●リプレイ本文
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高度10000メートル――
新月の漆黒の闇に紛れて飛行する機体があった。
様々な思いを載せた輸送機が往く。
輸送機内で降下を待つ傭兵たち。
セシリー・ニミッツ(gz0463)は不安な表情をし、水筒に震える手をかけて蓋兼コップに「液体」を注ぐと「アルコール」の匂いが辺に漂った。
「‥お酒?」
そんな匂いに気がついた夢守 ルキア(
gb9436)。
「アルコール」 ――水ではなく「酒」だと他の傭兵たちも気がついた。
「他力本願にては‥‥強くなど、なれない‥‥」
そう咎めるのはL3・ヴァサーゴ(
ga7281)だ。
飲もうとしているセシリーの手首を掴み留めさせる。
「セシリー殿、同じ任務に従事する者としてこれは預かっておくのじゃ」
美具・ザム・ツバイ(
gc0857)が水筒を取り上げようとするが‥‥。
「ん‥‥」
それに抵抗しようとするセシリー。
「飲んだりしたら‥‥終わった後、悪戯しますよ♪」
そんな空気を払拭するように話しかける伊万里 冬無(
ga8209)。
「飲まなければ持っていてもいいですわよ」
飲まないと確約させるのを条件に持込を許可しようとする大鳥居・麗華(
gb0839)。
「‥‥」
飲まない自信が無いのか酒の入った水筒を美具に託した。
(‥‥どうしたのかな、あの人‥‥哀しいの?怖いの?それとも‥‥苦しいの?)
心配そうに様子を見ているエルレーン(
gc8086)
「‥‥いったい何があったんだ?」
そんな様子を怪訝そうに見ていた追儺(
gc5241)
つとつとと語りだすセシリー。
「人はみんな、誰かの命の上に立っているのよ。君も傭兵なら思う人がいるのでしょ、そこから逃げないで」
ソーニャ(
gb5824)は思いを語りかける。
「死んだ仲間はセシリーなら任せられると信じて、生き残らせた。それなのに逃げて死に近づくのは不義理だろう」
悲しい表情で語るセシリーに諭す追儺。
「そしてそもそも俺はこんなところで死ぬ気はないし誰も死なさない」
更に声に力を入れて語りかける。
「故に恐怖を覚える必要はない、俺を信じろ」
そう言って追儺は両肩を持ちセシリーの目を見て語りかけ、それは宣言のように聞こえた。
「‥‥ん、でこれからの相談なのじゃが‥‥」
咳払いした美具によって降下に際してのミーティングが開かれた。
これが成功のための大きな分岐点となった。
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降下〜施設
ジェット気流の中、先ず、セシリーが降下を始め、続けて伊万里、麗華、ヴァサーゴ、エルレーンと降下していく。
続けて、美具、夢守、追儺、ソーニャと降下を行った。
闇に次々と吸い込まれていく傭兵達。
物凄いスピードで落下していき、伊万里と麗華はセシリーを見失い様に調整しながら落下していく。
落下している途中、友軍機や近くで陽動作戦を行なっている様子が手に取れるように見えた。
どうやら、バグアの支配下にある他の施設に対しての攻撃のようだった。
事前の――美具の打ち合わせにより皆、覚醒しての降下のため問題なくAIの補助を受け、目標に対して降下することができた。
「ちょっと寒かったけど、飛べたね」
ソーニャは満足な表情をしながら――もう少し飛んで居たかったと思いながら落下傘を片していく。
館山港に降下した傭兵たちは使用した落下傘をコンテナの物陰に隠し、地図を元に陽動作戦による爆音を背に基地へ進む。
「やっぱり、駄目ですわね」
伊万里は無線機を確認するが、陽動作戦と同時に行われたECMジャミングによって妨害されていることを確認した。
幹線道路は陽動地点へ向うバグアの装甲車両が慌ただしく過ぎ去っていく様子を横目に進んでいく。
「どうやら、あちらさんは派手にやっているようだな」
