タイトル:君のテクで魅せまくれマスター:羽月 渚

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/09/09 05:09

●オープニング本文


「うがー、違う違うちっがーう! だーかーらー、あたしゃあこんな武器を求めてるんじゃないのだよ!」
「は、はぁ、申し訳ありません」

 日々進化する能力者達。しかし、そんな彼らを支える相棒として重要な『武器』も、同じくして日々進化を遂げていた。メガコーポレーションのドローム社と深い繋がりを持つ武器開発局。そのとあるチームのサブリーダーであるミーナは提示される資料に目を配りながら、ひたすら彼女の部下を怒鳴っていた。

「うーん、やっぱ実戦経験のないあなた達に全て任せたところで、できることなんて限られてるわよねぇ」
「の、能力者のデータには一通り目を配っているんですが、その、やはりいざ開発となると‥‥」
 ミーナの発言に残念そうな顔で目を落とす男。毎日の疲れのせいか、彼の目には大きなクマができている。
「ふむ。じゃあこうしましょう、あたし達のチームも実際能力者と対面して、ディスカッションしてみるのよ」
「つまり生の意見を訊いてみよう、と」
「そういうこと」
 ニコッと部下に微笑みミーナは立ち上がる。そして、
「それと、彼ら同士模擬試合をさせて、それをあたし達で見学しましょう! この目でまずは彼らのことを知らなければ、彼らが満足する武器なんて作れるはずないものね」
 ググッと前に乗り出し、目を輝かせながらこう告げるのであった。

―――UPC本部

「何々、より強い武器の開発のために、あなたの力を是非お貸しください」
 そこに提示されていた依頼は、一日の間、能力者そのものを『借りる』内容であった。前半にお互いの最も得意とする武器で参加者同士、模擬試合を行った後、その経験もふまえ武器開発チームと議論を交わす。議論といっても、実際にはこんな武器が欲しい等という一種の要望を何か用意しろ、ともとれそうではあったが。

「ふーん。暇だったら俺の槍が火を噴いたんだがなー」
 やたらと威勢のいい屈強な男がこう言った後ろから、
「良かったねぇ、暇じゃなくて。恥ずかしい思いせずにすんだじゃん」
 ケラケラと女が笑って近づいてくる。
「てめー、お前には俺の美技というものがだな(以下省略)」
 自慢の美技をこれでもかと誇張する男に女はあきれながら、
「でもまぁ、魅力的な武器が多いことには越したことないねぇ‥‥」
 ボソリと呟くのであった。

●参加者一覧

霞倉 那美(ga5121
16歳・♀・DF
レカミエ(ga8579
14歳・♀・BM
アセット・アナスタシア(gb0694
15歳・♀・AA
シヴァー・JS(gb1398
29歳・♂・FT
しのぶ(gb1907
16歳・♀・HD
高橋 優(gb2216
13歳・♂・DG

