●リプレイ本文
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「マガツヒさんという方が先行しているはずなのですが‥‥」
とある辺境の地にて周囲を見渡すセレスタ・レネンティア(
gb1731)。
キメラの死骸がゴロゴロと転がっている中、足跡等が残っていないか確認していた。
「先行したおてんば姫は、どこに行ったのかなぁ?」
バイブレーションセンサーを使用しつつ、状況を確認するイスネグ・サエレ(
gc4810)。
「‥‥後先考えずブッ飛びやがって‥‥仲間が余計にワリ喰う事だってあるだろうがよ‥‥!」
拳を握り締めながら残存するキメラ達を睨む赤槻 空也(
gc2336)。
熱くなり暴走しがちな自分自身と、どこか似ているセナに対して余り良い感情を持てない様だ。
「地下に結構反応がありますね、となるとセナさんは地下かなぁ」
茶系統の淡い光に包まれながら、地下に続く道を探すイスネグ。
「一人で先行するなんて‥‥早く合流しなければいけませんね」
何か事情があるのかもしれないと考えながら、イスネグのやや前方にて念入りに足跡を辿るマヘル・ハシバス(
gb3207)。
残存キメラを討伐しながら散策すること数分後――。
「下の方から何か聴こえますね」
スナイパーライフルを構え更なるキメラの襲撃を警戒しながら死骸や周辺の地形を調べていたセレスタが、
ぽっかりと開いた大穴から聞こえてくる声に耳を傾けていた。
「ここで踏み込んで‥‥落ちましたね‥‥」
大穴の手前に残された足跡を分析するマヘル。
「‥‥暗い‥‥ですね‥‥大きな、口‥‥みたい‥‥」
「おっと‥‥大丈夫ですか?」
尻餅をつきそうになっていた無明 陽乃璃(
gc8228)の腕をぐいッと引っ張る比良坂 和泉(
ga6549)。
「あ‥‥あはは‥‥あの、すみません‥‥」
どうやら無明は、無作為に開いた大きな穴を見て軽い眩暈に襲われたようだった。
「うえー。入らなきゃいけないのかー」
「仕方ない。入るしかないと思うんだ」
嫌そうに穴を見下ろす春夏秋冬 立花(
gc3009)の肩を諦めろと言わんばかりにポンッと叩く旭(
ga6764)。
「まぁ、さっさと助けに行かないとですね」
軽く深呼吸をし、穴へと飛び込む春夏秋冬。
「近くに木は‥‥ありませんね」
帰り道の事を考え、キャンプ用のロープを用意してあったが括り付ける対象がなかった為、
諦めて大穴へと降下するマヘル。
飛び降りた先に一同を待っていたのは、これまた真っ暗な地下道だった。
「これは‥‥マガツヒさんが残したモノ??」
壁に書かれた一本の光る線を見つけ、首を傾げるマヘル。
「形状からしてそんなに古くないようですね。兎に角、この線を辿ってみますか」
蛍光線を手でなぞりインクの乾き具合等を調べるセレスタ。
「‥‥大丈夫‥‥です、よね‥‥彼女‥‥? 見つけたら‥‥死んでた‥‥とか‥‥な、無いですよね?」
不安げに辺りを見回しながら、赤槻の裾を引っ張る無明。
「あぁ、大丈夫だ。スタートライン小隊の隊長二人の意地‥‥見せてやるってモンじゃねーかよ‥‥!」
無明の気弱な性格を少し心配し軽く頭を撫でながら、イスネグに目線を送る赤槻。
「ん? あぁ。大丈夫ですよ」
「そ‥‥そうっ! ですよね‥‥? たいちょぉ‥‥」
優しく微笑みかけるイスネグと赤槻の言葉に少し安堵する無明。
「無明ちゃんは、セナちゃんが心配なんですねぇ」
壁に書かれた蛍光塗料に目を遣りつつ、旭と共に後方を歩く春夏秋冬。
