タイトル:ジャイサルメール大攻勢マスター:後醍醐

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/01/09 20:13

●オープニング本文



インド ジャイサルメール
元旦
 旧正月、正月と日時は違えどそれは皆して新年を祝う日。

 ジャイサルメールの基地も戦闘の中にあって新年を祝っていった。
 戦い続けるからこそ――時には気を休めなければならない時がある。
 そんな、気を休める限り少ない日が元旦であった。
 基地には近隣の将兵たちの家族が呼ばれ、盛大に新年を祝っていた。
 任務柄、家族の元へ戻ることが出来ない将兵のために家族を呼び寄せたのだった。
 楽しそうな子供達の声、歓談する母親たちの声。
 普段、緊張感で包まれている基地もこの時ばかりは暖かな雰囲気が包む。
 が――そんな基地に魔の手が差し掛かる。
 まるでその時を待っていたかの様に。
 
 

 基地近辺
 偽装を施したHWとHWに乗ったバグアが賑やかな基地を見つめる。
「‥‥いい気なものだ」
 人類の反撃により敗走し、汚泥をすすぎながらこの機会を伺っていたバグア。
「だが‥‥」
 希望を――絶望に変えてやる。
「行くぞっ!」
 多数のHW達が一斉に基地に詰めかけ一気に奇襲をかける。
 奇襲に対して基地は即座に対応したが、いつもは居ない民間人が基地の管制を混乱させる。
 その隙を突いて基地の施設や防御陣地に攻撃を行うHW。
 攻撃の被害は基地施設や将兵以外にも基地に来ていた民間人にも被害が出ている。
 その現場は――阿鼻叫喚な情景が繰り広げられていた。


 ジャイサルメール基地近隣の基地。
 ジャイサルメール基地がHWによる奇襲を受けた事により、救援の部隊を差し向ける。
 が――その救援部隊は別働隊により足止めされてしまう。
 幾つかの部隊が、その足止めを突破してジャイサルメール基地へ向うが僅かに過ぎなかった

 救援部隊と奇襲していたHWとの交戦に入るが、基地の混乱によりHWに対して攻撃を行うこと
が困難であった。
 ジャイサルメール基地は更なる救援のためにULTへ緊急の依頼を行った。

●参加者一覧

榊 兵衛(ga0388
31歳・♂・PN
鷹代 由稀(ga1601
27歳・♀・JG
UNKNOWN(ga4276
35歳・♂・ER
アルヴァイム(ga5051
28歳・♂・ER
御守 剣清(gb6210
27歳・♂・PN
美具・ザム・ツバイ(gc0857
18歳・♀・GD
ユメ=L=ブルックリン(gc4492
21歳・♀・GP
ドゥ・ヤフーリヴァ(gc4751
18歳・♂・DF

●リプレイ本文


 ジャイサルメール基地付近
 緊急の要請を受けた傭兵たちが行く。
 高空戦域を担当する機体が次々と離陸していく。
「可及的速やかな撃破こそが、最良の救済策なのじゃよ」
 美具・ザム・ツバイ(gc0857)は敵襲の報を受けて状況を判断した結果、丘陵地帯からの出撃を同行メンバーに提案しそこから出撃となった。
 実は――襲撃したHW達も攻勢に利用した場所で出撃場所としてベストポイントであった。
「‥‥不意を突かれたとは言え、民間人を巻き込んでの戦いになるとはな」
「被害を最小限に食い止める為にも一刻も早いHWの排除をしなくてはなるまい。全力で当たる事としよう」
 朱漆色を基調として武者鎧を思わせる細かな塗装を施している雷電を操る榊 兵衛(ga0388)は全力で当たることを意気込む。
「日本だと年末に猫はこたつで丸くなるらしい、僕の使い魔はそんな事一行にしない」
「可愛げないとか言うと面倒だから止めとく。さて…去年から続く寒い散歩の寄り道だ」
 ドゥ・ヤフーリヴァ(gc4751)はこたつで丸くなる使い魔を想像しながら気合を入れる。
「さて、いきますか」
 攻勢に出つつも低空班とのオペレーションを志願した御守 剣清(gb6210)は注意しながら離陸していく。
 