●リプレイ本文

「あっ、ユウちゃんだ! おーい」
 ドローム社傘下の、日夜、武器の開発及び品質向上に努める研究所が存在する。ここは、その内部の一角に設けられた休憩室。カップ飲料を口にしながらソファーに座り、足をぶらぶらしてくつろいでいたしのぶ(gb1907)は、顔馴染みの少年を見つけ嬉しそうに声をかける。
「またアンタ‥‥もう何も言う事ないし」
 そんな彼女に気づき、ハァと溜息混じりに呟く少年、高橋 優(gb2216)。真新しいカンパネラ学園の制服に身を包んだ彼は、腕にバッグを抱えたまましのぶから目線を逸らす。
「そんなこと言っちゃダメだよ! 今日の試合、ユウちゃんは私とだからねっ!」
 腰掛けていたソファーから身を乗り出し、逸らされた視線の前に歩み寄って、ズビッと高橋を指名するしのぶ。そう、今回彼らは模擬試合の依頼のため集められた傭兵達であり、周りにも先に到着した傭兵達が何事かと言う表情でしのぶ達の方に目を向けていた。そんな彼らの隣には、各々の武器を入れているのであろう荷物が置かれている。
「ボクにも決定権はあるんだし。でもまあ、おもしろそうだから痛めつけてやるし」
 フッと失笑したような表情で、しのぶを見下した態度をとる高橋。見下すと言っても、実際には自分より身長の高いしのぶを見上げての台詞なのだが、強気な彼の顔は自信に溢れている。しかし、本人は嫌味たっぷりのつもりでも、やはりまだ年相応のかわいらしい顔とのギャップが何とも言えないのは内緒であるが。
「んふふふー。普段から、その生意気な根性を叩き直してあげたかったんだよネェ」
 こちらも負けじと言い返すしのぶ、傭兵とは言ってもまだ学生に身を置く年齢である。そんな彼らの会話は、どこかちょっぴり微笑ましいものであった。そして、彼らのケンカを見ながら同じような年の少女が2人‥‥
「なんだか楽しそうだね、あの人達」
「そうだね、でも私達も人のこと言ってられないかな‥‥」
 霞倉 那美(ga5121)の言葉に返事をするアセット・アナスタシア(gb0694)。勿論彼女達も今回ここにいる目的は模擬試合のためなのだが、アセットは横で笑っている霞倉とは違い、どこか真剣な面持ちである。
「‥‥やっぱり、緊張してるの? 肩を並べることはあっても、こうやって相対することは無かったよね。私は大丈夫、遠慮なんかいらないよ」
 ニコッと声をかける霞倉に、ありがとうと返すアセット。仲の良い2人、だからこそ霞倉は分かっていた。言ってみたものの、アセットは緊張しているわけではないのだろう。きっと、今日を境に互いが更に高めあえるようになれば、そんな覚悟を決めて臨んでくるはずだ、と。
(「私も今日は全力で行くからね」)
 心の中で一言、アセットの手の上に自らの手を優しく乗せるのであった。
 お互い、ちょっぴり痛い目を見せてやろうと目論む2人と、固い友情で結ばれているからこそ全力で戦う2人。それぞれの思いは違えど、信念を持った能力者通しの戦い。4人の戦いが、貴重なデータとなりうるであろうことは必死であった。そして、最後の1組が姿を見せる‥‥
「うわぁ、かわいい」
 思わず呟くしのぶ。彼女の目の前に現れたのは、大きな帽子から覗く小さな顔に、尻尾をフリフリさせてやって来た少女。尻尾はアクセサリーなのだが、フサフサで本当に生きているようなかわいらしさをかもし出している。
「なんか犬みたいなんだし」
 高橋の言うとおり、首輪をつけたどこか不思議な女の子、レカミエ(ga8579)がポフッと椅子に腰掛ける。
「今日は楽しみです。お相手の方は、居合いの得意な方と聞きましたが、さてどうしましょう」
 口に指を当て可愛げな仕草で思案するレカミエは、小声で呟きながら今日の対戦相手について悩んでいた。そして、コツ、コツと革靴の音を立てながら、コートを纏った男が近づいてくると、
「今日は随分とお若い方が多いようですね」
 周囲を見渡しながら、整った顔立ちの男、シヴァー・JS(gb1398)が立ち止まる。
「あの人が、ボクの対戦相手‥‥そしてあれが‥‥」
 レカミエが見据える先には、シヴァーが布で包んだ1本の刀が出番を待ちわびていた。

「はいはーい、今日はわざわざありがと。あたしがここのリーダー、ミーナだよぉ!」
「ミ、ミーナさん、正しくはサブですよ、サブ」
 シヴァーの到着と同時に近くのドアがバタンと開き、若い女とその助手らしき男が入ってくる。やたらとハイテンションな女の傍で、資料を手に持った男が参加者を見回す。
「ミーナさん、大丈夫でしょうか? 今日集まってもらった皆さん、ほとんどが未成年なんですが」
「なはは、だいじょぶだいじょぶ。大規模作戦の最前線にせよ、キメラとの戦いにせよ、そして模擬試合にせよ、『能力者』は年なんか関係ないのよ。それに、見なさい、あの2人」
 小声でひそひそと話すミーナと男。ミーナがフッとしのぶと高橋の方へさり気なく目を向ける。
「あの2人は‥‥最近話題のドラグーンですか」
「ええ、外にAU−KVを待機させてあるわ。AU−KVの戦闘データに関しては目を通しているけど、実際にこの目で見るのは初めて。そういった点含め、今日は楽しい日になるわよ〜」
「おもいっきり聴こえてるんだし」
(「ギクッ! か、かわいい顔して油断も隙もない子達ね」)
 高橋からツッコミを受けたミーナだが、手をパンパンと叩くと
「それじゃあ、連絡してあったとおり、各組ごとに順番で戦ってもらうからよろしくねー」
 気を取り直して6人を戦闘ルームへと移動させるのであった。

「うわー、真っ白な部屋」
 強化ガラスと白い壁で覆われた空間、普段目にすることは少ない光景に興味津々の霞倉。
(「那美は強い‥‥それは私が一番知っている。だからこそ、今日は」)
 そんな霞倉を見ながら、ほぼ自らの身長と同程度の大剣をギュッと握り締めるアセット。
「2人とも準備はいい? じゃあ始めるわよー」
 こうして、模擬試合が幕を開けようとしていた。