「それにしても、こんな所に地下道があったんですね」
「そうですね‥‥別の出口があればいいのですけど」
周りを見渡すセレスタに対して、入ってきた場所にロープを繋げなかった事を少し不安そうに呟くマヘル。
「大丈夫ですよ、きっと出口は他にもある筈です」
足早に前へと進みながら答える比良坂。
こうして一同は、ランタンと蛍光塗料を頼りに奥へ奥へと進んでいくのであった。
どれほど進んだだろうか‥‥。
一同の前方にようやく薄い明かりの様なモノが見えてきた。
「前方に三匹います、待ち伏せをするようなキメラじゃないっぽいな」
バイブレーションセンサーを用いて索敵した結果をメンバーへと伝えるイスネグ。
「誰も死なせねー‥‥カンペキにやってやろうぜッ!」
拳を前方へと突き出す赤槻。
こうして一同は地下に作られた施設へと駈けて行くのであった。
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開けた空間へと躍り出た一同の目前に広がっていた光景は、横たわっている数匹のキメラと
かなり傷を負わされ月詠に体重を預けるセナ=マガツヒの姿だった。
「クっ‥‥さすがにキツイ‥‥」
一匹のキメラがセナ目掛け飛び掛ろうとしていたが、セナはその場を動く事すら出来ないようだった。
片膝を地へと着けていたセナの元にタイミングを計りつつ、まるで瞬間移動をしたかの如く駆けつける旭と春夏秋冬。
「せーのっ!」
「ほいほいっ!」
重心を置いた片足にて地面を蹴り、黒い羽を生やしたキメラに対して右足にて打撃を与える旭。
旭が着地したのと同時に、宙へと舞い上がる春夏秋冬。
宙を舞うキメラに対して、間髪入れずスコルにて右前方へと蹴り落とす。
「っ痛‥‥。思ったより傷口に響くな、これ」
「無茶するからですよー」
どうやら先の戦にて受けた傷口が、また軽く開いてしまった旭に対して、
冷ややかな視線を送る春夏秋冬。
「だ‥‥大丈夫ですか!?」
慌てて旭に近寄り、練成治療を行う無明。
「マガツヒさんもですよ」
無明の後方より駆けつけ少し呆れながらセナに対して治療を施すマヘル。
「そ、そうですよ‥‥ど、どうして! どうしてそんな‥‥む、無茶を‥‥っ!」
無明の問いに、セナは口籠った。
「一人で飛び出してはダメですよ、もっと仲間を頼ってくれないとね」
「あ‥‥あはは‥‥ごめん」
少し苦笑いをしつつ手を差し伸べるイスネグに対して、両手をパンッと合わせ誤るセナ。
「説明のほうは‥‥帰りにでもしてもらいますからね」
飛び掛るキメラ達の足をトマホークにて薙ぎ払い足止めしつつ話しかける比良坂。
「あー‥‥うん‥‥」
比良坂の問いに対して下を向きながら答えていたセナだったが、何かを思い出したかの様に立ち上がり言葉を続ける。
「あっ! そうだ! それよりこの奥に要救護者がいるんだっ!」
「こんな所に人が‥‥?」
比良坂が足止めしたキメラの胸元を確実に射撃しつつ答えるセレスタ。
「確か‥‥二人程、檻の中に閉じ込められてたんだ」
「殲滅と救護の二班に別れる方が良さそうですね‥‥」
何かを考えていたマヘルだったが、セナの指差した方を確認しつつ口を開く。
「ぜってぇ‥‥助けてみせるぜッ!」
瞳を金色に光らせ拳を握り締める赤槻。
こうして一同は、優先順位を別け二班に別れる事となったのであった。
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「見てください。あそこに人がっ!」
