タイトル:働かざる者食うべからずマスター:星光線

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/10/12 20:24

●オープニング本文


●そんな餌には釣られない

「秋といえば食欲の秋だよな」
 依頼の書類を整理していたオペレーターがそう言う。
「まぁ否定はしないがそれがどうした?」
 なんとなく嫌な予感がするものの素直にそう答える男能力者。
「空気の綺麗な場所でバーベキューするんだけど移動費はこちら持ちだし勿論行くよな?」
「無論かまわな‥‥すまん、内容による」
 妙に気軽に誘われて思わず了承の返事をしそうになる能力者だったがふと不安になり少しぼかして返事を返す
「っち、二つ返事なら問答無用で依頼に名前を入れてやろうと思ったんだけどな。残念」
 その返事を聞きオペレーターは非常に残念そうに今張り出そうとしてた依頼の資料を見せるのだった。

●キャンプ場での惨事

「よーし! テントも張り終わったし荷物も整理したし後は釣りとか散歩でもご飯を食べて寝るぞー!」
 さっきまでテントを張っていた男はうーん!と背を伸ばしながらそう言う。
 ふと周りを見ると他にもテントを一生懸命建てようとしてたり既に食事の準備をしている人たちが見える。
 おそらく自分と同じ様に休暇中に自然の中でゆったりと過ごそうと考えた人達だろう。
「‥‥いや。もしかしたら食事目当てで来てる人も居るかもしれないな」
 思い付いたかのようにそう呟く男。
 というのもこのキャンプ場の売りは『この地域で育てた新鮮な肉と野菜を大自然の中で食べよう!』という物らしく食べ物にはかなり力を入れている。
 実はこの男がここのキャンプに来たのも半分はそれが目的だったりする。
 ふと耳を澄ますとモーだとかブーだとかの牛や豚の鳴き声が聞こえる。
 そういえば近くに農場や牧場が近くにあり収穫の体験ができるツアーなんていうのも組まれていた記憶がある。
 将来は自給自足の生活がしてみたいなぁとそんな事を思いながら様々な場所の確認のために地図見ていた男なのだがそこでおかしい事に気がつく。
「あれ? 鳴き声が聞こえるぐらいだから牧場はすぐ近くだと思ったんだけどなぁ」
 確かに地図上に牧場はあるのだがキャンプ場からかなり遠い。とても動物の鳴き声が聞こえる場所じゃないのだ。
 そういえばよく聞いてみるとドドドドドとか音がするしさっきよりも明らかに鳴き声も近いし周りの人が悲鳴を上げ始めたし‥‥。
 物凄く嫌な予感がして後ろを振り向くと何頭もの牛や豚がすごい勢いで自分の方に突撃していた!
 そして逃げる間もなく男は牛と豚の軍団に轢かれるのであった。

●働く者は食べても良いのよ?
「そこまでなら『嫌な‥‥事件だったね』で済むんだけどこの牛と豚がキメラだったから困るんだよ。幸いフォースフィールド以外は大した強さじゃないおかげで逃げ遅れた男性一人とその後普通の牛や豚だと思って牧場に送り返そうとした数人が重傷な程度で後は持ってきたキャンプ用品が壊れただとか転んで擦りむいた程度の被害らしいね。ぱぱっと倒してきてよ」
 そう言いながらさっきまで読んでいた資料を渡そうとするオペレーター。
 それを丁寧に断りながらふと気になった疑問を聞く男能力者
「ところでこれの何処が『空気の綺麗な場所でバーベキューをする』なんだ?」
「討伐に成功したらお礼に場所と食材を提供してくれるらしいから嘘じゃないよ?」

●参加者一覧

天・明星(ga2984
13歳・♂・PN
Letia Bar(ga6313
25歳・♀・JG
比良坂 和泉(ga6549
20歳・♂・GD
番 朝(ga7743
14歳・♀・AA
藤宮 エリシェ(gc4004
16歳・♀・FC
トゥリム(gc6022
13歳・♀・JG
明神坂 アリス(gc6119
15歳・♀・ST
皆守 京子(gc6698
28歳・♀・EP