「あの2人、どうやら友達のようだけど。ふふ、まさか武器までいっしょとはね」
 モニターとガラス越しに2人の少女をじっと見つめるミーナが、資料に目を配りながら目を輝かせる。
――コト
 冷たい切っ先が地面に触れる。いつもは並んで戦う友が対峙する。点灯するランプ、窓越しに聴こえるミーナの声。アセットが瞬間に踏み込む。それを合図に、ミーナの目から彼女が消え、友との戦いは始まった。

「速いっ」
 一瞬にして詰められる間合い、気づけば目の前で剣を上段に構えるアセット。
(「振り下ろし!」)
 横に跳び即座に攻撃を回避する霞倉。力勝負になると分が悪い、まずは素早い動きで勝負を持ちかけなくては。アセットに隙を作らせた彼女は、そのままアセットを中心に円移動し、側面から刃を向ける。
「大剣で気をつけるべきこと、それは‥‥!」
 上段からの振り下ろしで刃が下に突きささり、わずかに隙のできるアセット。大剣の重さが一気に下方へと集中したこの瞬間、アセットの筋力だけで次の払いに繋げるにはかすかに遅れが生じるはず。
「さすが、やっぱり狙ってきたね」
「!?」
 その咄嗟の瞬間、霞倉の一撃を読んでいたように、そのまま体を横へと倒しながら体ごと下段からの斬り上げへ移行するアセット。その姿は、完全に大剣を従えた者の戦いであった。
「くっ」
 グッと踏み出す足にブレーキをかけ、一歩後退してその攻撃を眼前で避ける霞倉に、追撃の横なぎを仕掛ける。
(「やっぱりお互い手の内は分かっている。それなら‥‥」)
 横からの攻撃を大剣で受け止めそのまま受け流す霞倉。高らかに響く金属音、手から伝わる確かなアセットの一撃の重さ、ガガガと力を奔らせながら半円を描きそのまま攻撃へと転換する。
(「ここだ、次の隙を狙う!」)
 円を描き接近してくる霞倉を視認し後方へと一蹴するアセット。ギリギリまで攻撃を引きつけてからかわし、ここで一気に畳み掛ける。そう判断し、退いた足を止める。確かに、回転後の隙をつくアセットの判断は間違っていなかった。が
「! え」
 ガクッと下がった視線、気づくと片方の足が地に付いていない。
「足払い!?」
「手の内は分かるからこそ、本来の攻撃を虚にすれば!」
 半回転しての斬りつけを囮に、目的を次回転の足払いに置いた霞倉が、態勢を崩したアセットにそのまま体重を乗せて
――ガッ
「へへ、私の勝ちだね」
「‥‥やっぱり那美は強いね‥‥」
 フッと静かに笑って自らの親友を見つめる少女。
「でも、これで私の一撃必殺は磨かれる。次は負けないよ」
「こっちこそッ!」
 確かな手応えを感じて自らの更なる精進を決意する2人。その姿は、正に真の能力者であった。のだが‥‥

「‥‥ミーナさん、見えました?」
「ゴメン、無理」
「良かったですね、スローカメラ最新の買っておいて」
「うん‥‥」
 想像以上の動きに、戸惑いを隠せない2人が、唖然とした顔でその光景を見つめていたのは内緒だったり。そして
「次はボク達なんだし。まったく、結果の見えた試合なんてつまらないんだし」
「あー、ちょっとぉ、それどういう意味!?」
「言葉のまんまなんだし」
 相変わらず仲がいいのか悪いのか分からない会話を繰り広げていた2人が、前の2人とバトンタッチを交わしていた。

「んふふ。今からユウちゃんに着くペイントの数だけ、君は戦場で倒れることとなるのだ」
 フッフッフとライフルに弾を込めるしのぶが、目を怪しげに輝かせながら高橋を見やる。
「おっと、間違って1発実弾入れちゃったかなぁ。ま、いっかぁ」
 うぉーい! とミーナが突っ込みそうになりながらも、いつものことと言った様子の顔でリンドヴルムを始動し出す高橋を見て、
「それでは、2人ともお願いします」
 助手の男が合図を送った。

