タイトル:【AS】天翔けるモノ達マスター:戌井 凛音

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/11/11 13:40

●オープニング本文


■蒼天を統べるモノ
木々が紅く染まりそよそよと風が吹きぬける。
元々ここには街道があり、多くの人や物資で賑わうそれはそれは交易が盛んな場所だった。
多くの建造物に煌びやかな装飾、そして大きなお城のような豪邸まであった。
しかし今では人の姿はおろか生物の姿は見られる事が無くなった。
ゴオォォ
上空ではけたたましい音を立てながら飛行する戦闘機のみが行き交う。
北米東部で行われている戦場に向うのかいつもより多く飛行していた。

「こ、こちらイーグル257、至急救援をっ」
 ステルス飛行にて境界線上を監視目的で巡回していた戦闘機より緊急無線が飛んでくる。
「こちら管制室、現状報告を願います」
「は‥早く救援を‥っ」
 管制官からの返答にパイロットの彼は答えるだけの余裕はなかった。
イーグル257機の真後ろには、ファントムIIの愛称で親しまれた戦闘機に酷似した物体が迫っていた。
ファントムIIは数年前に既に廃盤となっており、飛空している筈がなかった。
「な・・・なんであの機体が」
 パイロットは必死に空を舞い、なんとかケツから離そうとする。
性能だけで言うのであれば、イーグルが負ける筈はなく既に振り切っている筈だった。
それ故にパイロットは恐ろしくなる。
「空翔る悪魔が・・・」
 イーグル257からの通信はそこで途絶えてしまった。

■某一室
イーグル257の突然消失を受け、書類に穴が開くほど見つめている女性の姿があった。
「どうして‥あの人が‥」
 その瞳には淡い水色の雫が滲んでいる。
コンコンッ
「ぁ‥はい、どうぞ」
 慌てて雫を拭い、ドアを開けるとそこには一人の老人が立っていた。
「失礼するよ」
 老人は部屋に入ると、机の上にばら撒かれた書類に眼をやる。
「もう報告は受けたようだね。今回の事は本当に残念に思う‥」
 そう前置きをし、真直ぐに彼女を見つめ話を続ける。
「あの機体には例のエンジンが搭載されていた様だ。そして彼も承知の上で搭乗したそうだが‥」
 イーグル257機はKV用エンジンを改良し一般用にダウングレードされた試作機だった。
「酷なようだが、あの機体は回収しなければならない。それに彼の父親が上級階級だという事は君も承知の上だね?」
「‥‥はい」
 イーグル257機に搭乗していた彼は所謂イイ所の坊ちゃんで、彼の両親は今回の事を未だ信じられず軍に不信感を抱いていると言う。
「従って、彼の捜索若しくは‥‥」
 上司はそれ以上彼女に告げる事は出来なかった。
「‥わかっています‥救出若しくは彼が亡くなった‥‥という証拠が必要‥なんですね?」
「すまない。婚約者の君が一番辛いだろうに‥これは上司命令だ! パイロットの捜索及び機体回収の任を言いわたす」
「‥‥はい。ただ、北米エリアから送ってこられた資料によるとファントムIIと酷似した機体が目撃されているようです」
 彼女は雫を瞳に浮かべながら、上司に資料を渡す。
 資料には、北米エリアで目撃された戦闘機型ワームの写真と警戒情報が記載されていた。
「状況から察すると、フロリダから北上しているバグアの大軍と関係性があるということかね?」
「はい‥その可能性は多いにあるかと。従ってこの件については、傭兵の方々の協力を仰ごうと思います」
「相、分かった。その辺りは君に任せるよ」
 重い腰を上げ、彼女に少し目をやりつつ上司は部屋を後にする。
彼女は必死にこらえていたものが溢れ出したかのように号泣し、一枚の写真を抱きしめる。
「どうか‥どうか‥‥」
 そう言うと窓越しに飛行機雲が幾重にも流れる空を見上げる。

