タイトル:【AP】もう一つの世界マスター:後醍醐

シナリオ形態: イベント
難易度: 普通
参加人数: 14 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2013/04/12 18:52

●オープニング本文


 ※このシナリオはエイプリルフール・シナリオです。オープニングは架空のものであり、ゲームの世界観に一切影響を与えません。 
 
 もし――バグアによる戦争がなければ?
 
 セシリー・ニミッツの場合。
 
 17歳
 アメリカ 高校
 
「がんばれー」
 セシリーはチアガールとしてアメフトの応援をしていた。
 プロポーションとスタミナがあるセシリーにうってつけだった。
 多少、野暮ったいところはあるもののクラスではそこそこ人気があり、友人も多かった。
 そして、応援しているアメフトの選手の中に、恋人もまたいた。
 
 その後、大学進学を経て結婚、2児の母となる。
 紆余曲折があるものの幸せな一生を過ごす。
 
 リズ=マッケネンの場合。
 
 リズ 8歳
 
「おとーさん、むりしないでね」
「リズ、いい子にしてるんだぞ」
 刑事であった父を持つリズは母とともに出勤を見守る。
 正義の為に働く父の背中を見て育ったリズはそんな父が好きだった。
 いつかは父のようにとも思っているのだった。
 父のようにを合言葉に学生時代を励んだ―
 
 リズ28歳
 
「観念しなさい!」
 銃を構え、踏み込むリズ。
 手を上げて観念した様子の犯罪者。
 努力のかいがあって、晴れて刑事へとなることができた。
 ただ――一生懸命に努力したせいもあって彼氏はまだだ。
 
 ケビン=ルーデルの場合。
 
 ケビン 25歳
 
「はい、――貿易です」
 ケビンは何処にでもいるようなサラリーマンになっていた。
 平凡な家庭で育ち、普通のクラスの学校に進み――中小クラスの貿易会社に就職していた。
 彼女との結婚は来年を予定している。
 」
 平凡に人生を過ごす――そうする事こそが、一番むずかしく、一番幸せなのかもしれない。
 
 エカテリーナ・ジェコフの場合。
 
 エカテリーナ 35歳
 
「たっく、亭主は‥‥」
 腰に手をつき呆れた表情の前にあるのは酔いつぶれたエカテリーナの旦那。
 稼ぎのいい職人であるが、飲み過ぎるのが玉に瑕だった。
「仕方ないわね」
 そんな、寝っ転がっている旦那に毛布を掛けるエカテリーナ。
 嫌いではなかったし、酔いつぶれて寝てしまうのも愛嬌のうちだと考えていた。
 ちなみに――飲み比べると、エカテリーナのほうが強かった。
 むしろ、飲み潰して持ち帰ったのはエカテリーナ方だったという。
 

●参加者一覧

/ ドクター・ウェスト(ga0241) / 愛輝(ga3159) / クラーク・エアハルト(ga4961) / L3・ヴァサーゴ(ga7281) / 伊万里 冬無(ga8209) / キムム君(gb0512) / 大鳥居・麗華(gb0839) / レインウォーカー(gc2524) / ヘイル(gc4085) / 片山 琢磨(gc5322) / 玄埜(gc6715) / クローカ・ルイシコフ(gc7747) / ルーガ・バルハザード(gc8043) / エルレーン(gc8086

●リプレイ本文

  
 ※このシナリオはエイプリルフール・シナリオです。オープニングは架空のものであり、ゲームの世界観に一切影響を与えません。 
 
 ●もう一つの世界
 もし――バグアによる侵攻がなければ――そんな世界。
 
 
 ドクター・ウェスト(ga0241)の場合。
 
 1X年前(1990年代)イギリス
 デューク・ウェスト 20代前半
 
 大学の長期休暇に実家へと自動車で戻るデューク。
 車内には両親、妹を乗せて家に向かう途中だ。
「大学はどう?」
 デュークに大学での様子を聞く母。
「任せてよ母さん。父さんのように医者になるよ」
 運転しながら顔は前に向きつつも胸を張って応える。
「はは、言うようになったな」
 そんな、デュークの言葉に頼もしく感じて言う父。
「ねえねえ、彼女はできた?」
 助手席の妹がデュークをからかうようにいう。