追儺はバグアの載せた車両を横目に陽動作戦がうまく行っていることに安堵した。
うまく行ってなければ――タイミングがずれていたら、悲惨な事になっていただろう。
更に進むと――サーチライトが照らされ、慌ただしくしている目的の基地が見えた。
「これじゃあ、ちょっと厳しいね」
夢守が警備の様子を確認して、皆に告げる。
入り口は――混乱を受け、更に厳重に警備されている様子だ。
傭兵たちは入り口から侵入を諦め、フェンスの方から侵入することにした。
「こんな事もあろうかとじゃよ」
美具が「高性能多目的ツール」を取り出し、フェンスに穴を空け侵入していく。
伊万里、麗華、ヴァサーゴ、エルレーン、セシリーは司令室に向かい、美具、夢守、追儺、ソーニャは通信室へ向っていく。
通信室制圧班――
「隠密潜行」と「バイブレーションセンサー」を使用した夢守を先頭に警戒しながら美具、追儺、ソーニャと続く。
『OKこっちは居ないみたい』
『うむ、了解したのじゃ』
事前の美具の打ち合わせよって決めたハンドサインで合図をしあう傭兵たち。
途中、スライシングパイを駆使し、通路を進んでいき、閃光手榴弾を使いクリアリングを行なっていく。
「クリアーなんだよ」
「っと。こんなもんだな」
ソーニャの「ハーメルン」と追儺の「蒼天」で閃光手榴弾によって無力化した敵兵を倒していく。
確実にかつ着実にクリアーしながら通信室へ向かっていく。
そして――ついに通信室にたどり着いた。
追儺がドアを蹴破り、美具が閃光手榴弾を投げ込む。
破裂後、竜の翼で飛び込みむとソーニャの「ハーメルン」で高速でダンスのように高速回転しながら大鎌が悲しい音色をあげて敵を屠っていく。
夥しい鮮血と臓物が、辺に撒き散らかされ――それはソーニャ自身も紅く染め上げた。
夢守は幾人か身を伏して無事だったバグアの身柄を捕獲して情報を聞き出し、直近の通信していた書類を手に入れた。
情報を聴きだしたバグアの「処理」をソーニャと追儺とで行うと、美具と夢守で通信室の設備の破壊を行った。
こうして、直近の――増援として送られた強化人間の場所が判明することとなる。
司令室制圧班――
通信室班と共に建屋に侵入し、司令室へ向う。
「怖いよね、私も怖い‥‥よ。でも‥‥ひとりじゃない、よ」
「そうですわ、私も麗華さんもいますです♪」
「セシリー、しっかりついてくるんですわよ?大丈夫、前後は私達がいますし絶対一人にはさせませんわ」
エルレーンが「バイブレーションセンサー」を使用し警戒に当りながら伊万里、麗華と共にセシリーの様子を気遣う。
途中、伊万里、麗華、エルレーンは見つけたバグア兵を捕まえ司令室の場所を聞き出す間、
ヴァサーゴがセシリーの側で警戒していた。
「正直に答えたほうがいいですよ」
「そうですわ」
伊万里と麗華は「効果的な方法」で効きだす。
「うふふ‥‥ごめんね?でも、せめて痛くはしないであげるから‥‥」
エルレーンが見えないように隠れて敵兵を処理した。
敵兵を速やかに排除するたびにセシリーが青ざめていくが、周りの支えもあって何とかなっていた。
そして、ついに司令室までたどり着く傭兵たち。
閃光手榴弾を投入して突入を図る。
「あーはははははっ♪ ぜーったいに逃しませんですよ?」
伊万里の金蛟剪が敵の胴体を切断し、派手に内蔵と血をぶちまける。
辺が臓物と血で染まる。
「おーっほっほっほ! ここであったが100年目! 往生しなさいですわ!」
麗華のパイルバンカーがバグアの頭部に吹き飛ばし、脳梁がぶちまけられる。
血と臓物に脳梁が混じり早速、虐殺とも言える阿鼻叫喚な状況が生み出される。
「我‥‥敵、殲滅する‥‥」
ヴァサーゴは大鎌「プルート」で敵の足を狙い、攻撃をする。
大腿骨を切り飛ばし、派手に血が吹き出す。
「っせい!」
エルレーンは 魔剣「デビルズT」 をファング・バックルで攻撃力を上げ、敵兵に斬りつける。
袈裟斬りに斬られる敵兵。
非戦闘員であったオペレータのバグアも関係なくほぼ全てが躯と化した。