『全力全壊』
 確かにしのぶのAU−KVに刻まれたその4文字。
「相変わらず趣味悪いんだし」
「それじゃ、いっくよぉ!」
 そんな言葉なんて聞こえない、とばかりに一気にライフルを構えしのぶが竜の瞳で高橋の足に連射する。
「ち、遠距離攻撃なんて面倒な相手だし」
 その攻撃を視認して急速に横へ回避するやいなや、顔をしかめて呟く高橋。とは言え、『フリ』であったりする悪な少年に、
「全力! 全壊! ほらほらっ、守ってるだけじゃダメじゃない!?」
 絶え間ない装填と連射を鮮やかにこなすしのぶは、徐々に接近しようとする高橋から、一定の距離を保ちつつ彼の頭部と足を狙う。自らの盾に付着するペイント、それを見ながらも冷静に『時』を待つ高橋。
(「1、2、そろそろなんだし」)
「ほらほらー‥‥んん、おっと、また弾切れかな?」
「今なんだし!」
 瞬間、練力を媒介に急加速する高橋のリンドヴルム、竜の翼を発動した彼が一気に距離を詰める。
「おっと、それは私も使え‥‥!?」
 装填の構えを取りつつも、同じくスキルで後退しようと向きを変えたしのぶだったのだが―――そこには、後方に迫る白い壁。
(「誘い込まれた」)
 完全に行動を読まれていたしのぶの前方に高橋が接近する。
「くっ」
 咄嗟に銃そのものを武器に体術で応戦するが、斬ると見せかけ盾で護り、盾と見せかけ避ける高橋の高度な虚実に防戦一方で
「これで終わりだし!」
 振り下ろされる直刃を銃で受け、そのまま倒れるしのぶに高橋が馬乗りのマウントポジション! そのままトドメへ移行する高橋を目の前に
「あーあ、負けちゃっ‥‥‥‥なーんてね」
――バシュ
「え」
 唖然とする少年、気づくと頬部分についたペイントの跡。
「ごめーん、さっき向き変えた時に装填終わってたんだ」
「‥‥」
 プルプルと震える高橋に、ゴメンゴメンと謝るしのぶだったが、ブスッと無口なまま少年は立ち上がると重い足取りで出口に向かう。
「あはは、かわいいねぇ」
 その様子を見て微笑むミーナだったのだが
「それで、見えたんですか?」
「無理!」
 キッパリと助手に涙目を向け言い切っていた。

「さて、いよいよですか」
 2人の戦闘を観戦していたシヴァーが蛍日を持ち席を立つ。それに続いてレカミエが軽い足取りで部屋を移動を始め、
「よろしくお願いしますね」
 対峙する青年と少女。ペコッとレカミエが挨拶すると、彼女の耳が犬耳へと変化する。
 そして、同時にイアリスと小銃をそれぞれ片手に飛び出し開戦!

「こちらこそ、どうぞよろしく」
 飛び出してきたレカミエがフッと足を止める、前方から何かの飛来物!?
「シヴァー様は確か飛び道具は‥‥これは」
 カランとイアリスで弾き飛ばした先に光るのは‥‥コイン? そしてその刹那、シヴァーが急接近すると、ハッとイアリスを伸ばすレカミエ。超近接での激しい戦いが始まった。
――ガキン
 レカミエのイアリスと、シヴァーの鞘に収められたままの蛍日が激しく火花を散らす。スッと散発的に小銃で牽制の素振りを見せるレカミエに、そうはさせまいと蹴りを入れるシヴァー。高速の剣撃同士が弾きあう攻防の中、緩急をつけステップで回避するシヴァーを見たレカミエがギュウンと体を丸め下から潜り込む。
「素早いですね」
 下段に鞘を突き立てるシヴァーの攻撃をイアリスで弾いたレカミエは、低い姿勢でシヴァーの鞘を押さえたまま、もう片方の腕をスッと伸ばすと
「!」
――腹に突き立てられた小銃。
「なるほど、近接での本命はこちらでしたか」
 響く発砲音、一般人ではその一連の流れで何か起こったかさえも分からない高速の展開。どうやら決着はついたらしいが、ミーナ達は何がどうなったかさっぱりの様子である。
「ふむ、私の流派の形を装備に合わせアレンジした動きだったのですが‥‥なるほど、素晴らしい動きでしたね」
 スッとレカミエを見て、出口へと向きを戻すシヴァー。彼のコートのわき腹には、確かにレカミエのペイント弾が掠めた跡。そして、彼の両手には、一方の片手にボロボロの鞘と‥‥
「居合いの後に真音獣斬をぶつけるつもりだったんですが、失敗しちゃいましたね」
 パラッと衣服に入る一筋の切れ目。確かに銃を突き立てた瞬間に視界から消えたシヴァーの一振りが決着をつけていた。
「私の負けです、ありがとうございました!」
「いいえ、ほとんど相打ちですよ。それに、居合いせざる終えない最後の一撃は見事でした」
 お互いを称える2人、そんな張り詰めた空気の中
「おっと。そういえば私のコインはこの辺りに‥‥斬れ‥‥てる」
 拾うんかい! とミーナからツッコミを受けるシヴァー。どんまい!

「皆素晴らしい試合だったわ! (見えなかったけど)」
「おかげさまで、本当に良いデータが取れました。(見えなかったけど)」
 ミーナ達が6人を前に感謝の意を表す。
「それでは、こちらでディスカッションを」
 戦いの余韻が残る戦闘ルームを後に、会議室へと移動しお互いの案を出し合う6人。後に、彼らの発案はミーナ達の吟味の後、上へと発案された。