 その刹那――幻覚。
 飛来したHWの攻撃で横転する車両。
 突然の出来事に悲鳴を上げるデューク一家。
 打ち身による痛みをこらえ、車外に這い出るデューク。
 眼前に映るのは――体中に角を生やしたライオンのような異形の獣キメラ――否、それだけではない。
 キメラが食らっているのは両親と妹の体。
 ごろりと食いちぎられた首が向く。
「――!」
 声にならない声を叫び、そして爆発炎上する車両。
 
「あ、あれ?」
 確かめるように目を擦るデューク。
「どうしたの兄さん?」
 心配そうに覗きこむ妹。
「‥‥夢、だったのかな?」
 (ジャパニーズコミックの読み過ぎかな?)
 デュークの鞄には日本の漫画のCatch The――。
「疲れているんじゃないの?家でゆっくり休みなさい」
 
 現在 イギリス
 デューク・ウェスト 41歳
 一時の休息の間――診察室の椅子に座りながらデュークは思いを馳せる。
 (私は父の跡を継ぎ、街の医者としてそれなりに忙しい毎日。結婚し、子供も生まれて大きくなってきた)
 机上に置かれたティーカップを見る。
 (あれから王室のスキャンダル、テロ、戦争、災害、事件等色々あったが、概ね平和な年月だった)
「――っ」
 (だが時折、あの記憶が蘇る、記憶は色あせたが、あの思いだけはいつまでも心に残った)
 嫌な汗が――流れる。
 (ギュッと心臓を鷲掴みされる、恐怖と絶望の思いだけは)
 
 
 愛輝(ga3159)の場合。
 
 日本
 愛輝は両親と妹と4人家族で暮らしていた。
 どこにでもある、普通の家庭として。
 高校卒業後、大学へ進学し勉強は程々。
 
 中東のどこか。
 大学の休みを利用して一人旅をしている愛輝。
「1000? 冗談だろ、500なら出すよ」
 バザールで店員と土産の値段交渉をしている。
 値段交渉も旅の楽しみのひとつ。ケチなせいではない。多分。
 そうやって旅を続ける――。
 モスクや色々な建物を見たり、色々な物を食したり――。
 
 大学卒業後。
 父親が経営する会社とは別の会社に就職して営業職として働く。
 不慣れながらも営業の仕事を日々こなしている。
 そうしているうちに、二十代半ばもこえようとする。
 家族からは『結婚しろ』のプレッシャーがかかってくるが‥‥。
「自分に自信がついたら考えるよ」
 家を次ぐことを思いながらもそう答える愛輝だった。
 
 クラーク・エアハルト(ga4961)の場合。
 26歳
 米陸軍所属。
 クラークは晴れて祖父に憧れて、祖父の所属していた第82空挺師団に所属することになった。
 広報のビデオがクラークを捉える。
「祖父がWW2の時にここの所属でね‥‥よく、その頃の話を聞いてたから憧れたんだと思う」
 何故、この師団を希望したかとインタビューを受けて答えるクラーク。
「せっかく、軍に入ったんだし‥‥どうせなら行ける所に行ってみたいと思わない?」
 インタビューアーに続けて答える。
「特殊部隊、きついんだろうけど‥‥やってやるさ」
 目標を聞かれて答える。
 下士官、階級は軍曹として勤務し、真面目に任務をこなしつつ、特殊部隊へ志願しようとしている。
 
 31歳
 特殊部隊に入隊するものの、戦地で上官と衝突して除隊する。
 除隊後、しばらくの間は地元でスカイダイビングのインストラクターをしていた。
「‥‥まあ、あれだよ。理想と現実は違ったというかね」
 レッスンの合間に昔話をするクラーク。
「何があったか言わない‥‥で、今日はこのスカイダイビングのインストラクターに何を話に来たのかな?」
 後に古い友人に誘われてPMCに所属する事になり、任地は主に南米。
「ん、まあ軍での仕事とは違うけど‥‥やりがいはあるよ」
 任務に戻ってきたクラークにPMCでの事を聞く古い友人。
「多少、気は楽かな‥‥まあ、やってることはそう変わりないけど」
 調子を聞かれて答える。
 最近、銀髪赤目の美人に恋心を抱くようになる。
「ところでさ‥‥あの銀髪赤目の彼女はなんていう名前なんだい?」
 
