タイトル:【DAEB】元氏空軍攻防マスター:いずみ風花

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/10/08 23:27

●オープニング本文


 石家庄市周囲の増援は、押し戻したり、押し返されたり。一進一退を繰り返している。
 ズウィーク・デラード(gz0011)軍曹率いるスカイフォックスが、何度目かの出撃に向かっていた。
 中々、突き崩せない空の境界線を睨んでいると、情報官から声がかかる。
「傭兵に依頼を出しました。協力して事に当たって下さい」
「すいませんねぇ、振られっぱなしで」
「元氏空軍基地上空の制圧までは、今までも行けたわけです。その後の基地制圧に向かう陸軍が間に合わない。こちらもデートのお誘いがひっきりなしでしてね」
 大陸内部は、小競り合いが収まらない。
 何時かは敵戦力も疲弊するのだろうが、まだまだ、戦端は開かれたばかりだ。
 バグアが先に根を上げるか、こちらが先に根を上げるか。
 デラードは、軽く肩を竦める。
「次々とお相手が現れて、身が持たないねぇ」
「お互いに。‥‥では、プロポーズに向かう彼等を無事送り届けて下さい」
「了解だ。今度こそ、本命の彼女にうんと言わせないとな」
 作戦卓に点滅する元氏空軍基地をちらりと見ると、踵を返すデラードを見送ると、作戦概要を打ち込み始めた。

●参加者一覧

クラリッサ・メディスン(ga0853
27歳・♀・ER
新居・やすかず(ga1891
19歳・♂・JG
歪十(ga5439
22歳・♂・FT
カーラ・ルデリア(ga7022
20歳・♀・PN
カララク(gb1394
26歳・♂・JG
アリステア・ラムゼイ(gb6304
19歳・♂・ER
クティラ=ゾシーク(gc3347
20歳・♀・CA
リック・オルコット(gc4548
20歳・♂・HD

●リプレイ本文


 飛行する無数のUPC軍KV。
「俺、彼女いるのに他の相手にプロポーズなんていいのかな?」
 その中の一角を飛びながら、アリステア・ラムゼイ(gb6304)は、軽い笑みを浮かべながら、オウガ、インフィニティア−SGの操縦桿を握る。
「クティラ=ゾシークという。今日は宜しく頼むよ」
「こちらこそ宜しく頼む」
 ディスタン、ディスたんで参戦するクティラ=ゾシーク(gc3347)は、依頼でKV戦に参加するのは初めてだった。無数のKVの中を共に飛ぶのは、生身での戦いとはまた違った様相で、気分が高揚して行くのがわかる。
 仲間に声をかければ、あちこちから、声が返り、彼女とペアを組んだパラディン、ヘパイトスを駆る歪十(ga5439)が締め括る。
 傭兵達は、それぞれがペアを組み、さらに二班に分かれていた。
 向かう空には、無数のHWやCWが飛んでいる。
 元氏空軍基地に配備されていたワーム等だ。
 戦いが長引けば、すぐに近隣のバグア拠点から、増援がやってくる。
 もう、向かっているかもしれない。
 スカイフォックス隊が、先陣を切って、そのワーム群へと突っ込んで行く。
 たちまち無数に空に散る、爆炎。
 カララク(gb1394)の機体、シュテルン・G、シバシクルが、高度を下げる。
「‥‥敵も必死か。一筋縄ではいかん様だな。これより低空に侵入する。援護を頼む」
「さて、制空権確保は軍曹に任せて。わたし達は任された任務を全うする事にしましょう。まあ、地上で待っている方はわたしにとっては意に添わない無粋な方々ばかりみたいですけどね」
 表情を引き締め、クラリッサ・メディスン(ga0853)機、シュテルン・G、アズリエルは、カララク機と共に降下する。
「人使い荒いやね‥‥。まっ、ちゃちゃっと済ませますか」
 カーラ・ルデリア(ga7022)は、イビルアイズ、デスエンジェルの機首を下げる。
 大規模な作戦が南米で行われている。
 その合間に、大陸でもそこそこな戦力が割かれている。カーラは軽く肩を竦める。
 空港は重要な拠点となる。奪取の対象となる事が多い。空港奪取作戦に参戦した事のあるカーラは、出来るだけ無傷で空港を人類圏に取り戻せたらと思っていた。
(「ま、あれよね。それでこっちの被害が拡大しちゃ、意味が無いんだけどね」)
 攻撃目標は管制塔だ。
 気持ちがせめぎ合う。心中は複雑だった。
 KVの中では体感は出来ないが、吹っ飛んで行く細かな金属片が視界の端を過ぎった。
 爆風をものともせずに、新居・やすかず(ga1891)は、S−01HSCを操り、通信を受けながらカーラと共に高度を下げる。
「グロームの真価を見せますか」
 次々と仲間達が高度を下げる。リック・オルコット(gc4548)は、アリステア機を視界に捕らえつつ、機首を下げる。その際にも、ペア機はもとより、他の仲間達の位置取りにも気を配り、出来るだけ地上からの攻撃にさらされた際、死角が無いようにとグロームを滑空させる。
 目標となるのは、滑走路付近のワーム等を総括しているとみられる管制塔。
 その管制塔めがけて高度を下げたKVに向かい、地上からは弾幕が飛んでくる。
 タートルワーム(TW)、レックスキャノン(RC)の砲台が高度を下げた機体へを狙う。
 双方の攻撃が始まった。


