●オープニング本文
前回のリプレイを見る さて‥‥ロシアが大変な事になっている頃、カンパネラでは。
「北の地でのアドバンテージ?」
「はい。場所がロシアと言う事で、グリーンランドを擁する我が学園にも、作戦参加の通達が来ました」
ティグレスから、UPCのマーク入り辞令を受け取る聖那。それには、鉱山攻略の為、協力して欲しい旨が書かれている。場所はロシアの奥だ。
作戦の基盤となるのは、ウダーチヌイに展開するラインホールド撃破だが、相手は何しろ地上要塞。偵察に向かったKVに甚大な被害が出ている事を考えると、もう少し近くに拠点を移したいとの意向だった。
「なるほど、それでもう1つの鉱山を攻略してこいと」
このままでは、陸軍の補給路や戦線が間延びしてしまう。その場合、延びきった戦線を叩かれるのは、過去の歴史が証明していた。せめて距離を半分にしたいと、UPC側が提示してきたのは、ウダーチヌイから400kmの場所にある鉱山だ。ウダーチヌイまで、半分以下の距離である。気温が氷点下になるロシアだが、AUKVを着用すればなんとかなるだろう。そこに目をつけられたようだ。
「ふむ。確かにこの環境では、我らドラグーンの出番ですね」
グリーンランドとは違うが、同じくらいの気温である事は変わらない。AUKVは防寒効果にも優れており、装着すれば、−4以下にはならないと言う特性があった。これを生かせば、機動力を生かした闘い方が出来ると言うもの。
「しかし、吹きさらしは応えるぞ」
ティグレスが言うのは、バイク形態での話だ。確かにデータでは、行き先の鉱山は露天掘り。グリーンランドのように、古い坑道があるわけではない。
「何も敵が音がなる状態で待ち構えている所に、正面から殴りこみに行く事はないですわ。ねずみさんも、頑張れば猫さんに勝てるんですもの。うちの子達だって頑張れば拠点攻略くらい出来ますわ」
各機体を愛称で呼んでいるのはともかく、人より一回りか二周り大きい程度の大きさなら、警戒はされていても、潜入する事は可能そうだ。ウダーチヌイと同じ露天掘りの鉱山‥‥名前はミルーヌイは、それなりに施設が残っているらしく、隠れる場所は多い。その利点を生かそうと言う事らしい。
「それに、あそこには確か飛行場があったでしょう? あれさえ押さえれば、陸上の作戦はだいぶ楽になるはずですわ」
そうアドバイスする聖那。こうして、彼女の意向は管理部を通じ、生徒達にも伝えられるのだった。
で、今度は准将のガレージ。
「うっし。でーけたっと」
ボルトをきゅっと締め上げたジジィは、満足そうに生き返った大きなバイクのエンジンをスタートさせた。エンブレムの位置に輝くクルメタルのマーク。左サイドに『バハムート』の文字。と、そこへクルメタルからの通信が入った。
「おう、今出来たトコだ」
『こちらもそろそろラインに乗せられそうです。ですが、その前に完成したバハムートの、デモンストレーションを行っていただきたく』
会社としては、やはり大々的に売り出したい思惑があるようだ。本音としては、カプロイアの派手な販売戦略に負けたくないと言ったところだろう。
「つったって、今そんなモン見に行ってる暇ねぇぞ」
何しろ、ロシア鉱山攻略に、あちこち忙しい最中だ。途中までバレンタイン返上で手伝わせていたカラスは、レンの堕天使城攻略の為に借り出されている。聖那やティグレスも、陸上部隊輸送のコストを軽減する為、現地へ向かっていた。残りの面々でデモやっても仕方がないと。
『では、その攻略に使ってもらえれば』
「なぬぅ?」
新型には新型を、と言う腹積もりらしい。つまり、実戦でデモンストレーションと言うところだ。
「確かにこいつのスペックを駆使すりゃ、かつての鉱石置き場くらいは、制圧できっけどよ」
