●リプレイ本文
●死闘!暗黒宇宙!
「あたし、行くっスよ! 待ってて皆‥‥必ず全員で、生きて帰るっスからっ!!」
空を賭ける機体の中で、ルクサーナ・トゥファン(
gc0425) が叫んだ。
人類存亡を賭け、六人の勇者が今、宇宙へと飛んだ。大気圏を貫き、飛び出したのは輝く銀の光。銀のマシンは胸の前で両の拳を付き合わせる。右腕を突き上げ、操縦者メイプル・プラティナム(
gb1539) が名乗りを上げる。
「白銀色に輝く勇気! プラティナム・ライディオンっ!」
虚空に浮かび上がる勇姿は、まさしく白銀の勇者。その名もプラティナム・ライディオン。
「青き霧の中より出でし、藍王、只今推参!」
次いで、群青の忍者が宇宙の漆黒に飛び出した。イーリス・立花(
gb6709) は宇宙に展開する敵に向かって、『妖精の目』を放った。
「行きなさい、何者をも見逃さぬ妖精たちよ!」
『妖精の目』が敵艦隊内部の熱エネルギーを検知する。
「巡航ミサイル! 来ます!」
敵艦隊から放たれた無数の巡航ミサイルが、津波のように六機に襲い掛かる。数千万のミサイルに向かって、プラティナム・ライディオンが左手を突き出す。
「ディフレクトウォオオオオルッ!」
展開した防御フィールドが巨大ミサイルを次々と防ぐ。黒き宇宙が爆炎で瞬いた。
「そんな攻撃で‥‥ライディオンは負けないっ!」
六機には傷一つついていない。メイプルに続いたのは、ヒルダ・エーベルスト(
gb9489) だ。彼女は勝利の女神の名を冠する金色の天使『ヴィクトリア』に搭乗している。
「なるほど、どちらを向いても敵だらけ‥‥撃てば当たるとはこの事です!」
天使の羽根には無数の銃口が付いている。銃口を広げると、広範囲にビームを乱射し、次々と敵の宇宙戦艦を打ち落としていく。
「サポート・ウィング起動、援護を!」
切り離された翼の一部が、自立行動で味方の援護を始める。彼女たちの猛攻に、宇宙を埋め尽くす艦隊が爆炎に包まれる。
「いちいち相手にしてたらキリがないッスね!」
「たしかに数が多いね。それなら中央を切り崩そうよ」
宇宙の漆黒に浮かび上がる黒の機体。カロン・ヴァルキリオンに搭乗するのは夢守 ルキア(
gb9436)だ。
「さあ、アケロン・ザ・ケイオス―――リベリオンの反逆は止まらないよ!」
ルキアの全身には、黒蛇の文様が浮き出している。その腕にはRebellion(リベリオン)の金文字が輝いていた。カロン・ヴァルキリオンからも黒蛇が湧きあがり、四散する。
敵艦隊の中央に位置する旗艦、究極無敵宇宙要塞の装甲を弱体化させる。どれだけ強固な装甲だろうと、弱点は作り出せるのだ。
「これで、あとは打ち貫くだけだよ」
「それなら私に任せてもらおう!」
炎のように赤いマシン、ゴッドノモディに搭乗するは正義の味方、阿野次 のもじ(
ga5480)。
「千の希望を光に変えて。灯せ未来のシャイニングロード。ゴッド☆ノモディ、ただ今見参!」
名乗りを上げると共に、ゴッドノモディは翼を広げる。
「いっきにいくわよ。奥義‥‥!」
彼女の声に呼応し、機体が光の螺旋を纏う。
「真音GOD斬!!」
螺旋を描く光の翼が、周囲数十キロのバグア艦隊を巻き込み、切り裂きながら突き進む。キングバグアの待つ究極無敵宇宙要塞の外壁に直撃し、火花を散らす。
彼女を援護するように、プラティナム・ライディオンが右腕を頭上に突き出した。
「私たちは前に進むしかないんです! ライディオントルネードパァァンチッ!」
回転しながら突き出された拳が機体を離れ、宇宙の闇を切り裂いて突き進む。展開する宇宙戦闘機を次々と打ち落とす。真音GOD斬と共に究極無敵宇宙要塞の装甲に突き刺さる。爆発と共に、宇宙要塞の外壁に風穴が空いた。
●突入!宇宙要塞!