●参加者一覧

白鐘剣一郎(ga0184
24歳・♂・AA
伊藤 毅(ga2610
33歳・♂・JG
ソーニャ(gb5824
13歳・♀・HD
ファリス(gb9339
11歳・♀・PN
美具・ザム・ツバイ(gc0857
18歳・♀・GD
ドゥ・ヤフーリヴァ(gc4751
18歳・♂・DF
BEATRICE(gc6758
28歳・♀・ER
真下 輝樹(gc8156
22歳・♂・CA

●リプレイ本文

◆作戦開始
「お待たせしましたっ!」
「二分の遅刻じゃの」
 この依頼に備え、夜中までラスヴィエートの操縦訓練を行いほんの少し遅刻した真下 輝樹(gc8156)が、美具・ザム・ツバイ(gc0857)に叱られていた。
「まぁまぁ、それで何かあったのですか?」
 二人の様子を見ながらオドオドしていたドゥ・ヤフーリヴァ(gc4751)が質問をする。
「ん、あぁ。イーグルの周波数だが中波帯で750kHzだそうだ」
 呆気に取られていた伊藤 毅(ga2610)だったが、慌てて本題に入り周波数を伝える。
「地図も借りてきたのじゃ」
「後、飛行ルートとパイロットの写真も」
 美具が慌てて天から取り出し広げた地図の上に、BEATRICE(gc6758)がセロハンボードを合わせる。
 どうやら三人は昨夜、依頼主の女性の元に赴き下準備をしていた様だ。
「お、これは有難い」
「僕もイーグルのフライトプランが知りたかった所なのです」
 地図を覗きながら白鐘剣一郎(ga0184)とソーニャ(gb5824)が同時に口を開き互いを見て少し笑う。
「パイロットさんは無事でいて欲しいの。帰りを待っている姉様の為にも、ファリス頑張るの」
「そうじゃの。昨夜泣いていた彼女の為にも連れ帰りたいものじゃな」
 ファリス(gb9339)は呟きながら写真を見詰め、美具は依頼主の顔を思い出しながら地図をジッと眺める。
「それでは各自幸運を!」
 ヤフーリヴァの一喝を合図に其々の愛機に乗り込み一同は境界線上のゴーストタウンを目指す。
 蒼天に八本の飛行機雲が切目を刻んでいく。

◆境界線上周辺
 通信途絶地点に到達した一同は、其々の班に別れる。
 B班として剣一郎とファリスがタッグを組んでいた。
 剣一郎のシュテルン・Gとファリスの斉天大聖が高度七千ft付近にて哨戒し付近を警戒する。
「姿を知っていれば一瞬でも戸惑うのは確かだろうな。ファリス何か反応はあったか?」
「今の所、特に何も反応はないの」
「そうか、ゴーストタウン周辺まで範囲を広げて確認してみるか」
 二機は行進曲の様なメロディーを奏でながら空中を舞う。
 剣一郎の尻に着いて行くファリスの瞳にはどこまでも蒼く広がった空とシュテルン・Gだけが映っている。
 ジャミング発生源が無いかどうかを要注意しながらゴーストタウンへと進路を変える。
 その二機は陸上捜索班から見ると雲の間を漂う魚のように思えた。
 一方、高度五百ft付近にて探査する三機の姿があった。
 A班のソーニャと毅とヤフーリヴァだ。
「いい空だね、蒼天って言うのかな。ね? エルシアン」
 少し鼻歌を口ずさみながらイーグルの飛行空路を辿るソーニャのエルシアンことロビンの姿があった。
「周波数はこれで合っている筈だが」
 周囲を警戒しつつソーニャの後を追う形で毅のスレイヤー968番機が飛行する。
「この辺りに何かあってもいい筈ですが‥‥って、ソーニャさんそれは何の歌ですか?」
「あ、無線開けたままだった。恥ずかしい‥‥」
「いい空ですからね。歌いたくなる気持ちも分かります」
 ヤフーリヴァのスカイセイバーは消息ポイント付近より円を描くかのように旋回飛行する。
 三機より更に低空地上百m付近にて墜落機とパイロットを捜索する地上班の姿があった。
 美具の天に続いてぎこちない飛行をしている真下のラスヴィエート、そしてBEATRICEのロングボウIIだ。
「この周囲には目印等はないな」
 BEATRICEが人工的な印や墜落機がないか周囲に目を配りながら飛行する。
「美具も今の所そう言った類のものは目視しておらぬのじゃが」
 BEATRICEに応答しながら、背後に少し目をやる。