UPCから取り寄せたウダーチヌイ攻略戦。だがそこには、羽のついたいびつなエンジェルが降り注ぎ、さらに入学式に現れたMRやMIの姿もあった。おまけにそれを仕切っているのは実質レンらしい。攻略する飛行場のある鉱山は、ウダーチヌイから未整備ながら道が伸びている。何かあれば、すぐに彼らが駆けつけてくるのは明白だ。
「けど、戦力を分散させたら、酷い目に合うって、こないだ本で読んだぉ」
何故かミクまで手伝っていたらしい。覚醒し、鉱山の地図を用意する彼女。古いものだが、飛行場の位置も、鉱石置き場の倉庫も、しっかりと写っている。道路はこの時からあったものらしい。
「でしたら、囮を兼ねればいいのではないでしょうか」
「おまい、いつの間に来たんだよ」
そこへ、寺田が現れる。話は全て聞かせてもらった! 的な言い方の彼に眉をしかめつつ、ジジィは暫し考え、こう答えた。
「予定変更だなー。ミク、KVの許可証用意。なんっとか気をひくなりなんなりして、飛行場を確保しつつ、戦力を落としてやれ。ただ、ばらばらに動くと各個撃破されちまうだろうから、気ぃつけてな」
「了解だぉー」
せっかくだ。派手にやってやろうぜ! と宣言する祖父に、ミクはらじゃっと敬礼して見せるのだった。
●リプレイ本文
ミールヌイは、いくつかの川を越えた先にある。橋等かかってはいないが、バハムートのパワーを持ってすれば、川を歩いてわたる等造作もない。ある程度の防水性もある為、寒さに凍えることなく、冷たい川を渡り終えた。
「あの辺りから出るのが、一番良さそうですわね」
ミールヌイ鉱山の周囲には、かつてそこで働く労働者達が居住していたと思われる街があった。今は、人口が激減したのと同じ様に、その規模を縮小しているのだろう。ひっそりと息を潜めるように、建物が並ぶ。教会があるかどうかまでは見えなかったが、空港まで路地は繋がっているようだ‥‥と、番場論子(
gb4628)は判断する。
「これ、使えそうだな‥‥」
と、その話を聞いていた雪代 蛍(
gb3625)、街の周囲に生えていた木々を確かめている。と、彼女はその枝をぐいっと引っ張り、地面近くまでしならせる。
「そっち支えてて。この大きさなら、何とか防御とトラップになるから」
よくしなるらしいその木に、彼女はその辺に転がっていたロープをくくりつけ、もう一方の木に固定する。
「確かに、これならジャンプ台になりますわね」
出来上がったのを見て、エリザ(
gb3560)が顔を見上げた。見ればそれは、ちょうどAUKVがすっぽり収まる大きさの、巨大なパチンコだ。
「あとは、こうすれば‥‥入って来れないよ?」
その間に、蛍はその辺にあった枝をかき集めて、パチンコを隠すようにしている。ありあわせの素材で作ったモンだが、カモフラージュにはなりそうだ。
「上出来ですわ。動かしてくださいまし!」
竜斧を装備したエリザが、その巨大パチンコにバハムートを引っ掛ける。バイク形態の今なら、重量はほぼ考えなくても良いだろう。
「OK。いっくよぉー!」
蛍が竜斧を振りかざす。飛び出すエリザ。その先には、障害となるキメラがいる。よくあるビートル型だったが、そこに居ては前に進めない位置だ。援護するようにエルが錬剣を装備し、反対側へと回りこみ、牽制をする。その間に飛び込んだエリザは、即座に人型へと変形し、竜斧を振り下ろしていた。
「何とか誤魔化せたみたいですね。だけど油断は禁物かな」」
残骸が、周囲に異臭を漂わせているのを見下ろし、そう答えるエル・デイビッド(
gb4145)。確かに、稼動しているヘルメットワームは少ない。だが、よく目を凝らせば、それを指揮しているらしきバグアの姿もある。
「でも、この幅だったら、やれそうですわね」
エリザが、滑走路の状況を見て、そう言った。町の物資を運ぶだけだった飛行場だ。滑走路も1本しかない。幅も、国際空港等よりかなり狭そうだ。と、彼女はバハムートをバイク形態へとチェンジする。そして、足とプロテクターをパージしていた。
「その形態じゃ、竜斧振り回せないでしょ」