 爆撃の花が咲く。
「牽制を兼ねましょうか」
 クラリッサ機から、84mm8連装ロケット弾ランチャーが幾筋も尾を引いて飛んで行く。
 RCが、クラリッサ機へと向かい、砲撃を浴びせかける。クラリッサ機とRCの合間に、派手な爆炎が上がる。クラリッサ機は、爆風を受け流す。
「まだ、終わりませんわよ?」
 PRMシステム・改で抵抗を強化すると、そのままGプラズマ弾を投下した。
 細かい稲妻がTW付近から広がった。
 G弾で行動を阻害されなかったTWの砲台から打ち上がるプロトン砲が、カララク機を襲う。それを避けると、カララク機は、出来るだけ、TW、RCが集まるのを見計らい、フレア弾を投下する。
「外れてくれるなよ‥‥!」
 重い音が響く。TWの合間に落ちたそれは、高熱を発生させる。熱風が爆炎を押し上げるかのように、半ドーム型に周囲へと広がる。その熱波は、管制塔のすぐ下を焦土と化した。
「やったか?」
 カララク機は機首を返す。

 管制塔が目の前だ。
 唸りを上げたかのような空圧が、僅かに見えたかのような気がする。その波動は対バグアロックオンキャンセラー。周囲の敵機は、カーラ機のそれの影響下に一瞬収まる。
「にゃはっ、それじゃ、死の舞踏の始まりだよん。気持ちよく逝ってね?」
 にこりと笑うと、8連装を撃ち込んだ。
「心配は、無用だったかなっ?」
 敵、空戦力が、万が一こちらへと向かう事の無いようにと、スカイフォックス隊の戦いをも視野に入れていたカーラは、弾幕が必要ないようだと、笑みを浮かべたまま、機首を返す。
 だが、いざとなれば、UK−11AAMを含む、攻撃をと、空域の監視を怠らない。
「続け様に行きます」
 やすかず機から発射されたのは、K−02小型ホーミングミサイル。空を細かく裂いて行くのは、250発もの弾丸。その弾丸の雨が、礫となって管制塔と、その下でこちらへと砲撃を続けているTWを襲った。TWは、続け様の攻撃にその殻へと引っ込む。咆哮を上げて、RCが迫ってくるが、間に合わない。やすかず機から、続け様の二射目は先に狙わなかった、まだ顔を出しているTWを含む管制塔を、再び礫が襲う。礫の威力に管制塔が軋んだ音を響かせる。
「さて、ロケット弾の雨と行きますか」
 リックは空対地目標追尾システムを発動させると、口の端に笑みを浮かべた。各種センサーがより明確に地上の敵を把握する様を目の端で確認しつつ、8連装を次々に撃ち込んだ。
 その攻撃と入れ違うかのように、淡紅色の攻撃がリック機の横に伸びたが、当たらない。
「そう簡単に、くたばる訳にはいかないのでね」
 傭兵達の、続け様の攻撃で、管制塔が崩れた。
 鉄骨がむき出しになり、がらがらと瓦解して行く。
 瓦解する鉄骨やコンクリがTWやRCへと、アリステア機のミサイル攻撃と共に降り注ぐ。