●リプレイ本文

●悪い子は食べてしまおう!
「牛と豚のキメラねぇ。わざわざ牧場に解き放つなんてバグアも変に律儀って言うか何て言うか」
 そんな事を言いながら明神坂 アリス(gc6119)はキメラ達を見る。
 キャンプ場をのんびりと歩いているその姿はどう見ても普通の牛や豚であり時折ぶつかったお互いがフォースフィールドに弾かれてるのを見て「ああ、そういえばキメラだったな」っと思い出す。
「これは‥‥キメラを食べる文化を広げようというバグアの策略かなぁ」
 その様子を見てトゥリム(gc6022)もそう言う。ちなみに倒したキメラは食べる気満々で料理器具もばっちり持参済みである。何処か嬉しそうな様子なのは気のせいではないだろう。
「新鮮な肉と野菜、これはいい依頼を受けましたね。キメラの殲滅程度パパっと片付けてご覧に入れましょう」
 同じく何処か嬉しそうにキャンプ場を見回しながらそんな事を言う皆守 京子(gc6698)。
「そうだね。他にもキャンプを楽しみにしてる人達がいるんだ‥‥さっさと倒させて貰うよ」
 それに答える様にLetia Bar(ga6313)もそう言う。しかしその様子は他の人とは違い少し元気がない。
 しかしいつも通り振舞おうとしているその様子を少し心配そうに番 朝(ga7743)が眺める
(今回はレティア君がちょっと元気ないように見えるのが気になるな)
 そんな事を思いながらも自分もいつも通り振舞おうとしている。
「見た目は普通に見えますけど‥‥油断は禁物ですね」
 そう言いながらしっかりとキメラを観察するのは比良坂 和泉(ga6549)。
「そうですね。怪我した人も居るみたいですし‥‥亡くなった方がいなくて‥‥本当に良かったです」
 和泉の言葉を頷きながら藤宮 エリシェ(gc4004)もそう答える。
 見た目はどう見ても牛と豚だがこれでもキメラである。これが放置されれば次は怪我人だけでは済まないかもしれない。
「ま、ケガ人も出てるしお楽しみも待ってることだし、『カキューテキスミヤカ』に倒してっ! ご褒美の肉、肉、肉にありつくぞっ!」
 そのアリスの言葉を皮切りに皆は各々の武器を構えてキメラの方に向き直るのであった。

●さて、お仕事の時間ですよ
 まず最初にアリスがしっかりと練成強化をLetiaと朝にかける。
 それを受けて朝が突撃、豚キメラの頭を思いっきり【OR】樹で叩きつける。
 のんびり歩いてた豚キメラはその攻撃に成すすべもなく頭を吹き飛ばされて倒される。
 その攻撃に他のキメラ達が一気に臨戦態勢になるがそこをLetiaが拳銃「バラキエル」で強弾撃、影撃ちを併用して一撃で牛キメラを撃ち貫く。
 しかし残ったキメラ達は各々能力者に突撃攻撃をしようと襲ってくる。
「さあ、追いかけっこを始めましょうか。疾さには自信があるんですよ?」
 そう言いエリシェが笑みを浮かべながらキメラを挑発する。
 挑発に乗って牛キメラ2匹と豚キメラ1匹がエリシェに襲い掛かる。
 しかし突撃してきたキメラ達を迅雷で回避しつつ自分の剣であるブルーエルフィンに円閃を乗せて角や足を切りつけていく。
 足を傷つけられて動きが鈍るキメラ達。そこに
「これだけいればBBQの食材には困りませんね」
 そんな事を言いながら京子が小銃「S−01」で更に足を撃ち貫く。
 合わせる様にアリスが同じく小銃「S−01」で兎に角命中するように撃ちキメラ達に止めを刺していく。
 しかし別方向から挑発に乗らなかったキメラ達が銃を撃ってる二人に突撃しようとする。
「させませんよ!」
 そう言いながら和泉が豚キメラの突撃を受け止めそのまま自分の短剣であるチンクエディアに四肢挫きを乗せた斬撃で敵を足止めする。
 さらにトゥリムが子牛が売られていく歌を歌いながら牛キメラの突撃をライオットシールドで受け止める。
 そして足が止まった牛キメラの頭部にざっくりと苦無を突き刺し倒す。
 この間に二人が足止めしてくれたおかげで迎撃する余裕ができた京子とアリスが残りの豚キメラに向き直る。
 アリスが機械剣「シャルトリューズ」で突撃してきた豚キメラの眉間を切り付け、合わせる様に京子が超機械「魂鎮」で止めを刺す。
 これで残りは和泉が足止めをしている豚キメラだけである。
「‥‥狩られる覚悟はいいですか?」
「キャンプ場の平和のため! ひいては僕たちの胃袋のため! さっさとやられろキメラーっ!!」
 そんな事を言いながら豚キメラを周りを囲む能力者達。
 もちろんこんな人数差ではどうしようもなく後はお肉に傷をつけない様に倒されるだけなのであった‥‥