「え?あ‥‥。あああああああああああああああああああああああああああ」
そんな、血と臓物と暴力の嵐を見たセシリーはあまりのショックに身と心が耐え切られず気絶してしまった。
突入以前に指揮官は逃亡している様だった。
比較的、施設に被害がなかったお陰で東京に増援として送られた強化人間の情報を手に入れた。
●
施設破壊〜
格納庫に襲撃を掛ける通信室制圧班。
麗華が閃光弾を使い飛び込んでみるものの、すでにバグア達は逃走していても抜けの殻だった。
「!?」
傭兵たちにその惨状に驚愕の表情が現れる。
そこには強化人間のために連れ去られていた人々が伏せ倒れていたりしていた。
また、プラントも破壊されており、その中で生き絶えていた強化人間途中の「モノ」もあった。
その多くは年端のいかない少年少女達で、既に無残な姿で事切れていた。
強化しようとした、強化した部分は念入りに「破壊」されていた。
――どうやら、襲撃を察知したバグアのスタッフが機密保持のため「処分」したようだった。
「‥‥なんとむごいことじゃ」
自身とそう変わらない躯を見てショックを受ける美具。
「‥‥これは」
「‥‥」
惨状に言葉にならない夢守とソーニャ。
「クソッ!」
やるせない怒りを感じる追儺。
思わずその無残さに顔を伏せたくなる傭兵たち。
後続のUPC兵に彼らの「救出」を依頼すると滑走路方面へ向かった。
滑走路に向う、司令室制圧班。
気絶したセシリーを背負う伊万里とそれを護るように警戒して展開している麗華とヴァサーゴとエルレーン。
敵兵の抵抗を受けつつもジェリカンを投擲し爆発させるなどして滑走路の破壊と共に敵を排除してく。
爆発によって巻き込まれたバグアによる肉の焼ける匂いがガソリンの匂いとともにあたりを包む。
一部が激しく抵抗するも、傭兵たちによって肉塊に変わっていく。
航空燃料車やガソリン補給車を爆破させ、滑走路に大穴を開け深刻なダメージを与えていく。
そうしている内に、格納庫を制圧していたメンバーと合流する。
情報を交換しあい、格納庫の件にショックを受ける傭兵達。
UPCから連絡が入り、基地施設の完全制圧が終わったことを告げられた。
●
LH
その後、セシリーが眼を覚ました。
「‥‥んっ」
その様子を心配そうに集まってくる傭兵たち。
「‥‥大丈夫か?」
心配そうに声をかけえてくる追儺。
「えっと‥‥そうだ! 依頼を‥‥敵を倒さなきゃ!」
慌てた様子のセシリー。
「無事、終わりましたよ」
落ち着くように抱きとめる伊万里。
「心配無いですわ」
心配を払拭させようとする麗華。
「ねぇ、セシリー。君の大切な人達の話を聞かせてよ。忘れる為じゃない、心に刻むためのお酒だよ。ねぇ、彼らは笑っているかい」
検診して問題がなかったら飲もうと約束するソーニャ。
「‥‥?」
何のことかという表情をセシリーがする。
「セシリー殿の戦友の事じゃ」
美具がそう話しかけるが‥‥。
「戦‥‥友‥‥?」
「そうだよ?話してくれたよね?」
エルレーンが心配そうに語りかける。
‥‥
‥‥
‥‥
医師がやってきてセシリーに色々と質問を投げる。
彼女の過去の事、トラウマだったこと直近の依頼のこと‥‥etc。
どうやら、司令室前後の記憶が欠落し、トラウマとなった過去の記憶一緒にも欠落した様だった。
ショックによりトラウマが上書きされ――そのショックも巻き込んで欠落してしまった。
それは――今後、傭兵生活をする上で――躊躇いなく対人戦闘を行う事が出来るだろう。
心が壊れることなく、狂気に歪められることなく、彼女のトラウマを消し去った。
それは天から彼女に与えられた「奇跡」。
唯、彼女の親しかった過去の人々の記憶を代償に。
だが――それでよかったのかもしれない。
きっと彼女たちもそれを望んでいたのだから。
依頼は達成された。
が――犠牲も出た。
だが、これも戦争。
人が争いを続ける限り――悲劇と奇跡が作られていく。
これは誰も止められない。
Fin