●リプレイ本文
相談の結果、ヴィス・Y・エーン(
ga0087)、皇 千糸(
ga0843)、須佐 武流(
ga1461)、セラ・インフィールド(
ga1889)、ホアキン・デ・ラ・ロサ(
ga2416)、緋室 神音(
ga3576)、月神陽子(
ga5549)、シュラング(
ga6095)は、それぞれの組ごとに分かれて、捜索行動する事になった。まず岩龍が撃墜された映像を元に、大雑把な位置を割り出し、そこへ手分けして向かうと言う寸法である。
「私が見てるから、セラは早急に破片の回収をお願いね」
ヴィスに言われ、彼は機体を近づける。そこには、箱型の部品や、防火シートに包まれた品等が転がっていた。
「あったあった。きっとこれですね」
見れば、UPCのマークが記されている。おそらく、集めたデータを包んで置くように言われていたのだろう。
だがそこへ、きしゃあと叫び声と共に、近づいてくる動物達が居た。
「ちっ。やっぱり来たか‥‥」
援護するべく、高度を下げるヴィス。だが、低空で行うのはかなり不安定で、中々上手く行かなかった。
「ヴィスさん。やはりこれ、パスワードが設置されてるみたいです」
その間に、ボックスを回収したセラが、そう言ってきた。まぁ、奪われる事を予期して、封印を施しているのだから、当たり前といえば当たり前である。
「解析できそう?」
「やってみます」
余り時間はない。ヴィス機の轟音が鳴り響く中、急いでボックスを開けるセラ。情報収集用のそれには、焦げたキーボードやモニターが付いていた。
「こ、これ。運搬して解析しなきゃいけないみたいですね」
その壊れた画面を見て、彼は真っ白になりながら、KVへと戻るのだった。
その頃、陽子と皇は、別の場所へと向かっていた。
「指揮しているのなら、いっそ角とかあれば分かりやすくていいのに‥‥」
ぼそりとそう呟く皇。キメラの数を数えて見るが、双眼鏡だけでは良く分からない。
「いや、そうじゃなくて‥‥。怪しい粒子砲を出しそうな子、いまして?」
「全員そう見える‥‥」
陽子に尋ねられ、皇は双眼鏡越しに、穴の開くほど観察して見たが、上空からでは、犯人がだれなのか、よくわからなかった。
「こっそり近づくしかなさそうですわねー」
仕方なく、今度は陽子が見つけたキメラの近くまで行く事になった。箒代わりのディフェンダーを手に進んだ刹那、浴びせられるは、曇天を貫く一筋の光線。
「やっぱり撃ってくるしー」
「ど、どうせあてずっぽうですわ。この煙幕で視界が確保されているとは思えませんもの☆」
予想通り‥‥と言った皇に対し、強気に答え、装備した煙幕を発射する陽子。そのおかげで、彼女の位置は周囲から見えなくなるが、皇からも見えなくなっていた。
ところが。
「‥‥発射場所、移動してるんだけど」
皇の視界からは、飛んできた粒子砲が、方向を変えたように見えた。それは、煙幕の中の陽子も感じ取ったらしく、別方向から飛んできた粒子砲にかすられて、「き、聞いてませんわよっ」と悲鳴を上げている。
「むー、粒子砲の砲台自体が移動する可能性も十分考えられるかしら?」
八王子の時は、固定砲座だったのを思い出す皇だったが、バグアも常々新しい物を開発しているらしい。そう考えると、移動式にした可能性は充分ある。
「かもしれませんわね。急いで回収しますわっ」
何しろ、一発食らったらおしまいである。煙幕の切れないうちに、部品の所へ滑り込む陽子。
「あ、氷の薄いところにいかないで‥‥って、もう遅いか」
皇がそう警告するが、直後、盛大な悲鳴と共に、水柱が上がるのだった。
んで、その頃。須佐と神音はと言うと、別の場所で捜索に当たっていた。
「砲台が移動した? と言う事は、前に八王子にいた奴ではないのか‥‥」
粒子砲の降り注ぐ位置が変わった事を、遠くから見た神音が、眉をしかめる。どうやら、今までの報告書で見たカメとは、種類が違うらしい。
「移動式になったと言う可能性はあらぁな」
「ふむ。そうすると、ここに来るのも時間の問題か‥‥」
そんな彼女に、須佐がお気楽そうに言った。バグアも新型を開発しているのはよくわかっている。加えて、これだけ広くて静かな場所で、KV8機も右往左往していたら、かぎつけられるのも無理はなかった。
「きちんと助けてくれよ? 見捨てたら拗ねるぞ?」
「言い出したのはお前だろうが」
