●リプレイ本文
●過去の豪邸
太陽がまだ昇りきっていない時間帯、傭兵達は件の廃墟へとやってきた。
傭兵達の前にそびえ立つのは、鉄製の巨大な門。だが、その門は破壊されており、その役目を全く果たしていない。
門の外からでも分かる巨大な豪邸。その豪邸も門と同様かなり荒廃しているが、ここら一体で最もその外装を保っていた。
「昔は、豪華絢爛な館だったのでしょうね‥今の住人を許すことは出来ません」
相賀琥珀(
gc3214)はそう言いながら、豪邸を見上げる。
閉じなくなった鉄の門を潜って庭へと赴いた。石のタイルが敷き詰められていたであろう道が、豪邸の扉へと延びている。今は所々タイルが欠け、雑草が生え茂っていた。
その道には大量の骨が転がっていた。人間のような大きさの骨から、小動物の骨まで様々な骨がある。
「予想以上に荒れてるな」
宵藍(
gb4961)は辺りを見回しながら、つぶやく。遠くにはプールだったものもあり、相当豪華な屋敷であったことが容易に想像できた。
「あらあら、お屋敷のお掃除ですわね?」
ロジー・ビィ(
ga1031)はこの状況に薄く微笑んでいるように見えた。
「キメラの巣に入っていくって考えると‥‥あんまりいい気分じゃないなぁ。まぁ、迷惑な住民には退去してもらいましょうか」
旭(
ga6764)はそう言いながらも、やる気十分な姿勢を見せる。
「それでも、少しワクワクしてるし」
寺崎 真幸(
gc4207)はくすくすと笑っていた。
「駆除か‥‥いや、この状況は攻城戦とでも考えたほうが良いのか‥?」
盾を担ぎながら、赤木・総一郎(
gc0803)は廃墟の無駄に大きな扉を見据えた。
傭兵達はその扉に手をかける。ギィィィという、蝶番が擦れる音と共に扉が開いていった。
●廃墟のお掃除
薄暗い室内に光が広がっていく。すると、やけに広いロビーでうつ伏せに寝ている獣が、三匹いる事を確認できた。
ツァッ!
侵入者に気付いたのか、うつ伏せだった獣が体を起こす。その姿は報告にあったハイエナと同一であった。
「行こう。さっさと片を付けるぞ」
イアリスを構えた番 朝(
ga7743)が覚醒し、無言で獣へと突進していく。
「群れで動くキメラ‥‥か。また面倒な」
龍鱗(
gb5585)はそうぼやきながらも、キメラへと向かって駆け出した。それとほぼ同時に他の傭兵達も獣に向かって行く。
多勢という事もあり、三匹のハイエナ型キメラを瞬殺した。素早さと攻撃力はそれなりだが、それ以外はまるで大したことが無い。ロジーに至っては一撃で斬り伏せたくらいだ。
「廃墟の見取り図が無いか確認しましたが、個人所有の古い住宅なので無いそうです」
琥珀は少し残念そうに見取り図が入手できなかった事を告げる。
傭兵は予定通り、4つの班に分けそれぞれ別ルートで探索する事を決める。
●A班 二階担当
ロジー・ビィ
寺崎 真幸
「ロジーさんと組んで回るね。よろしくお願いします」
「ええ、よろしくお願いいたしますわ」
ロジーと真幸は軽く挨拶を交わすと、玄関の正面にある階段を上って二階へと赴く。階段を上りきったすぐの場所でキメラと交戦したが瞬殺した。
A班は客間らしき個室を探索するが、キメラの姿は見当たらない。
次は向かいにある広間へと探索の手を広げる。
ロジーはシグナルミラーで広間の中にいるキメラを確認する。三体のキメラはこちらに気付いていないようで、ロジーは囮の役をこなす為、部屋の中に入っていった。
キメラの奇襲を難なく攻撃を回避すると、すぐさま小太刀を振るった。小太刀の煌めきが、襲い掛かってきたキメラと近くにいたキメラを斬り刻む。
「後、一体ですわね」
