●リプレイ本文
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「中々の歓迎振りだな。予想以上の戦力が出てきているようだが‥‥」
ドレアドルは、降下地点に集まるKVを眺めて口髭を震わせて笑うと、姿勢を正しす。
どれほどのものか、見せてもらおうと、BFと本星ワームの一斉降下の陣容を引き伸ばす。
数機で降下して、的になるつもりも無い。真正面から当たる事をして、戦力をむざむざ減らす事も無いと笑った。BFは、西安に対して横に長く陣形を取りながら、ゆっくりと降下を始めた。
BFと本星ワームが一斉に降下するその影が濃くなってくると、山野の中から、そして、北京の方角から、湧き上がるかのような光点が現れた。
それは、近寄って確認しなくてもすぐに知れる。頭痛がやってくるからだ。
昼の蛍のように、大地から浮かんでくる小さな点はCW。大きな点はHWだ。
地から、空から。敵機の様を見て、ハンナ・ルーベンス(
ga5138)は大隊の後方で、小さく息を吐き出すと、その手を祈りの形に組んだ。
(「堕天使達よ、そなたらの行く先はこの大地では有りません。‥‥神を騙り、より良き支配を騙り、命を弄んだ罰を受けるのです。底知れず暗い‥‥事象の地平で‥‥」)
短い祈りは何処へ向かうのか。
目を開ければ、レーダーの先を真っ赤に埋め尽くす敵機が確認される。
「コスモス・ハンナよりコスモス各機へ。当機は各高度・戦域を巡回。敵妨害によりリンク切断の際は作戦空域内接球面付近に移動、速やかにリンク復旧の後、担当域に復帰願います‥‥それでは皆に、主の御加護を‥‥」
各機が一斉に持ち場へと散って行く。
【コスモス】というコードが、戦場を繋いで行く。
「こちらコスモス・ミコト。戦域が拡大傾向にあります。ご注意下さい」
正倉院命(
gb3579)は、あらわになる敵機の状況を繋ぐ。
「情報を先にと思ったが、そんな場所じゃなかったようだな‥‥今からとれるだけの情報をとるか‥‥」
アレン・クロフォード(
gb6209)は、小さく唸る。
指示系統は、ここかと、天空橋 雅(
gc0864)は、コスモスのコードを辿り、機体を移動させる。
「生き残ることが、第一の任務なのでな。自分の力量はわきまえているつもりだ」
仲間と連携しつつ、少しでも敵機を屠る、ひとつの駒となれればと。
BFの群れが降りてくる。
遠くの空に、黒々とした影が見えると、その影は、次第に大きくなって行く。鯨とも呼ばれるそのバグアの輸送艦のでかい腹があらわに見える。
「これより電子支援を開始します。全機情報連結開始」
陸にも、赤い光点が現れている。篠崎 美影(
ga2512)は、一番効果的な場所は何処かと探りつつ、陸へと降りる全機へと、低空からの進入のための声をかける。
「じき交戦空域に入ります。BFは、ゆっくり降下を続けています。本星ワームがそれに合わせて降下中です。随分と横に広がっています」
次第に入ってくる情報が多くなる。里見・さやか(
ga0153)は、簡単なメモへとそれらを纏め、発信した情報には横線を入れて行く。
本星ワームから、淡紅色した光線が、向かった仲間達へと、次々と撃ち込まれた。
上空へと飛来するHWからも、やはり無数の淡紅色した光線が、延びて来た。
「フェンリル01より周辺格機へ。これより電子支援を開始します」
とりあえず、手当たり次第のようだがと、篠崎 公司(
ga2413)は口の端の笑みを深くする。
「さて、戦闘に巻き込まれないようにしないと‥‥」
早々に切り上げようと、シエル・ヴィッテ(
gb2160)は情報収集に空を駆ける。
味方機は、それぞれがターゲットと定めた場所へと向かう準備行動に入っている。
様々なKVが、それぞれの色に鋼色を纏わせ、陽光を反射し、展開して行く。
●
一番近いBFへと、【鯨撃】、【うーりん】、【千日紅】をはじめとして、ほとんどのKVが向かう。
「皆、あれだけでかいゴールなら外す心配はないね? それじゃあ突き破る勢いで‥‥シュート!!」
赤崎羽矢子(
gb2140)機が、速度を上げて、BFへと駆け様に、光りの線を延ばす。レーザーライフルだ。
それが、鯨狩りの合図であった。
オルカ・スパイホップ(
gc1882)は、連装ロケット弾でBFを狙う。その先は射出口とみられる下部。