 
 キムム君(gb0512)の場合。
バグアとの戦いが無ければ、「キムム」と言う傭兵名を持つ青年はいなかっただろう、その平和な世界にいたのは「君田夢野」と言うただの青年。

 2008年(18歳)君田夢野
 幼い頃から読書が好きだった君田夢野は何時しか作家になりたいという夢を抱くようになっていた。
 その為に日本文学を勉強したいと思い、必死の勉強の末にM大学文学部に入学する事となった。
 
 2012年(22歳)
 オタク気質だった為、あまり友人に恵まれなかったが、勉強はずっと頑張り続けていた。
 だが、在学中の作家デビューはならなかった。
 卒業後の進路は高校の国語教師と割と悪くない。ただ、作家の夢を諦めるつもりは無かった。
 本業の傍ら、作家としてデビューするために筆を執り続けるつもりでいた。

 2035年(45歳)
 昼休みの教員室。
 子供達の声をBGMに君田は想いにふけっていた。
 気づけば、若くなかった。
 多くの教え子を社会に送り出し、所帯も持つようになった今でも、作家として世に名を知らしめる夢は叶っていなかった。
 今でも執筆を続けているが、遅咲きで才能が花開くことだって、あるかも知れないだろうと考えていた。
 だけど、君田は今のままでもいい気がした。平凡でありながらも、満ち足りている。
 愛する妻や息子、教え子に囲まれて幸せに過ごしている。 もしかしたら、作家になったら今の平凡も無くなってしまうのかもしれない。そんな根拠なき不安さえ抱えていた。
 一言で言えば、平和な日々をおくっていると言える。
 

 レインウォーカー(gc2524)の場合。

 夢。レインは夢を見ている。
 それはまるで映画の様に映しだされている。

 穏やかな街角にある色とりどりの花が置かれた花屋。
 そこにヒース・R・ウォーカーがいた。
 無口で不器用な父親、優しく微笑んで父を支える母親、男勝りで過保護な姉、しっかり者で真面目な妹と共に暮らしている。
 そう、両親が離婚する事もなく、戦いの中に身を置く事もない世界だ。
 そんな中、ヒースは捻くれることなく母親譲りの微笑みが似合う好青年に育っていた。
「心を込めて育てた花を売り、お客さんの笑顔を見るのが好きなんです」
 何故この仕事をしているのかと問われてヒースが答えた言葉。
 ――或る日。
 仕事を定時であがり、自宅へ帰る途中で向かったのはケーキやプレゼントを買うため。
「はい、妹の誕生日なんです」
 プレゼントを買うお店で誕生日に注文したケーキの包装を見た店員がヒースに尋ね、答えた。
 プレゼントとケーキを抱えて帰り――。
「ただいま」
 家の扉を開くと同時に優しく微笑むヒース。
「おかえり」
 と、応える家族たち――いつもは忙しい姉もすでに帰っていた。
 
 ありふれた日常の物語。
 ありえたかもしれない世界。
「これはこれで、悪くない」
 『レイン』は夢の中の『ヒース』を真似るように微笑んだ。


 ヘイル(gc4085)の場合。
 2003年 1月 ■■ 14歳 高校生
 史実では■■の住む街が戦闘に巻き込まれ、彼が全てを喪い、傭兵に助けられた日
 この時点では彼に名前は無い。彼を助けた傭兵が彼を引き取り、自身のKVの名から「ヘイル」と名前を付けるのは翌年である
 
