タイトル:【MN】A病棟・朝顔マスター:いずみ風花

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 7 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/09/01 23:44

●オープニング本文


※このシナリオはミッドナイトサマーシナリオです。実際のWTRPGの世界観に一切関係はありません。

 行く手には、今にも崩れそうな、病院があった。
 バグア侵攻の際、半壊したという、大きな病院だ。

 そのA病棟の付近に、出るのだと言う。
 ひょっとしたら、キメラかもしれないので、確認して欲しいという。
 それらが出るのは、何故か真夜中。
 丑三つ時であるという。

「‥‥一時帰宅というか、戻りましたら、コレですの」
 現在UPC軍のタイ事務官である、ティム・キャレイ(gz0068)は、大規模な戦いがひと段落したとみるや、事務整理などで、一旦LH(ラストホープ)に戻ってきていた。
 そこで、古巣の総務課に挨拶がてら、顔を出した。
 までは良いのだが、わらわらと現れた元同僚に『噂の真相を確かめようツアー』に引き込まれた。
 その病棟の一階の廊下を、丑三つ時に歩いていると、長い髪に絡め取られるのだという。
 ほうほうのていで逃げ出したという人は、能力者であり、一般人ならば、瞬く間に引きずられたに違いないと。
「これは、探索として依頼を出した方が良いのではないでしょうか」
「イヤーね! あたし達、能力者じゃないの。イザとなれば、退治しちゃえばいいじゃない」 
「せっかくの休日、多少スリリングな方が良いわよぅ。 楽しまないとねぇっ」
「私は、十分に楽しむ予定を立てて来ましたの‥‥」
「せっかくだから、傭兵さん達も誘いましょう、ほら、怖い物見に行くのならば、カップルとか、恋の花咲くとかあるじゃない!」
「ひと夏の夢と消えた話を何度聞いたかしれませんの」
 きゃー!! と、盛り上がる、先輩方は、ティムの話なんざ聞いちゃいない。

 そんなこんなで、お誘いの依頼というか、一緒しない? みたいな? 軽いノリの文字がこっそりと本部モニターの端っこに上がったのだった。

●参加者一覧

レーゲン・シュナイダー(ga4458
25歳・♀・ST
ヨグ=ニグラス(gb1949
15歳・♂・HD
井上冬樹(gb5526
17歳・♀・SN
杉崎 恭文(gc0403
25歳・♂・GP
ジリオン・L・C(gc1321
24歳・♂・CA
シクル・ハーツ(gc1986
19歳・♀・PN
麻姫・B・九道(gc4661
21歳・♀・FT