何をするかなんとなく予想の付いた論子がそう言うが、彼女は首を横に振る。
「AUKVは走るものですわ。バハムートは防御の為の鎧。だったら、ためらうべきではありません」
「それもそうね。援護するわ」
マフラーが鼻息を荒くする。その彼女の走りを阻害させない為、論子は弓を弾き絞る。貰った弾頭矢だが、同じ強化は施してあった。
「いきますわよ、バハムート」
身軽になった彼女が、エンジンの回転数を上げる。びょうっと風が吹き、彼女の金髪を宙に舞い飛ばせた。
「セオリーどおりなら、司令官は管制塔にいるはずです!」
引き放たれる矢。冷たい空気を切り裂き、その弾頭がひょうと軌跡を描く。それは、彼女の見据えた先に、深々と突き刺さる。直後、鳴り響く警告音。それに反応するように、蛍が立ちふさがり、竜斧を振り下ろす。金網が破られ、刹那、エリザが管制塔に向かって、スロットルをフルに捻った。キメラ達が向かってくるが、バハムートの安定性は、少しくらいの衝撃ではびくともしない。その間に、論子はS−01を乱射し、踏み込んだ蛍が、巨大な竜斧で切り裂いていく。
「頭を落とすのはなんとやらってね!」
その間に、エリザに追随するエル。ややあって、群がるキメラ達から守りながら、論子と蛍も移動を開始。そして直後、駆けつけてくるワーム。だが、その足を止めるのは、蛍が先ほど設置していた巨大パチンコだ。ロープを切られたそれは、蛍達へ向かってくるワームを越えさせるのに時間がかかる。痺れを切らしたワームが発射した光線を、エリザはバハムートを左右にくねらせながら避ける。時々、避けきれずに被弾するが、バハムートの装甲は伊達ではなかった。
「あれがそのようですわよ!」
そう言って、エリザは管制塔へと向かってハンドルを捻った。スピードを落とさないまま身を低くし、人の子が作っていない造形を施された建物の入り口へと体当たりする。
「大丈夫、このままのスピードなら、上がれる!」
さほど強化されていないのだろう。衝撃で粉砕したその先にあったスロープを、勢いよく駆け上がった。その後に追いすがるように、蛍が竜の翼を使う。
「後10分で、KV隊がつくはずです。何とか持たせてください」
数ターン遅れて入り込んだ論子が時間を計る。直後、蛍がその辺に転がっていたチェストで蓋をして、残りのワームが入ってこられない様にしていた。
「囲まれちゃいましたよ?」
だが、振り返ったエルがどうするの? と問いただすような口調で示した。管制塔の中には、作業中だったらしき人型の姿が見える。
「バハムートで押さえれば、中までは入って来れないはずです」
論子の指示に、蛍は竜斧をその入り口で振り回した。がつんっと盛大な音がして、スロープの手すりが崩れ落ちる。本当は、邪魔するものを殲滅したかったが、この状況では誰がバグアかそうでないかわからない。その為蛍は、論子の指示に従いながら、進入してこようとするバグアを切り捨てる事に専念する。
「気をつけて、ミミズの頭が見えた!」
論子が表へと振り返ってそう言った。時間は後5分。もうすぐKV隊がくる。それまでに持ちこたえれば、どうにかなると。
「ワームは私が相手を致しますわ。KV並に強化した一発、おくらいなさいまし!」
エリザが、窓をこじ開けようとするワームに、エリザが竜斧を振り回し、蹴落としている。その足元から、雑魚はどけといわんばかりに、サンドワームが姿を現した。見れば、その周囲にはCW達まで集まりつつある。
「何とかして、先にあいつらを蹴散らさないと」
「わかってる。貴重な一発‥‥使いどころは、ここしかない」
弾頭矢の残りも少ない。エリザのパワーとて、無限ではない。群がる敵が、自分達のいる場所へ集中しつつあるのを見て、エルはエネルギーキャノンの銃口を向けた。見れば、かすかに遠く、KVの機影が見える。時間は5分あるかないかと言ったところだ。
