃないですか♪ 傭兵も出来て、メイドの技能も活かせる。最高ですよ♪」
少し、湿っぽい空気を変えるような陽気な声で語ったのは冬無。
「伊万里さん」
冬無らしい、明るい声ではあったもののその表情は真剣だ。
「単純に傭兵家業だけを続けても良いかと考えていましたけどね♪」
三人の孤児院の職員への志望動機について聞いたケビン。
「よろしく、お願いします」
三人の前で頭を下げるケビン――少年はいつの日か『大人』になる。
「私が来たからには家事全般の統括はお任せ下さいですよ♪」
そんなケビンに張り切った声で応える冬無だった。
「さぁさぁ、ヴァサーゴさん、麗華さん、やりますよ♪」
「ちょ、伊万里!?」
「冬無‥‥」
ヴァサーゴと麗華を引っ張っていく冬無だった。
少ししてから、孤児院への来訪者が居た。
「やぁ、ケビン君」
「ルキアさん」
夢守 ルキア(
gb9436)。
夢守もまた、ケビンの呼びかけに応えた一人だった。
応接室に向かい合うケビンと夢守。
遠くのキッチンからは冬無たちの声が聞こえる。
「希望者、いたんだダネ」
「はい‥‥ルキアさんは‥‥?」
期待するようなケビンの眼差し。
「私は、ケビン君の新たな旅立ち、の手助け‥‥カナ」
「ありがとう‥‥ございます」
ケビンにとっては残念ではあったが、応えて手助けしてくれた事に感謝する。 やや、沈黙を置いた後。
「孤児院って戦災孤児ダケ? 育児放棄って言う状況にも、対応する?」
「そう、ですね‥‥子供達だけではやっていけないのを助けたいので‥‥問題無いです」
孤児院と聞けば、戦災孤児だけを想像するがそれ以外の原因でも起こりえる。
「オーストラリアは、クリスチャンが多かったっけ?」
「旧イギリス領ですから、比較的には」
「だったら、聖書トカも置いている方がいいね、近くに教会があればそことのパイプも用意しておきたい」
「パイプ‥‥ですか」
できるだけ味方は多い方がいいということだろう――特に、こういう施設ならば。
「それから孤児院のモチーフトカ、決めたいね」
「モチーフ?」
夢守が次に上げたのはモチーフ。だが、ケビンにはピンと来なかったようだ。
「モチーフがあると、覚えて貰い易い。万が一、誰かに悪用されても足跡を辿りやすそうだし」
「何がいいですか?」
「白い鳩と、太陽はどうかな?」
「いいですね」
こうしてモチーフは白い鳩と、太陽と決まった。
孤児院についての概要を夢守と二人で書いていく。
「ケビン君。職員がいても、いなくても、きみダケ、孤児院ダケ、だって思わないで」
そう言って夢守は必要なモノを、不器用に紙に書きながらケビンへと渡す。
「プロパガンダのヒト、覚えてる? 独りで頑張って、疲れちゃった。世界は敵ばかりじゃないのに、セカイが敵を見せた」
「‥‥分かりました。ありがとうございます‥‥頑張ります」
一方――キッチンでは
冬無主導で水飴づくりを行なっていた。
「水飴‥‥?」
「どうして水飴なんですの?」
麗華、ヴァサーゴは疑問の声を上げる。
「消化に優しくて、あまいですから♪」
何も食べてない、もしくはあまり食べれてない子供に消化の悪いものを渡せば胃の負担になるだけ――冬無はそれを考慮して作りやすく、消化に良い水飴をチョイスした。
「やはり子供といったら甘いものですわね♪ あ、飴くらいでしたら私も手伝いますわよ? え、大丈夫ですの? むぅ‥‥」
鍋に水と砂糖をいれて煮るだけだ――乾燥麦芽ともち米では時間がかかりすぎる。
●街にて
「酷い有様ですわね‥‥」
「‥‥」
「さぁ! さぁ! いきますよですよ♪」
解放されたとはいえ、復興が進んでいるカルンバと言えども街の状況は良くない。
親バグア派の住居だったのだろう、窓は破れ焼け落ちている家もあった。
街の空気は良くない。
「こういう所、ですかね?」
冬無一行が進んだのは街の裏通り――表以上に荒れているスラム街とも言える場所だった。
「お前達‥‥誰だ?」
冬無の行く手を阻むのは一人の少年が疑いと警戒の視線をぶつけてくる。
「今度できた、孤児院のスタッフですよ♪」
「そうですわ。私たちはあなた達を助け‥‥『嘘だ! こいつら、孤児狩りだ!』‥‥」
現れたもう一人の少年が麗華の言葉に被せるように拒絶の言葉を叫ぶ。
「‥‥孤児狩り‥‥?」
疑問を呈するヴァサーゴ。