◆ファントムII現レル
「しかし境界線上で偵察していた機体を落としに来たというのが気になるな。奪還作戦のエリアからは遠く離れたこの場所で」
「ですの。反応が全く無いというのが余計怪しいですの」
 ここには何かがあると考え哨戒する剣一郎とファリスの姿がゴーストタウン上空にあった。
「ん、何だ? ファリス何か反応は?」
「まだ何もないですの」
 剣一郎が何かが光ったのを見逃さなかった。
「こちらB班。ゴーストタウンにて光を察知。バグア反応はクリア。至急確認願います」
 反応が無いという事は、救援信号の可能性もあると判断し各班に無線を送る。
「直ちに現場付近を捜索します‥‥無事であって欲しい。そうだろペレグジア」
 無線を聞き応答したヤフーリヴァの姿は遠い誰かを見ているようだった。
 ソーニャと毅も直ちに急行する。
 それに伴い、美具・BEATRICE・真下も後を追う形でゴーストタウンへと向う。
「確かこの辺りですね?」
「その筈ですね」
 地上班より先に着いた毅とソーニャが瓦礫と化した町を必死に目で追う。
「さすがにこれだけ瓦礫があると飛びづらいですね。ん? あれは?」
 少し苦笑いをしながら、ヤフーリヴァが布のような物を確認する。
「地上班へ。ポイント75.148Bにて発見。パラシュートの様なものがあります」
「直ぐに急行します」
 飛行モードから歩行モードに変化した地上班が瓦礫を避けながらポイントまで向う。
「こちら真下機。ポイントに着きましたが、人は確認出来ません。引き続き周辺を捜索します」
 脱出した痕跡が見つかった為、三人は急いでパイロットを探す。
 ポイントより左上方に差し掛かったとき、ぐったり倒れている人をBEATRICEが見つける。
「大丈夫ですか? 直ぐに手当てをします」
 慌ててロングボウIIから降り、持参した救急セットを用いつつ同時に練成治療を行う。
「こちら美具じゃ。要救護者を発見。BEATRICEが治療しておる」
「了解。引き続き上空を警戒する」
「よかったですの」
 剣一郎とファリスは少しホッとしたが、すぐに気を引き締め上空を旋回する。
「了解、イーグルはありましたか?」
 毅は周囲を飛行しながら地上班に連絡を取る。
「要救護者より更に南南東数km地点に在りましたが‥‥」
 真下は溜息を飲み込み重い口を開き更に続ける。
「機体に複数の大穴が開いており、イーグルの原型は留めておりませんでした」
 一同は原型を留めないほどの攻撃をされたという事に唖然とする。
「治療は終わったが、一刻も早く病院に連れて行くべきだろう」
 治療を行っていたBEATRICEからの無線を受け、真下は急いで二人の元へ向う。
「俺が要救護者を運びます」
「うむむ。しかしじゃの、もし狙われたら真下殿だけでは心許無いとも言えるが‥」
「そこは、皆さんがカバーしてくれますよね?」
 美具の不安に対して真下はニッと笑ってみせる。
「仕方が無いの。真下殿に任せた」
 要救護者の元に着いた真下はその人を後部座席に乗せ真下はその場を離脱する
「こちら真下機。救助者保護のため戦列を離れます。皆さんご武運を!」