●さぁここからが本番だ!
「ありがとうございました♪キャンプ場の被害も思っていたほどじゃないし助かりましたよ!」
「‥‥まさかとは思うけど、お礼に提供される食材の肉ってこいつらじゃないよね‥‥?いや、キメラ肉って筋張ってるけど味は美味しいって聞いたことあるし、ちょっと興味もあるけども」
「お礼で出させてもらう食材は私共の自信の野菜と普通のお肉ですよ♪ 倒したキメラについては私共ではどうしようもありませんしご自由にどうぞ。‥‥それにしてもキメラ肉って美味しいのですか‥‥。今度仕入れてみましょうか?」
 そんな事をアリスと依頼主が話しているのを尻目にトゥリムはGooDLuckをかけながら豚キメラを血抜きし、手際よく綺麗に解体していく。
 苦無を使って部位ごとに分けてスライス、その後ボウルに持ってきたスブロフを入れそこにお肉を漬け込み臭みを取る。
 大量にいた筈のキメラがあっという間に解体されてスブロフに漬けられていく様は見ていて美しさすら感じさせる。
 その間にLetiaはタープを張ったり椅子を並べたりとBBQの準備をする。
 元々アウトドアが好きな為かやはりその手際は非常にいい。
 その隣で火おこしをしてるのは朝だ。それ以外にも積極的にLetiaのお手伝いをして机を運んだりお皿を並べたりしている。
 その様子は非常に楽しそうだったが時折そっとLetiaの方を気にかけている。
 少し向こうでは和泉と京子がお礼のお肉と野菜が入った箱を一生懸命運んでいた。
「先ほどは庇って頂いてありがとうございました」っと歩きながら言う京子に「いやははは、それほどでもあぃませんよ」(舌噛み)っと妙にオロオロしながら答える和泉。
 何を隠そうこの比良坂 和泉。異性に対する免疫が非常に低かったりする。
 戦闘ではともかくこの平和な空間で女性二人っきりで箱を運んでいるこの状況はドキドキもいい所だろう。
 ‥‥なお、余談ではあるがこの依頼を受けてる人は和泉氏以外全員女性である。がんばれ♪
 なんとか無事に和泉が帰ってきた頃、トゥリムがすべてのキメラを解体し終わりSES中華鍋を温めてる所だった。
 その横ではエリシェが一生懸命マシュマロを串にさしていた。
「あ、野菜とお肉持ってくれたんですね? ありがとうございます」
「ありがとうです、助かりました」
「いぇいぇ、た、大した事ありませんよ!」
 持ってきてもらった材料を受け取りながら二人が礼を言う。
 そしてトゥリムはお肉の下拵えをエリシェは野菜の下拵えをテキパキやり始める。
 一緒にいた京子は「私はちょっとここで休憩させて貰いますね」と言いながら荷物を降ろして近くにあった椅子に座る。
 和泉は相変わらず緊張したまま(見た感じもう少ししたら下拵えが終わりそうかな?)とか思ってたのだがふと思いついた事があり尋ねる。
「そういえば、白飯はありますか? おにぎりを握ってみようと思うのですけど‥‥」
「ご飯ならレティアが炊いていた気がします」
 野菜の下拵えをしながらそう答えるエリシェ、それを受けてトゥリムも頷く。
 それを聞いた和泉はお礼を言いながらLetiaの方に行く。
 その頃Letiaはアリス、朝にテキパキ指示を出し食卓の準備やドリンクの準備、火おこし等を済まして皆でお肉と野菜が来るのを待っているところだった。
「んー、どうしたんだい?」
 自分の方に近づいてきた和泉を見ながらLetiaはそう言う。
「いぇ、おにぎりを作ってみようと思ったので白飯を分けて頂きたいのですけど‥‥」
「ああ、あそこに置いてあるから自由に使っていいよ」
 そう答えながらLetiaはご飯を炊いている所を指差す。
「ありがとうございますぅ!」
 相変わらず緊張しながらお礼を言ってご飯の所に行っておにぎりを作り始める和泉。
「ふんふんふふーん‥‥っと」
 何個か握ってたら調子が出てきたのか鼻歌を歌い始める。そこに
「おにぎりを握ってると聞いてー。おお! 中々上手いね!」
 っと暇になったアリスがすっと様子を見に来る。
「(びくぅ!) い、いりゃっさいませー!」
 この後、握りすぎて小さくなったおにぎりが何個も生産されたのは仕方ないと言えよう。