「ツインエネルギーキャノン、シュート!」
タイミングを計り、その引き金を絞る。光の奔流にも見えるエネルギーがサンドワームの頭部分へとめり込んだ。
「今ですわ!」
のけぞったワームに、エリザが飛び移り、その後頭部に当たる部分へ、竜斧を振り下ろす。二度、三度と撃ち込むと、サンドワームの体表にも亀裂が入っていた。
『皆、大丈夫!』
そこへ、通信機が回復し、海の声が聞こえて来た。KV隊の登場に、ワーム達がいっせいにそちらへと向いてしまう。
「何とかね。CWはこっちでどうにかするわ」
残ったCWだけなら、自分達でもなんとかなるだろう。そう判断する論子。横でエルが、使い終わったエネルギーキャノンをパージし、身軽になっている。
『もう少し我慢して! 脱出口は、こっちで何とかするから!』
「わかりましたわ。ああもう、面倒だから、こうしちゃいますわよ」
エリザ、痺れを切らしたのか、完成システムから繋がるコードをたたっ切った。刹那、鳴り響いていた警報が沈黙する。
「これで何とかなりますわ。時間まで、ね」
後は、集まってきたキメラをぶっ飛ばしつつ、管制塔の占拠を維持するだけだった。
さて、ミルーヌイに向かったのは、地上班ばかりではない。KV班もまた、出発していた。
「戦力で負けても、情報で負けるわけにはいかない! そろそろ担当空域に入るよー」
そう言った橘川 海(
gb4179)のモニターに目的地までの距離が写り、そして激しいノイズが入る。おそらく、CWかMRが範囲内にいるのだろう。そう判断した天小路桜子(
gb1928)は、海に合図をしていた。
「ジャミングが酷くなってきましたわね。お願いします」
海が特殊能力を起動させる。燃料計ががくんと落ちたが、その分自身のモニターが若干クリアになった。モニターには鉱石置き場から管制塔方面へ向かう、AUKVが映っている。そろそろ行動を開始したようで、なにやら大きなパチンコを作成していた。
「おっと、こっちも出てきやがったぜ」
嵐 一人(
gb1968)が、目の前に現れたHW達を見てそう言う。見れば、CWを引き連れて、バグア軍のお出ましだ。
「各機、牽制と支援を。地上に降ろさせてはなりません!」
桜子が凛とした声で告げる。が、嵐はそれより先に、スピードを上げていた。
「本当は地上で暴れたいトコなんだけどなー!」
まず狙うのはCWだ。ガトリングを打ち込み、その巨大な箱を打ち砕く。が、そうそうはさせじと、強化型らしきHWが立ちふさがった。桜子がロケット弾ランチャーをぶっ放し、牽制するが、その程度ではびくともしない。
「霧に入っていれば、回避はどうにかなりますわ!」
しかし、彼女の幻霧発生装置により、その視界を妨げる事には成功する。だが、相手はKVと違い、慣性制御装置を持っている異星の産物。雑魚を相手とは言え、旋回する間に回りこまれるなど、厳しい状況もある。
「地上なら、こんな苦労しなくって済むってのに!」
不満そうにそう口にしながら、副兵装のミサイルランチャーをぶっ放すが、距離が離れすぎていて、うまく当たらない。
「今降りてったら、地上のエリザちゃん達に絶大な被害がいくってば。だぁぁっ。やっぱり出てきたー!」
そんな嵐のフォローをするように、海がそう言いながら、レーザーガトリングを乱射する。
「おちついて。ここで慌てたら、地上班が占拠できませんわ」
桜子、乱戦模様の2人にそうアドバイスしてきた。
「うん、わかったー。えぇと、お師さんが持たせてくれた地図にはっ」
機を見るのは、何も戦に限った話ではない。そう思い直した海、准将から貰った地図を引っ張り出す。そこには、滑走路の広さなども記されていた。索敵の効果と照らし合わせれば、敵の出てくる位置がわかる。資材置き場には、作業用がメインな為、相手をしなければならないのは、鉱山内部から、滑走路に向かっているワーム達だ。搭載していた地震計が、サンドワームの到着が近い事を示唆している。