ロジーを狙ったキメラの攻撃も問題なく回避する。その隙にキメラの側面に回っていた真幸は、キメラに向けて小太刀を振り下ろした。
攻撃を受けたキメラは反撃に鋭い牙で真幸を噛み付く。キメラは執拗にロジーを狙うが、その動きは完全に見切られていた。
隙を見つけた真幸はとっさに小太刀を振るう。一撃目は躱されたが、返しの刃できっちりとダメージを与えた。真幸は素早くキメラの側面へと回ると、渾身の流し斬り一撃をキメラに叩き込む。キメラはその後、動かなくなった。
二人は階段の向かいにあった扉を少し開けて、中を確認する。だが、その中は薄暗くハッキリと確認できない。ロジーは暗視スコープとシグナルミラーを使って部屋の中を確認する。家具や掃除道具で部屋は埋め尽くされていた。
その家具の上で横になっているキメラを発見する。
「これは掃除のし甲斐がありそうですわね‥‥」
ロジーは慎重に倉庫内に入ると、確認できなかったキメラが別の角度から襲い掛かってきた。物に邪魔されて上手く身動きが取れない為、噛み付かれるがそのダメージは殆ど無い。
「これで‥‥終わりですわ‥‥」
その視界の隅で崩れた壁からキメラが、倉庫に入ってくるのが見えた。確実に一撃で仕留める為、ロジーは強刃を使用した一撃を叩き込む。そして、別のキメラへと飛びかかり、小太刀の一撃で止めを刺す。
家具の隙間からキメラがロジー目がけて襲い掛かって来た。同時に壊れた壁からもう一匹のキメラが現れた事も見逃さない。
ロジーが攻撃を受けている間に、真幸が小太刀の一撃を加える。怯んだキメラの首をロジーが刎ねた。そして、現れたばかりのキメラに襲い掛かかる。
「次から次へと、面倒な相手ですわね!」
キメラを細切れにすると、小太刀を振るって血のりを払う。
「さてこれであらかた完了、かな? 結構いたね」
一通り探索を終えて、キメラを殲滅し終えた事を無線で知らせる。そして、仲間と合流する為階段を下りていった。
●B班 三階担当
番 朝
相賀琥珀
「朝さん、よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしく」
朝と琥珀は簡単な挨拶してから、担当の三階へとやって来た。すぐにキメラが鋭い牙をむき出しに噛み付いてくる。朝は無言のまま、イアリスでキメラの牙を完全に受け止めながら覚醒すると、そのままイアリスを振るいキメラを切り裂いた。そして、別の獲物目がけて飛び出していった。
階段を上りきった先には、二匹のキメラが待ち構えていた。距離の近い相手に襲いかかると、イアリスで一閃する。止めには少し浅かったので、もう一撃加えて完全に息の根を止めた。
「速さなら負けませんよ‥‥!」
瀕死ながら、襲い掛かってくるキメラに対し、琥珀は刹那で対応して止めを刺した。
階段を上りきると、琥珀は残りのキメラに接近する。だが、相手の動きが早く噛み付きによって傷を負った。
その間に接近してきた朝が、キメラを一撃で斬り伏せる。二人は周囲を見渡し、キメラがいない事を確認した。
三階は損壊が酷く東西に伸びる廊下の先は、崩れて無くなっていた。二人は東の部屋から探索する。
東側は損壊が激しく、殆ど部屋として機能していないものばかりだった。
無言で先に行く事を告げ、朝が扉から崩れた部屋に入るとすぐ近くのキメラの足を狙う。身動きを取れなくして止めを刺した。
「後ろはお任せを」
琥珀も部屋に入ると、もう一匹のキメラに向かって夜刀神を振るった。だが、キメラの素早い動きによって避けられてしまう。避けたキメラに追い打ちをかけるように、円閃を使用した強烈な一撃を加えた。
キメラは吹き飛び壁に叩きつけられ、脆くなっていた壁に大きな穴を開けて部屋から飛び出す。