●リプレイ本文

「ゆゆゆ、幽霊なんざ怖かねぇ‥‥」
 思いっきり、口ごもっています。なのは、麻姫・B・九道(gc4661)。真っ赤な髪がその性格を映すかのような、普段はざっくばらんな、いなせな姐さんであるのだけれど。
「ゆ、幽霊なんているわけねぇ、それを証明しに行くだけだろ‥‥?」
 ちょっと挙動不審。
「さっと行って、ぱっと帰って来ちまおうぜ‥‥っ」
 その横で、シクル・ハーツ(gc1986)が、小首を傾げている。
 怪しげな肝試しなお誘いだとは思うのだけれど。
「幽霊? う〜ん‥‥出るとしたらキメラとかじゃないかな?」
 けろりん。と、した感じのシルクに、姉としての威厳を持って? こくりと頷く麻姫。
 出発前は賑やかしい事になっている。
 女の子率が激しく多い。
 こくこくと、総務課二人に頷くのはヨグ=ニグラス(gb1949
 ぶんぶんと握手した手を振り回すゆかりはきっと俺のモノは俺のモノ。お前のモノも俺のモノな人で、にこやかに笑みを浮かべるみきは、怒らせると怖いに違いないと、ふっと思う。正しく。どんぴしゃである。
 ヨグは、浴衣こそ、普通の花火な浴衣だが、れいちゃんのお面を被り、手にはバトルハタキをしっかりと握りしめている。歩く時は腰にさすとそれっぽいかもしれない。
「長い髪の毛ねー。包帯か何かでしょ?」
 依頼文を再読したヨグがゆかりへと笑う。
「ゆかりんならブチブチ引き千切れるですよっ。ワッハッハッハ」
 満面の笑みで笑うヨグとゆかり達。
「ティムさん後でいろいろ教えてね」
 総務課の人達の事とかと、こそっと囁く。
「冗談かと思う程のある事満載を暴露ですの」
 こくりと頷くティムに、ヨグは頷き、【OR】インカムを装備っ。にこりと笑うティムもインカムを装備っ。
 きゃー。
 何時もの様にハグり合うのは、レーゲン・シュナイダー(ga4458)だ。
 紫陽花の浴衣。きゅっと纏め上げたお団子髪に青いリボンが揺れる。
「‥‥あの、どうぞ、よろしくお願いします‥‥」
 同行の仲間達へと、丁寧に頭を下げるのは井上冬樹(gb5526)。黒では無い、落ち着いた色合いのゴシック系のワンピースがふわりと揺れる。
 何処か控えめな冬樹へと、レーゲンは目を細めてながら挨拶をする。小隊【lilaWolfe】の元隊員であり、何だか放ってはおけないような冬樹の手を引いて歩きたいなあと、何となくそきそきとしている。
「‥‥幽霊、ですか‥‥本当に‥‥いるなら‥‥少し、怖いけれど‥‥」
 ふわりと笑う冬樹は、小首を傾げる。
「‥‥もし、キメラだったなら‥‥危ない、ですから‥‥」
「ぃよぅ! 今回はよろしくにゃっ!」
 冬樹のすぐ横から現れ、笑顔で挨拶をするのは杉崎 恭文(gc0403)。
 ラフなシャツにジーンズという、何時もの姿である。本人は普通にしているつもりだが語尾が変。
 そして、何だか動きがかくかくとしているのは気のせいではないだろう。
 そこへ、しゅたっと現れる影。
「とーぅ! 俺様はジリオン! ラヴ! クラフトゥ‥‥! み、未来の勇者だ!」
 キリリ。引き締まった表情。天鎧ラファエル、白銀の鎧が、キラリと光り、ヘラクレスヘルムの獅子を模した威風。中世ヨーロッパスタイルの勇者な姿のジリオン・L・C(gc1321)は、普通に思いっきり浮いていた。んが、ジリオン的には全く問題無い。爽やかに白い歯を光らせて、満面の笑みでのご挨拶である。
「さ、ささ、更なる勇気を身につけるためにやって来た! 皆の衆! 宜しく頼む!」
 満面のドヤ顔ではあるが、口調が揺らいでいるのは、気のせいでは無い。
 素晴らしい勇者姿の割には、その心はちょっぴり‥‥いや、思い切り、チキンハートであった。
「うむ! 素晴らしい! 勇気に溢れているな! 皆の衆!」
 総務課の娘二人が、感動したらしく、頷いているティムを引きずり、他の能力者達へと軽く頷く。
「それでは! 勇者パーティ! 出撃だ!」
 さあっ! そう、指さすジリオンだが、その前に皆はさくさくと高速艇へと移動していた。
 あ。待ちたまえ。そんな感じで、仲間達を追うジリオンであった。


