タイトル:【AR】グラビア大作戦マスター:岩魚彦

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/12/13 18:25

●オープニング本文


●迫る影
 アリゾナ州フェニックス――人類支配地域とバグア競合地域の境にあり、アメリカ西部戦線における重要な都市。

 荒野と砂漠の広がるその都市から遠く離れた小高い丘に、1人の女性の姿があった。
 金の長い髪に燃えるような赤い瞳。ボンテージの上になぜか白衣という、奇妙な出で立ち。
 このような所に一人でいるのは危険なのだが、彼女には関係のないことだ。
「さて、もうそろそろ私のキメラ達が暴れてくれると思うんだけどねぇ‥‥」
 彼女は少々変わり者で、自作のキメラを送り込んではその様子を眺めて楽んでいる。
 彼女の名前はリーゼンベルグ。ただの美しい女性に見えるが、れっきとしたバグアである。

●リーゼンベルグの思惑
 趣味で作ったキメラと他の軍勢を送り込んだのだが、その対応の速さが妙に気になる。フェニックスの様子を眺めていて、リーゼンベルグ――通称リーゼは眉を顰めた。
「おかしいわね。どうしてもう傭兵がいるのかしら?」
 確かにフェニックスは重要な都市である事は間違いないのだが、あまりにも対応が早すぎる。それに、都市内に送ったキメラからの映像が芳しくない。都市内に電波を阻害するものでもあるのかもしれない。
「ちょっと! 私の楽しみをどうしてくれるのかしら! これでは、キメラを送り込んだ意味がありませんわ!」
 映像を受信するコンパクトサイズの端末には何も映っていない。ただ、ノイズが入るだけであった。
 リーゼにとっては傭兵の動きよりもそっちの方が重要であった。彼女は戦争自体にあまり興味は無く、女性の体を調べる事に執心している。彼女にとってこの襲撃も、キメラを使った女性の調査に他ならない。
「んー、仕方ないわね‥‥昔作ったキメラを増援として送りましょ」
 リーゼは端末を操作して増援のキメラを呼び寄せる事にした。

●フェニックスの秘密作戦
 フェニックスにキメラが侵入したという情報を得た傭兵達は、現地へと訪れた。
 周囲は荒野と砂漠が多く、冬だというのにじっとりと汗が滲んでくる程暑い。
 フェニックスで与えられた任務は増援キメラを警戒し、発見次第殲滅するというものだった。とはいえ、見渡す限り土と砂だけの見晴らしのいい場所で立っているだけの簡単なお仕事である。
 だが、一本の通信がその任務を過酷なものへと変えた。
「増援キメラの姿を確認した。数は少ないがバラバラに都市を狙っている」
 現地の兵士と傭兵の数は決して多くなかった。広いフェニックスを守り切るのは、困難である事は想像に難くない。
「このままでは敵キメラの侵入を許しかねん。そこで我々にいい考えがある!」
 無線機から不吉な声が聞こえてきた。
 現地の兵士と作戦会議が開かれる。
「増援と確認されたのは、偵察型のキメラだ。直接戦ってもこちらが負ける可能性は低い。ただ、動きが機敏で都市への侵入を許しやすい‥‥」
 兵士の話を聞くだけでは、かなり困難な任務に聞こえた。
「だが、あのタイプはある特徴があってな、そこを突けばおびき寄せる事が出来るかもしれん」
 兵士の言葉に傭兵達は息をのむ。一体、どんな特徴があるというのだろう。
「あのキメラはな、人間の肌に反応するんだ!」
「それは一体、どういう特徴なのよ!」
 つい、依頼を受けてやってきたリズ・ミヤモト(gz0378)が突っ込んでしまった。他の傭兵達は呆れて声も出ないようだった。
「そこでだ。キメラをおびき寄せる為に、グラビア撮影を行おうと思う!」
 地元の兵士は拳を握りしめると、頭上に掲げた。すると、他の兵士達が歓声を上げる。なんだかもう、決定したような雰囲気が漂っていた。
「ちょっと待って! 武器が無いとキメラを退治できないわよ!」
「それについては問題ない! テーマは『美女と武器』という事で、武器を持った状態で撮影する!」
 再び、兵士達から歓声があがる。本当にキメラが人間の肌に引き寄せられるのか、眉唾ものだがここはその作戦に賭けてみるしかなかった。
「わ、分かったわ。ここはキメラ退治の為に協力してあげる‥‥」
 リズは顔を赤く染めながら兵士達の作戦を受諾する。他の傭兵も渋々ながら協力してくれた。
(「今年は着る機会が無かったフリルの水着‥‥こんな所で着れるなんて思わなかったなぁ」)
 こうして、前代未聞の作戦が開始されることとなった。

