タイトル:【MN】七色珊瑚マスター:いずみ風花

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/08/17 21:38

●オープニング本文


 その入り江は、上から見ると、三日月のような形をしている。
 三日月の細い場所が、円になる寸前に分断されたかのような、海路が、入り江に繋がっている。
 細い海路だ。
 その海路を抜けると、穏やかな内海がある。
 内海には、真っ白な砂浜と、その奥には密林があった。
 密林の入り口付近には、ハイビスカスに似たピンクの花が咲き乱れ、黒と瑠璃色に色分けられた、大きな蝶が飛び交っていた。
 海から、ひょこりと顔を出したのは、 豪奢なヒレのある、朱金の下半身に、茶色の髪。
 陽に当たると、ふわふわのくるんくるんの髪になった。
「あれですよ。七色珊瑚探しは、休憩なのですよ」
 小さく溜息を吐くと、暖かい砂の上で、ごろんと横になった。
 打ち上げられた鮪のよう。
「ティム見っけ」
「はうあっ!」
「駄目だよサボっちゃ。七色珊瑚探さないと、西海の王国からの一隊、じき来るんだから」
「はーい」
「今度サボったら、言いつけちゃうんだからね」
「そ、それはご勘弁下さいですのっ!」
 じゃあいこうか。
 人魚達は、珊瑚礁へと泳ぎだして行った。
 手のひらにのるくらい小さな、七色珊瑚。
 それを首飾りやお守りにして身につけていると、願い。主に恋の願いが叶うとか。
 そんな、宝石としての価値のある、ここ、南海が誇る特産物であった。
 
 西海からは、ペッパー率いる数名が、淡い水色をまとった真珠を沢山箱に詰めて南海の人魚王国へと向かっていた。

※このシナリオはミッドナイトサマーシナリオです。実際のWTRPGの世界観に一切関係はありません。

●参加者一覧

ケイ・リヒャルト(ga0598
20歳・♀・JG
ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416
20歳・♂・FT
夏 炎西(ga4178
30歳・♂・EL
レーゲン・シュナイダー(ga4458
25歳・♀・ST
ハミル・ジャウザール(gb4773
22歳・♂・HG
マルセル・ライスター(gb4909
15歳・♂・HD
エイミ・シーン(gb9420
18歳・♀・SF
エイラ・リトヴァク(gb9458
16歳・♀・ER