「そうだよ! お前たちはそう言って、俺達を捕まえて処分する気だ!」
「違うですよ! 私達は!」
「そうですわ! その気なら、もう捕まえてますわ!」
麗華が覚醒して見せる。
「‥‥能力者‥‥!」
皮肉なことに能力者の名声はこの地『オーストラリア』では高い――解放の主力の力となった『事』で。
また、部隊を救ったことで。
「‥‥なぁ? 本当か? 本当なんだな?」
最初に誰何をした少年が必死に聞いてくる。
「嘘じゃないですよ♪ ほら、こんなのもありますですよ♪」
持ってきた水飴を差し出し――自らその水飴を舐める冬無。
廃墟――彼らが根城としている建物に案内された麗華達。
「悪かった‥‥」
リーダらしき青年が頭を下げる。
「いいですわ」
「一度‥‥大人たちに騙されてな‥‥」
(仕方ない、ですわね‥‥騙されたとあれば‥‥)
「それで、その『孤児院』なんだが詳しいことをおしえてほしい!」
「私が説明するヨ」
そこに居たのは夢守。
「『能力者』で治療をしながら孤児院の勧誘をしてたらここに呼ばれてね」
即席――手書きだが、孤児院の概要を書かれたパンフレットを差し出す夢守。
「来たいなら、来ればいいと思う。迷ってるなら、見学すればいい。
‥‥家事はしないと、だと思うケド、寂しくはないんじゃないかな?」
「家事なら任せてくださいです♪」
「‥‥我も居る‥‥麗華も‥‥居る」
「皆は――無理なんだろう?」
ポツリと少年は言う。
「早急に保護が必要な子‥‥というのが本音ですね」
(皆を連れて行きたいけど‥‥)
皆を救いたい――だが、現実は許さない――歯痒い思いをする冬無。
「こっちへ、来てくれ‥‥」
奥の部屋へ通される、四人。
そこには力なくベッドに横たわる子供達。
「‥‥助け、られるか?」
「‥‥すぐに‥‥行きますですよ! 麗華さん、ヴァサーゴさん!」
子供を抱えて建物を出る三人。
「君は、どうするの?」
残った夢守が問う。
冬無たちが街の医者へ運び込み処置を施したお陰で様態が安定してベッドで寝ている子供達。
無論、ここで寝ているのは子供達が希望したからだ。
冬無達はベッドに寝かせるとあの廃墟へ戻る。
「はい、美味しい飴ですわよ♪ たくさんありますから順番になさいな」
飴を配る麗華――それに群がる子供達とそれを微笑ましく見ているリーダーの少年。
「あなた、良ければ私達と孤児院にいきませんこと? あそこなら暖かい食事も部屋もありますわよ?」
「うー‥‥」
呼びかけられた子供は周りの仲間を見渡す。
‥‥‥
‥‥
●孤児院にて
定員に限界があったせいもあって希望者全員の収容は難しかった。
だが、街からも近いこともあり、今生の別れではないため納得はしてくれた。
「‥‥兄弟で‥‥これた‥‥、けど‥‥全員は‥‥」
「全員は連れていけない、と言うのが歯痒いところですね」
「どうにか、したいところですわね‥‥」
「そうだね。皆でケビン君に相談しよう」
新しい場所にキャッキャと喜んでいるところに相談する四人。
子供達の世話は、今はケビンが見ている。
夜――子供達が寝静まった頃。
「この孤児院だけでは限界があるにせよ、少しでも子供達を救いませんと。毎日は無理でも定期的に炊き出しでも出来れば多少は違いませんかしら‥‥」
「そうだね。このままじゃ不公平みたいになるからネ」
「‥‥炊き出し‥‥必要‥‥」
「一度には無理ですから、地道にやるしかないですね」
ケビンのもとに訪れた四人は現状を報告し、提案をする。
「炊き出し‥‥。いいですよ、でも人出はどうします?」
そう、現状はケビンとヴァサーゴ達の四人だ。
「街の孤児たちのリーダーとお話しますです。自立できるようにしてあげるのも、大人の務めです♪」
「わかりました‥‥ただ、予算もあるので‥‥」
「そういうのも相談しますですよ♪」
深夜、依頼は終わる――
「――家族、増えると良いね」
「はいっ」
夢守と――少年に戻ったケビン。
職員希望でなかった夢守とは一旦ここでお別れだ。
後日――麗華達、孤児院の職員が提案した炊き出しが行われた。
若木が大地に植えられた――風雨あるが育っていくだろう――。
カルンバ 孤児院 職員名簿
院長 ケビン=ルーデル(gz0471)
職員 L3・ヴァサーゴ(
ga7281)
職員 伊万里 冬無(
ga8209)
職員 大鳥居・麗華(
gb0839)
落日・曙光 孤児院開設 Fin