●リプレイ本文
●聞き込み
空は快晴でよく晴れていて、日差しが暖かく過ごしやすいといえる。能力者たちは手分けをして、猫のポチを探すことにした。まずすることといえば、ポチの情報を集めること。ここ数日のうちにポチを見ている人がいないかどうか聞き込みをすることにした。
「この猫を見かけませんでしたか? 女の子なのですけど、名前はポチって言うんです」
天・明星(
ga2984)はシェリル・シンクレア(
ga0749)の作成したポチのチラシを公園に来ていた親子連れに見せていた。親子連れは見ていないといい、明星の猫かと聞いてきたので、明星は苦笑するしかなかった。
キーラン・ジェラルディ(
ga0477)は明星と同じく公園で手分けをして聞き込みをしていた。この公園は思ったより人の集まる場所だったので、聞き込みはそれほど大変ではなかったが、働きに見合った情報が手に入るというわけではなかった。
「公園周辺の家にも行ってみましょうか」
公園の聞き込みを明星に任せ、他のメンバーに連絡をいれキーランは公園周辺の家の聞き込みを開始することにした。
シェリルと長い髪をヘアーゴムで後に纏めたMIDNIGHT(
ga0105)は飼い主が行きつけのペットショップへやってきた。このペットショップ、ペット美容室が隣接しており、ポチのチラシを見せ、状況を説明すると店員は店長を呼んでくれた。そして店長は色々と話してくれた。
「ああ、この子ね。よく飼い主さんと一緒に来ていたわよそうね、一週間に一回ぐらいかしら。そういえば、この間、予約を取り消してほしいといっていたけど、ポチちゃん、行方不明なんだ。心配ね。何か協力できることあるかしら?」
店長はシェリルたちに尋ねてきた、そこでシェリルは店長にある提案を切り出した。
「あの、この餌を買っていった人のお宅を知りたいのですけど。なにかの手がかりになると思うので」
シェリルはかわいらしく店長に言った。この店長結構しっかりしていた。
「あら、それはできないわね。ある程度の協力はしたいのだけど、お店として顧客情報は教えられないのよ。ごめんなさいね」
「店で‥‥聞き込みなどを‥‥してもよいか? 迷惑は‥‥かけない‥‥」
MIDNIGHTは店に迷惑がかからない程度に店の中で聞き込みをしたいと店長に言ってみた。店長は、数秒考えるそぶりを見せて、二人に微笑みかけた。
「そうね。それぐらいなら大丈夫よ。このお店に来る人たちの中にも、ポチちゃんのお友達が何人かいるしね。なにか、わかるとよいわね」
「ありがとう‥‥ございます」
「ありがとうございます」
シェリルとMIDNIGHTは店長に礼を言い店内での聞き込みを開始した。
鯨井昼寝(
ga0488)、宮武 征央(
ga0815)、青山 凍綺(
ga3259)、瞳 豹雅(
ga4592)の四人はポチの行動範囲の中でも最も広いと思われる、飼い主の家周辺と路地を手分けをして聞き込みをすることにした。
昼寝と凍綺は住宅街、征央と豹雅は路地にそれぞれ別れた。
「こういう猫を見なかったかしら?」
「ポチという名の猫の女の子です」
昼寝が住宅街の住人に話を切り出し、凍綺がビラを渡して行った。
凍綺の「ポチという名の猫の女の子」という、台詞で何人かの住人が不思議そうな顔をしていた。やはり、猫で女の子なのにポチという名に抵抗があるのだろうか。だが、そこを除けば住人たちは協力的な姿勢を見せてくれた。
「ポチ。ポチ」
征央は住宅街の路地を探していた。さすが住宅密集地帯、住宅と住宅の隙間は少なく、猫が好みそうな狭い場所は敷地内に入らないと詳しく見られなさそうだっただからといって、他人の家に無断に入ることなどできない。そこで、征央は飼い主から借りたポチが日ごろ使っている器に、ポチがいつも食べている餌を入れ音でおびき出そうとしていた。