●リプレイ本文


 内海でもあるこの場所は、静かに波打ち。
 陽光が細かい魚の群れのように、波を煌かせる。
 ぱしゃりと、真っ赤な尾が水面を打つ。
「七色のサンゴ‥‥それは、私に相応しいじゃない♪」
 サンゴ収穫の時期は決められている。それを採りに来る人魚も、占で決められる。今日この場所に来る事は、人魚の中でも羨望に値する出来事だ。
「何となく、ありそうな気がします」
 緋の君と巫女に名を重ねられたエイミ・シーン(gb9420)は、真中に持ち手を持つ砂時計型の剣のような槍を持ち、東の波間へと向かう。
「きょわわっ?!」
「んじゃな、やんなきゃなんねぇんでな」
 向かう先に、青い大きなカニを見つけると、白銀空の君エイラ・リトヴァク(gb9458)は、ティムを背中からきゅっと抱きしめた。何時に無く真剣な面持ちに、そういう場合大騒ぎが常のティムが眉を寄せてこちらを見ているのに、にやりと笑みを返すと、くしゃりとその茶の頭をかき回して三叉の槍を掲げて、そのひらりと長い優美な水色の尾を打った。白銀の長い髪が尾にキラリと映える。
「戦士候補の腕前、見せてやるよ。準備は出来てるなよし行くとすっか」
「お気をつけてですの〜っ」
 あれは遠い記憶。
 エイラは、仲間たちと違った姿の自分をかすかに記憶にとどめていた。こことは似て非なる暗い海の色を覚えていた。けれども、その記憶が真実かそうで無いのかは、誰も知らず。朧な夢と現実の狭間の記憶であった。
 だが、それがエイラの今を生きる根底にある。
 鮮明な記憶は、あの青い大カニから助けられた記憶。
 かの時の命の恩人に報いる為に技を磨いてきたのだから。
 今こそと。
 北へ向かうのは春息吹の君レーゲン・シュナイダー(ga4458)。柔らかな緑色が海に溶けるかのように光る。
(「‥‥恋の願いが叶う七色珊瑚、ですか」)
 きらきらと光る波間からでは、良く見えないかもしれないので、丁寧に見て回ろうと、レーゲンは思う。
「小さめでも、綺麗なものがたくさん見つかりますように」
 艶やかなたっぷりとした鰭が、闇夜の紫の影のように躍る。闇夜紫の君ケイ・リヒャルト(ga0598)は、くすりと笑みを浮かべる。
「誰が一番見つけられるかしら‥‥ふふっ楽しみね!」
 大切な人魚王国の宝物。沢山見つけられると良いけれどと、散っていった仲間達を見ながら、ケイは笑う。黒蝶貝を薄く張り合わせた黒い薔薇の花のような髪飾りが揺れれば。
 ざあっと目の前に、魚群が現れた。
 青、黄、緑、赤に黒。そしてきらめく銀や金。
 突然の海流の変化に、ケイは嬉しそうにその流れに乗って、魚達の合間に入ると、やわらかな鰭を揺らす。
「お魚さん達ご機嫌いかが?」
 とても調子が良い様だが、何処かに暴れ者の蛸と蟹が居るようだった。
 ケイは、ゆるく小首を傾げて、仲間達が向かった方を眺めた。
 細く鋭い流線型を描いた鰭が、海そのもののように、波間を飛ぶように泳ぐ。蒼緑海の君夏 炎西(ga4178)は、三叉槍を片手に、腰に柳葉刀を下げ、東南へと向かっていた。
 少し深い場所を探ろうかと、尾を揺らす。
 珊瑚の合間に、海底が見える。大きな珊瑚の影を覗き込んだり、割れ目などを覗き込む。
「折角遠くから御出でになるので、何か御もてなしをしたい所ですね」
 大事な交易の品だ。西海の方々を失望させない為にも、良い物を探したい。そして、良い思い出を持ってもらいたいものだと思う。
 鮮やかな魚群を追って、静海の君マルセル・ライスター(gb4909)は移動する。色鮮やかなマリンブルーの瞳と同じ、鮮やかな色の尾鰭が軽やかに海中を泳ぐ。
「え? 蛸と蟹? そうですか‥‥」
 珊瑚の色はあまり魚はわからなかったようだが、危ない生き物がいるよと、マルセルに告げる。
(「みんな仲良く出来るのが一番なんですけど‥‥」)
 敵対する生き物も決してなくならないのが、心を痛める。
 魚群が過ぎ去った後には、光の影に虹の色した七色珊瑚が顔を出していた。
 普通の珊瑚よりも、硬質化している。すべらかな手触りは、何の加工も必要としないかのようだ。白珊瑚が変質して出来たそれを手にすれば、簡単に折れた。出来るだけ優しく、珊瑚を採取していこうと、マルセルは笑みを浮かべた。
「七色珊瑚か‥‥」
 水色の尾鰭がゆるりと海水をかく。南を目指す天空の君ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416)は波間に空を渡る風を感じて目を細める。
「‥‥ここは綺麗な入り江だな」
 貴重品故に、数を発見するのは困難だとは知っているのだけれど、出来ればひとつ、手に入れられないかとも思う。ずっと胸にある、恋人の帰還を願いたかったから。
 北東へと黒い尾鰭を揺らすのは深夜空の君ハミル・ジャウザール(gb4773)二つに分かれたバランスの良い尾鰭が揺れる。腰の辺りは鮮やかな青色をしているが、尾の先へと向かうにしたがい、藍色、濃藍、黒と綺麗なグラデーションを描く。最近流行っている上着を着込み、ウェストをベルトで絞っている。そのベルトには、武器やら何やら、いろいろと挟み込めるようだ。準備は万端。
 空が近い。きらきらと反射する陽光の中、魚群が現れる。その無数の銀色の腹を仰ぎ見て、ハミルは嬉しそうに目を細める。その、銀色を反射するかのように、虹の色をきらめかせた、珊瑚があった。伸びる枝がきらきらと光る。
「‥‥足りるかな‥‥」
 そっと折って手に入れた。