「鯱が鯨を狩るってこういう気分なのかなぁ〜」
自らの名と、BFの呼び名を思い浮かべ、オルカは羽矢子機から、なるべく近い場所に位置する。
「ぶち込んでやるぜそこのデカブツこれでも喰らいやがれ」
ただひたすらに、BFのみを視界に入れると、速度を速め、エイラ・リトヴァク(
gb9458)ミサイルを撃ち込んだ。行く筋もの軌跡がBFへと吸い込まれて爆発する。全てのミサイルを撃ち尽くすと、それを見るか見ないかの合間に、機首を返し、補給へと回る。
「不死身の敵など存在しない! 今こそ音速雷撃隊の力を示す時! ミサイルが当たればBFといえど‥‥!」
その速度を上げて、海原環(
gc3865)は、BFへと迫る。力を乗せてパンテオンの雨を降らせ、射程を延ばし、ミサイルを撃ち込んだ。犬彦・ハルトゼーカー(
gc3817)は、環機と共に飛んでいたが、先を行く環と速度をあわす事無く、ふらりと現れるHWやCW、キメラを迎撃する。環がBFへとミサイルを発射する。
(「誰が落としても、同じ1機。誰も犠牲にしちゃ駄目なんだ!」)
皆で無事帰れれば良い。犬彦は、周囲の索敵を怠らず、速度を上げた環の後方から、援護しつつ、再び合流をする。
「さて、私も皆さんの足を引っ張らないように頑張りませんと」
数々のKVが並ぶ様を見て、目を細めると、その速度を上げ、南十星(
gc1722)とガイギス(
gc1907)は、対艦ミサイル・共工を射程を延ばし、撃ち込む。重い音が機体を揺らし、響いて行く。
「挨拶代わりだ、ようこそ地球へ、そしてさようなら」
作戦に集まった人数を見て、ガイギスは全ての傭兵が連携できるのだろうかと疑問に思った。だが、その疑念は、すぐに払拭される。
傭兵は軍隊では無い。
だから、自由に戦う。しかし、その戦いは何時も仲間を思いやる戦いである。
手の足らない場所へと向かう者。
窮地に陥りそうな仲間を救出しに向かう者。
それはまるで最初からそう決まっていたかのような精緻な展開でもあった。
綺麗に収まらないピースは、敵の出方がわからない。この一点に尽き。
「目標、BFとその周り‥‥ロックオン完了! レギオンバスター!!」
K−02を始め、次々とミサイルを発射するのはソード(
ga6675)。
「ビックフィッシュ10隻を投入しての強襲降下作戦かよ。しかも本星型が護衛に付いているし、こりゃ、アジア戦線への大規模制圧作戦の橋頭堡作りだな。可能な限り、搭載機を出される前に仕留めるしかない!」
どちらにしても、敵の陣営が厚みを増すのは阻止しなくてはならない。緑川安則(
ga4773)は、慣れた手つきで、K−02の照準を合わせる。
「超電導アクチュエータ起動、火器管制システム、ロックオン。全弾発射!!」
安則の後を、ユーフォルビア(
gb9529)が飛ぶ。接近する敵機を狙い打ち、安則機の安全を確保する。
「お邪魔虫お掃除掃討します」
「ぶっとべ〜デカブツども〜」
仲間達の合間から、対艦ミサイル・共工を撃ち放つのはコティニフォリア(
gc0452)。後は、弱点を良く狙って、連携重視で動こうかと軽く頷く。
「敵は精鋭ばかり‥‥どこまでやれるか、な‥‥!」
突出しないようにと気をつけながら、ラナ・ヴェクサー(
gc1748)は仲間達の合間から攻撃に参加する。
「螺旋っ! それ即ちドリルなり〜っ 喰らうがいいっ! おっとっとっ、不慣れなお空は恐いですねっ」
力を乗せた8式螺旋弾頭ミサイルを撃つと、白蓮(
gb8102)は、その機首を返し、そのまま、すぐ近く、【鯨撃】の援護に回る【守護天使】へと合流する為だ。
「我等が此処に在るのだ。好きにはさせぬぞ」
急接近すると、そのまま4連キャノン砲を叩き込む。シリウス・ガーランド(
ga5113)は、機首を返しながら、笑みを浮かべる。
ノーマ・ビブリオ(
gb4948)は、BFへ突進する。被弾中のBFへと剣翼をぶつけると、リニア砲を全力で叩き込む。
「美空、阿修羅・聖堂騎士団発進なのであります」
1機でも騎士団とはこれ如何に? と、笑みを浮かべながら、美空(
gb1906)は、BFへと向かい速度を上げる。自分が意外に静かな面持ちで居るのが不思議だった。北伐。グレプカ。その言葉が脳裏を過ぎる。帰還しなかった姉も同じ様な気持ちだったのだろうかと思う。