陸上を歩く須佐が、冗談めかしてそう言うと、神音がツッコミを入れる。今回、何か目的があったのか、チーム決めの際、わざわざご指名してきたのは、彼の方である。程なくして、須佐の視界にも、部品らしきものが見えてきた。
「気をつけろ。氷の下からも来る可能性はある」
上空の神音から警告を受けて、彼は周囲に目を凝らす。だが、水中に何かがうごめく影はなかった。
「これが噂のクエスチョンボックスか」
そう言って、中身を確かめる須佐。が、その中には日本語で『はずれ』と書かれていた。
「ふざけるなぁぁぁぁ!!」
引っ掛けられたと思った瞬間、彼はそれを氷に投げつけていた。
「落ち着け。何があった?」
KVで叩き付けると言う、上から見ても良く分かる行為に、神音が心配そうに問うて来る。
「なんでもねぇよっ。こうなりゃ、10箇所全部回ってやる!」
不機嫌そうに答える須佐。そう言って彼は、大またでずかずかと、次のポイントへ向かうのだった。
で、そんな事は露ほども知らないホアキンは、シュラングと組、他のメンバーと同じように、捜索活動に従事していた。
「KVで寒中水泳なんて御免だ。慎重に行こう」
そう言って、黄色印の場所へと向かうホアキン。彼が空中で、シュラングが陸上から。粒子砲の目撃された地点は、2機共に上空へ避難すると言う寸法だ。
「って、結構居るぞ‥‥」
ホアキンが顔を引きつらせた。問題の黄色エリアにも、キメラと思われる動物達は沢山いる。このまま轟音を立てて、進入すれば、彼らの『歓迎』を受けかねない。
「この先は青色エリアだな‥‥」
そう呟く彼。黄色エリアには、青色エリアと隣接する部分もある。それは、動物達が近寄っていない所からも明らかだ。慎重に迂回する彼。だが、その前に、マンモス達が牙を振り上げて突進してきた。考えてみれば、マンモスなんて太古の遺物は、ロシアで氷漬けになってるか、北の湖で化石になっているシロモノ。キメラと考えるのが妥当だろう。
「‥‥援護する」
シュラングがそう言って、バルカンを乱射する。当てるつもりはないが、牽制には充分だ。飛び道具に浮き足立つマンモス達。そこへ、シュラングはディフェンダーへと持ち替え、近接攻撃に切り替える。
「頼むから、こっちに来てくれるなよ!」
ざしゅっと先頭の一頭に切りかかる彼。目が血走っているのは、覚醒しているせいだろう。そのまま、容赦なくトドメを刺すシュラング。と、その刹那‥‥である。
「ん? 何か音が‥‥おわぁっ」
2人の足元に、盛大な亀裂が走った。直後、足元の氷が割れ、二人とも水の中へ。どうやら、戦闘の効果で割れちゃったらしかった。
ミクに解析を依頼し、何とか情報を集め終わった傭兵達は、急いで目的地へと向かっていた。
「いたぞ」
赤色エリアの一つに、ででんと待ち構え、キメラを従えているカメ型ワームの姿がある。
「キメラは無視して構わないわ。ボスを落とせば用足りるし」
ヴィスがそう言って、後ろに下がる。その手には、スナイパーライフル。どうやら、援護をするようだ。
「分かりました。装甲が頼りですが、盾になります」
セラがそう言って、前へと出た。迫る大規模作戦の為、機体を強化した初めての実戦。と、陸上から近づいた彼らに気付いたのか、まるで鎌首をもたげるかのように、こちらへと振り向いた。そこへ、ヴィスがスナイパーライフルを打ち込む。
「うっそぉ、ぜんぜんダメージ与えてないー」
膨れる彼女。やはりカメは甲羅が硬いと行った所か、殆ど傷ついた様子は見えなかった。
「カメですから、硬いんですよ。そう早いとは思えませんし」
そう言って、強化した装甲を頼りに、人型形態となったセラ、ディフェンダーで切り込んで行く。自身の体を盾代わりにして。ぶしゅうっと盛大に雪煙が吹き上がる。一瞬、視界を奪われるセラ。
「やったか?」
「いや、まだだ!」
その向こう側に揺らめく黒い影。そして、雪煙を切り裂くかのように、青白い光線が、セラの機体を襲う。被弾を気にしないと言う戦法の効果で、その光線をまともに食らってしまうセラ。見れば、機体の耐久力が一気に2割も低下している。
「だ、大丈夫?」
「何とか‥‥。物凄い攻撃力‥‥。強化した僕の装甲ごと吹き飛ばすなんて‥‥」
同じチームのヴィスが駆け寄り、助け起こすが、セラは戦慄を隠せなかった。仲間の盾になるべく強化した装甲ごと、貫かれたのだ。無理はない。