「だーっ、ウーフー一台じゃ範囲が狭すぎるっ」
ぶつかりそうになってしまい、思わず不満を漏らす彼女。
「何とか何ねぇのかよ!」
このままでは、いずれ囲まれてしまう。行く手をさえぎられるくらいなら、もっと広い場所で戦いたいと、嵐は眼下を見下ろす。ちょうど、エリザ達が突入した所だった。
「海、出来るだけ低空にしてくれ。桜子サン、下降りるぜ!?」
決断する嵐。高度を下げ、人型に変形しながら強制着陸を敢行する。
「わかりました。援護します!」
桜子がそれに続いた。
「OK、そうこなくっちゃな。伝家の宝刀、抜いてやるぜ!」
彼女が降下すると、すでに嵐は強化した長兼を抜いている所だった。その弁に偽りを持たず、 桜子は動きやすいようKVをパージし、中に収めていたバハムートでもって、エネルギーキャノンを取り出す。
「みんな、はぐれないでねっ!」
上空では、海が管制塔近くを旋回していた。気付いたワームがこっちへ近づいてくるのが、視界の端に見える、その旋回範囲を進むように、舞 冥華(
gb4521)のフェイルノートがまっすぐ突っ込んでくる。
「ん、みーるぬい制圧できないと色々大変。大変だけど、ばはむーとが活躍できるようがんばって支援」
自分に言い聞かせるようにそう言って、冥華はストレイ・キャッツのスイッチを入れる。壊しちゃいけないのもたくさんあるけど、やっつけないとばはむーとの今後の売り上げにもひびいちゃうから、そっちの方がたいへんだ。と、そう思って。
「じゃまっけ! どっかいくの」
ぶしゅううっとカプロイア社製らしいロマンの嵐が、ワーム達へ降り注ぐ。
「下のバハムート隊の状況はどうなってます?」
「現在、管制塔近くまで移動してる。忙しいみたい」
その間に、海は下の桜子に、AUKV隊の状況を告げた。突入の最中らしく、返答が出来ない状態らしい。
「これ以上近づかれると、困る。冥華、がんばる」
盛大にミサイルで吹っ飛ばすと、滑走路が危険そうなので、彼女は小回りの聞きそうなAAMに切り替えた。そこへ、反対側からサンドワームがにょきりと姿を見せる。
「冥華ちゃん、右三十度くるよっ!」
「とりすとらむ、うけとめるのっ」
その巨体をしならせるようにして、彼らを撃ち落とそうとする。トリストラムで牽制していたその隙に、AUKV隊が中に入ったようだ。
「指揮官は多分、あの真ん中の奴みたいだ。アレだけ動きが違う」
「こっちでも確認した。皆、大丈夫!?」
下にいた嵐からそう報告が飛んでくる。指し示されたのは、中央のサンドワームだ。それを確かめた海が通信を飛ばすと、論子が答えてくれた。と、冥華がそこへ「どこ撃てば良い?」と聞いてきた。
「あの鉄骨みたいなの持ってる奴! データ送るから、狙い絞って!」
海のナビゲーションに身を任せるようにして、冥華はフェイルノート最大の特徴であるツインブースト・ミサイルアタックのスイッチを入れた。錬力を与えられたそれをセッティングしてあるのは、パンテオン。全弾発射の荒業を持つミサイル。
「進路計算終了! 冥華ちゃん、いっけ〜!」
モニターに、撃つべき軌跡が表示される。
「ふぇいるのーと、冥華に力をかして」
えいっと力いっぱいそのボタンを叩く。直後、白く軌跡を描いたミサイルが、辺りへと降り注ぐ。爆発音で、視界が真っ白になった。
「どうやら、頑張れたようですわね」
桜子がそう言った直後、レーダーが回復する。と、まず聞こえたのは、准将の声だ。見れば、ガリーニンの姿が遠くに見える。
「お師様、どうして?」
『鬼の居ぬ間にナンとやらってな。ツォイコフはUK行ってるから、外見だけ借りてきた』
外見と書いて『そとみ』と読む。動かしているのはティグレス以下学園の面々らしい。海からの報告を聞いて、ぴしっと指示を飛ばすティグレス。
こうして、ミールヌイの飛行場と資材置き場は確保され、UPCの前線基地となるのだった。