●リプレイ本文
くじ引きの結果、ラナ・ヴェクサー(
gc1748)は、ヒューイ・焔(
ga8434)と組む事になった。報告書と違い、今回はきちんと寝れたらしく、赤っぽい上着に、カーキ色のスラックスとかいう、真面目な髪の落ち着いた感じのお兄さんになっていた。
「相手が接近戦型なら援護を、遠距離型なら超機械で接近戦。回避重視からそのつもりで」
機械剣「グロウ」を用意しつつ、そう告げるラナ。と、直後、壁の向こうに現れる筋肉達磨さん。
「ワルイゴハイネがー!」
どこかの地方妖怪みたいな声を上げつつ、こちらへと接近してくる。ばしばしと扉をうるさく開けて、距離を詰めてくる肉達磨。
「あんな忌々しい肉達磨に捕まってなるものですか!」
回れ右をするラナ。そのおててに握られたのは、小銃S−01だ。
「よっと。さっさと出るわよ、こんなトコ」
悲鳴を上げる間に、距離を取るラナ。しかし、金剛石さんが呻いていたのは数秒で、すぐさま追いかけてくる。その間に、持ち帰る彼女。
「ぎしゃああ!」
きょーれつな電磁波と言う名の弾丸が、金剛石にお見舞いされる。まるで公開型電子レンジだ。おかげで、何とか距離を稼いだ2人だったが、その刹那、焔がぴたりと止まった。
「ここ、さっき通ったぞ。印つけといたし」
頭の中で、だが。しかし、反対側には既に金剛石さんの叫び声が聞こえている。万事休すかと覚悟した刹那、焔は番天印にペイント弾を詰め込むと、扉を開けて乱入してきた金剛石の顔へと、容赦なく銃口を向けた。
「こっちだ、肉達磨!」
もっとも、焔はスナイパーではないので、よほど至近距離ではない限り、上手く命中させる事は出来ない。仕方なく、焔はいきなりハミングバードで斬りつけた。
「ないすふぉろー。やるじゃない」
「いや、捕まったら、食われるのこっちだしな。お肌の弱そうなところに、刺激してあげないと」
そのまま回れ右をする焔。その手には、ソフトポイント弾が握られている。どうやら、それで膝の裏やら首筋やら内股やらを狙うつもりのようだ。
「弱点を突くって事ね。いいじゃないの、それ」
「いたなっ! まずはそっちのおねいちゃんからだ!」
と、ラナが賛同したところへ、反対側から回りこんだと思しき金剛石さんが姿を見せた。おてて伸ばしたのは、見た目にもやーらかそうなラナちゃんのほうだ。
「もう、離しなさいよ!気持ち悪いわね‥‥!」
身をよじって逃げようとするラナ。しかし、塗りつけられたべとべとの毒が、だんだんと痺れを増している。仲間のピンチに、ちょっとマジになる焔。
「ちっ。少しだけ耐えてくれよ! イエア!!」
壁を背にした焔、そう言うと、両断剣を流し斬りのスタイルで斬りつけ、立ち上がるのを確かめずに、そのまま全力へ扉の方へ‥‥。
「うぼぁぁ」
だが、金剛石さんはまだ倒れていなかった。生理的に受け付けなくなっちゃった姿となったバグアに、ラナ、涙目になりながらグロウを乱射する。
「あんたら造形的に近づきたくないのよ! 奴隷とか考え古すぎでしょうが‥‥!やめなさいよ!」
そりゃあバグアだし。人々が嫌がる事をするのがお仕事だ。ぷちんとぶちきれたラナさんが、焔ごと金剛石を蹴落としてしまうのだった。
悪魔の館を通り抜ける風は生暖かく湿っている。その向こうにそびえる、殿の住む天守閣を見上げ、流・星之丞(
ga1928)は何かを心に誓うかのように、決意の表情を見せていた。
「この館は絶対に突破して見せます。この、勇気の証したる黄色いマフラーにかけ‥‥むぐ!?」
が、セリフを最後まで言い切らないうちに、そのマフラーが思いっきり後ろに引っ張られた。勢いで振り返ると、そこには両手を後ろにもぢもぢしているミッシング・ゼロ(