「近づかない方が無難かな‥‥」
そう言って、皇は後ろの方へと下がり、ヴィスと同じ様に、スナイパーライフルへと切り替える。しかし、それでも装甲は中々撃ち抜けなかった。
「可愛いペンギンとは言いませんけど、動物と戯れるのは、女の子の夢ですわ!」
その間に、陽子が果敢にディフェンダーで切りかかった。割れそうな足元を注意し、カメにとって弱点になりそうな場所から、切りつけたのだが。
「硬くて切れませんわっ。せっかくの煙幕が役に立たないじゃないですのーー!」
やはり、ノーマルな切り方では、その盛大な防御力に阻まれてしまうようだ。しかも、そんなカメを守るかのように、彼らの前へキメラと思しきマンモスが立ちはだかっている。
「動きは早くない‥‥。だったら、こいつにモノを言わせるまでだ‥‥うっぷ」
機動力にモノを言わせて、ひたすら動き回る彼。が、その分体にも負担がかかる。覚醒し、人並み外れた能力を手に入れた身だが、それでも負担はかかるらしく、目の前がくらくらし始めた。その彼らに、今度は相手が粒子砲を撃ってくる。なんとか避けたものの、強化した彼の回避力を持ってしても、ぎりぎりの勝負だ。どうやら、狙いも思いのほか正確のようである。
「落ち着け。奴が撃ってるわけじゃない。煙幕でも張っておけ!」
神音がそう言って、レーザー砲で応戦する。キメラが避けたところで、今度は副兵装フォルダから、煙幕弾を乱射する。どこまで効果があるか分からないが、ないよりはましだ。
「んなもん、持って来てねぇよ!」
もっとも、須佐の機体には、そんなもの付いていない。同じレーザー砲はついているのだが、どちらかと言うと攻撃力重視だ。
「氷にひびが入ってるわよ。気をつけてねー」
戦場を見渡しやすい空へと上がったヴィスが、氷の厚さを観測してそう言った。威力の大きな攻撃を食らわせれば、何とかその装甲を貫けるだろうが、それより先に氷を貫いてしまうだろう。
「氷の下に罠でも仕掛けているなら動けないな」
ぼそりと呟くホアキン。その割れた氷に、敵が何か仕掛けている可能性はある。神音の張った煙幕に紛れ、氷の上を慎重に進む。だが、そこへ違う方向から粒子砲が飛んできた。
「発射してるのはシカゴの方か‥‥。先にカメを黙らせた方が良いな」
目の前のカメは、須佐が相手をしている。その間に、砲台を沈黙させようとしたホアキンだが、どうもかなりの距離まで届くらしく、ガトリング程度では無理そうだ。
「威力を上げるしかないか‥‥」
シュラングも、自分のディフェンダーに錬力を注ぎ込んだ。エネルギー残量はわずかだが、仕方あるまい。同じ様に、須佐もガトリングとレーザーを撃ちながら、手にしたユニコーンズホーンに錬力を注ぎ込む。
「釣りはいらねぇ、全部貰っていけ!!」
研究所で大枚はたいて強化した武器を、ねじ込むように押し込む須佐。しかし、それだけの力を持ってしても、カメは健在だった。さすがに、ダメージは受けているようだったが、背中の砲台は油断なくこちらを狙い済ませている。
「だからなんだ。牽制いらねぇんだったら、連射すりゃいいだろ!」
まだ煙幕は晴れていない。その視界不良に乗じて、ガトリングガンを乱射する須佐。しかし、やみくもに連射しただけでは、その装甲は貫けない。そのうちに、KV自身がエネルギー切れを警告し始める。どうやら、ガス欠が近いようだ。
「ああもう、仕方ないわね。皆、足元を狙って」
上空のヴィスが、そう言って、見本をスナイパーライフルで示して見せた。ちょうど、キメラが陣取っているあたりだ。
「ああ、そう言う事ね。あなた、そこから動かないでよ!」
皇もそれに倣い、今まで後ろに居たのを、極力距離を詰めるようにして、足元にスナイパーライフルを見舞う。
「だから言ったのに」
「えぇい、冬の北米の寒中水泳はお前らだけで楽しめ! 俺は帰って暖まる!」
余波でハマった足を引っこ抜きながら、須佐は手にしたユニコーンズホーンでもって、まるでもぐら叩きでもするかのように、げしげしと氷を叩き割っている。
「よし、ひびが入った。もう大丈夫ね」
ヴィスがそう言った。見れば、皆で割った効果で、盛大な亀裂が、湖の氷へと走っている。直後、ぶっしゅうと水柱が立ち上り、カメ型ワームはその向こうへと姿を消し、損傷率4割を超えている為、傭兵達は早々に最寄の基地へと帰還するのだった。