「あぁ‥‥見た目より脆かったですね」
琥珀は苦笑いしながら、壁の穴を眺めていた。だが、その穴から飛び出したキメラに噛み付かれてしまう。
朝はとっさに懐から苦無を取り出し、そのキメラに投げ付ける。手を離れた苦無はFFに弾かれるが、その隙に琥珀が斬り伏せた。
二人は順に客室を探索して西側の廊下へとやってきた。それまで発見できなかったキメラが二匹、その姿を見せる。
朝は覚醒すると、剣を振り回すのも困難な細い廊下をキメラ目がけて一直線に走っていく。砂錐の爪を付けた靴でキメラを蹴り上げ、更に追い打ちを決めて止めを刺した。
次の獲物との距離を詰めると、すぐさま蹴りによる攻撃を加えた。
「ここなら、銃を使った方がいいですね」
琥珀はライスナーへ装備を変更すると、キメラの心臓を狙い撃つ。二発ほど命中させると、キメラはピクリとも動かなくなった。
その後、客室を調べて回ったがキメラは発見できない。殲滅した事を琥珀が無線機で連絡すると、一階を目指して階段を下りて行った。
●C班 1F 西側 担当
旭
赤木・総一郎
「赤木さんよろしくお願いします」
「ああ、よろしく頼む」
仲間と別れた旭と総一郎は、早速玄関ロビーから西に延びる廊下へと向かう。既に臨戦態勢となったキメラが二匹こちらを睨んでいた。
旭は先行してキメラに接近してガープを構えると、豪力発現とエアスマッシュを使用した一撃をキメラに向けて放つ。距離の離れたキメラもろとも、近くの壁を破壊して戦闘場所を広げた。
吹き飛ばされたキメラは態勢を直すと同時に、先程破壊された壁から別のキメラが出現した。
「壁の向こうにもキメラがいたようだな‥‥」
総一郎は盾を構えると、旭を守るように前に出る。そして、フォルトゥナの銃口を先程吹き飛ばされたキメラに向けると、おもむろに引き金を引いた。一発目は外したものの、もう一発を命中させ撃破する。
残りのキメラが総一郎目がけて襲ってくる。その動きは素早く、構えた盾を潜って噛み付いてきた。
総一郎に張り付いたキメラに向けて、旭はガープを振り下ろす。キメラを総一郎から引き離すと、もう一撃加えて止めを刺した。
「次です!」
残った一匹に向けて突進し旭はガープで薙ぎ払う。攻撃はキメラを捕らえるが、止めを刺すに至らない。キメラは反撃とばかりに、旭へと飛びかかってくるが弾き落としによってキメラの攻撃を受け止めた。
総一郎はフォルトゥナの弾丸をリロードすると、交戦中のキメラを撃ち落す。再び旭の前に立つと盾を構えて他のキメラに対して警戒した。
「まだいるのか‥‥」
旭が破壊した壁の奥にキメラの姿を認める。総一郎はフォルトゥナの銃口をキメラに向けて、弾丸を発射した。弾丸が命中して、怯んだキメラに向かって旭が接近しガープを振り上げると、その頭を叩き潰す。
旭は周囲にキメラがいない事を確認すると、仲間と通信を取った。
壁の向こうにあった部屋には、既にキメラは存在しなかった。
二人は用心しながらまだ入っていない部屋へと立ち入る。そこには数多くのロッカーのようなものがあり、その奥にはまた扉があった。その扉を開けてさらに奥へと進む。
二人が進んだ先には、何人も入れる大きな浴槽が広がっていた。
この浴室では三匹のキメラが寝ている。だが、侵入者の気配を察知して目を覚ました。その中の一匹が先頭に立つ総一郎へと襲い掛かる。その攻撃を総一郎が受け止めると、旭がガープを振るい撃破する。
次々に襲い掛かってくるキメラの攻撃を、総一郎が受け止めながらフォルトゥナで撃ち落していく。
「止めです!」
撃ち落されたキメラを旭が止めを刺していった。