ga8342)がいた。一瞬固まるジョーだったが、断る理由はかけらもない。
「どうやら僕は、重い十字架を背負ってしまったみたいです‥‥。けれど、こんな事位で僕の勇気は挫けません!」
クルシフィクスをしまいながら、ぐぐっと拳を握り締めるジョー。と、そんな彼を導くように、場しばしと扉に手をかけるゼロ。
「大丈夫。こっち! たぶんっ!」
乙女の勘と言うやつで、適当にばしばしと開けて行く。と、その間に、ゼロちゃんが楽しそうに聞いてきた。
「ねぇねぇ、ジョーさんはコイビトとかいるの?」
「えぇと、大切な方ならたくさん。皆さん、いい人ばかりですから、好きですよ」
笑顔でそう言っているのは、率いている小隊の事らしい。それでもゼロちゃんは雑談を楽しんでいた。
「折角だから、僕はこの赤の扉を‥‥」
そう言って、彼が開けた赤い扉の向こうには、どうみても再構築中の金剛石さんがいた。
「ふるふるふるふる。何もボク見てないの」
びくうっと涙目をうるうるさせるゼロたん。金剛石が目じりをひくつかせて「ほほう?」と確かめると、彼女は首を横に振り倒しながら、こう言った。
「そんな。怪しい本棚が見えたとか、ポスターがやばいとか。そんなの欠片も!」
「見てるんじゃないかぁ!」
思いっきり墓穴を掘ってしまい、ぶっとい腕が振り下ろされる。
「にゃあーん、ジョーさん助けてェェ」
「逃げましょう、ゼロさん!」
涙目になってじたばたと逃げ回る2人。傍目にはとても楽しく鬼ごっこしているように見えるが、本人は大真面目だ。
「えっち〜。へんたい〜!」
その証拠に、捕まった腕の中でじたばたともがき倒して、子猫のように引っかいてい抜け出していた。その子猫ちゃんにかけられようとした毒液を、盾で防ぐジョー。
「聖なる十字架に、そのような物は効きません!」
力強い宣言に、ゼロたんのおめめが嬉しそうにきらきらと輝く。
「ゼロさん、手を貸してください!」
ジョーはそう言うと、ゼロを抱えて開けた扉にしがみついていた。そして、剛力発現で体を持ち上げ支え、突っ込んできた金剛石を、水路へと突き落とす。
「さよなら‥‥きっと地獄でド□ターマンが待っています」
流されていく金剛石に、どこか悲しげに呟くジョーだった。
次は、天小路・皐月(
gc1161)の番だった。
「このままで大丈夫なのか、不安になってきました‥‥」
疑問符が頭をぐるぐるする皐月。一応、水辺の依頼と言う事で、今回も水着着用だが、役に立つのか激しく分からなかった。
「心配するな。このGODティン拳に不可能はないっ!」
しかし、阿野次・のもじ(
ga5480)の自信は揺るがない。不安をぬぐえない状態のまま、皐月はとりあえずいけるところまで行く事にした。
「はーーっはっは。では私の伝説にひれ伏すがいいっ!」
先行するのもじ。
「今回も体力的には皐月には厳しいものです」
どうしてこんな体力自慢な依頼にばかり関わるはめになるのだろう。眉間にしわを寄せ、悩んでいると、前の方からのもじの「遅いぞー!」と煽る声。
「待ってくださいってば。んと、確か迷路とかって、左手の法則でしたっけ?」
「そうすうと、ここをグルグル回る事になってしまうわけだが」
何しろ、部屋は六角形だ。左手をついたままでは、同じ部屋にしか留まれない。通常の基地攻略とはやり方が違うようだ。
「むむう。それでは先に進みませんねぇ。では、止めて進みましょうか」
仕方なく、悪魔に出会わないよう、ゆっくりと扉を開けて様子を伺う。と、幾つかの部屋を抜けた先に、ペイント弾でまだらになり、なおかつ濡れ細ってどこかの妖怪変化みたいになった金剛石がいた。