右奥に設置された鉄格子の檻の中で、横たわる二人を発見するセレスタ。
「ったくテメェら何処にでも居やがんな‥‥テメェらの居場所なんざねぇよ‥‥来やがれ犬っコロッ!」
一気に前へと踊りだしキメラ達の気を惹き付ける事により、後衛が要救護者の元へと走れるように道を作る赤槻。
前方に立ち塞がるキメラの懐に一気に入り込むと、そのまま身体を地面スレスレまで沈ませる。
低い重心からしっかり腰を据え、構えた右拳に力を注ぎ込む。
「邪魔くせぇ‥‥ブッ飛べよッ!」
怒号と共に溜めていた力を一気に解放。
放たれた赤槻の右拳がキメラの顔面にめり込み、盛大な音と共にキメラの身体が吹っ飛ぶ。
拳を突き出したままの赤槻に次のキメラが牙を剥く。
「‥‥何処までもッうざってェなテメェらッ!」
迫るキメラの牙を身を捻ってかわすと、ついた反動ごと裏拳をキメラの横面に叩き込む。
よろけるキメラに、体勢を整えた赤槻の渾身の一撃が再び突き刺さった。
「気を‥‥つけて下さいっ!」
赤槻を気に掛けつつも要救護者の元へと駈けて行く無明達。
「大丈夫ですか? 助けに来ましたよ」
檻の前に守るかのように立つ春夏秋冬。
「‥‥っ 衛生兵です、お怪我は‥‥あ、ありませんか!?」
檻の中にいる二人の怪我の状態などを確認する無明。
外見の怪我としては、大した物はなかったが少し衰弱しているようであった。
「‥‥早く‥‥ここから‥‥出さなきゃ‥‥」
「ちょっと下がっていてください」
檻についた錠前が外せずオロオロする無明を見て状況を把握し、要救護者に声を掛ける春夏秋冬。
要救護者が必死に後ろに下がったのを確認するや否や、凄皇弐式にて檻の鍵を切り落としていた。
一方その頃。
「暗いところにいるキメラなら光が苦手かも」
照明銃をキメラに向けるイスネグ。
が、キメラ達が二方向から同時に飛び掛かってきたのを見て、咄嗟にプディングシールドを構える。
一匹の攻撃を受け止め、身を翻して他方をかわした。
「お前達の相手はこっちですよ!」
キメラ達の注意を自身に惹き付ける比良坂。
利き足に重心を置きトマホークの重さを利用しくるくると廻りつつ、キメラ達の四肢を薙ぎ払っていく。
「行っくよー!」
月詠を片手にキメラ達の元へ駆け抜けていくセナ。
間合いを一気に詰め、次から次へと薙ぎ払っていく。
「危ない」
セナの背後より襲おうと飛び掛っていたキメラの右足をエネルギーガンを用いて撃ち抜くマヘル。
足を撃たれバランスを崩したキメラの胴体部分を狙うセレスタ。
銃声が周辺に響いた次の瞬間、弾丸は狙った部位へと吸い寄せられるかの様に真直ぐに飛んでいく。
やがてキメラは急所を撃ち抜かれピクリとも動かなくなった。
「ありがとねっ」
「そんな事はいいですから、気をつけて下さい」
マヘルとセレスタに対して軽くウィンクを飛ばすセナに対して、溜息混じりに注意を促すマヘル。
「後少しっ!」
残存するキメラ達を睨みつつ、メンバー達に声を掛けるセナ。
「YO! YO! お前ウーパー?」
「そのセンスはないと思うんだ」
ラップを乗せつつリズミカルにタップを踏んでみせる春夏秋冬。
やや後方にて要救護者を守りながら、春夏秋冬の呪歌に突っ込んでみせる旭。
「あはは‥‥あ‥‥い、一般人の方をぶ、無事に‥‥救出しました」
少し苦笑しながら、一般人救出をメンバー達に伝える無明。
「これで終わりですね」
旭の呪歌に続くように、キメラ達を弱体化させていくマヘル。
「一気に畳み掛けるよっ!」