●参加者一覧

金城 エンタ(ga4154
14歳・♂・FC
勇姫 凛(ga5063
18歳・♂・BM
L3・ヴァサーゴ(ga7281
12歳・♀・FT
エレノア・ハーベスト(ga8856
19歳・♀・DF
大鳥居・麗華(gb0839
21歳・♀・BM
メシア・ローザリア(gb6467
20歳・♀・GD
姫川桜乃(gc1374
14歳・♀・DG
アンジェロ・アマーティ(gc4553
15歳・♂・SF

●リプレイ本文

●撮影準備
 傭兵達とUPCの兵士達は、早速グラビア撮影の準備へと移っていく。
「グラビアといったら私の出番ですわ♪」
 兵士の視線を集めるその胸を張って、大鳥居・麗華(gb0839)は「おーっほっほっほっ」と高笑いをする。その様子を、子供のような外見をした姫川桜乃(gc1374)が羨ましげな瞳でじっと見つめていた。
(「あの人、気になるわね‥‥私と同じ金髪だし!」)
「水着の用意なんてしてきてません!」
 キメラを退治するつもりで参加した金城 エンタ(ga4154)は、断固として参加を拒む。
「だから、僕、着ま‥‥」
 地元兵士達の潤んだ瞳や、すすり泣く声が、エンタへと向けられる。
「着ます、着れば良いのでしょう‥‥?」
 肩を落としたエンタは傍観していたアンジェロ・アマーティ(gc4553)へと歩み寄るとその手をガッチリと掴む。
「‥‥買いに、行かなきゃです」
「や、やですっ! なんで僕がっ?!」
 アンジェロの手を握ったままのエンタは、まるで亡霊のような顔で街へ向けて歩いていく。アンジェロは涙目のまま、引きずられて行った。
「うちはパスや。メイクや照明を担当させてもらいましょか」
 美しい白髪を靡かせて、エレノア・ハーベスト(ga8856)は宣言する。
(「添い遂げる男性以外に肌を晒すなと厳しく教え込まれたかやね、古い考えかもしれんけど頭にも身体にも染み込んでしもたからど無いもならへん」)
 複雑な表情のエレノアは、機材を運ぶ兵士の中に混ざっていった。
「あっ、リズも来てたんだ。この間のジョイランドではおつか‥‥」
 リズの姿を見つけた勇姫 凛(ga5063)は以前の依頼を思い出して、顔を真っ赤にして俯いてしまう。同様に顔を真っ赤にしたリズは気まずくなり、お互いに俯き合ってしまった。
「りっ、凛は男だっ‥‥仕事だから仕方なくなんだからなっ、凛、好きで着る訳じゃないんだぞっ!」
 凛は仕事に集中し、白いワンピース型の水着を目の前に、言い訳をしながら着替えへと向かう。
「さぁ、わたくし達も着替えへ参りましょう?」
 メシア・ローザリア(gb6467)は微笑みながら、女性陣を連れて着替えへ向かう。
「‥‥然れど‥何故、斯様な事を‥‥?」
 感情の起伏に乏しいL3・ヴァサーゴ(ga7281)は軽く首を傾げながら、皆の後を付いて行った。

 エンタはアンジェロを「水着選びで、意見が聞きたい」と口実をつけて、店へ連れてきた。
 その店の品揃えはアダルティなものが主流で、とても二人が着られそうなものは無い。
「あの‥‥もう少し落ち着いたものは?」
 店主が手渡したのは、二着の水着。エンタは試着後、自分の分を購入する。そして、こっそりとアンジェロの分も購入した。

「な、なななな!? なんですのこれは!?」
 更衣室から衣を裂くような、麗華の絶叫が響いた。友人の悲鳴にヴァサーゴが麗華を覗き込む。しかし、麗華は何かを隠すように、その視線を阻んだ。
「なななな、何でもありませんわ!」
 麗華は何かを持ち物に突っ込むと、顔を引きつらせて微笑む。