 一方、低空戦域担当の機体も出撃を行なっていく。
「嘗めた真似してくれるじゃない…民間人の犠牲なんて出させるもんですか」
 鷹代 由稀(ga1601)の提案により、降下しながら基地入り口付近から出撃していく。
 その出撃時に味方基地の管制へアクセスし情報を交換していくのはアルヴァイム(ga5051)。
 これにより、敵位置や基地の状況の情報が傭兵全体へ伝えられることとなった。
 適切な襲撃位置と精度の高い情報――これにより戦闘は有利に進むものと思われる。
 艶消の漆黒な機体のコクピットで瀟洒な古美術品風の本革肘掛シートに腰掛K−111改を有機的に操作するのはUNKNOWN(ga4276)。
「年が明けた、だけで、何で、祝うんだろう‥‥?いつもと、変わらない、のに‥‥?」
 そう疑問を持ちながらもユメ=L=ブルックリン(gc4492)は民間人の被害最小を考えながらフェイルノートを操る。
 

 低空班
「年明け、くらい、大人しく、すればいいのに」
 まず動いたのは低空戦域担当のユメだった。
 事前の通信により着陸場所を確保すると、最大戦速にて基地へ接近し強行着陸を行った。
 民間人の収納や誘導を友軍と共に行い、最低限戦闘が行える状況を作り上げていく。
「目障りなのよ‥‥ジェイナス、目標を狙い撃つ!」
 突っ込でいったユメを援護するように鷹代が上空から「DFスナイピングシュート」を使い狙撃していく。
「こちらUNKNOWN、いや、敵ではない。LHのUNKNOWN、だよ」
「――敵位置を詳細に教えてくれ」
 UNKNOWNと味方基地に表示された故――アルバイムからの情報と基地からの情報を機体搭載のHPCで複合・比較し、更に精度の高い情報を得ることができた。
 その情報を元にUNKNOWNはユメの進路上にある敵にブーストを使いグングニルで穿いていく。
 アルヴァイムはUNKNOWNに高空・低空班の管制を頼み、自身は友軍の管制の補助と敵部隊の動向の把握に務めた。
 こうして、基地に張り付いていたHWから高脅威度と識別され、UNKNOWN・鷹代にHWが殺到する。
 それに対し、背を向けた形になったHWにユメはミサイルで弾幕を展開して何機か撃墜に成功した。
 その攻撃を合図にUNKNOWNが敵HSを穿ち、鷹代が狙撃して敵の数を減らしていく。
 アルヴァイムの管制補助により基地管制の機能が復旧しだし、ユメの支援もあり民間人の収納が成され、戦闘域として機能し始めた。
 
「民間人の収納完了。直ちに火器使用制限を解除。直ちに火器使用制限を解除」
 友軍基地から一報が入った。
 

 高空班
 低空班が基地支援を行なっていた頃、高空班は他基地の増援の抑えが終わり基地を襲撃しようとしていたHWを見つけ戦闘になっていた。
 低空班が敵主力を受け持っていたお陰と丘陵地帯からの離陸のため露見することなく新たに襲撃しようとしていたHWに奇襲とも言える攻勢を行った。
「ミサイルサーカスの超絶技巧お見せしようではないか『トランシェダント・ミサイルサーカス』」
 撃ち出されたミサイルの軌跡は直線的ではなく、曲線的に――まるでアクロバット飛行のような軌跡を描いた。
 そんな美具の天から撃たれた高命中系ミサイルとマルチロックミサイルの弾幕がHWたちを襲う。
「いっちょ、やりますか」
 御守のオウガから長距離バルカンでHWを牽制しつつブーストを掛け機刀で切り込みを掛けていく。
 ブーストと牽制しながらの切り込み――正にそれは吶喊と言うに相応しい
「‥‥敵増援か。始末せねばなるまい」
 榊の雷電は味方からの得た敵情報を元にスナイパーライフルで敵を狙撃して高空班のフォローを行った。
「これは見逃せませんね」
 冷静に判断したドゥの乗るリンクス改は他の高空班と連携して十字砲火な状況を作り出していった。
 HWは無人機ではなかった為、すぐさまカウンターを行おうとしたが撃ち放たれる弾幕や剣戟、十字砲火に為す術もなく撃墜されていった。
 中には特攻していく機体もあったが、分厚いキルゾーンに阻まれ撃墜されていった。
 一歩間違えば――低空班や自分達が奇襲を受ける立場だったかと思うと傭兵達は気を引き締めた。
 低空班に奇襲を試みたHW部隊の排除に成功した高空班は基地から遠方に誘引した低空班の支援に向かった。
 低空班は苦戦していないものの敵の物量を捌いている状態だった。
 