ぐっと距離を詰め、BFの艦首へと向かおうとした矢先、開口部から、行く筋もの光線が飛び出した。攻撃する手立ての無いBFから何が? そう目を見開けば、昨今の戦域に現れる、人形の姿があった。
タロス。
BFの積荷はタロスのようだった。積荷はタロス。そう、美空は管制に連絡を入れる。
「何となく、無念とかでありますよ?」
機体の操縦が難しくなる。美空はやれやれとばかりに溜息を吐いた。
その情報は、瞬く間に、戦域の隅々まで広がって行く。
「【鯨撃】に攻撃を合わせて。突出はしないように気をつけて」
【U2】星月 歩(
gb9056)が、仲間達に声をかける。
「早めに潰す」
小さく、だが尊大に呟くのはタルト・ローズレッド(
gb1537)だ。様々に戦況に応じた手が頭の中で巡る。何よりも、向こうは未だ腹の中に荷物を抱えている。それが全て出てきたら。本星ワームがこちらに向かってきたら。
(「撤退ルートは確保しておかなければ」)
何かあれば、すぐに管制に連絡しようと、周囲を確認する。
周辺の護衛機をすり抜けたタルトを狙うHWへと天原大地(
gb5927)は、鋼の翼を捻り、ミサイルを撃ち出す。
そして、その機体ごとぶつかるかのような突進をかける。
「俺のダチに手ェ出してんじゃねェッッ!!」
「これ以上好き勝手にはさせねぇ!」
歩の号令の下、D−02で、BFへと攻撃を仕掛けるのは火神楽 恭也(
gc3561)。周囲を大きく視野に入れ、不意に現れる敵機は無いかと索敵も怠らない。
アハトで威嚇射撃を行いながら接近するのは相賀翡翠(
gb6789)。
「中身はいらねぇ‥‥墜ちてもらおうか!」
射程を計り、撃ち放たれるのは、ミサイル。仲間達の動きを視野に入れ、突出する者が居ないかどうか、自機の位置も確認しつつ、ミサイルを追撃する。
火力を乗せて、ジャック・ジェリア(
gc0672)はミサイルを撃ち込む。出来るだけ射出口を狙う。
どれだけのタロスが乗っているのかわからない。BF全てにタロスが積まれていたら。
「確実に落として行きたいですね」
次の攻撃の為に、ジャックの手は軽く操縦桿を傾けた。
「チームうーりんただいま参上ってな、部隊管制は全女勇者のお耳の恋人スミヒトさんが担当しちゃうぜ」
鴇神 純一(
gb0849)は、何処が要な場所かと見れば。今はBFを潰す事が主目的となっている。
だが、戦場は刻一刻と変わり、移動していく。次は何処がポイントになるかと考える。
西安周辺の人類側の基地や西安に打診すれば、すでに防御が固められているようだった。だが、取り戻して間もない地域であり、こちらから出撃すれば、何処からでもバグアの進攻が開始されてしまうという、そんな大陸の状況を目の当たりにする。
純一は、仕方が無いかと仲間内の情報を取りまとめ、声をかけつつ、変化を見逃さないように気を配る。
「準備は大丈夫か? ‥‥とっておきだ、受け取れ!」
【U3】の仲間達へと、龍鱗(
gb5585)が合図する。【鯨撃】の攻撃よりも、ワンテンポずらした一斉射撃だ。その目標は、射出口にある。
全域に伝わるようにと回線を開いた如月 芹佳(
gc0928)は、ひとつ歌を歌いきると、龍鱗と共に荷電粒子砲を撃ち込んだ。
「空戦は初めてなんだけどな‥‥初戦からこれかよ」
龍鱗機の近くで、護衛の合間から抜けてくる敵機へと、湊 獅子鷹(
gc0233)は、スラスターライフルで打ち落とす。
「初夏の釣りと洒落込むか‥‥」
ミサイルを撃ち込むと、周太郎(
gb5584)は、やれやれと言った風に溜息を吐く。
「肝心の主食‥‥この暑い時期に化け物魚の大食いか、やってられんな」
「各員に伝達、無茶はするなよ」
龍鱗の声に、【うーりん】はくすりと笑いながら了解の意をそれぞれに示す。
「‥‥」
BFへと向かう布野 あすみ(
gc0588)は、他の仲間達に助けられるが、攻撃をBFへと撃ち込もうとさらに向かおうとし、やがて機体が思うように動かなくなり、撤退を開始する。
「不死鳥の翼は‥‥例えバグアの埋め尽くす空でだって、羽ばたけるっ! 羽ばたいてみせる!!」
速度を上げると、クリア・サーレク(
ga4864)は、仲間達の一斉砲火の後を追うように、その機体を滑り込ませる。思い浮かぶのは、奉天で繰り広げられた激戦。失われたものはもう戻らない。ならば、それらを無駄にしない為に戦うだけだと。