 随分と大きな青い蟹だった。
(「びびるなあたし‥‥こんな所で夢を諦める訳にはいかねぇんだよ」)
 エイラは渾身の力を込めて、攻撃を叩き込む。手に浮かび上がるのは、光の三叉槍。エイラの闘気が込められたその槍が、高速で動く。何度も青い蟹に叩きつけられ、青い蟹はその速度についていけない。
 だが、一瞬の間が。
 エイラを爪が横殴りに吹き飛ばす。
「!」
 まぼろばの記憶が鮮明に脳裏に浮かぶ。
「あたしは‥‥そうだでも今は関係ねぇ」
 ぐっと槍を握り込むと、光を失っていた槍が再び光る。
「今は、このままでいい過去は過去でしかねえし‥‥それに‥‥あたしが生きてる事が大事なんだ!!」
 エイラの一撃で、近隣を荒らしまわっていた青い蟹は、二度と悪さが出来なくなった。
 その後ろにきらりと光る七色珊瑚を見て、エイラは満面の笑みを浮かべた。
「‥‥ふむ、折角ですし足を頂いて‥‥行くとしようかな?」
 にこりと笑うのはエイミ。その前には、ぬるぬるのうねうねな、巨大蛸が居た。
 ふふ。そんな不敵な笑いを浮かべると、エイミは、指を2本 V の字にすると、しゃきんとばかりに、手を横にして、片目の前に。指の間から、蛸を見ると、鮮やかな緋色のビームが海水を突き抜けて、蛸へと直撃。
「いぇーい♪」
 うねる蛸の何本かの足が、エイミを襲う!
 ぬるりと絡めとられる瞬間に、その光線が蛸の足をがっちりと氷で固めた。
「その手足が‥‥邪魔です!!」
 手にしたツインブレイドの槍を回転させはじめる。それは、軽い竜巻を起こし、エイミへと向かう蛸の足は、さっくりと切り刻まれた。