呪歌による麻痺状態と練成弱体により防御能力低下に陥っているキメラ達を睨み、月詠を握り締めるセナ。
「そうですね。余り遊んでいれる状態ではなさそうですし」
セナの後方より、要救護者をチラッと覗き見る比良坂。
二人はタイミングを合わせ、一気にキメラの元へと駈けて行く。
真正面から斬り込むセナに対して、右から回り込み地を蹴り上げ上段より一気にトマホークを振り落とす比良坂。
こうして施設内のキメラは排除される事となった。
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「人型の敵がいない‥‥単に留守なだけか、すでに放棄されたのか‥‥」
出口を探しながら施設内の調査を行うマヘル。
施設内に設置された白い机の上には、書類などが散らばった状態で放置されている。
だが、書類には落書きの様な絵がいくつも描かれているだけでさっぱり意味が解らなかった。
「この端末とか何か重要そうだ‥‥」
十五インチほどある端末を持ち上げ物色するイスネグ。
「書類は全く解りませんでした。何かの暗号でしょうか?」
数枚の書類をイスネグに見せるマヘル。
二人は眉間に皺を寄せながら、暫くの間考えていた。
一方その頃。
「なんでこんなことしたんですか? 一人は危険ですよ?」
春夏秋冬がセナに経緯を聞いていた。
セナは、少しの間黙っていたが迷惑を掛けた事もありやがて口を開きだす。
「その‥‥ジンが‥‥ぇっと、幼馴染を見たっていう証言があってね‥‥」
一同に説明しながら首元に提げた十字架のチョーカーを触るセナ。
「‥‥ん‥‥セナ‥‥さん‥‥? それ‥‥なん、ですか‥‥?」
セナが触っていた十字架を見詰め質問する無明。
どうやら、そのチョーカーはジンが失踪する前日に貰った物らしい。
そして‥‥。
探し続けていた『ジン』の目撃情報を聞き、居ても立ってもいられなくなった事をメンバーに伝えるセナ。
「なるほど。そういう時は一声掛けてください。お手伝いしますので」
セナの手を握り締め瞳をジッと見詰める春夏秋冬。
「余り、一人で無理な先行はしないで下さいね」
気持ちは分からなくもないですが。と、付け加えつつセナに注意する比良坂。
「まぁ、キミに何かあればそのジンとやらも探せなくなると思うんだ」
比良坂の言葉に付け加えるように話す旭。
セナは「そうだね」と言わんばかりに頷き、一同に再度謝罪する。
「‥‥な、何はともあれ‥‥よ、良かったです‥‥皆無事‥‥で‥‥」
周囲を見渡し、全員が無事である事を再確認するや否や安堵し少し涙ぐむ無明。
「あっちに出口らしきものがあったぜッ! ッて‥‥ど、どうした?!」
出口を探し戻ってきた赤槻だったが、無明が泣いているのを見て少し驚く。
「‥‥ぁ、ぃぇ‥‥ぅ、嬉しくて‥‥」
「ハ‥‥ハハ。しゃーねぇなぁ」
無明の答えを聞くや否や力が抜ける赤槻。
「もう大丈夫、さっさと脱出しようか」
周辺を探索し終え要救護者の元へと駆けつけ、肩をポンと軽く叩くイスネグ。
どうやらフォースフィールドが発生しない事を確認したかったようだ。
「予定外の事態でしたが、作戦終了です」
周辺を警戒しつつ、出口の方へと歩みを進めるセレスタ。
こうして一同は、無事にセナと要救護者を連れ帰るのであった。
帰還した後、マヘルとイスネグは持ち帰ったデータを本部へと提出する。
出来る事であれば二人も内容を知りたかったのだろうが‥‥。
が、厳重なセキュリティーが施されており解読には時間を要する為、諦める事となった。
〜Fin〜