変形すると、そのまま、シールドを構え、速度を上げてBFへと突進する。
クリアと共に駆けて行くのは憐(
gb0172)。
「さあ、群狼戦術で鯨狩りと行くにゃー」
軽い声が響くが、その心は裏腹に厳しさを抱いている。ミサイルが、BFへと吸い込まれ、ひときわ高い爆煙が上がった。
(「ヨーロッパではたくさんの犠牲が出て、弐番艦も大破‥‥」)
バグアの戦力が、人類を殲滅するほどあるのは、今までの戦いでも十分知れている。しかし、だからといって、わんこそばや、麺のかえ玉のように、補充されるのは我慢なら無い。
何よりも、隣を飛ぶ少女は、必要とあらば、どんな時も飛び込んで行ってしまうから。
白雪を突きたてたクリアに、BFの艦内から、幾筋もの光線が、BFの外装を貫いて飛び出す。機体が揺れる。
「クリア!」
憐が接近し、クリアが一瞬取り付いたBFへとミサイルを叩き込む。
クリアの機体がかろうじて飛行形態へと再変形するが、そこへ、また光線が襲う。派手な爆発が起こる。
「くっ!」
「憐!」
接近していた憐は、その爆発に巻き込まれた。BFの外装が刃となって機体に深手を負わす。
爆発に、搭載されていたタロスの半数がその機能を失ってただ落下して行くのが目の端に入った。
瞬く間に、BFが落ちる。だが、まだ9機も残っていた。
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その、BFを護衛するかのようなHWやCWへと、【守護天使】、【C4】、【雷光】、【380戦】、【鳳凰翔】、【SL】などが向かう。
「ここはボクたちが抑えるから、BFをお願い」
いくよ。そんな声を上げて、ソーニャ(
gb5824)機は、BF周辺に集まろうとするHWへと向かい、飛んで行く。
「いけー、エルシアン!」
鋭角な軌跡を描き、飛び込むソーニャ機から、G放電が放たれ、ミサイルが飛び、レーザーを叩き込むと、そのまま反転をかける。
「今回のキングはBF対応班。私はそれを入城させるルークね」
BFを全て降下させる訳には行かない。その為には、群がる敵機を薙ぎ払わなくては。ロシャーデ・ルーク(
gc1391)は、ブーストで加速すると、ミサイルを叩き込み、すぐに機首を返す。
摂理(
gc3333)はロケットランチャーを惜しげも無く、打ちつくす。
「当ててやる、一つ残らず!」
摂理と共に飛ぶ群雲 五葵(
gc0180)も、ありったけの弾薬を打ち込むと、管制に煙幕使用の断りを入れると、目の前に迫った敵機から遁れるように、煙を噴き上げ、補給へと向かう。
「お前等の事が嫌いだ。ここに居る全員、それが結束させてくれる力になるんだよ」
バルカンを撃ちまくるのは久木 満(
gc1051)。
1機でも多く、少しでも損傷を追わせられれば良い。仲間達がその合間に体制を立て直す時間が稼げればと。
「左右、上下にも注意して」
8式螺旋弾頭ミサイルを撃ち放つと、リア・フローレンス(
gb4312)は、仲間達に声をかける。機体を捻り、すれ違い様、HWへと、その翼をぶち当て、満機を狙っていた攻撃の軌道を変える。
「面倒だが‥‥仕方ない‥‥これ以上‥‥面倒事が‥‥増えない様に‥‥するだけ‥‥だな」
淡々と、確実に西島 百白(
ga2123)はHWを屠る。K−01が、複数の敵機を捕らえ、弾丸の雨が降り注ぐ。
「私にも手伝わせて下さいね」
可能な限り、露払いを務めよう。霞澄 セラフィエル(
ga0495)はひとつの決意を抱いてこの戦いに参加していた。
「‥‥お世話になった方々へのお礼と自らへのけじめの為に‥‥そして『人』の未来の為に」
この戦いが終わったら告げなくてはならない言葉があるから。
セラフィエルは慣れた動作でレーザーライフルの照準を合わせる。
「ドラゴン1了解、2、接近する敵機を迎撃する、ついてこい」
【380戦】伊藤 毅(
ga2610)の号令の元、骸龍、秋月 祐介(
ga6378)を護るように、4機が鮮やかな軌跡を描いて敵陣の中を縫うように駆けて行く。
「了解、それにしても、局地戦にこれほどの数が集まるのも、マドリード以来っすね」
祐介の前を護るように飛ぶ三枝 雄二(
ga9107)が、毅に答えて、目前に迫ったHWへと向かう。