全長3万キロメートルの究極無敵宇宙要塞に、六人は突入する。敵の攻撃も苛烈さを増し、機体は敵の猛攻を受けて、徐々に傷つきつつあった。
「あひゃー! 沢山撃って来るぅー逃げたい!」
侵入者撃退用ロボットの猛攻撃にさらされる緑の機体、カノーネボンバー。悲鳴を上げたルクサーナは、しかし攻撃を仕掛ける敵機に背を見せず、ガトリングキャノンを向ける。
「なんつって、あたしだって最後くらいはマジメに戦うッスよ! バレットスコール!!」
ガトリングの一斉掃射が敵機を打ち抜く。数万のロボット兵器が連鎖して次々と爆発を起こした。
勇敢に戦う彼女たちだったが、機体に刻まれたダメージが円滑な動きを妨げる。敵が隙を逃さずに攻転を狙う。だが、カロン・ヴァルキリオンから伸びた光が、六機を包み込んだ瞬間、機体のダメージが一気に修復した。
「そんなことでは、私たちは止められないよ」
味方機を回復させるルキアを優先して狙おうと、無数のロボットがカロン・ヴァルキリオンに殺到する。
「相手を見て、弱点を把握、トリガーを引く」
後方支援に徹していた彼女だが、決して攻撃性能が劣るわけではない。敵の動きを観察し、的確にエネルギー弾を打ち込む。踏み込みの一瞬、攻撃の刹那、ルキアは敵を次々と破壊していく。
「攻撃は最低限の動作で、一瞬息を止めるだけで十分」
カロン・ヴァルキリオンの的確な攻撃に、数で圧倒しているはずの敵部隊が攻めあぐねて動きが鈍る。突如、動きを止めた敵機が爆発を起こす。光学迷彩で姿を消した藍王が、両手のブレードで敵ロボットを切り裂く。
「先手必滅‥‥どこを見ているのですか? 私はここです」
キングバグアの待つ王座まではあとわずかだ。
「正面の敵をなぎ払って道を開きます、その隙に強行突破を!」
ヒルダが敵の正面に立った。ヴィクトリアの天使の翼が高エネルギーを放ち、輝く。
「コア・エナジーユニット、リミッターリリース。オーバードライブ!」
一点に集中されたビームが敵機の群れをなぎ払い、蒸発させる。一筋の光が消えた後には、要塞中央までの道筋が切り開かれている。
●激闘!銀河大決戦!
「この闘いで全てが終わるのですね‥‥勝利の女神の祝福を、我らに!」
「緊張して来たッス‥‥でも、絶対負けないッス!」
ついに王の間に辿り着いた六人。彼女たちの目の前には、惑星のように巨大なキングバグアが立っている。
「人間如きが、我に勝てると思うたか! 我こそは無敵の王、究極の支配者、キングバグアなるぞ!」
「知っている。ここから発する多次元への絶対的空間干渉こそが貴方を無敵に至らしめる支配の正体。故に私たちは『ここ』に来た。それが王を倒す唯一の方法」
のもじの言葉に、キングバグアは愉快そうに笑った。
「ほう‥‥我を知る者が居るとは。だが、無駄なことよ。貴様らはここで死ぬのだからな!」
キングバグアが咆哮を上げ、六機に襲い掛かった。振り回す腕の一撃だけで、機体に深刻なダメージを与える。スーパーロボットですら、キングバグアに掛かれば玩具のようだ。
「藍王、フルドライブ。リミット解除!」
機体のエネルギー全てを両手に回し、藍王がブレードを展開する。振り下ろした『紅蓮ノ大太刀』とキングバグアの爪が激突する。
「我が夫の仇、今ここで討たせていただきます!」
「無駄だ! 貴様らでは我には勝てぬ!」
「あなたを倒して皆で地球に帰るんですっ! プラティナムソード・ブレイクファングッ!」
藍王の攻撃にあわせて、メイプルが出力全開で斬りかかる。キングバグアの指を一本破壊するも、反撃を受けて藍王とプラティナム・ライディオンが吹き飛ぶ。