 西北で、蟹と対峙しているのはホアキン。
「そこに居座られると‥‥邪魔だよ」
 真っ赤な目の黒っぽい蟹は、ホアキンの呼びかけに答えずに、盛大に泡を吹くと、急接近する。
「やれやれ。では、王国の使者をもてなす皿の上に乗ってもらおうかな‥‥」
 張り出した珊瑚の隙間に入り込めば、蟹は突進の行く先を一瞬見失う。
 その赤い目をさっくりとホアキンの剣が薙ぐ。
 蟹は、泡が吹き上がり、もう片方の真っ赤な目がさらに赤くなる。
 一旦飛びのき、体制を立て直すともう片方の目もつぶす。
 蟹は、しゃにむに爪を振るう。その無駄な動きを掻い潜り、爪の付け根へと切り込むと、再び離脱。
 頃合いを見て、もう爪の付け根へと。止めは、その泡の吹き出る腹へと向かえば、蟹は動きを止めたのだった。海を渡るこの蟹は結構な天敵である。海洋物をあまり食べない人魚も、この蟹は好物であった。
 蟹が倒れると、その向こうに七色珊瑚が顔を出し。
 ホアキンはそっと珊瑚に手を伸ばした。
 三叉槍で蛸を牽制する炎西だったが、蛸は戦う気満々だ柳葉刀でぬるぬると伸びる蛸足を何本か、さっくりと切り裂けば、蛸は慌てて逃走を開始する。それを笑顔で見送ると、残った足を器用に括る。
「うん、まあ、立派な食材ですね」
 蛸を退治した炎西は、その背後に、光る七色珊瑚を採取する事が出来た。
 鱗の色が深い緑へと変ったレーゲンは、にやりと笑みを浮かべる。ぽわんとしたいつもの姿からはかけ離れた、堂々たる戦人の顔だ。
 まだら赤い長い足を持つ蟹が、急に襲ってきたのだ。珊瑚や魚達に被害が及ぶ前にと、レーゲンは槍で素早く蟹の爪を思い切り叩く。が、思ったような効果は得られない。軽く舌打ちすると、くるりと槍を返し、ざっくりと蟹爪を切り落とした。
 ごおっと、音を立てて上がる泡。
「‥‥おだまり」
 煩いと言わんばかりに眉根を寄せると、短い詠唱を唱えれば、蟹は何が起こったのか理解したのか、方法のていで逃走を図る。その背を見送り、レーゲンは、ふわんと笑い、そこにあった七色珊瑚を手に取った。
 海路へと、逃走する、蟹とか、蛸を見て、マルセルは癒しの呪文を乗せた歌を歌う。ふわんとした歌は、逃走する蛸と蟹に届いた。もう二度と彼らはこの入り江に入る事はないだろう。
 

 珊瑚はまずまずの収穫だった。
 エイラ、エイミ、ホアキン、ケイが、同じだけ。次いで、マルセル、ハミル、レーゲン、炎西。
 突出して沢山とった者はおらず、みんな、満遍なく褒められて、光る石にその名を刻まれる事となった。
「あのね、ティム。俺、人間になるのが夢なんだ。人間は魔法は使えないし短命だし、鱗もヒレも無いけど‥‥。でも俺達よりずっと遠くを見ていて、色んな場所へ行ける気がするんだ」
「見た事があるのですか? それ、内緒ですよ?」
「うん、もちろんさ。あのね、赤毛が特徴で、少し勝気でやきもち焼きだけど、優しくて可愛い子でね。料理は美味しくなかったけど、また会いたいなぁ」
 ほわほわんと、マルセルが笑えば、ティムが、それならばこっそりお手伝いしますと、拳を握り込んだ。
 ティムと、優しく呼ぶのはケイ。
 よって来た蝶を、ぱしゃんと尾鰭で追いかけて笑う。
「‥‥あたしは船乗りを惑わしたりは出来そうもないけれど」
 砂浜に腰掛けたケイは笑みを深くする。
「聞いてくれる?」
「はいですの!」
 爽やかで透明感のある歌声が紡がれる。その歌声は、伝説の歌姫のように美しく響く。
 その横で、歌声を聴きながら、うつ伏せでほっこりと過ごしていたレーゲンの背に、蝶がふわりと舞い降りた。
 かすかな感触にくすりと笑えば、蝶は何度か羽を羽ばたかす。
 それは、傍から見れば、まるで小さな羽根の生えたかのよう。
 先程の蛸を、炎西は手際良く薄切りにして行く。
「私は割りと何でも食べてしまう一族の出なんですが」
 他の皆はどうなのだろうかと、伺えば、遠慮する人魚もいれば、手を上げる人魚もいるので、大丈夫かと頷く。
 色とりどりの海藻を大きな貝の皿に盛ると、その上に綺麗に並べて行く。
 蟹を引っ張ってきたホアキンの料理はどうだろうかと、覗き込めば、こちらも、美味しそうな蟹料理が出来上がってきていた。何しろ大きな蟹である。甲羅を使い、その中で、昆布出汁をとり、細かく切断した身を茹で、深い場所から取ってきた冷たい海水で冷やせば、ぷりぷりの蟹料理が出来上がる。蟹味噌を昆布出汁で伸ばしたタレで食べれば格別だろう。
「美味しそうです」
 皆とケイの歌声を聴いて、海と空を眺めてのんびりとしていたエイミが、茹で蟹の香りにくるりと向きを変える。
「どうぞ皆さん」
 もう少ししたら、来るはずの交易団の方々に振舞うには十分な量がある。
 まずは皆で、その料理に舌鼓を打った。