「ドラゴン1、FOX2」
「こちらノーカウント、フォックス2」
「ちょっとばかりこの先の通行料は高額っすよ!」
毅が、軽く手を前に振る。
雄二が、頷。アラン・レッドグレイブ(
gb3158)は、毅と雄二のミサイルが飛んで行くのを確認すると、僅かにタイミングをずらして、ミサイルを撃ち込んだ。行く筋もの尾を引いて、ミサイルが敵機を襲う。
「こちらコスモス・Giftradio。戦線が広がった分、戦域の合間に空間が出来ています」
出発前、操縦桿を握る手はかすかに震えていた。少し前の依頼で死線を潜った記憶が蘇ったからだ。だが、祐介は震えの止まったその手で機体を操りながら、計器に現れる様々な情報を読み取って行く。
【逆光】は、CWを中心に攻撃を続けている。
ヨハン・クルーゲ(
gc3635)がバグアの降下の様を見て、ぽつりと呟く。
「空から降る災厄ですか‥‥ソドムとゴモラの話の様にはなって欲しくないですね。‥‥CWを確認、これより攻撃を開始します」
Sライフルが、CWを狙い撃つ。
「‥‥あの大部隊を退治? ふふふっ! すごい無茶を笑って言うなんて素敵♪ 私も笑って、やれることをやるだけですわ」
目の前の敵を見て、ミリハナク(
gc4008)は楽しそうに笑う。
「ぎゃおちゃん食事の時間ですわ。皆を狂わす敵を喰い散らかしますわよ」
まずは、これをと、D−03をばら撒いた。20ものミサイルが様々な軌跡を描き、飛んで行く。
「お邪魔虫は蹴散らします」
Sライフルで、着実に破片を地に降らすのはフルゲンス(
gc0417)。砕けたCWが、その特徴的な光りを失い、ばらばらと落ちて行く。
「流石に、まともに撃ち合える様な気がしないんでね。生き延びる事を優先させてもらうぜ」
とりあえず、見つけ次第CWは撃ち落とそうと思っていたウォルター・バーネット(
gb9561)は、管制により、CWを中心に狙う部隊があるのを聞き、その後を追う。
敵機の多さに、軽く肩を竦める。単独行動は無理だなと小さく呟き。
「イィィィヤッホゥゥゥ!」
(「久しぶりに赤崎さんと一緒に戦える! ハイッテンッションだぜぇ!」)
声を上げて、ドッグ・ラブラード(
gb2486)はCWへと突っ込んで行く。途中、何度か被弾するが、お構いなしである。同じ戦場にあの人が居る。それだけで、ドッグは嬉しかった。
「こっちに気を取られてくれりゃ【鯨撃】が楽にならぁ」
高いテンションではあるが、着実にライフルはCWを屠って行く。
「穴を埋めるようにがんばるよーん」
適度に攻撃をしながらティルコット(
gc3105)が管制の指示を受けて、CWを落とす為に合流する。
そんな【逆光】を追従するように、御山・アキラ(
ga0532)が空を駆けていた。ライフル、バルカンで、横合いから彼等を狙うHWを打ち落とす。
そのアキラを狙う敵機も当然ある。けれども、ファランクス・テーバイがあらかたそれを防いでいた。
紫の光線がアキラを狙うが、それすらも軽々とかわして行く。歴戦の重みがそこにあった。
「易々とやれるとでも思ったか?」
軽く笑みを浮かべると、アキラは再び【逆光】のフォローへと駆けて行く。
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西王母へと補給に向かう者の姿が多くなってきていた。それにつれ、HWやキメラが、西王母へと向かいKVを追うように集まってくる。地上からは、ゴーレムが歩を進め、接近するとふわりと空に浮く。空に浮いたゴーレムは地上ほどの脅威では無いが、それでもとりつかれれば、やっかいな相手でもある。
それを阻止する為に、西王母の周りには、【うーりん・U6】や、護衛が多く飛んでいた。
「さて‥‥行くか」
西王母近辺での戦いは、出来る限り少ないに越したことは無い。エヴリン・フィル(
gc1479)は、西王母の空域から、僅かに前に出て、積極的に敵機を迎撃に向かう。距離を取ると、ロケットを発射する。
「今の所、危険度の高い敵はこちらには向かっていませんが、地上からゴーレム。空中はHW、CWにキメラが、相当数抜けてきていますね。各機、迎撃態勢を整えて下さい」
補給する為にこちらへと向かうKVを追うHWも少なくない。アルヴァイム(