ルキアがその傷口を狙い、エネルギー弾を連射する。正確に同じ位置に命中するも、痛痒にも感じていない。
カノーネボンバーのミサイルを腕の一振りで破壊する。ヴィクトリアのビームもキングバグアの肉体を焼き貫くことは出来ない。
「みんなの声援がある限りゴッドノモディは無敵よ! 真音GOD斬!!」
気合の声と共に、ゴッドノモディがキングバグアに突貫する。だが、螺旋の翼が届くよりも早く、鋭い爪の一撃を受けて、ゴッドノモディの機体に亀裂が入る。
すでに六機は満身創痍だった。このままでは、キングバグアに手も足も出ない。
「合体しましょう‥‥グレートヴァルキリオンに!」
「ですが‥‥シミュレーションでも成功したことはないのですよ。実戦での成功率は1%もありません!」
メイプルの言葉に、イーリスが反論する。失敗は確実な死を意味する。すなわち、地球で待つすべての人々の敗北なのだ。
「確率が足りない分は‥‥勇気で補えばいいんですっ!」
だが、ここで彼女たちが勝たなければ、失われるのは地球に生きる全ての命。
「私たちが負ければ、それでお終い。1%でも勝つ確率があるなら、やりましょう」
ルキアが同意を示す。迷う彼女たちに向かって、キングバグアが巨大な腕を振り上げた。
「サンシャイン・ミサイル!」
カノーネボンバーの全身から一斉にミサイルが舞う。空中で一つの大きな光弾となり、キングバグアの振り上げた腕を炎で包む。
だが、それだけの攻撃も受けて、敵をわずかに怯ませたに過ぎない。
「諦めろ人間どもよ。その玩具を捨てて命乞いをしろ。そうすれば、お前たちの命だけは助けてやろう」
「ふざけてんじゃないッスよ。沢山傷ついたッス、人も街も地球も! 今更あたしらだけ後になんて退けるわけないっしょぉ!」
決意を込めた眼差しで、ルクサーナがキングバグアに立ち向かった。
仲間たちの言葉に、イーリスも覚悟を決めたように頷いた。
「地球を守るべく散った夫に代わり、私が守ってみせる……いえ、私たち、でしたね。合体しましょう!」
「博士の想い、人類の希望をミロ。究極合体V−BOX発動!」
赤、青、緑、金、銀、黒。六色の光が空を舞い、空中で混ざり合う。一体一体が変形・合身し、真の姿をあらわした。
それは絶対を誇る邪悪なる王と同格存在。人類の希望、六人の勇気がもたらした奇跡の姿。宇宙を舞う究極の戦乙女。
『超戦姫合体、グレートヴァルキリオン!!』
地球人類の希望は今、一つの勇者として光臨した。
「ふん、六つの玩具が一つになったところで何が変わるというのだ!」
「試してみると良い。私たちの力を!」
キングバグアとグレートヴァルキリオンが両腕で組み合う。睨みあう戦乙女と破壊の魔王。
「コイツには、こんな武器もあるんだよ」
グレートヴァルキリオンの左足からエネルギー弾が飛び出し、キングバグアの目を撃った。悲鳴を上げて、巨体がよろめく。
怯んだその隙に、右腕を振り上げる。
「ヴァルキリオンクラッシャーパァンチッ!」
轟音と共に右腕が機体を離れ、音速を超えて飛ぶ。回転するドリルがキングバグアの左肩を貫いた。
「うおおお! まさか、これほどの力が!?」
「邪悪なる魂に神の息吹を!」
のもじが叫ぶ。グレートヴァルキリオンが拳を突き出した。巨大な光が彗星のように集まり、キングバグアの体を貫く。
『必殺、GOD! 彗星拳!』
宇宙創生のビッグバンのように、輝く光が大爆発を起こした。モニターをつらぬく眩しい光。白煙が宇宙の闇に吸い込まれていく。
キングバグアが光になって霧散していく。
「あなた。やっと、やっと終わりましたよ。長い、長い戦いが‥‥」