「格納庫にも敵がいるかもしれない‥‥」
 ヘルムヴィーゲ・パリングを発動させると低空を滑空し、歪十機は格納庫へと向かう。
「了解よ」
 クティラ機が、歪十機と共にぐっと高度を下げる。
 至近距離に迫るRCから、砲撃が次々と遅い来る。
 敵の攻撃が掠めて行くが、損傷は軽微だ。
 大きく口を開けたRCが目の前に迫る。
(「絶対に死なない‥‥生き残るただそれだけだ」)
 敵は脅威だ。
 けれども。
 歪十は、20mmガトリング砲の弾幕を張り、すかさずD−03ミサイルポッドを格納庫とRCを巻き込むかのように撃ち込んだ。20発ものミサイルが、唸りを上げて格納庫へと着弾した。派手な爆発が起こり、もうもうと煙が上がる。RCが、格納庫が爆発した破片を受けて吹き飛んだ。

「仕損じた敵。逃しません」
 クラリッサは、8連装をRCへと向かい、撃ち込む。RCから、淡紅色の攻撃が延びるが、届かない。カララク機が、ぐっと高度を下げる。
「さて、次は陸の掃除か‥‥軍曹、降下開始だ」
「了解だ。丁寧にアタックしてくれよ。何しろつむじ曲がりの娘さんだ」
 スカイフォックスへと軽くカララクは連絡を入れると、軽い口調が帰ってくる。
 眼下。
 動く敵機は、降下目標地点にはもう居なかった。
 TWが、ぴくりとも動かなくなる。
 不思議なもので、静止している姿と、破壊され、その活動が止まった敵機は、何処か雰囲気が違う。瓦礫の一部となった
「降下と同時に切り込むので、フォローお願いします」
 アリステアが、仲間達に声をかけた。
 降下が、始まった。


 空中では、未だ戦いの爆炎がひっきりなしに咲いている。
 周囲を睥睨しつつ、やすかず機と、カーラ機が手馴れた動きで滑る様に滑走路へ降下する。
 減速した歪十機が、上空で人型へと変形する。共に飛んで来たクティラ機も、空中で変形、滑走路へと。滑走路直前で、歪十機から、噴射口から吐き出される排気が滑走路をクリアにする。二機は滑走路へと降り立った。
 カララク機は、空中で人型へと変形する。その横で、同機であるクラリッサ機が飛行形態のまま、垂直降下する。
 リック機が、滑らかなタッチで滑走路へと降下をし、人型へと変形する。リックに合わせ、アリステア機はツインブースト・OGRE/Aを発動させると、人型へと変形する。
 傭兵達が、降下するのと、ほぼ同時に、滑走路の向こうに見える、フェンスがぶち破られた。
 五体の漆黒のゴーレムが現れた。
 格納庫から、何かが蠢くような音が響いたが、格納庫は大破している。そこにも何か敵が居たのだろうが、起動にはいたらないようだ。歪十がそれを見て、軽く頷く。
 格納庫反対側の荒野から、砂煙が見える。
 ゴーレムだ。漆黒に塗られた、その数は五体。
 計、十機のゴーレムが、降下した傭兵達へと向かい、迫ってきていた。

 フェンスをぶち破ったゴーレムへと一班が向かう。
「カーラ機のジャミングの範囲から、出来るだけ出ないほうが良い」
 カララクが、ゴーレムとの距離を測りつつ、声をかける。
「そうね。私は下がって援護に回らせてもらうわね」
 真スラスターライフルの照準をつけながら、クラリッサ機が僅かに下がる。
「あちらさんは、遠距離武器が無さそうだね」
 真ツインブレイドを軽く回転させながら、アリステアが、前に出る。肩・脚・胸の装甲が展開。強制放熱。アリステアの機体のTB・OGRE/Bを起動時の特徴だ。
「それならそれで‥‥悪いが、狩らせて貰うぜ?」
 150mm対戦車砲が、リック機から撃ち放たれると、鉈を振り上げて迫る、ゴーレムは、バルカンを撃ちながら、ぐらりと傾いだ。クラリッサ機から、ライフルが撃ちだされれば、傾いだゴーレムは、そのまま地響きを上げて倒れるが、まだ動けそうだ。RA.2.7in.プラズマライフルがエネルギー弾の光を放つ。カララク機だ。前に出ようとしていたゴーレム一体が、その弾丸を食らい、傾ぐ。仲間達の遠距離攻撃の合間を縫って、アリステア機が、バルカンで牽制をかけながら、距離を詰める。前面に出ていた、二体のゴーレムから、同様にバルカンが撃ちだされ、視界が一瞬悪くなる。混戦となると、どうしてもカーラ機からの援護範囲からは外れるが、攻撃の手は休めない。
 後方から、クラリッサのライフル弾が、アリステアに剣を薙ごうとするゴーレムの足を止める。
 もう一体へと、CK−05Bアサルトライフルが撃ち込まれる。リック機だ。
「攻撃の瞬間が、一番隙がでかいんだよ」
 アリステアのツインブレードがゴーレムをえぐる。
「さ、こっちの限界ギリギリまでつき合ってもらおうかな」
 後方から、別のゴーレムのバルカンが撃ち込まれるのをものともせずに、アリステアがツインブレードを構えなおす。もう一方から振り下ろされかかった、鉈。そのゴーレムへとカララクが突っ込む。双機刀・臥竜鳳雛が、切り伏せる。
 クラリッサ機は、味方機に射線が被らないようブースト移動すると、ライフルを的確に打ち込み、リック機からも狙いすました攻撃が撃ち込まれ。