「よし、先手必勝。ここは私に任せて」
皐月の判断に、引き付け役を買って出るのもじ。そう言うと、相手がまだ気付かない間に、部屋の扉をばたーーんと勢い良く開ける。
のもじのぷりりんとしたお尻が、左右と‥‥前後に揺られた。
「‥‥」
皐月さん、後退するのも忘れて硬直中。
「あーんど、あらぶるのもじのポぉぉぉぉズ!」
刹那。にゅるりと凄く人っぽくない怪しい動きで、その下を潜り抜けるのもじ。然る後、しゃぁぁぁっと威嚇音を上げて、金剛石さんを牽制する。
「なにぃ!? っていうか、そっちの方がバグアっぽいぞ!」
「うるさい、無視スンナぁゴルァ。あと、賞金分配しとけやー」
突っ込みに再び突っ込み返すと、彼女は獣突のパゥワァを持って突進する。どりゅーんタンマーと叫びながら腰を取られ、金剛石さんはそのまま壁の向こうの水路へとダイブ。
「何もしないで逃げるのは、癪ですね。えい!」
トドメとばかりに、皐月は顔に攻撃していた。焔と違って本職のスナイパーさんである。狙いは外れず、思いっきり眉間に命中していた。
「いまだ! 知覚十字六連撃! あたぁ」
そこへ、のもじの必殺急所突き対野郎限定バージョンが炸裂している。脂汗を流しながらうずくまる金剛石さん。相変わらず1mgも自重要素はない。しかし、今回はなんだか自棄率が前回と違うので、皐月さんは念の為に聞いていた。
「なんかあったんですか?」
「うむ。実は最近アニーちゃんのムネぽっちに惑わされ、お星様を全て失うという深い悲しみを背負い、究極奥義に目覚めつつある」
どうやらここにも被害者がいるようだ。にじり寄ってくる金剛石さんを無視し、出口と言う名の明日に向って走り出す。
「出口なんて、作れば良いのよ!」
きっぱり宣言して、壁に銃を乱射する皐月さん。どうやら頭のネジが1つ2つ竜神水路に溶けちゃったようで、直後、悪魔の館の壁に、女の子二人が通れる程の穴が開くのだった。
本気になった乙女は怖い。
「おのれぇ〜バグアめ‥‥・セーラー盗んで何する気!」
それは、怒りに燃える姫川桜乃(
gc1374)の姿からも用意に想像出来た。
「ふ‥‥女子とのペア‥‥我が煩悩力発動せり‥‥この勝負‥‥勝った!」
ヘンタイの方の焔こと紅月・焔(
gb1386)、組む相手が可愛い女の子なので、負けるわけがないと思っているようだ。
「と、とにかく。無事に突破して通過して、セーラー服は返して貰うんだからね!」
ごほんっと咳払いして、ばさぁっと上着を脱ぎ捨てる。現れたのは、丈を短くした着物に、機械剣と小銃を装備していた。例によって呼笛を首から提げている。
「すばらしい。やはりクノイチはこうでなくては!」
その魅惑のおみ足に、後ろの方で怪しいオーラを出しながら、感嘆の声を上げているヘンタイガスマスクに、姫川はぷうぷうと頬を膨らませる。
「ガスマスクさん‥‥・こないだ見せて上げたでしょ」
元々短い丈を隠しつつ、頬を染める姫川嬢。
「さてと、行こうかな〜‥‥・ってなんでこっちくるの!」
開けた扉の先にいた金剛石さん、そのヘンタイ力を遺憾なく発揮し、姫川へとにじり寄ってきた。が、そこへ戦闘能力と煩悩が3倍に跳ね上がっちゃったガスマスクが立ちはだかる。姫川の後ろに。
「嬢‥‥心配するな‥‥俺がフォローする‥‥後ろは任せろ‥‥いや、でも前も捨てがたい‥‥ぐへへ‥‥」
変態が増えた。姫川、そんなヘンタイもろとも、小銃をぶっ放す。
「邪魔よ! どきなさい! 後からガスマスク来てるんだから、それどころじゃあないわ!」
もっとも、そんな事姫川にとっては知ったこっちゃない。二人のヘンタイから逃れようと、むやみやたらと扉を開けまくる。