「隣で何があったのかな?」
 凛は着替えながら壁を見つめる。その後方では、エンタとアンジェロがじゃれ合っていた。
「僕は男なのにっ!」
「ここまで来て、『僕は着ない』なんて、友達甲斐の無い事、言いませんよね?」
 エンタはにっこりと優しい笑顔を浮かべる。ただし、瞳は虚ろで全く笑っていない。
「着たくないけど‥‥うぅ、友達、だけどぉ‥‥」
「ムダ毛処理とか、剃るところ無いです‥‥とても男性の肌とは思えません」
「肌とか、そんな‥‥き、気のせい、だよ?」
「うぁ、ウエスト細いです‥‥。ひょっとして‥‥60切ってません‥‥? 女性が知ったら嫉みますよ、これ‥‥」
 エンタはメジャー片手にそう褒め称える。アンジェロの男性としての自信が揺らぐ程、『女性的な部分』を褒めていった。

●グラビア撮影開始!
 撮影場所は見晴らしのいい小高い丘。機材は完璧に揃っており、後は主役が登場するのを待つだけであった。
「お待たせいたしましたわ!」
 非情に際どく、色々な意味でギリギリな葉っぱ水着の麗華は、顔を朱に染めながらも堂々とした佇まいであった。
「えいっ!」
 白い紐だけのようなブラジル水着を纏った桜乃は、素早く葉っぱの水着を捲る。体育座りの兵士達の前に、Tフロントがお披露目された。
「ちょ、見ないでくださいな!?」
 驚きの悲鳴を上げつつ、葉っぱを押さえ、桜乃を軽く叩く。
 大騒ぎの内に、撮影会が開始された。

 一番手はヴァサーゴと麗華の二人組であった。
 旧タイプのスクール水着を身に纏うヴァサーゴは、その幼い容姿と相まって非常に似合っていた。勿論、その胸の部分には「6−1 う゛ぁさーご」と書いたワッペンが付けられている。
 カメラマンは徐々に二人への要求がエスカレートしていき、抱き合う形や、押し倒したような恰好等、際どいポーズが目白押しであった。
「く、恥ずかしいですが私もプロですわ! どんな格好でもしてあげますわ!」
「‥‥麗華の身体‥やはり‥柔らかくて‥良い匂い‥‥」
 麗華の体と触れ合ううちに、ヴァサーゴは気分が出てきてしまう。指示にない絡みを大胆にするようになっていった。
「我‥何か‥妙な、気分‥‥」
「ヴァサーゴ何を!? く、まあしょうがありませんわね」
 無表情なヴァサーゴだったが、上気しその瞳は蕩けているように見えた。麗華の上に覆いかぶさり、全身をすり合せる。少々驚く麗華であったが、その行為を受け入れていった。
 巨と貧の共演は、見る者の視線を釘付けにし、静寂を生み出す。ゴクリと生唾を飲む音すら聞こえる程だ。

 二番手として、舞台に上がろうとするリズに凛が声をかける。
「リズ、その”水着”可愛いね‥‥」
 リズが纏っているのは、フリルが沢山ついた可愛らしいビキニの水着であった。
「本当? ありがと!」
 凛はあくまで水着の事を言っているのだが、舞い上がっているリズは自分が褒められたと勘違いして顔を赤く染める。
 特に盛り上がる事もなく撮影は終了。
 カメラから退いたリズは、レフ板を渡され呆然とした。

「貧弱な網膜に焼きつけなさい。磨き続けたこの身体、一点の隙も無いわ」
 三番手のメシアは今まで羽織っていたコートを、一気に脱ぎ払った。その瞬間、大きな歓声が上がる。
 胸下から、ヘソまで開いた革の水着は、際どいハイレグカットとなっている。腰回りから、足首までに渡る赤色のパレオには、白薔薇の刺繍が施されていた。イキシアを取り付けたハイヒールに、腰には革のホルスターを身に着けた姿は凛々しく、見る者の心を奪う。
 一部の兵士はスタンディングオベーションで、熱狂的にメシアへ歓声を送る。異様な熱気を帯びたまま、撮影が終了した。
「あなた、丁度宜しいわ。足を揉んで」
 パラソルの下に用意された椅子に腰かけながら、先程の撮影から後をついてくる兵士へ命令する。二つ返事で跪く兵士達はその白い足を入念に揉んでいった。

