タイトル:煙に巻かれてマスター:石倉蛇

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/06/09 23:10

●オープニング本文


 最近は特に禁煙場所が多くなってきて喫煙者にとっては吸いにくい環境になってきましたね。
 そんな煙を食べる地球環境よさそうな?キメラが出没しているようです。

「今日の調査もつかれたな」
 ブラットはフーッとタバコの煙を吐き出しながら言った。
 ここは喫煙室であり、タバコ仲間のジンと吸うために来たのだ。
「だねぇ。この仕事の後の一服のために僕はがんばってるようなもんだよ」
 ジンもフーッと煙を吐き出して言った。
「そういえば知ってるか? 最近こういった煙を食べるキメラが出てるらしいぜ?」
「ほー。それは環境に良さそうなキメラも出たもんだねぇ」
「いやいや、それが周りにいる人間まで食べてしまうらしいぞ」
「それは何とも怖いことだねぇ」
「だからとっとと吸って中に戻ろうぜ」
「僕はもう一本吸ってから行くよ」
「そうか。早めにな!」
 そう言うとブラットはその場から離れ、建物の中に戻って行った。
 だが、ジンが戻ってくるのが遅いのでブラットは様子を見に行くために喫煙場所に戻って来ると。
「な、なんだよこいつら!?」
 そこには飛び跳ねて煙を食べているイキモノがいた。そして側には衣服だけになってしまったジンが‥‥。
 そのイキモノは煙を食べ終わると明後日の方向へと走り去って行った。
「くっ‥‥ジン‥‥」
 ブラットは立ち上がると、衣服を持ってUPC本部へと向かった。


 ULTの募集モニタに新しい任務が掲示されている。
「最近頻繁に煙を食べるキメラに人間が襲われているようです。
 至急誘き出して退治してください。
 キメラのわかっている部分は下記です。
 煙を食べる習性があり、煙に群がるようです。
 大きさは猿くらいです。
 数は2匹だと思われますが、分らないので注意してください。
 また、酸を放出してくるので気をつけてください。
 よろしくお願いします」

●参加者一覧

石動 小夜子(ga0121
20歳・♀・PN
弓亜・美月(ga0471
20歳・♀・FT
ロジー・ビィ(ga1031
24歳・♀・AA
新条 拓那(ga1294
27歳・♂・PN
ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416
20歳・♂・FT
木場・純平(ga3277
36歳・♂・PN
デル・サル・ロウ(ga7097
26歳・♂・SN
アズメリア・カンス(ga8233
24歳・♀・AA

●リプレイ本文

●材料の調達
 キメラの出現地点からほどよい近さの空き地に各々が準備した物を持って集合した。
「ここに焚き火や罠をはればいい感じですね」
「だね。でも障害物とかが少ないかな?」
「ないわけでもないですし、大丈夫なのでは?」
「ですな」
 ここで石動 小夜子(ga0121)は新条 拓那(ga1294)のことで気になることがあった。
(「そういえば今まで気にしていませんでしたが‥‥新条さんは煙草などを吸うのでしょうか?」)
 長い付き合いであるが故、今更尋ねるのは気が引けるのである。
「まずは焚き火の準備にかかりましょう!」
 弓亜・美月(ga0471)が言ったのを聞き新条が持ってきた物を振りながら言う。
「あ! 俺少し大きめの空き缶を持ってきたよ!」
「でも、それだと少し小さくないか?」
「後片付けのことも考えるとそういった物に入れといた方がいいですね」
 こうして空き缶に各々が持ち寄った燃える物を入れていく。
「ようやく高級煙草の使い道が出来たな‥‥」
「うん。やっと有効に使えるよ。タバコは吸わないし、戸棚で眠ってるだけだったからなぁ」
 デル・サル・ロウ(ga7097)と新条が話しているのを石動は聞いていた。
(「えっと‥‥タバコは持って来てはいるけど、吸わないのですね」)
 作業しながらロジー・ビィ(ga1031)とホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416)は溜息をついて言った。
「これがキャンプファイヤー辺りでしたら楽しいのですけれど‥‥ね」
「だな。俺も戦闘前に一服と思ったが先にキメラが現れても困るからお預けだ‥‥食われてたまるか」
 そして焚き火の準備が終わり、次に罠を作る作業となった。
 いろいろな意見が出たが、結局手っ取り早く作れて一番効果がありそうな落とし穴を2つ作ることとなった。
「しっかりと誘き出されて上手く嵌ってくれると良いんだけどね」
 作業が終わりアズメリア・カンス(ga8233)言った。
「これで後は煙を出して隠れれば、だな」
「だね」
「よし、点火!」
 木場・純平(ga3277)の合図と共に新条が空き缶に火を入れる。
 急いで皆、あらかじめ決めておいた場所へと身を隠す。風上に全員集めたいところであったがキメラを追い詰めて逃がさないようにすることの方が大事であったので、結局は四方を固める形となった。
 煙がもくもくと音出ているかのように空へと登っていく。
「うん、良い煙が立ってるね。これならすぐに引っかかりそうだ‥‥」