 逆襲戦
「民間人の収納完了。直ちに火器使用制限を解除。直ちに火器使用制限を解除」
 高空班と低空班が合流しようとした時、基地より連絡が入った。
 そう――民間人の避難が完了した為、「全力」で攻勢をかけられる合図だった。
 刻々と戦況が変化していくのがアルヴァイムとUNKNOWNから送られてくる戦況モニターに映し出されている。
 南部敵主力部隊と基地の東部・西部方面での戦闘状態等。
 今まで散発的に最低限の反撃を行なっていた味方KVや増援のKVの部隊がまるで堰を切ったように攻勢に転じた。
 討たれた同胞の為、被害を受けた民間人に彼らの親類がいたのかもしれない。
 そんな想いを連想させるような苛烈な反撃が始まった。
「ありがとう――傭兵諸君。君たちのお陰で全滅せずに済んだ」
「民間人も負傷者は出たものの、重篤な者はいない。君たちのお陰だ」
「さて、奴らを――ともに排除しようじゃないか」
 基地防衛隊の隊長だろうか、兵士が傭兵達に通信を入れてきた。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
 鷹代が支援の申し出に応える。
 その言葉が合図だったのだろう、一部の部隊が低空班の元へ向かい、加勢したのがモニターに記号として映し出される。
「っせい!」
 御守が切り墜とし――。
「着弾、今!」
 榊の雷電がショルダーキャノンで地上に落ちた敵を砲撃する。
「これでどうじゃっ」
 300近い小型ミサイルによる弾幕は壮観とも言える情景を描く。
「大人しくすればいいのにゴミムシどもが‥‥」
 民間人の収納完了により戦線復帰したユメの攻撃により更にミサイルの弾幕が濃さを増す。
 早速、ミサイルによるファイヤーパーティーだ。
「――ふむ、心配の必要は無いようだな」
 気にしていた民間人が無事収容されたお陰で前以上に容赦無い攻撃を与え続けるUNKNOWN。
「――方位に敵だ」
 もちろん味方への管制も怠っていない。
「油断は禁物だけどね!」
「悪い!助かった!」
 鷹代は友軍機の死角へ移動しようとしたHWを狙撃して撃墜した。
「――周辺からの敵増援は見当たらず。東部・西部戦域も‥‥」
 アルヴァイムは基地管制の補助と友軍管制を行う事により戦闘を有利にすすめている。
「こんだけ、敵が多いとね!」
「ホント嫌になるよ!」
 唸るマシンガン。早速、集まってくる敵は蜂の巣になっていく。
 加勢した友軍と合流した傭兵達によって展開された二面作戦により敵主力部隊はその数を減らしていく。
「敵主力部隊を殲滅。基地側面の西部・東部へ転戦したほうがいい」
「敵主力部隊の壊滅を確認。東部・西部戦域へ応援に向かうので耐えてください」
 UNKNOWNが戦況モニターに敵部隊のマーカーのデータを傭兵・友軍に配信し管制をする。
 一方、アルヴァイムは基地と友軍部隊に戦況を伝え管制を行なっていた。
 西部・東部へと転戦する傭兵と友軍達。
 敵主力よりもその数は少ない為、どちらかと言うと掃討戦の様子を呈した。
 熱したバターが溶けていくように敵が潰えていく。
 こうして、基地周囲の掃討戦も終了し、友軍と傭兵達は新たな敵襲の警戒を基地周辺で日暮れ前まで行った。
 
 
 ●
 戦い終わって
 滑走路に着陸する傭兵達と入れ替えるように出撃する友軍機。
 傭兵達を迎えるのは――基地の兵士たちではなく、避難させた民間人たちだった。
 そう、彼らは基地の兵士達の親族であったり恋人であったりした人達だった。
 未だ、敵襲を警戒している基地の兵士達に代わって彼らはKVから降りてきた傭兵達を囲んで感謝の念を伝えた。
 その様子に一瞬、驚いた傭兵達だが自分達が彼らを守れたことに安堵し、その感謝の言葉に笑顔になれた。
 そして、彼らに誘導されるように行くと、そこには新年の祝で用意されたのだったろう、食事が用意されていた。
 そう、彼らなりの傭兵達に対する感謝の気持ちがここにあった。
 こうして――傭兵達は彼らと共に新年を祝うのだった。
 
 そう――勝利は敗北の理由がないから、敗北には理由がある。
 彼らはその敗北の理由を潰したから。
 連携と作戦により悲劇は回避された。
 未だ、戦いは続く――勝敗は兵家の常。
 だが、敗北しそうな状況においても闘い方によっては――最良でなくとも次善の結果を残すことが出来るだろう。
 
  Fin