 四番手はその未成熟なボディが魅力的な桜乃であった。
「みんな! 今日はよろしくにゃ〜」
 ほぼ、意味を成さないブラジル水着は、申し訳ない程度にデンジャーゾーンを覆う程度であった。
 桜乃がポーズを取る度に兵士達は首を傾げて、自分にとってのベストショットを狙う。
「私の着てる水着って殆ど裸と一緒よね」
 そう言うと、桜乃はおもむろに水着を脱ぎ始めた。すると、光の速度で麗華が取り押さえる。
「ちょっと! 何してますの?」
「えー、別に変らないでしょ?」
 麗華はこれ以上の露出は危険だと判断して、場外へと引きずっていく。退場した桜乃に、惜しみない拍手が送られた。

 トリを務めるのは、男の娘三人組である。
「プロとしては、手を抜けないだけなんだからなっ!」
 そう言いながら、凛は白スク水の上にセーラ服風パーカーを軽く羽織り、腰回りもパレオ風のものを巻いていく。その手つきは妙に慣れていた。
「は、恥ずかしいよぉ‥‥僕、男なのに‥‥」
 アンジェロは白く華奢な手足に、白と黒のツートンカラーをした小さ目の競泳水着、そして、赤く染まった顔は女性にしか見えない。水着がきついのか、お尻の部分や、胸元を引っ張ったりする姿は、男性を誘っているようにしか見えなかった。
「こ、これでいいのでしょう?」
 エンタは超が付くほどのローレグビキニを身に着けている。そんなモノを穿いたら危険なのではないかと、周囲の視線を集めるがきちんと仕舞われていた。
 想像を超える三人の男の娘っぷりに、大歓声が巻き起こる。
 その反応にアンジェロは怯えて、必死に裾をひっぱったり、手で隠したりした。だが、逆にそれが扇情的であり、兵士達の歓声は大きくなる一方である。男性でも女性に見えればいいのか、それとも男性だからいいのか、兵士達は異常な盛り上がりを見せる。

 その様子を見て、照明係をしていたエレノアは呆れてポツリと呟いた。
「仕事とはいえそこまでやるとは‥‥」
(「大和男児は潰えてしもたんやねぇ‥‥」)
 内心そう思っていた。

 現場が盛り上がる中、メシアは椅子から立ち上がり、メシアの親衛隊となった兵士達へと声をかけた。
「気分転換よ、付きあいなさい」
 親衛隊の一人に日傘を持たせて、メシアは先頭を歩いていく。探査の眼を発動させて周囲を警戒すると、体を低くして姿を隠すスパイコヨーテがそこらに見えた。
(「そろそろかしらね‥‥」)
 メシアは踵を返すと無線機に向かって口を開いた。