●現れた敵
 隊員達は覚醒して茂みやら、土管の裏やらに身を隠していた。
 そして間もなく、キキッーという鳴き声と共にキメラが姿を現した。
 数は二匹だ。
 隊員達は七人。この場にはホアキンの姿が見あたらなかった。
「ん、来た。そんなに煙が好きなら、燻製にでもなっちゃいなさいっての!」
 新条はそう言って石動と共に瞬天速で間合いを詰めて攻撃を仕掛ける。
 今回のキメラは素早い。だが不意打ちであったので、二人の攻撃はキメラに直撃した。
 それにロジーと木場が続く。
「やれやれ。こういう小賢しい相手は苦手なのだが、やるしかないか」
 だが二人の攻撃は空を切り、キメラが反撃に出る。
 ロジーと木場の脳裏に酸という言葉が浮かび上がった。
(「ふふっ‥‥酸ね」)
(「酸か」)
 しかし、キメラの攻撃手段は違った。牙を口からむき出しにして飛びかかってきたのである。
 二人は予想外の攻撃に受けを取らざるを得なかった。そしてこのまま至近距離にいれば酸の餌食になる。
 二人が一足飛びに後方に移動しようとしたときに、逆にキメラが後方にはじけ飛んだ。
「油断は禁物ですよ」
 デルが鋭覚狙撃によって銃でキメラを打ち抜いたのである。
「ありがと」
「おお、すまない」
 その倒れているキメラにアズメリアと弓亜が追い打ちをかける。
「うーん、なんだか煙とか酸とかの臭いが付いちゃいそう‥‥」
 弓亜は攻撃しながらそんな事をぼやいていた。
「まあ、洗ってもそんな簡単に臭い落ちなさそうだもんな」
 そう言い返したのはホアキンである。戻ってきたのだ。
 別段さぼっていたのではない。
 事前の打ち合わせで誘引の役割だったのである。はじめに来た二匹は隊員達にとっては少し予想外だったのだ。
「また二匹来る。早めに倒してしまおうぜ!」
 計四匹で総攻撃されれば隊員達もひとたまりもない。
 先に倒して、後の二匹を迎え入れるのが得策だと言わんばかりに隊員達は猛攻撃をかける。
 もうこの二匹はほぼ瀕死であるが、先に動いたのはキメラだった。
 キメラの攻撃! かと思いきや、キメラは隊員達から少し場所を取り逃げる態勢に入った。
「戦いを楽しんではいても‥‥俺は敵を逃がしはしない!」
 ホアキンは先手必勝を使いキメラに一気に近づき、一匹にトドメを指した。
 もう一匹の方は石動が瞬天速で追い詰めていた。
「さよなら」
 その言葉同時に、キメラに刃が突き立ち絶命した。
 隊員達の気が少しばかりだが抜ける。
「気をつけてください! 来ます!」
 銃を持ち、後ろで控えていた弓亜が叫ぶ。
 先ほど攻撃を仕掛けたホアキンと石動に向かって、キメラが飛びかかってきた。
 今度は牙で攻撃してきた後に、酸をまき散らしてきた。
 だが、事前情報があるのでなんなく酸攻撃を躱す二人。
 そしてその酸が先ほど倒したキメラにかかり、何とも嫌な臭いが辺りを包む。
 その中でまずはじめに動いたのは木場だった。
「このウェート差だ。数が多いからと言って、勝てると思うなよ」
 キメラを捕まえ地面に叩きつけてから、爪の攻撃を加えた。
 そこにロジーと新条の連携が炸裂する。
「拓那、行きますわよ‥‥っ!」
 まずロジーがソニックブームを放ち、新条が瞬天速で接近。ソニックビームのインパクトと同時に攻撃を加える。
 そこには木場の攻撃したキメラとは別のキメラが我関せずといった様子で煙を食べていたのだ。
 案の定、煙を食べていたキメラはその攻撃をモロに喰らって悶絶する。
「でぇいやぁっ! 見たか! 連携ワザ、クロスアター‥‥っげほごほっ! モロに煙吸った‥‥ごほっ」
 かっこつけようとすると失敗するのはよくあること。いつの世もそれは常である。
 そんな新条に先ほどまで悶絶していたキメラが攻撃を繰り出してきた。
 しかし、その攻撃は一発の銃弾によって阻まれる。デルの後方からの援護だ。
 その攻撃に連なって、アズメリアが渾身の一撃をキメラにお見舞いする。
 この時、木場に攻撃されたキメラがこちら側に接近していた。そして死角から新条に向かって酸を放出した。
「あぶないっ!」
 弓亜が盾を構えその間に割ってはいる。
 盾に酸がかかるがそこまで強い酸ではなかったようだ。
 そして近くにいたアズメリアがキメラに向かって攻撃を繰り出す。続いてホアキンが銃とソードによって多大なダメージをキメラに与えた。
 キメラは最後の力を振り絞って、近くにいた木場へと攻撃に出る。
「今度生まれ変わってくる時は、もうちょっとマシな物を食べる生き物に生まれてくるんだな」
 だがその言葉と共にキメラの頭上に爪が振り下ろされた。
「ふー、終わったかな?」
「一度辺りを捜索してみよう」
 空き地の近辺を探してみたがもう煙を食べるキメラはいないようだ。
 今回の任務は遂行されたのだ。