●ご飯が美味しい季節だよね♪
「さぁいっぱい焼きますから沢山食べてくださいね!」
 そう言いながらエリシェがどんどん串を並べていく。
 そしてどんどん焼きあがっていく食材達。
 ‥‥ところで実は7人分の食材提供+キメラ8体分のお肉を7人で食べれるかという問題があるのだが。
「おお! 本当に聞いてた通りキメラ肉って美味しいね!」(もきゅもきゅ)
「提供してもらった普通の肉も美味しいですね。後で弟も誘ってキャンプに来ようっと」(もぐもぐ)
「とっても美味しいです‥‥! 流石トゥリムさんですね!」(ぱくぱく)
「もし残ったら俺が全部たべるぞ!」(ばぐばぐ)
「やっぱりお肉は競争率が高そうですし野菜の方を‥‥」(ぱくっ)
「お肉も野菜も交互に食べると飽きないですよ」(がつがつ)
「それは良い事を聞いたよ!」(もきゅもきゅ)
「や、野菜も競争率高いですね‥‥」(あぅ)
「んー。わいわいと賑やかなのはやっぱいいやっ。元気も出てくるよね!」(ごくごく)
「そうですね。今日は食べ過ぎてしまうかもしれません」(ぱくぱく)
 ‥‥まったく問題無さそうで何よりである。
 実は気を利かせた依頼人が野菜の追加を頼んでいた位である。
「甘いものが欲しくなったらマシュマロもありますよ、とろりと溶けて絶品です♪」
「あ、おにぎりもあるのでご自由にどうぞ」
 そう言いながらエリシェと和泉が自分の作った物をお勧めしてくる。
「ありがとうです、どっちも美味しいです」
 お勧めしてもらった物も食べながらトゥリムがそう答える。
 本当に美味しそうに食べていて見てる方も良い気持ちになってくるほどである。
「レティア君! おにぎりもマシュマロも美味しいぞ!」
 そう言いながら朝がさっき貰ったおにぎりとマシュマロを渡しながらそう言う。
 それを受け取りながらLetiaは今日の依頼で朝がずっと気にかけてくれてた事を思う
(ほんとにこの子には敵わないなぁ‥‥)
 そんな事を思いながらLetiaは朝の頭を撫でながら「ありがとうね、アシタ」とそう言うのだった。
「よぉし、気合い入れ直してまた頑張ろうっ! ガッツリ行くぞー!」
 そう言いながらお肉争奪戦に向かうLetiaを見て朝はにっこりと笑うのだった。

 そんな感じで楽しいBBQも見事に完食(!?)となり後片付けも皆で手分してやり一先ず解散となるのであった。
 ちなみに余談だがこの後すぐに京子が弟に即キャンプ用具を持ってこさせたり、さらにその後このキャンプ場の売りに『キメラ肉始めました♪』という宣伝文句が増えたりするのだがそれは別のお話。