「‥‥嫌な夢だった‥‥」
 嫌な夢を見て目が覚める。
 訳の分からない化物に家族が殺され、自分も殺される夢。
 だが、細かい部分は忘れ、『嫌な夢だった』という感触だけが残っていた。
 とりあえずまだ動いてない目覚ましを止め、リビングへ向かう。
「どうしたの?」
「‥‥? えーと、うん、大丈夫。お早う、母さん。妹は?」
 親に自分で起きた事を珍しがられるが、適当に返事をした。
 何だか夢と現実がごっちゃになっておりぼんやりしていた。
 
 2012年 10月 ■■ 23歳 大学生
 史実では終戦

「‥‥ぅ。もう少し優しく起こしてくれ。キメラにでも殴られた、かと‥‥。‥‥キメラって何だ?」
 論文の資料作成中にうたた寝した■■。隣にいた同ゼミの女性(彼女?に起こされる
「あー、俺の名前は■■、だよな。いや、寝ぼけて何となく。‥‥何故ペンを構える。‥‥いや、もう起きてるから、寝ぼけてないから落ち着け」
 まだ寝ぼけているのかと■■を起こそうとする女性。
「‥‥それはそれとして。こんな話を思いついたんだが。『能力者』とか『バグア』がいてだな‥‥」
 『何か』を思いついたように語りだす■■。
「‥‥スイマセン、真面目にやるのでイイ笑顔で辞書を振り上げるのはヤメテクダサイ」
 ――どこにでもある、何処かの誰かの日常。


片山 琢磨(gc5322)の場合。
 
 片山 琢磨はF−1のドライバーをしていた。
 年間成績はまずまず、運がよければ入賞が狙えるレベル。
 知名度と言えば、詳しい人なら知っているぐらいになった。
 
 レース場
 片山はインタビューを受けていた。
「コンディションはいい、今季はチームも良いエンジンを用意してくれたから、上位が狙える」
 調子を聞かれて答える片山。試合開始までインタビューは続く。
 試合が開始され――
「問題ない、タイヤ交換だけ頼む」
 ピットインした片山が指示を出し、瞬く間にタイヤが交換されてピットアウトする。
「‥‥調子がいい、これなら表彰台も狙えるか?」
 目の間にあるマシンは後、数台。それさえ抜けられれば――。
 
 
 玄埜(gc6715)の場合。
 日本
 ごく普通の一般家庭に生まれ育ち、高校卒業後に上京した日下部 健一。
 ラーメン屋でバイトをしながら俳優養成所に通っている。
 このたび下積みの努力が報われ、オーディションに合格し、舞台俳優への一歩を踏み出した。

 バイトが休みの日に近所の公園のベンチで舞台の台本を読みこんでいた。
 近未来、サイバーパンクな世界観の物語で役どころは『始末屋』だった。
「‥‥いや、始末屋て‥‥」
 貰った役と自分とのギャップに悩む日下部。
 もともとは自分の性格に似た『気弱な主人公の友人』役を求めてオーディションに臨んだのだったが、人相の悪さで『始末屋』に選ばれたのだった。
「依頼に対しては誠実にして真摯。命を奪うものとして、他者の生命には最大限の敬意を払っており、殺すべきものは無慈悲に殺すが、無益な殺生や命を弄ぶ事を憎悪する、か」
 頭でイメージを創りあげる。
「一本筋の通ってる変わり者、憎めない悪役ってところかねぇ?」
 役柄を理解しようと台本を何度も読み、おぼろげながら掴んで行く。
 そして、実際に台詞を読み上げてみる。
「ハーハハハハ! 始末屋参上!!! 私が日中堂々と正面から来てやったのだ、安心して黄泉路へ旅立つがいい!」
 腹から声を出し、こうなんじゃないかな? というポーズもつけてみながらやってみた。
「なにこれ。なにこれ」
 が、その場で頭を抱えてしまう。
 しかしながら、どんな形であっても夢への第一歩であることに間違い。
「やるだけやってやんよ!」
 と気合を入れ直し――役名乗りを上げる。
 「我が名は玄埜! 貴様の終焉を誇るがいい!」