全員の顔には笑顔が浮かんでいた。数百年に渡り地球を恐怖に陥れて来た災厄が、祓われたのだ。
だが、消滅した肉体の下に、小さな人型の生物が立っている。キングバグアはまだ生きていた。それこそがキングバグアの本体。消滅した肉体は、かりそめの器に過ぎなかったのだ。
「やるではないか人間め‥‥ならば私も、真の姿を見せよう!」
キングバグアの肉体が変貌する。数万倍に肉体が膨れ上がり、竜のような怪物に変わった。
「これぞ我が真の形態だ!」
咆哮と共に、キングバグアの肉体から無数の腕が伸びた。
「何度でも倒すのみです‥‥地球は渡しません!」
グレートヴァルキリオンが翼をはばたかせ、腕の攻撃を避けて飛ぶ。だが、全方位から無数に飛び交う攻撃を避けきれず、翻弄されてしまう。
猛攻にさらされ、グレートヴァルキリオンが倒れる。エネルギーはほとんどゼロになり、とうとうグレートヴァルキリオンの機能が停止してしまう。
闇に閉ざされたコクピットの中で、それでも彼女たちは絶望しない。
「こんなところで、負けられない。あの人が守ろうとした地球‥‥私たちが救ってみせる!」
すべての命を守るために
「ピンチだ! 負けるな! グレートヴァルキリオン!」
地球を救うために
「追い詰められてから逆転‥‥お約束ッスよ!」
大切な人たちの笑顔のために
「まだだよ。こんなもので、私たちのリベリオンは止まらないのさ」
そしてまだ見ぬ明日のために
「勝利の女神が付いています。負けはしません!」
グレートヴァルキリオンの瞳が輝いた。
『聞こえるか、諸君!』
暗闇の中、ディスプレイの機能が回復する。超光速通信により、遠く離れた地球から博士の声が届いた。
『地球のみんなも決して諦めてはいない。キミたちの勝利を迷いなく信じている。頼むぞ、英雄たちよ!』
ディスプレイに地球の景色が映し出された。世界中の人々が、叫んでいる。数十億の声援が、グレートヴァルキリオンに届いた。
『負けないで!』『信じているから!』『がんばれヴァルキリオン!』『アナタたちなら勝てる!』『必ず生きて帰って来て!』
今、グレートヴァルキリオンには六人の英雄が搭乗している。だが、決して六人だけで戦っているのではない。地球に残る仲間が、友が、家族が、愛する者たちが、彼女たちに勇気と力を与えていた。
全身から極光を放ち、グレートヴァルキリオンが再び立ち上がった。
「バカな‥‥何故立ち上がる!? 何故戦えるのだ!?」
「私たちは負けない‥‥全ての人の想いを背負ってここにいるから!」
グレートヴァルキリオンに搭載された全ての火器が砲口を開く。
『サンシャインバレット・ファイアーッ!』
一発一発が星をも消し飛ばす超火力。直撃を受けて、ネオキングバグアの動きが止まった。
グレートヴァルキリオンの胸部パーツが外れ、柄が飛び出す。握り締めた剣から巨大なエネルギーの刃が出現する。
「藍王の全出力を廻したブレードです!」
必殺剣を構え、グレートヴァルキリオンが羽ばたく。宙をすべるように駆け、ネオキングバグアとのすれ違いざまにブレードを振り下ろした。
『勝利を、この手に!』
エネルギーの奔流がキングバグアの肉体を切り裂く。竜の身体に亀裂が走り、光が迸った。
「人間如きに‥‥絶対支配者の我が‥‥!」
頭上に構えた剣を、振り下ろす。断末魔の叫びと共に、キングバクアの肉体は大爆発を起こす。
今度こそ、暗黒の王は塵も残さずに消え去った。
見上げる満天の星空。宇宙の彼方で、何かが煌くのが見えた。
六色の流れ星が宇宙を駆けた。地球を救った英雄たちが戻ってくる。
歓声に包まれる地球。とうとう、世界に平和が訪れたのだ。
fin