ga5051)は、それらへと向かい、駆けて行く。
「全員で帰る。そのためにも‥‥」
ヘイル(
gc4085)は、前線を抜けてきた敵機をいくつか視認すると、仲間達へと声をかける。管制からは、絶え間なく、敵状況が伝えられているが、ここ一番で役に立つのは、やはり、目視でもある。
(「仲間は守り抜く。‥‥これは誓いだ」)
ライフルの照準を合わせ、狙い撃った。
主戦場の、僅か高空に位置するハミル・ジャウザール(
gb4773)は、その巨大な機体の中、僅かな緊張と共に頷いた。
「初めての‥‥補給のお仕事‥‥大事な‥‥お仕事ですね‥‥」
「お前は俺が守る‥‥なんてな。いや言ってみたかっただけだ。こちらE2、ゼロ機。作戦を開始します」
接近するキメラへと、五十峯 紅蓮(
gb1649)はスラスターライフルを打ち込み、ツングースカで弾幕を張りながら、戦闘を開始する。
「こちらE2、ゼロ機。作戦を開始します‥‥」
仲間を掻い潜ってきたキメラに対し、ゼロ・ゴースト(
gb8265)が機首を向ける。周囲の護衛機との連携を怠らないようにと。
「この際、西王母が使えて良かったというべきかね、やれやれ‥‥お前等に食わす桃源郷の桃は無いってのにな」
BFを狙う者を優先して欲しいと、管制に伝えながら、地堂球基(
ga1094)は広がった戦線を見て、溜息を吐く。この『中原』のど真ん中に降りて来るバグアとは、肝が据わっているか、自信過剰のどちらかなのだろうと思う。
ガトリングを撃ち放ち、キメラを粉々にすると加賀 環(
gb8938)は、浮き上がってきていたゴーレムへとライフルを撃つ。
「本当にバグアはチート極まりないな、無制限物量とかやられた終わるから断固阻止だな」
「それは事実ではあるけどね。しかし西王母運用をねじ込めて良かったよ、くっくっくっ‥‥」
環のすぐ後から、錦織・長郎(
ga8268)が飛び込み、剣翼をぶち当てる。揺らいでいたゴーレムは、その体を崩し、落下して行く。
「ん‥‥撤退中の味方機発見、これより進路の確保と援護に向かう‥‥」
ミサイルを撃ち、牽制をかけると、エレシア・ハートネス(
gc3040)は、接近するHWへとキャノンを叩き込む。西王母の前に出て、自分の出来る事を精一杯やろうと、再び攻撃を仕掛けに前へと向かう。
「‥‥そのまま抜けてください、ここは、自分達が」
もう手は震えていない。崎守 司(
gc3554)は、その事実に気が付いて笑みを浮かべる。そして、そのまま、エレシアの相手取っているHWへと、ガトリングを撃ち放ちながら、突進して行く。
「此処から先へは通しません! 周囲は私が警戒します! その間に補給してください!」
戦闘開始直後に、姉と合わせ、士気高揚の為の歌を歌い切った。如月 葵(
gc3745)は、仲間達と共に、攻撃を開始する。
「引き付けるよっ。時間さえ稼いだら良いから、無理しちゃダメよ」
ジョゼット・レヴィナス(
gb9207)は、補給機の誘導をしながら、【U6】が4機まとまって動けているかを気にかけながら、敵機へと向かう。
「ったく、なんて数‥‥、けどやってみせるんだから」
HWが前線を抜けた情報を受け取ると、雪代 蛍(
gb3625)は、操縦桿を傾ける。見慣れた敵機ではあるが、本当に次から次へと現れるその姿に、眉を顰める。だが。この先は抜かせるわけには行かない。ガトリングとバルカンが唸りを上げる。
「さあ、お腹をすかせた小鳥たちにご飯の時間と参りましょう」
万が一の為に、バルカンにはペイント弾を潜ませている。ニュクス(
gb6067)は、激しい戦いになっている空域を見て、眉を顰める。
「空戦は苦手な機体なんだがな‥‥四の五の言っていられないってな。この距離なら‥‥援護するぜ!」
西王母ニュクス機の近くから、離れないようにと気を配りながら、カイト(
gc2342)は、ボウガンを射出する。
「これ以上、バグアの好きにはさせないよっ! 雛へのえさやりの邪魔はさせないさ」
ちらりと、ニュクス機を視界の端にいれ、キョーコ・クルック(
ga4770)が飛び出して行く。HWへと接近すると、レーザー砲を打ち込んだ。その合間にも、レーダーのジャミングには気を配る。これが強まるようならば、戦場が変化すると言う事なのだから。
慣れない西王母での補給に、ほぅぷ(