 その遥か上空二万ftで飛空し様子を伺っていたファントムIIが、突然急降下を始めていた。
「敵レーダー捕捉! 上ですの!」
 突然、敵を感知した斉天大聖の操縦者ファリスが叫ぶ。バグアのワームは基本的に常時ジャミングを行うが、この機体はその機能を持たなかったようだ。
「痺れを切らして出てきたか。ペガサス、エンゲージオフェンシブ!」
 剣一郎とファリスは上方を睨みつける。
 一瞬の瞬きの間にファントムIIは二機の間をすり抜け直角に下降する。
「見‥‥えなかった」
 更に高度数百ftで待機していたヤフーリヴァは思わず目を手で擦る。
 戦列を離脱し、本部へのルートを戻ろうとしていたラスヴィエートの背後にファントムIIが一気に迫り来る。
 状況から考察するにどうやらファントムIIは獲物を横取りされ怒っている様だ。
 そうでなければ真下機のみにターゲットを絞るわけが無い。
「だ‥‥大丈夫ですよ。絶対連れて帰りますから」
 ファントムIIにケツを取られた真下は救護者に気を使いながら必死に操縦する。
 蒼白い閃光の嵐を必死の思いで抜ける真下の額には汗が浮んでいた。
(ファントムもどきか、元ファントムライダーとしては、ちょっと見過ごせないね)
 増速しファントムIIの後方までかっ飛ばして来た毅が、敵の目を自分に向けさせる為に威嚇射撃を行う。
「堕ちるのじゃ!」
 毅の攻撃に合わせ、美具がすかさず対空砲を打ち上げるが、両者の攻撃は華麗な舞いでかわされてしまう。
「行くよっ! ドラペニ」
 毅の後方では、ヤフーリヴァのスカイセイバーが金色に輝きだす。
 スカイセイバーから敵に向け弾丸の雨が降り注ぐ。
「いいね、とっても感じちゃうよ。高空より一気に接近。頭を落とすっ」
 同時にブースターを併用稼動させ加速してきたソーニャの機体より蒼白い閃光が放たれる。
 弾丸の雨と電磁波を受けたファントムIIは、突然急旋回を繰りなしのエルシアンの方へと舵を変える。
「こちら真下機。皆さんありがとうございます。このまま戦列を離脱します」
「了解なの。要救護者の方は頼んだの。そのまま低空を真直ぐ飛んでくださいなの」
「後の事は任しとくのじゃ」
「Geht klar。すでに本部へ連絡した。到着次第、救急搬送出来るだろう」
 ファリスが後退進路を指示し、美具とBEATRICEは真下とファントムIIの水平線上に立つ。