「ワン!」
「犬じゃないんだよね‥‥」
ポチという名は犬によく使われる名前。呼びながら探している時に、何匹かの犬に反応をされた。だが、征央が探しているのは犬のポチではなく、猫のポチだ。征央はこの路地にはいないと判断して、他の場所に探しに行った。
豹雅はみんなよりかなりはなれた場所で聞きこみをしていた。
「こういう猫を見かけなかったかですかな?」
一人のスーツを着た人に豹雅はビラを見せながら話しかけた。
「うーん。どうだろう。それよりも、今急いでいるんだ。ごめん」
豹雅はビラを何枚か持っており、忙しくなさそうな人には、その場で説明を行い、急いでいて情報が期待できそうな人には配っていた。
「では、ビラをどうぞ」
豹雅はこのスーツを着た人の反応が微妙だったのでビラを配ることにした、スーツの人はビラを受け取るとさっさと行ってしまった。
豹雅はビラを人に見せながら、かなりの広範囲を歩き回った。
そんな時、一緒に探し回っている仲間から連絡が入り、場所の特定ができたということでその場所に集まる、ということになった。
豹雅は自分がその場所からかなり離れているところにいると、わかっていたのでその場所に行くべく急いだ。
●交渉
聞き込みのかいがあり、ポチの情報は能力者たちの下に集まってきた。そして、その中でも同じような情報が寄せられていた。
公園組みには、「高校生ぐらいの女の子が、ポチらしき猫を連れて行った」という情報。ペットショップ組みには「拾った子がどの餌なら食べるのか分からないで、困っていると言う人がいた」。住宅街組みには「二、三日前から、猫の声がしだした」という情報だった。それらをパズルのピースのように組み合わせ、能力者たちはポチがいると思われる家の前に来ていた。
「立派な家だね」
征央がポツリとつぶやいた。閑静な住宅街の中でひときわ大きな家が一見能力者たちの目の前に建っていた。この家こそ、ポチがいると思われる家だった。
「誰がいきますかな?」
急いだかいがあったのだろう豹雅はこの場所にみんなと同じ時間にたどり着いていた。
「あたしは‥‥話すの‥‥下手だから」
誰が行くか、そう言うと、MIDNIGHTが話すのが下手だからと辞退を申し出てきた。
となると、残り七人の中で決めることになる。他人の家の前で、長時間たまるという行為はあまり好ましくないので、ここは手っ取り早くじゃんけんで二名選出することになった。その結果、明星とキーランの二人に決定した。
「二人ともがんばってくださいね」
「うまくやってね」
シェリルと昼寝が二人に声援を送った。この場合、声援という名のプレッシャーになるのかもしれないが。
明星とキーラン以外の六人は、相手に威圧感を与えないように二人の少し離れた後ろで待機することにした。
明星が家のインターホンを鳴らした、するとすぐに反応があった。
「はい」
かなり若い感じの女性の声が、スピーカーを通して聞こえてきた、そしてかすかながら、猫の鳴き声も聞こえてきた。
「あ、僕は天・明星といいます。突然ですみません、最近、猫を拾われませんでしたか?」
「‥‥待ってて」
「はい」
プツリとインターホンが切れる音がしたかと思うと、パタパタと玄関の向こう側から足音が聞こえてきた。そして、玄関の戸が開いた。
出てきたのは高校生ぐらいの女の子だった。女の子はインターホンの前にいる明星とキーランの目の前までやってくると口を開いた。
「猫が、どうかした?」
「俺たち、この猫を探しているのですが」
キーランは持っていたビラを女の子に見せた。
「‥‥。確かに、この猫だと思うけど。あんたたち、飼い主?」
「僕たちは、飼い主さんに頼まれて探しているのです。ポチを飼い主のもとに返したいのです」