gb8877)は管制から指示を受けて回ってくるKVへと補給をこなす。
「はひ〜はひ〜忙しすぎます目がぐるぐる回るです。次はどなたですかぁ? あうあう、頭ぼ〜んなんて冗談いっている場合じゃないです」
「たのしむ気のない私に隙はありませんよ!!」
ほぅぷ機を護るように、ハーモニー(
gc3384)は周辺を睥睨する。仲間達の合間を縫って、HWが飛来するのを見つけると、ピアッシングキャノンをで迎撃する。
ある程度補給が済めば、西王母本体が空になる。補給へと向かう西王母を見送ると、ラサ・ジェネシス(
gc2273)が、元気良く、前に出てきた。
「我輩死すとも愛は死なズ! 補給なら任せろー。必ず生きてかえろウ、約束ダヨ、ちゅっ」
「補給の邪魔はさせません」
ラサ機の前を陣取っている扼城 七歌(
gc0081)が、抜け出たHWへと向かって行く。補給機を横へ逃がし、ライフルを撃つ。
「あれっ?」
西王母を護る為に、HWを攻撃していたソウマ(
gc0505)の弾丸が、少し離れた敵機へとぶち当たる。味方機に当たらないのが幸いかと、胸を撫で下ろしつつ、自身のキョウ運に軽く溜息をつく。強気で挑んだ任務ではあったが、内心不安もあった気持ちが僅かにほぐれる。
「‥‥ん。捉えた。ブースト発動。ついでに。ハイマニューバ展開。突撃開始」
ちらりと光る敵機。CWを発見すると、最上 憐 (
gb0002)は、機体を西王母の前から動かした。
「‥‥ん。逃がさない。突撃。突貫。突進」
位置や敵機の情報を細かく入れながら、CWは、とにかく迎撃する事に決めていた。粉々に砕け散ったCWが大地に降り注いで行った。
「さて‥‥どういうモノか『見』させて頂こう――この先を‥‥少し先の世界を想像するために、ね」
広がった戦線を眺めて、UNKNOWN(
ga4276)は、指揮官の性格を考える。こちらの被害が多いか、あちらの被害が多いか。上へと上がってくるゴーレムをエニセイで軽く打ち落とす。
誰一人、かけることなく帰す。春夏秋冬 立花(
gc3009)は、そう心に思いながら、西王母付近の管制の一つとなる。補給機の先導を勤めながら、戦況の確認を怠らない。
西王母付近で管制の一角を担っているのは長瀬 怜奈(
gc0691)。
「BFの高度がかなり下がっているようです。注意されたし」
ちゃくちゃくと、BFは落とされているのだが、何しろその数が多かった。
●
BFの周囲を固めようとするCW、HWを相手取っていた【鳳凰翔】だが降下部隊のフォローに回る為に、その高度を僅かに下げる。
「私達3人が揃って作戦行動なんて久し振りね‥‥二人とも無理はしないようにネ」
「了解、姉さん‥‥」
「バグアの勢力圏なだけあってお出迎えも多いか‥‥でもね‥‥悪いけど邪魔はさせないよ?」
鳳由羅(
gb4323)、鳳覚羅(
gb3095)、鳳 螺旋の姉弟が流れるように攻撃を開始する。覚羅、螺旋がロケットランチャーを撃ち込むタイミングを由羅がレーザーを撃つ。
「次が来るみたい‥‥二人とも迎撃態勢を」
目前に迫るのはレックスキャノン。その砲台が、鈍い音を立てて、低空に侵入してきた機体を襲うが、同時に、彼等も攻撃を開始していた。レックスキャノンを護るかのように、ゴーレムも何機か固まって動いている。その数は10を下らない。
「陽光で 影見えずとも 降下する 危機破る友 義は我にあり」
低空で、対空砲を持つレックスキャノンを攻撃する為に向かった四十万 碧(
gc3359)は、その砲火を浴びる。ある程度の攻撃はファランクスが防ぐが、ぐらりと傾いだ碧へと、浮かんできたのはゴーレム。
決して突出はしては居なかったが、数機現れたゴーレムは碧機にぶち当たり、その機体を傾がせ。傾いだ所にまた、別のゴーレムがぶち当たる。レックスキャノンを攻撃する為に高度を下げ過ぎていた。揺らいだ碧機にまた、ゴーレムがぶち当たる。
「管制。ゴーレムが浮上して、体当たり連携攻撃をしかけるようです。低空進入時に、注意願います。ファランクスは無効です」
「スマイル、スマイラー、スマイレージ☆ ‥‥上に注目しがちな物があると下を見たくなるんですよねぇ」
須磨井 礼二(
gb2034)とYU・RI・NE(