「俺はな‥‥女以外に捕まるのは嫌いなんだ‥‥ましてやマッチョにはナ!!」
もっとも、ガスマスクさんは、何とか金剛石に自分の獲物を取られまいと、かなり必死に迎撃していた。そのお色気察知スピードは、もはや神の領域とか何とか。
その神センサーがきゅぴんとアンテナを立てた。髪の毛を逆立てた紅月が振り返った先には、扉を開けまくったせいで、思いっきり水路側の扉を開けちゃった姫川さんの姿が。
「ちょっと!こっち水路じゃなのよ!落ち‥‥・きゃあああん」
が、彼女もただでは落ちない。着ていた着物を投げつけて、踏み台にする。その下は、子の間の学習機能を遺憾なく発揮して、日本の伝統水泳装束黒猫褌だ。分からない子はググろうね。
「今度は褌よ! こないだみたいに解けないだから!」
『ブリリアント‥‥まるで悪魔の城に舞い降りた天使‥‥俺の歴史に‥‥また1ページ‥‥か』
ひもビキニ並にセクシーなお尻に、ぐっと感動の拳を握り締めるガスマスク。
「やめんかヘンタイ」
おかげで姫川ちゃんの魅惑の足蹴りが炸裂している。綺麗な足でぐりぐりと踏まれたせいか、痛いんだかうれしいんだか分からない声を上げていた。
「これで、よし!」
姫川ちゃん、悠々と出口へ。どうやらヘンタイは、永遠に闇に沈んだようだった。
そんな彼らの戦い方に、感嘆の声をあげるムーグ・リード(
gc0402)。七市・一信(
gb5015)と共に最後に回ったのは、ある理由があった。
「‥‥ナル、ホド‥‥流石‥‥デス」
どうやら、先人の適切な立ち回りを研究していたらしい。その体を張った芸風に、素敵な注目を投げかけているのは、ドンブラコッコと流されていくヘンタイな方の焔だ。したり顔で頷いているが、ヘンタイがどういうことかは、今ひとつ分かっていないようである。
「先人ノ‥‥軌跡‥‥ヲ、無駄ニハ、シマセン‥‥」
そう言って、パンダと組む事になったムーグは、今まで他の傭兵達が落としたりおとされたりしたハズレを軸に、注意深く扉を開ける。
「こっちは‥‥クリアっと」
「バッテン印が、アリマス。コレ、目印、デス」
身長を活かし、パンダの後ろから油断なく番天印を滅多打ちしている。おかげで、壁の向こうの金剛石が姿を見せた。
「よし、この向こうだな‥‥いくよっ」
敵がいるなと確信したパンダが、奉天製SMGに持ち替え、その扉ごと先制攻撃を加えている。
「‥‥人身売買、ハ、殲滅、アルノミ、DEATH‥‥」
その刹那、ケルベロスに持ち替えたムーグが、べしっとゼロ距離射撃でブリッツストーム。
「誰が殲滅されてたまるか! だいたいパンダは元来客寄せ品と相場が決まってるだろうがぁ!」
鉛弾の制裁にあちこち穴をあけられているにも関わらず、元気な金剛石さんは、びしぃっとパンダに指先を突きつける。が、そこにパンダの姿はなかった。
「おにょれ、どこ行った?」
きょりょきょろと見回せば、開けっ放しにした扉の向こう側に、ちっちゃくパンダの姿が。
「天が呼ぶ地が呼ぶ笹が呼ぶ、悪を倒せと俺を呼ぶ!俺の名は‥‥・パンダーーーーー!」
助走をつけたパンダが、AUKVのパウワァを最大限に突っ込み、豪快にドロップキーーーーック!
「健闘賞は‥‥・俺のもんじゃああああああああ」
そのまま金剛石をがしっと掴んで、気合いと共に、水路側の扉へとねじ込む。奇声を上げて飛び込むパンダに、ムーグのリーチを活かした豪力発現が加えられていた。
「‥‥テぃ」
蹴り上げられ、押し出された金剛石が、今度こそ水路へどぼーーんと落ちて行く。
「‥‥貴方、ガタ、ノ、オカゲ、デス‥‥」
姫川に放火され、炎上する悪魔の館に、遠い目をして呟くのだった。