●そういえば‥‥
 後片付けをしながら皆で他愛ない話をしていた。
「落とし穴、意外と機能しなかったな」
「実際にははじめにいきなり二匹現れたのは不測の事態だったでしょう? あれで忘れていましたわ」
「ですね。結局皆も必死でどこかの誰かさんと一緒で忘れていたんですね」
「うまいこと任務は成功したし、いいじゃないですか」
「この埋める作業が面倒だがな」
 皆で黙々と掘った穴を埋める作業に没頭した。

「新条さん、お怪我はありませんか?」
「うん、それほど大した傷は負ってないよ」
「それよりも、あーあ、綺麗な顔が真っ黒になっちゃったね」
 苦笑いしながら新条が石動の顔を拭う。
「くすぐったいです」
 石動が恥ずかしげにうつむいた。
「小夜子、希望は下には転がってないよ。上を上を向かないと!」
「落ち込んで下を向いたんじゃありません!」
 新条はあれ、と思いながらも石動をなだめる作業をした。

「やっと終わったんだな‥‥」
 ホアキンは微笑しながらタバコを一本咥え火をつける。
「思いっきり吸ってやる‥‥とは言えないご時世かね」
 そんなこんなで環境問題や人体への影響のことを思いめぐらせながらとは言いませんが、周りのことも考えて吸いたいモノですね。