 明らかに古びた廃病院が、暗い夏の宵に、うっそりと佇んでいた。
(‥‥幽霊以前に、物理的にいろいろ危ない気もしますが)
 怪我人の出ない、楽しいお化け探索ツアーが出来ればいいなと、レーゲンは思う。
 仲間達の足音が嫌に大きく聞こえてくる。
「確かに、気持ちの良い場所では無いですねー」
 ランタンを掲げ、病院を見上げるレーゲン。気持ち、顔の下から光が当たってホラー。
「さ、さぁ‥‥早いとこ行こうぜ」
 ランタンをしっかりと握りしめているのは麻姫だ。
「‥‥あれ? ま、麻姫姉ちゃん、大丈夫? 顔色悪いけど‥‥」
「だ、大丈夫、だいじょうぶ‥‥何も問題は無い‥‥なにも‥‥」
 明らかに何か問題がありそうに表情がひきつっている麻姫だったが、シルクは麻姫の言葉に素直に頷く。
「ささ、ドンドン行きましょう! ランタン持ってますので、後ろは任せてくださいましっ」
 ヨグだ。たが、実は少しドキドキ中。何しろ一番後ろ。
(‥‥み、皆さん頼もしい感じですから安心ですねっ)
「あ、はぐれるといけないので、近くにいる人と手を繋いでおきましょう。うん」
「では、私が」
 仲良しのティムとヨグは手を繋ぎ、共に最後尾につく。
「一階の廊下に何かいるんでしたっけ? 二階とか三階には居ませんよね‥‥」
 ヨグが呟く。
「ゆ、ゆうれいとか。べ、べつにこわくねーし!?」
 全身で何となくキョドっているのは恭文だ。言葉とは裏腹に、全身びっしょりと冷や汗をかいている。
「こんなんでいちいちビビルほどガキでもねーし?」
 女の子が多いし、自分は男だ。
(いっちょかっこいいとこ井上さんに見せて惚れ直してもらうしかないっつうの?)
 んがー。
 大前提として、まず、惚れた腫れたの関係に持っていかなくてはならない事をさっくり失念中の恭文である。
 仲間達の合間で、ジリオンが一人、回想シーンへと突入している。
「あれは、俺様が勇気を掴むために廃病院へと足を踏み入れた時だった‥‥」
 手にしているランタンの灯りが自分を交えてふわりと揺れる。
「そう、ちょうどこんな感じだったのだ。あの時は、ランタンを手に一人でだ!」
 ふっ。
 そんな感じで前髪をかき上げる。
「だが、何としても勇気を手にしなくてはならなかったからな。それでも、進んだ」
 誰も聞いちゃ居ないが、ジリオンは気にしてはいない。何しろ、カッコいい勇者の回想途中だ。
 カツコツと、足音が響く。
 良い香りも漂っている。蚊取り線香だったり。
「‥‥蚊取りブタさんも‥‥大事、ですよね‥‥」
「もちろんです」
 女の子は蚊に食われてはいけないと、冬樹が持参したのである。
 レーゲンが優しげに冬樹へと頷く。
 ジリオンは未だカッコいい話の中から帰って来ない。
「しかし、運が悪い事に、途中でランタンのガスがきれてしまってな!」
 そう、あの時の闇は忘れないと、ぐっと拳を握る。
 回想シーンのクライマックスに突入したようだ。
「暗闇に一人、取り残されてしまった俺様は発狂した! しかし、捨てる運命の女神があれば拾う運命の女神もいたのだ。ぽつ、と。テレビの電源をつけてくれた者がいてな! その灯りで手元を確認しながら、漸くかえのガスをつける事ができた‥‥。あの時俺様を助けてくれた運命の女神は一体どこにいるのだ‥‥」
 陶酔状態のジリオンは、何だか一人スポットライトが当たっているかのようなそんな感じであった。
 ここまで、割合に何もなく歩いてきていた。
 ふと思いついた顔のシルクは、そーっと、麻姫の後ろに寄ると、挙動不審状態の麻姫の肩を後ろから叩く。
「わっ!」
「ひぎぃ!?」
「! ! ! ! ! ! !」
「お、俺の勇者の目を、通り抜ける程の何があああああああっっ!」
 シルクの驚かせる声と、麻姫の叫び声に、小さく声を上げてレーゲンの手を握りしめるのは冬樹。
 激しく反応したのは恭文。
 もっと激しく反応したのは探査の目を常に発動していたジリオン。
 皆の驚き様に軽くビックリのレーゲン。
(お化けは怖くないのですが‥‥幽霊‥‥お饅頭が怖い理論でいくと、大好きな彼の姿をしていたら怖いです)
 あは。と、ちょっと空想に走ったレーゲンだった。
(覚醒した自分とそっくりなのが出てきたら、ある意味それが一番怖い気がします)
 そうか、こんな風に皆は驚くんだと、つい冷静に分析したり、大丈夫とばかりに冬樹の手を握り返したり。
(もしも、見られたら面白いかもです)
 サイエンティスト、超冷静状態だった。
「ふふ、びっくりし‥‥た? あ、あはは、ご、ごめんね?」
 真っ青な顔の麻姫や、固まった仲間達を見ながら、シルクが笑うが、小首を傾げる
「‥‥だ‥‥大丈夫、ですか‥‥?」
 冬樹は、がっくりと膝をついて、OTLな感じになっている恭文へとそっと声をかける。 
 幽霊はそれほど怖くないけれど、物音や、人の大きな驚いた言動に、気の優しい冬樹はドキドキ中だが、何だか怖いのをひたすら我慢している風な恭文が心配だった。
 恭文、頑張ってきた心構え、全て冬樹にというか、全員にバレバレな状況で大ピンチ。
 盛大な心の声が恭文だけに木霊する。
(ああああああ。真夜中の病棟とかなんだよ、意味わかんねえよ、ふざけんなよ!
 無理無理無理。マジ無理。
 隠してたけど、俺幽霊とかダメなんだよ。
 だってあいつら透けてんだぜ?
 壁とか通り抜けるんだぜ?
 殴れないんだぜ!?
 超怖いわ!)
 何か掴んで縋ったと思ったそれは、冬樹のスカートの裾だと気が付き、超涙目。
 優しい言葉に、超自己嫌悪。
「は、はやく行こうぜシクル‥‥シクル? ‥‥シクルさん?」
 ここにこうしていてもしょうがない。シルクを軽く掴んで、かくかくしている麻姫は、先を促すのだが。
「‥‥あれ?」
 前方を凝視するシルク。
「‥‥ん? あそこにも何かいないか? 今、影が」
 シルクがなにげなーくぽそりと言った。
 ひぃ。
 聞こえないが、声にならないチキン達の叫び声が、再び病院廊下に満ちた。