●スパイを撃て!
 男の娘の撮影が一段落ついた頃、エレノアが大声で叫ぶ。
「伏せや!」
 すぐに閃光手榴弾をメシアの連絡があった方へと投げ込む。そして、ほぼ同時にラックから二本の武器を取り出し、キメラへと距離を詰めた。
「遠当て、行きませい!」
 ソニックブームとスマッシュを組み合わせた一撃をキメラへと叩き込む。そして、すぐさまそのキメラの隣へ移動すると、クロムブレイドを振りかざした。
「須らく挽肉」
 流し斬りとスマッシュの同時仕様で、先ず一体をミンチにする。
「あったれ〜」
 桜乃は閃光弾で混乱しているキメラへと、矢を射って一本が命中。だが、水着がずれて二つの果実が完全に露出する。
「出ましたわね! 飛んで火にいるなんとやら‥‥ここで殲滅して差し上げますわ!」
 瞬速縮地で急接近した麗華は、ラブルパイルをキメラの急所へと押し当てる。そして、引き金を引くと、勢いよく鉄杭が打ち出された。その度に葉っぱに覆われたメロンちゃんが、上下に揺さぶられる。全弾撃ち尽くすと、キメラは泡を吹いて動かなくなった。
 炎斧「インフェルノ」を横に構えて、エンタはキメラを切り裂いていく。
「お前達のせいでっ!」
 怒りのつまった攻撃は、たったの二振りでキメラを解体してしまう。
「いやらしい目で、見るなーっ!」
 凛が放った怒涛のランス「エクスプロード」は、キメラを貫き絶命させた。
 メシアの親衛隊として傍を離れなかった兵士へ、スパイコヨーテはその鋭い牙で攻撃を仕掛けてくる。
「気を付けなさい。わたくしの傍にいたいのならね?」
 メシアはボディーガードで身代わりとなった。偵察キメラといえキメラの端くれ、噛まれた部位から血が流れ出す。だが、その傷口はスキルによって、すぐに再生していった。
 次にコヨーテはその口から大量の水を放出する。広範囲にまき散らされた水は、傭兵達へと襲い掛かった。
「はわっ!?」
 エンタは放水の直撃を受けて、胸に着けていた帯が肌蹴てしまう。手ブラをしつつ、なんとか隠しつつ状態を整えた。
「ああん! こ、こんなに濡れたら‥‥白い水着が透けちゃうぅ!」
 麗華はびしょ濡れの桜乃を押さえつけると、そのまま戦場から離脱した。
「潰す」
 水に濡れた髪を掻き揚げたエレノアは、氷の微笑を浮かべた。
 ベタベタに濡れたメシアは、おもむろにパレオを解く。パシャという水音と共に、ハイレグが露出した。
「此れ以上を、見たくはないのかしら?」
 先程水を吐いたキメラはニンマリと笑いながら、猛スピードで接近してくる。その顎をカウンター気味に蹴り上げた。そして、手に持っていた拳銃「ライスナー」を、仰向けになったキメラのお腹へ銃口を突きつけ、引き金を引く。
 すぐさまヴァサーゴが駆け寄り、大鎌「プルート」を一閃し、キメラを両断。次の獲物を目掛けて駆け出し、最後に残ったキメラを引き裂いた。
 だがその傷は浅く、止めには至らない。反撃とばかりにキメラは水を吐きだす。
「そんな水くらい‥‥」
 ヴァサーゴとキメラの間に割り込み、盾になる凛であったが、それだけでは全ての水を防ぐことは出来ない。そして、自分の着ていた白スク水が透けている事にようやく気付く。
「わぁ、見ちゃ駄目なんだぞっ‥‥それに、凛も何も見てない、見てないんだからなっ」
 顔を真っ赤にして顔を背ける凛に、ヴァサーゴは首を傾げる。自分がどのような状態になっているのか、気付いていない。
 髪と同じ色となったアンジェロはずぶ濡れになっており、潤んだ瞳で睨む姿は妙に艶っぽかった。
「ええーい!」
 アンジェロは超機械を起動させて、最後のコヨーテへ止めを刺す。

●お開き
 キメラの放水によって機材が台無しになり、撮影は中止された。
 エレノアは濡れてしまった服の裾を絞って、少しでも乾かそうとする。
「ヴァサーゴ‥‥その格好、どうしましたの?」
 ヴァサーゴはどうして、麗華がニヤニヤしているか理解できず、自分の姿を確認する。何と紺色のスク水が水に濡れ、胸周りや下腹部が透けていた。ゼッケンと下の部分は透けずに、大事な部分だけはかろうじて隠れていた。
(「‥‥!? こ、これ‥一体‥!? や、み、見ないで‥‥!?」)
 予想外の事に口をパクパクとさせて、大鎌を抱きかかえるようにして体を覆った。麗華はヴァサーゴの態度にご満悦である。
 メシアはパラソルの下で、横たわり親衛隊からのマッサージを受けていた。
「隠している美しさ。片鱗を見せれば更に、惹きつけられる事でしょう」
 親衛隊は同意するように、何度も頷いている。メシアはこの後、肌のケアに関して考えていた。
 エンタとアンジェロはお互いの姿を見合って、深くため息を吐いた。
「僕はもう‥‥男性として、かなりダメかも‥‥」
「違う‥‥僕がなりたかった自分と違う‥‥」
 そして、二人は同時に肩を落とす。
 先ほど、麗華に縛られた桜乃はその二人をじっと凝視する。どうやってアレを収めてるのか、興味深々であった。だが、何度見ても女の子だとしか思えない。
「凛は次の仕事があるから! お疲れ様っ!」
 凛は手を振りながら、次の現場へと向かって行く。アイドル傭兵は多忙を極めているようだ。そんな凛に対してリズは手を振り見送る。

 撮影現場から遥かに離れた場所で、コンパクト型の端末を畳むリーゼの姿があった。
「男の娘も‥‥アリね」
 何故かご満悦で微笑んでいた。