●リプレイ本文
●暗い夜道
昼間はキメラが出ないこともあり、日が沈んでから隊員達は集合した。
事前に申請していたペンライトをエリアノーラ・カーゾン(
ga9802)が皆に一つずつ配っていく。
「私はエリアノーラ、長いしネルでいいからね」
そして周りをざっと見渡して、
「B班は誰に地図を渡しておけばいいかしら?」
地図を持っている右手を挙げてヒラヒラとさせている。
「私がもらっておいていいでしょうかっ?」
夕風悠(
ga3948)が誰かに意図して質問するわけではなく、ただ尋ねるようにして声を発した。
「いいと‥‥思うよ」
「うんうん」
「それじゃあ、夕風に渡しておくわね」
ネルの手から夕風に地図が渡される。
今回隊員達はA班、B班と別れてキメラ退治に行く予定であり、その分け方はA班はドクター・ウェスト(
ga0241)、ネル、群咲(
ga9968)、都倉サナ(
gb0786)で、B班は幡多野 克(
ga0444)、夕風、梶原 悠(
gb0958)となっている。
「夜にしかでなくて、傘の形をしたキメラなんて、なんか変ですよね〜」
「傘おばけ‥‥か。本来は‥‥悪いことをしない妖怪のはずなのに‥‥。キメラは‥‥全てを歪ませてしまう‥‥」
「やはりキメラ、そしてソレを作り出すバグアを殲滅しなければ〜‥‥」
「そうですね‥‥。妖怪退治‥‥喜んで引き受けますよ‥‥。もう犠牲者は出したくないから‥‥」
準備をしている最中、傘の形をしているキメラについて話されていき、今回は犠牲者が出ているといったことに派生していった。
「被害も出ていることですし、早々に撃破してしまいたい所ですね」
「そうです! 犠牲者が出ているのは放っとけないです、早急に退治してしまいましょう!」
各々の最後の準備も終わり、夜道に繰り出す準備はできた。
夜中にしか徘徊しないキメラ
いつ出てくるかも分らない不安感。
視界が悪く閉鎖されたように感じてしまう孤独感。
もしかすると恐怖は後ろから近づいてきているのかもしれない、今回のキメラと同じように‥‥。
隊員達は2手に別れて、捜索を開始していた。
A班ではドクターが前に立ち、ネル、都倉、群咲と間隔を開けて三角形のような形を取り道を進んで探索していく。
一人一人の間隔が百メートルくらいと少し間を開けながら周りを探索していく。
「こう暗いとこの短い間隔でも一人でいる気分になってしまうね」
「そうね。無線があるから声は届くけど暗闇と会話しているみたい」
4人以外人の気配はなく、ネルの探査の眼を持ってしても未だに何かを見つけることはできていなかった。
「ドクターさーん、そちらは以上ありませんかー?」
群咲が前を歩いているドクターに呼びかける。
「んー、特に今のところは何もないね〜」
「ネルさんや都倉さんのほうはどうですかー?」
少し心細かったこともあり、皆に声をかける。
「こっちの特にないわ」
「こちらもですね」
「そっちはどう?」
「これといって‥‥」
突如として群咲の耳にカランッコロンッと下駄の足音が聞こえた。
(「あれ?」)
そう思ったときには時すでに遅し、石が群咲に向かって投げ放たれていた。
「きゃーーーー!!!」
一方B班では、三人なのでA班での都倉の位置を省き、三角形を作って行動していた。
「いない‥‥ね」
ポツリと幡多野が言った。
周辺を探してみたところ手がかりも何も見つからないことから一度三人集まっていたのだ。
「ほんと見つかりませんね〜」
「近くに仲間がいるって分っていても、一人になるのはやっぱ怖いわね」
「どう‥‥しようか」
「一度A班に連絡取ってみましょうか?」
カランッコロンッ
無線機に手をかけたその時だった。
カランッコロンッ
どこからともなく下駄の足音が聞こえてくる。
「どこ‥‥だ!?」
三人ともキョロキョロと辺りを見回す。
「該当キメラニ体、確認しましたっ。あちらですっ!」
そう言って夕風が指した方向にキメラが二体いた。
「遠距離攻撃開始します!」
●正体が分ってれば怖くない!