「ぎゃ○□※△×!」
 探査の目が何かを発見した。
 ジリオンが盛大に悲鳴を上げて、どーんとへたり込んだ。
「‥‥! なんだあr‥‥#$&()%)%$っ!?」
 麻姫も精一杯張っていた気持ちがぷつんときれて、腰を抜かしながらも、炎剣ゼフォンを構えようとわたわたと。
 軽い騒ぎだったせいか、何人かがはぐれてもいる。
 暗闇の中から、何かが接近する密やかな音がする。
「今何か動かなかった?」
 恭文だ。ちょーう涙目。
「‥‥何か‥‥来ます」
 冬樹が淡い光のオーラを纏い、和弓月ノ宮を引き絞る。
「み、みきさんはハーモナーですもんね。僕がバシバシやっちゃいますから任せてっ」
 ハタキを構えるのはヨグ。
「勇者ボイス──!!」
 絶叫の様なジリオンの呪歌が響く。
「ぎゃあああ!? 何か裾掴まれたあああ!?」
 恭文が、可憐な悲鳴を上げる。
 銀色の髪が恭文の横を走り抜ける。キツイ眦。姐さんと呼んだ方が良いような雰囲気。
「暗がりで人を襲うなんて、卑怯じゃあないかい?」
 レーゲンだ。
 普段のぽやぽや加減と真逆な笑みを浮かべ、小太刀涼風を一閃させる。
 ぶちんと、小気味よい音が響く。
 カンテラの灯りに、映るのは、何やら植物の蔓。
「‥‥しょ、正体があるっ? キメラかっ!」
 涙目だった恭文は、相手が物体だと気が付くと、急にすっくりと立ち上がる。
 正体不明なモノでなければ良いのだ。
「ふざけやがって!」
 両腕に焔のようなオーラを纏い、真紅の瞳に変わった恭文はキアルクロー、脚甲イキシアを思う存分振るうべく突進する。冬樹の手から、矢が放たれ、恭文を援護する。
「‥‥次々と‥‥来ます‥‥」 
 何の声も上がらないが、手ごたえは十分だ。
「ぎったんぎたんですっ! いきましょうティムさん」
 ハタキ攻撃をしかけるのはヨグ。
「‥‥よかった、キメラ居て本当に良かった」
 安堵の涙をぐっとぬぐうと、麻姫が走り込む。炎の様な紅いオーラを全身に纏い、長髪の先端が銀色を帯びている。豪破斬撃を乗せたゼフォンが焔を纏うかのように光ると、ざっくりと触手めいた植物を切り裂いた。