 クローカ・ルイシコフ(gc7747)の場合。
 
 ルスラン・ユーリエヴィチ・ルネフ 8歳 ピアノコンクール初演奏直前
 ピアノコンクールで演奏する曲目は母がよく弾いていた花のワルツ。
 家族が好きな曲を弾けるのは嬉しいと同時にとても緊張しているユーリ。
「さぁ行っといで!アンタの演奏、皆に見せつけてやりなさい!」
 舞台袖でユーリがソワソワしているところをいつも強気で自信に満ちた憧れの姉に励まされる。
 その声に背中を押され、ステージへと出ていく

 19歳 パリ
 サンクトペテルブルクの音楽院を卒業したユーリ。
 幾つかの国際コンクールで入賞し、ピアニストとしての活動を始めた。
 下宿のピアノの前にしている。
「‥‥まだだ、まだ‥‥」
 だが、世界の音楽を前にしては、まだまだ自分の力量不足を感じていた。
「だけど、それでも‥‥大好きなピアノを弾いていたい」
 鍵盤に指を落とし――家族との暖かい思い出をイメージしながら優しく旋律を奏でる。
 苦しいときも、練習が嫌になる時もある――そんな日は、あの時の姉の励ましを思い出しながら演奏する。
「‥‥また会いたいな」
 下宿の窓の外、異国の町の風景に郷愁を感じながら、今日も鍵盤に向かい合いピアノを奏でる。

 ルーガ・バルハザード(gc8043)の場合。

 バグアがいなかった世界。平和な世界。
 もし、ルーガ・スレイア・エル・バルハザードがそんな世界に存在していたら‥‥どうなる?

「うーむ、次の大会まで間もないのに、いまいち集中できんな」
 Kendo選手として日々研鑽に励む毎日のルーガ。
 防具を身につけ、毎日竹刀をふり、目指すは次のオリンピック‥‥!
 だが、それと同時に、後進の指導も熱心に行う。そういう年齢でもあった。
 今日も幼い子どもたちにKendoを教えるルーガ。
「ほら、しっかり竹刀を握って‥相手から目を離すなよ」
 声を凛とはり、厳しい指導を行いながらも。
 彼女が注ぐ視線は、まるで母親のように優しくもある‥‥。
 才能に恵まれ、環境に恵まれ。彼女は、確かに幸福だっただろう。


 エルレーン(gc8086)の場合。

 バグアがいなかった世界。平和な世界。もし、彼女がそんな世界に存在していたら‥‥どうなる?
 
 ある街中
 零度以下にまで気温が下がる冷たく寒い夜。
 とある家のベランダで、少女が一人、斃れていた。
 全身を酷くいたぶられ、食事もろくに与えられてこなかった身体はぼろ切れのようになっていた。
 まともに子を育てることのできない親に忌まれ疎まれ、虐待され続けたあげく、寒空に放り出されて、彼女は死んだ。
 名前すら呼ばれず、ゴミ同然の扱いをされ。幸福なことなど、ほとんど何もなく。
 
 もし、バグアがこの世にいれば。
 バグアがこの街に攻撃を仕掛け、廃墟と化していれば。
 バグアを撃退するために金色の女戦士が現れ、彼女を救っていただろう。
 
 だから、バグアがこの世にいなかったこの世界では。
 彼女は、「エルレーン」ですらなかった。
 
 
 L3・ヴァサーゴ(ga7281)の場合。
 
 日本 御剣 真砂(みつるぎ・まさご) 高校3年生
 あまり御剣の家庭環境は良くなかった――両親に虐待されているという事実が御剣を暗く無口な性格な性格にさせていた。
 
 街の裏道でじっと、蹲ってる御剣。
 その姿も――安っぽいワンピースでしかもぼろぼろだ。
 理由は――家に居られないから、ただそれだけの理由だった。
「‥‥誰‥‥?何故‥‥我に‥‥?」
 『誰か』に声を掛けられる――
 