 フェンス側と、ほぼ同時に、荒野側も戦端を開いていた。
「早くおいで」
 カーラは臨戦態勢で、ゴーレムを待ち構えている。
 接近戦が得意である。出来るなら、突っ込んで行く方が性に合う。だが、ここは味方の為に、自機のスキルをフルに使わなくてはならない。機鎌クレスケンス・ルナが、待ち遠しいとばかりに、軽く振られる。
「とりあえず、お先ですよ」
 くすりと笑うと、やすかず機から、強化型ショルダーキャノンが撃ち出されれば、一塊となっている、ゴーレムがばらけた。ばらけたといっても、そう、距離は離れていない。
「みんな、下がっていろ」
 仲間達に説明の声かけをすると歪十機は前に出る。発動されるのは、ワルキューレの騎行。その広範囲攻撃は、機槍ゲルヒルデを持つパラディンの必殺技と言っても良い。五体のゴーレムへと機槍が貫いて行く。
 軽い土煙が巻き起こる。
 最初にやすかず機の攻撃を受けていたゴーレムは、深手を負ったようだ。しかし、まだ倒れない。
 前に出た為に、孤立してしまった歪十は、三機のゴーレムからの攻撃に晒されていた。
 歪十機を素通りし、こちらへと急接近するそのゴーレムへと、アグレッシヴ・ファングの力を乗せた、R−703短距離リニア砲をやすかずは撃ち込んだ。
「‥‥警戒心は無さそうですね。エース機は居ないと見て良いでしょう」
 援護に徹する機体では無いと、ゴーレムに警戒を抱かせようと思ったのだが、突進は止まらない。どうやらどの機体も攻撃に徹するオートのようだ。
「慌てず、落ち着いて、狙えば」
「行くよーっ」
 クティラ機、カーラ機が、ブーストをかけて、ゴーレムに迫る。
 クティラ機から、MSIハンドマシンガン、20mm高性能バルカンが撃ち放たれる。ゴーレムからも、バルカンが放たれるが、もう、目の前だ。イクシード・コーティングを発動させたカーラ機は、両腕をヴィガードリルに切り替えると、唸りを上げたその両腕をゴーレムへと叩き込んだ。
「ほーら ビンゴ」
 ゴーレムへと飛び込んだカーラの機鎌が、ざっくりとゴーレムの首を駆った。
「死をもたらす天使の口付け、味はどうかな?」
 後方から、やすかず機の援護射撃が続く。
 弱ったゴーレムを機槍で叩き伏せた歪十は、いくつも傷を負っていたが、機体が動かなくなるほどの深手は無い。クティラとカーラが飛び込み、やすかずの援護がゴーレムの動きを何度も止め。
 

「まだまだ リズムが足りないなぁ リズムが」
 圧勝と言って良かった。
 その戦場を後にしながら、クティラは、軽く首を振る。
「軍曹、世話になった。感謝する」
「なあに、やっとプロポーズを受けてもらって、感謝だぜ。後は親父さんの承諾か?」
 カララクが、帰還するデラードに向かい、通信を入れれば、再び軽い口調が聞こえてきた。
 お疲れさんと、傭兵達の労を労う。
 出撃した場所へと戻ると、リックはスキットルのウォッカを一口煽った。飲めそうな仲間達に、それを回すと、帰還したデラードを見つけると、スキットルを片手で掲げる。
「デラード軍曹も飲むかい」
「良いねえ。命の水ってヤツだな」
「そういう事」
 戻ってきたスキットルを、再び口にしようとしリックは苦笑する。
 綺麗に空になっていた。
 


 元氏空軍基地は、落ちた。
 北京攻略へ向けて、またひとつ、人類側の拠点を手にしたのだった。