 一方、何だか、別の場所に居たのはシルク。
「しまった‥‥はぐれたか‥‥」
 騒ぎが起こっている方角を確かめると、ひたひたと歩いて行く。万が一という事も考えて覚醒済だ。
「あそこにいるのは‥‥よかった」
 麻姫と仲間達へと、軽く手を振るシルク。
「‥‥? ‥‥キメラじゃな‥‥い‥‥」
 暗がりの中から現れたシルクは、何時もの着物姿に、覚醒がかなり幽霊っぽかった。
 ひんやりとした空気が押し寄せる。冷気を纏っているのだ。そして、歩く度に尾を引く青い残光を残す目。
「「「ぃいやぁああああっっ!!」」」
 盛大に涙目の恭文と、瞬間飛び上がってかさかさと移動するジリオン。
 ついうっかり幽霊と見間違った麻姫の悲鳴が木霊する。
「ん? 皆、どうかしたのか?」
 シルクは首を傾げると、飛び散る蔦を手にする。
「これは‥‥なるほど、この蔦を髪の毛と間違えたのか‥‥。やはり正体はキメラだったか」
 頷き納得するシルクに、ようやく気が付いた悲鳴を上げた面々が、がっくりとした姿へと変貌。
 何故そうなっているのかと疑問が湧いたシルク。
 さっくりと、傭兵達はキメラを退治したのだった。


 そして、朝がしらじらと明ければ、あれほど不気味だった廃病院はただの廃墟にしか過ぎず。
 ひょこりと、窓から外を見れば、壁一面に青紫の朝顔が咲き誇っていた。
 レーゲンが、綺麗と、目を細める。
「お、おお、俺様は‥‥新たな‥‥勇気を‥‥手に」
 何か力尽きたらしいジリオンが軽く失神。
 そして、別の隅っこで体育座りをする恭文と、麻姫。
「ゆうれいなんていないゆうれいなんていない‥‥」
「ま、麻姫姉ちゃん‥‥」
 ぶつぶつと呟く麻姫へと、シルクが覗き込む。
 冬樹が恭文へとそっと声をかける。
 幽霊は大して怖くは無かった。自分が本当に怖いのは、人の視線だから。
「正体が‥‥キメラで‥‥良かったですね‥‥」
「誰にだって苦手なものありますよ」
(もうしにたい)
 滂沱の涙を、冬樹に見られないように流す恭文は、好きな女性に慰められた事が、何だかへたれ扱いを受けたかのように感じた、ガラスのチキンハートの持ち主でもあった。合掌。
「ふふふ。それにしても幽霊なんて変なの。今日の昼間はたっぷり眠って、今度花火しましょ花火!」
 ヨグが、にこやかに笑う。
「ティムさんそろそろ手をはな‥‥」
「? とっくに離れていますの」
「じゃ‥‥これ‥‥は‥‥?」
 ひんやりとした女性の手が、ヨグの手を握っていた。
 一瞬の空白。それを、しっかりと同行者達は目撃した。
 朝の光の中、最後の絶叫が木霊したのだった。