 伊万里 冬無(ga8209)の場合。
 
 伊万里 冬無 高校1年生
 警察官の父親と、学校教師の母親、可愛い妹の四人家族で大人しく心優しい少女として育つ。
 
 或る日、伊万里は学校帰りにふと、裏路地に『少女』が蹲っているのを横目で捉えた。
 其の姿に妹の影を見て、そして、そのボロボロな姿に声を掛けられずにいた。
「あの、大丈夫‥‥? こんな所で、如何したの?」
 
 大鳥居・麗華(gb0839)の場合。
 
 大鳥居・麗華 17歳 高校2年生
 大鳥居財閥の一人娘。両親に溺愛され毎日お嬢様学校へリムジンで行き来する生活をおくる。
 
 ある日。
 校帰りにふと外を見ていると気になる二人を見かけた麗華。
「あら?ちょっと車を止めてくださらないかしら?」
 二人の元へ向かい――、
 
 三本(御剣 真砂・伊万里 冬無・大鳥居 麗華)の線が交差する。
 
 L3・ヴァサーゴ(ga7281)、伊万里 冬無(ga8209)、大鳥居・麗華(gb0839)の三人の場合。
 
 話しかけてきた伊万里に自己紹介をする御剣。
「構わずとも、良いのに‥‥。我‥‥誰にも、不要の存在、故に‥‥。いっそ‥‥自ら、命絶つべきか‥‥と‥‥」
 あまり関わりたくない雰囲気の御剣だが――。
「そんな事ないです!」
 その言葉にショックを受けた伊万里が強く否定する。
 そして――。
「あなた達どうしましたの? と、ここで立ち話も何ですし家に来なさいな」
 二人に声をかける麗華。
「え。あ、えぇっと、その、此の娘が蹲っていたんです」
 突然の出来事にビックリする伊万里。
「‥‥」
 無言ではあるが、御剣も驚いている。
 そんな二人をよそにリムジンに乗せられ麗華の家へと連れられて行くのだった。
 (色々と、凄い処‥‥)
 麗華の家を見た御剣は世界の違いを実感した。
 
「そんな、そんなことって‥‥酷い、酷過ぎます!」
 麗華の家で御剣の事情を知ることになった憤りを含んだ伊万里の一言。
「我‥‥不要‥‥だから‥‥」
 俯き、ポツリとごちる御剣。
「‥‥それでも、酷いですわ!」
 麗華もまた御剣が置かれた立場に憤慨する。
「わかりましたわ! 私の所に来なさい!」
 麗華が御剣を引き取ると言い出した。麗華にはそれをするだけの財力もあった。
「やっぱり、家に帰りたい気持ち、あるけど‥‥両親、我の事不要と思っている、し‥‥両親の負担、減らせるなら‥‥それでも良い‥‥?」
 遠慮がちに、上目遣いで麗華を見る御剣。
「良いですわ。今日からは私達があなたの友達ですわ。此れからは一人ぼっちではありませんわよ♪」
 そう答える麗華に――。
「大丈夫。私だって、友達ですから!」
 伊万里もまたそう答える。
 
「え、御剣は高校3年生?‥‥あなた年上でしたの!?てっきり年上かと‥‥え、伊万里は私より年下?よ、世の中わかりませんわね」
「えぇ!? ま、真砂ちゃ‥‥いえ、真砂さんって先輩だったんですかぁ!?」
「‥‥うん‥‥」
 互いの詳しい自己紹介で驚く二人。
 すこし、恥ずかしそうな御剣。
 御剣は麗華に引き取られ、三人の楽しい学生時間が始まる――。
 
 数年後。
 大学を卒業した麗華はヴァサーゴとの出会いから、虐待されている子供達を救う為の団体を立ち上げた。
 そして、保護施設を作りその経営に当たる事になった。
「まだ始めたばかりで大変ですが、お二人ともよろしくお願いしますわね♪」
「はい! 麗華さん、宜しくお願いします!!」
「我のような子、これ以上増やせない‥‥。皆の事、必要とする人が、どこかに必ず居るはずだから‥‥一緒に、頑張ろう‥‥」
 こうして、三人は新たな日常が始まる。
 まるでそれが運命であった様に。
 
 
 バグアが現れなかった世界。
 あったはずかもしれない世界。
 その一つの可能性。