「きゃーーーー!!!」
A班では、群咲の叫び声が響き渡り、石が投擲されていた。
そこに異変に気づき、いち早く駆けつけていたネルが間に入って盾となる。
ガキンッ
ライトシールドで石を防いだところで、ドクターと都倉が駆けつける。
「大丈夫か!?」
「大丈夫ですか!」
そこには二匹の傘の姿をしたキメラがいた。
相手が普通でないことを感じ取ってか、本能か、今回は品定めするようなことはなくいの一番に投擲してきた。
隊員達は真ん中に固まるようにして陣取り、キメラ二匹がその前後で様子をうかがっている。
一定の距離からは決して近づいてこようとはしない。
まずはじめに動いたのは、都倉であった。
鋭覚狙撃を使用しキメラの脚部にねらいを定める。
「てぃやっ!」
前後に1発ずつ素早く放つ。
『ぴぎゃああああああああ』
脚部に当たったキメラは悲鳴を上げて、転倒した。
チャンスだとばかりにドクターと群咲が前方のキメラにトドメを刺しにかかる。
「けひゃひゃ、ついにこのスキルの威力を試すときだ〜、『スーパー能力者』〜!」
ドクターが群咲に練成超強化をかけ、群咲は流し斬り、両断剣を併用する。
「武器は手の延長‥‥理屈は同じ。八卦掌の極意は円の動きにあり」
起き上がり際のキメラに横一閃。
スパッという音と共に二つに切り離されるキメラ。そしてピクリとも動かなくなるのを見て、後方のキメラに狙いを変える。
「どうやら防御は傘同様、紙みたいね」
「一気に片をつけてしまいましょう!」
ネルがキメラとの間に立ち、ドクター、都倉、群咲と攻撃を仕掛けキメラは崩れ落ちた。
「意外とあっけなかったわね」
そしてB班では。
「遠距離攻撃開始します!」
「いく‥‥よ!」
先手必勝を使い、幡多野が誰よりも早く動く。
「手は‥‥ないのか‥‥」
そう言いながら二撃。そして最後に豪破斬撃を使い相手を吹き飛ばした。
もう一匹のキメラへ夕風が矢を放つ。
「うおりゃあ!」
カサッという音と共に紙の部分に突き刺さるが、特にダメージは負っていない様子だ。
そしてそのキメラは傘の部分を使い石を投擲してくる。
ガキンッ
すかさず防御態勢にはいった幡多野が夕風に向かう石を盾ではじく。
「これ以上好きにはさせないわ!」
石を投擲して油断しているところに、梶原が瞬天速を使い懐に入り攻撃を加える。
それに続いて幡多野が豪破斬撃を使いキメラは沈黙した。
「‥‥ふんっ」
先ほど幡多野に吹き飛ばされた方のキメラがようやく起き上がってきたところに夕風がトドメの一撃を放つ。
「人を殺めた罰‥‥滅びなさいっ! 強弾撃!!」
残りの一匹もこれで沈黙し、任務完了となった。
二組の班は、無線機で連絡を取り合い合流した。
●太陽と共に
「結局徹夜になってしまいましたね」
「退治にはあまり労力を使わなかったけど、探すのが大変だったからね〜‥‥」
「見つからない‥‥かと‥‥焦った‥‥」
「うーん‥‥こんな変なキメラばかりを作り出して、バグアは何がしたいんだろ‥‥」
「サンプル取ったが‥‥まさか二つで一つ、などということはないだろうね〜‥‥」
とあるところに向かいながら、たわいない会話が弾む。
そこで梶原が一歩前に出て、くるっと周り皆の方に向き直る。
「あっ、無事に帰れたのは皆のおかげ。皆、今日はありがとう」
少し照れて頬をかきながらはにかんで言った。
とあるところ‥‥、今回の犠牲者であるダイゴとチャッピーの死んだ場所である。
そこにはすでにいくつかの花が置いてあった。
皆もそれと同じように買ってきた花束を置き、線香をたてる。
「‥‥‥‥」
黙祷。辺りが静寂に包まれる。
「ちゃんと仇は討ったからっ」
こういったキメラの犠牲者。バグアの存在。
いつか訪れる平和な日を願って‥‥。