全てのキメラを打ち倒した後、無線機で連絡を取って仲間と合流する事となった。
●D班 1F 東側 担当
宵藍
龍鱗
「よろしく頼む!」
「ああ‥‥とりあえずキメラを排除するか」
宵藍と龍鱗はC班とは反対の廊下を通って、東側の探索を行う。
「さて‥‥どれだけの数がここに棲み付いてるのか」
廊下にはキメラの影がなかった為先に進むと、前に骨が積み上がった扉を見つける。
「骨の山‥‥集まって食事をした跡、という事だよな。近くにいる‥‥か?」
その扉に張り付くと、龍鱗がシグナルミラーを使って部屋の中の様子を伺う。銀色のシンクに様々な料理道具。どうやらここは豪邸のキッチンのようであった。
龍鱗は装備をパラポネラへと変更すると、油断して眠っているキメラに対して発砲する。それなりに距離が開いているとはいえ、眠っているキメラに当てるのは造作もない。
その発砲によって目覚めたキメラ達は、傭兵に向かって動き始めた。そして近くにいたキメラが龍鱗へと襲い掛かってくる。巧みな回避術によって龍鱗は楽に躱す。
その後ろに控えていた宵藍は月詠で斬り裂き、キメラに止めを刺す。別のキメラに接近すると月詠で連続攻撃を繰り出す。そして、確実に止めを刺す為、最後に流し斬りを決める。
「数任せなんざ小賢しいんだよ! ――遭到破坏」
宵藍は次のキメラへと斬りかかる。
龍鱗は続いてパラポネラを発砲するが、大きく外してしまう。
(「曲撃ちだし‥‥命中はあんまり期待できねぇかな」)
だが、その後の攻撃を見事に命中させた。
「もう残ってないか?」
キッチン内のキメラを殲滅し、食堂を見渡すがもうここにはキメラはいないようだった。
次に向かうは正面の部屋。そこはダンスホールに使っていたのか、体育館程の広さがある多目的ホールでかなり遠くにキメラ達が集まっていた。
二人は壁を背にして慎重にキメラ達へと近づいていく。だが、キメラは二人に気付き、猛然と襲い掛かって来た。龍鱗は襲い掛かるキメラの猛攻を難なく躱し、宵藍は月詠で攻撃を受け止めていく。
「壁ぶっ壊れない‥‥よな?」
龍鱗は高速移動を利用して壁を足場にすると、刹那も利用し雲隠の一撃で相手を沈める。別のキメラの猛攻も龍鱗の前では大したことは無い。
「完全包囲は御免だからな」
宵藍は龍鱗と背中合わせになり、死角を減らしつつキメラへの攻撃を続ける。月詠の一振り、そして、止めの両断剣でキメラを両断した。そして、隙を見て距離の離れた他のキメラにエネルギーガンを打ち込む。
攻撃を受けたキメラは怒り狂い宵藍へ連続で噛み付いてくる。宵藍と龍鱗は残ったキメラに刃を叩き込み止めを刺した。
連絡を取った後、仲間を合流する事となった。
●退治を終えて
一通りキメラの討伐を終えて、一階の玄関ロビーに集まった傭兵達。報告を済ませると、各々、最後の確認へと向かった。
ロジーは廃墟を探索しつつ、行方不明になった兵士を探す。結局、見つかったのは、彼のドッグタグだけであった。
総一郎は探索と同時に家具のチェックも行う。汚れたりはしていたものの、まだまだ十分に使えそうな家具が数多く残っていた。
最後の探索でもキメラを発見できなかった為、後は軍に任せる事にした。廃墟を振り返り、犠牲となった人々へ黙祷をささげる。そして、傭兵達は廃墟を後にした。
町を守る軍事基地を訪れた傭兵達は、今回の報告を行う。
その結果、あの廃墟は以降軍が管理し、緊急時の避難所として活用される事となった。
報告の際、ロジーは廃墟で拾ったドッグタグを関係者に手渡す。ドッグタグを受け取った関係者は膝から崩れ落ちて、さめざめと泣いていた。
傭兵はキメラの非道さを再認識して、軍事基地を後にしたのであった。