◆翼ノ折レシモノ
 ファントムIIにケツを着かれたエルシアンは、高度一万ftまで急上昇をし左翼をほんの少し下に傾けると一気に急下降する。
 急下降することで更にスピードの拍車がかかったエルシアンは一気にファントムIIの後ろを取る。
 ファントムIIが右翼を少し傾けたのを見るや否やソーニャは左翼を少し傾ける。
 互いに追い抜き追い越されの良い勝負だ。
「ソーニャ、準備は出来たぞ」
 剣一郎からの無線が入る。
 どうやらソーニャがドッグファイトしている間に、隊列を組み直しファントムIIに総攻撃をかける準備をしていたようだ。
「さぁ、この蒼天に砕け散りなさい」
 ソーニャの掛け声と共に一斉攻撃が展開される。
 先陣を切ったのは蒼白い光を放つスレイヤー968番機だ。
「追い込みだ」
 必中の距離まで近づきミサイルを放った瞬間、ファントムIIが銀色に輝いたかと思うとミサイルに向けて一閃のビームが放たれる。
 必中距離にいた毅は慌てて左翼に逃げる。
(無茶苦茶だな‥‥)
「毅、大丈夫か?」
 剣一郎からの無線に冷静に答えるが、まさかファントムに後方攻撃をされると思っていなかった毅の心拍数はかなり高鳴っていた。
「ファリス達の武器を真似するなんて、バグアはやっぱり卑怯者なの」
 分析を行っていたファリスが口を開く。
「うむ。連携でヤツを落とす」
「そうじゃの。持久戦は辛いしの」
 ラスヴェードが完全に戦闘空域を離脱したことを確認し終えたBEATRICEと美具が戦線に加わる。
「まずは、剣一郎さんと毅さんと美具さんでバグアを座標103・75Aまで追い込んで下さいなの」
「ラジャ」
「承知しました」
「了解じゃ」
 右に毅、真ん中に剣一郎、左に美具で隊列を組み、ソーニャの元へと舞い上がる。
 一発一発は致命打にならないとしても、集中攻撃でならヤツを足止めできるはずだと考えたのだ。
「次にポイント到達時ヤフーリヴァさんとBEATRICEで対角線上よりバグアに向け総攻撃を開始して下さいなの」
「Consent!」
「Einverstanden!」
 ヤフーリヴァは左翼を少し傾け、BEATRICEは右翼を少し傾け互いにウィンクを交わすと空へと舞い上がる。
「ソーニャ、上方三五度へ」
「了解。このまま君と飛んでいるのも悪くは無いけど‥‥さよならの時間だ
 いつかは、ボクもいくね。そうしたら、また一緒に飛ぼうね」
 ファントムIIと楽しげに舞っていたソーニャは少し寂しい笑みを浮べると一気に急上昇する。
 剣一郎がソーニャに指示を出すと同時に狙いを済ましスナイパーライフルを放つ。
 同時に、毅は必中距離を見定めホーミングミサイルホーミングミサイルを発射。
 更に、美具が低空よりギアツィントを構え弾丸砲撃がファントムIIに刺さる。
 ファントムIIは華麗に舞い攻撃を交わしつつ、ミサイルにて攻撃を相殺させたかと思うと爆煙で身を隠し急上昇させる。
「レーダー捕捉、ファントムIIは右上空四十度なの。逃げるつもりかも知れないの」
 レーダーを睨めっこしていたファリスには全てが見えていた。
 三機は上昇し、ファリスの支持に沿いファントムIIの姿を追う。
「さぁ、行くぞ、流星皇」
(ファントムII、やはりその姿は優美ですがさよならです)
「堕ちる時じゃの」
 流星皇と呼ばれたシュテルン・Gより稲光と同じ色の球体がファントムIIに向って射撃される。
 右後方より毅のスレイヤーより黒色の弾丸が放たれ、左後方からは美具の天より紅い無数の弾丸が放たれる。
 ファントムIIは迫り来る敵機の攻撃を払いのけるが腹と翼にダメージを受ける。
「今ですの!」
 ファリスの叫びと共に、必中距離に入った二機が連携攻撃を繰りなす。
「往年の名機、空へ帰りなさい」
 右前方よりロングボウIIが五発の弾丸を撃ち込みファントムIIの足止めをしつつ、更にドリルのように尖ったミサイルを数発浴びせる。
「空をその姿で飛んだ事―後悔させとく」
 ミサイルが当たったのを確認すると左前方よりスカイセイバーが空中変形し両刃の刀を持ちファントムIIの懐に入り込む。
 刀を下から上へと薙ぎ払い、更に上から下に切り落とすと最後に左右を分断させる。
 ファントムIIは轟音を轟かせながら、砕け散り地へと堕ちていった。

◆天翔る者達
「皆さん、お待たせしました。って、アレ?」
 丁度ファントムIIが堕ち黒煙を上げている真っ最中に要救護者を搬送し終えた真下が戻ってきた。
「お疲れ様。要救護者はどうだ?」
「命に別状はないようでした」
「よかったですの」
 剣一郎の問いに答えつつ、真下は必死に状況を把握する。手伝う事はもう余り無いようだ。
「回収作業終了」
 イーグルを回収しに行っていたBEATRICEと毅も戻ってくる。
「お疲れ様なの」
 ファリスは、二機に吊るされた状態のイーグルの残骸に少し目をやりつつ空を見上げる。
「それじゃ、帰還じゃの」
「そうですね、フヒヒ」
 美具とヤフーリヴァは少し笑いながら、空を翔る。
「いつか‥‥またね‥‥」
「あ‥‥待って下さい」
 ソーニャは黒煙のほうを少し覗く空を舞い、置いてかれまいとその後を毅と BEATRICEが駈ける。
「帰るですの」
「あぁ、帰るとするか」
 ファリスと剣一郎も飛翔する。
「待って下さい〜」
 真下は慌てて皆を追い空の蒼を望んだ。

  〜Fin〜