 入り江には、一箇所外海に繋がる場所がある。
 浅瀬を渡りながら、ハミルはその海の道を見た。
 あまり近ずいてはいけない。
 そう、キツク言われている。
 けれども、この場所に次も来れるとはわからないのだ。
「‥‥絶対に遠くへ行かない様にすれば‥‥そんなに危険じゃないでしょうか‥‥?」
 好奇心が勝る。
 細い海路へと、そっと近寄った。
 両脇は断崖絶壁。
 この、楽園のような場所を守る、天然の要塞のよう。
 心なしか、水温が下がる。
「大丈夫です‥‥よね?」
 つい、武器を握り締める。
「‥‥そこそこ泳ぎは早い‥‥ですよ‥‥」
 海水の冷たさが増して行く。
 そろそろ、戻らないと危険かもしれないとハミルが思った瞬間。
 ぐっと、海がハミルを引き込んだ。
 外海と内海のはざかい。その細い海路は、急激な海流の道引きがあったのだ。
「っあっ!!」
 うそーっ。
 そう叫ぶ間も無く、ハミルは外海へと引っ張り出された。
 そしてそのまま、潮の流れに思い切り乗せられて、遥か外洋へと。
「遭難と見受けるが」
 綺麗なペパーミントグリーンの髪と尾を持つ人魚が、ハミルの視界に入った。その後ろには、白銀の人魚達がかしこまっている。
「はい。あの」
 西の海からの一団がペッパーを先頭に、ハミルを拾ってやって来た。
 
「珊瑚も素敵だけれど‥‥この真珠も素敵‥‥」
 ケイは、取引される水色の真珠の光沢に、溜息を吐く。七色真珠と負けず劣らず、とても綺麗。
 その横で、こっそり見学中のレーゲンも、七色珊瑚と引き換えられる水色真珠に、目を輝かせる。ほんのちょっと炎西とホアキンの料理に早く戻りたいという気もあるが我慢である。

 正式な交易の場が終われば、ホアキンが、料理の作った場所へと案内する。
「ちょうど、大きな獲物が取れたところだ。ささやかだが、一席設けさせていただいた。‥‥よろしければ、どうぞ」
 ハミルが、こまめに貝の皿などを準備して手伝う。
「これは美味しそうだ。ご相伴に預かろう」
「ああ良かった。お口に合いますかどうか」
 炎西が、切り立ての蛸を再び綺麗に盛り付けて、にこりと笑う。
 マルセルが、そっとペッパーに聞いていたのは、人間になる方法。けれども、どうやらそれには声と引き換えらしい。術者の住む場所までがまた、難関が待ち受けており、受けてもらえるかどうかも運次第とか。
「駄目かぁ」
 人魚の恋話は報われない事が多い。
 やっぱり。
 マルセルの恋の行方は果たして? 
「そちらの水色の真珠もまた、綺麗なもののようだが。どんなご利益があるのだろうか?」
 蟹を取り分けながら、ホアキンがペッパーに質問をすると。
「いつも上を向き、笑顔でいられるというらしい」
「そうですか、ありがとう」
 そう、穏やかな笑みを浮かべたのを見て、ホアキンも笑みを浮かべた。
 こうして、無事、七色珊瑚は、水色珊瑚と取引が成立し。

 波が静かに内海を揺らす。
 穏やかな人魚の国のお話は、ゆらゆらと揺り籠のような波間にゆれて流れて。
 語り継がれるのでした。