女の子の言葉に明星が女の子に返した。この話の流れからして、女の子が少しぐずると明星たちは思っていたのだったが。
「別に、いいよ」
女の子はあっさりオーケーしてくれた。
「本当ですか?」
能力者たちは直に驚いたのだが、女の子はただでは引かなかった。
「ただ」
「ただ? 何ですか?」
「私も一緒に行く。別にいいでしょ?」
女の子は条件を出してきた。その条件はごくごく普通の簡単なもので、能力者たちも断る理由がなかったので女の子の条件を飲んだ。
女の子は一度家に引っ込み、ポチを赤いキャリーバックの中に入れてつれてきた。
ポチはペット用のキャリーバックの中でおとなしく、していた。首にはきっちりと赤いリボンが巻いてあり、どこも怪我をした様子もなく元気そうな、その姿に能力者たちは安堵した。
そして、能力者たちは女のことともの、飼い主の家へと向かった。
●ポチと飼い主
電話で先に伝えていたということもあり、飼い主の少年は自宅の玄関先で能力者たちの帰りを待っていた。
そして、ポチと飼い主との再会。
「ニャー」
「ポチ!!」
ペット用のキャリーバックから出されると、飼い主の姿を確認しポチが鳴いた。ポチの元気そうな姿に飼い主は安心して、本当にうれしそうだった。そんな感動の再会に水を差して悪いが、話を切り出さないと話が進まない、能力者たちは暫く黙っていたがそろそろいいだろうと話を切り出した。
「こちらの人が、ポチを保護していてくれたのです」
シェリルが女の子を飼い主に紹介する。飼い主はその時、始めて女の子の存在に気がついた。
「あ、そうだったんだ。ありがとうね。ポチのこと助けてくれて」
「別に。なんか、迷子みたいだったから」
女の子は飼い主の言葉にぶっきらぼうに返した。
「そうなんだ、お前、もう、心配かけさせるなよ。てか、迷子になるなよ」
「ニャー」
女の子の言葉を聞き、ポチに話しかける少年。ポチは「ごめんね」というように、飼い主に向かって鳴いた。なんとも、微笑ましい状況だ。というか、飼い主、能力者たちのことを忘れてポチと二人の世界を作り上げている。女の子は、何か言いたげな雰囲気だったが飼い主とポチの、二人の世界、正確に言うと一人と一匹の世界だが、にわって入れなかった。その様子を感じ取ったのか豹雅が、二人の世界に割って入ってきた。
「ちょっといいですかな」
「何?」
「あ、いや」
豹雅は次の言葉を考えてなかった。
「この子に会いに来てもいい?」
だが、女の子がすかさず言葉を入れた。飼い主に抱かれたポチの頭を軽くなでている。ポチは気持ちよさそうだ。
「別に、かまわないよ。ポチも懐いているみたいだし、それに、動物好きの人に悪人はいないっていうしね」
「ありがとう」
飼い主が女の子に向かってニッコリと笑った。女の子もそれに微笑を返した。
「それじゃあ、俺たちはこれで」
なにやら、和やかな雰囲気になってきたので征央は飼い主に告げた。
「あ、本当にありがとうね。助かったよ。ポチも元気で、戻ってきてくれたし。ほんっとうにありがとう!」
飼い主は満面の笑みで能力者たちのほうを向き、全力でお礼を言った。
その姿を見て能力者たちはポチが見つかって良かったと思った。
「君たちも、いつでも遊びに来てよ。ポチに会いに来てね」
「‥‥元気‥‥でな」
MIDNIGHTがポチに声をかけ、頭をなでた。
「もう、迷子になってはダメですよ」
「飼い主に心配かけないように」
「また会いに来ます」
明星、キーラン、凍綺も順番にポチに話しかけた。
「じゃあね」
最後に、昼寝がポチや飼い主、それに少女に別れを告げて、能力者たちはその場を後にした。
能力者たちは無事にポチを見つけ出し飼い主に送り届けるという仕事を果たした、あたりはもうすっかり、暗くなっていた。