gb8890)は、2機で戦場を駆ける。何らかの隠し玉はあるに違いない。その想定の下、仲間達から外れた場所にも翼を踊り込ませるが、いかんせん。怪しいと思った山影から、ゴーレムが数機現れた。とっさに回避行動を取るが、間に合わない。妙な連携の仕方を目の当たりにする。
「ちっ」
「撤退しましょう」
やたらと、ゴーレムに出くわした。この戦域はゴーレムが多いという情報を管制に託すと、2機は仲間達の支援を受けながら、撤退する。
「ここが最後の砦になってきそうですからね‥‥空に集中できる様、地上の敵にはさっさと退場して貰います!」
低空では、飛行するキメラが次から次へと現れる。ベル(
ga0924)はそれらを薙ぎ払うかのように銃弾を打ち込む。地上へと降りる為に、ある程度はクリアにしておきたい。
「ここで増援はキツいもんがあるからな。何とか止めないと!」
「空から降る災厄、か‥‥ウダーチヌイを思い出すわね」
【うーりん・U5】砕牙 九郎(
ga7366)、冴城 アスカ(
gb4188)が共に低空から進入する。彼等に合わせるかのように動くHWへとアスカはスラスターライフルと重機関砲を撃ち放つ。
「右40度前方に、降下に適した場所があるようですね。そちらへ向かいましょう」
管制から情報を入手し、この地の地形を確認した夏 炎西(
ga4178)が、塹壕を作り、地上戦を開始するための位置を割り出すと、仲間に伝えつつ、ロケット弾を撃ちながら、低空へと突入する。
「星振る‥‥なんて洒落たのならよかったんですがね」
一筋の光りが叢雲(
ga2494)機から、低空へと突入する仲間からHWの攻撃を逸らす。アハトの光りだ。
機首を返すと、上空を視界の隅に入れながら次の敵を視野に入れる。
「軍曹さんの言うとおり、ちゃちゃっとやって帰るとするか!」
(「やれやれ、随分とまた大勢で押し掛けて来たもんだな。来て早々で悪いが、お引取り願うぜ」)
ぐっと機首を下げるのは、館山 西土朗(
gb8573)。
管制からの指示が飛び交う。フレア弾投下の刻限だ。
「U5冴城了解、派手にぶちかますわよ!」
アスカが口元に笑みを浮かべると、その重い土産を投下する。
それを皮切りに、次々とフレア弾が投下される。
ひときわ大きな爆発音が響いて行く。
土塊や、木々が歪み、吹っ飛ぶ。大地を穿つ、フレア弾の威力だ。
穿たれた大地へと、KVが飛来する。
「悪巧みしとるごたるね‥‥が、それは通さんたい」
空を睨み、守原有希(
ga8582)が呟く。
地にめり込んだKVの足を引き抜くと、フレア弾の爆撃から逃れたゴーレムの姿を目にする。その数は、降下するタロスと同じほど居るだろうか。
「んし達は存在すら許さん!」
有希からの合図で、大地に下りた仲間達の中から、数機による、一斉射撃が開始される。
「一体でも多く潰す。私たちが最後のチャンスなんだから」
明るい表情を引き締めて、安藤ツバメ(
gb6657)が有希と共に走る。
煙幕をはり、降下してきた仲間達は意外と多かった。
降下すると同時に、功刀 元(
gc2818)はすかさず地殻変化計測器を設置する。何処の戦場でも、大地を突き破って出てくるワームが居る。ぱっくりと口をあける長虫は、KVをひとのみにするほどの大きさだ。
しかし、大地の上も、ゴーレムやレックスキャノンの移動する振動があり、地中からの振動をより分けるのは難しそうだ。何しろ、降下した場所はこの一点。半円を描く前方から、じわじわと接近する振動が絶え間無い。
「さあ! 塹壕の良し悪しで今後の展開が決まりますよー! 頑張って掘りましょうー!」
シャベルを片手に、元は、滑走路として役に立つようにと塹壕の中を慣らして行く。
「きな臭い戦場だな。何事もなきゃいいけど」
無数の情報が集まる。その中から、必要な情報を選び取りながら、明菜 紗江子(
gc2472)は地殻変化計測器を設置する。
「なんとしても生きて帰らなきゃ‥‥‥ね!」
精鋭機、アースクエイクの接近は今の所無い。だが、じきにその戦線も開かれるだろうという事は、容易に予想できた。すっと息を吸い込み、
地殻変化計測器を設置すると、レインウォーカー(
gc2524)は、勢い良く塹壕の外へと飛び出す。
「北アフリカ以来だねぇ、こんなに派手な作戦はぁ。派手に暴れるとしようかぁ、相棒」
近寄る敵機へと、レーザー砲を向ければ、その動きが鈍る。
「さて、緑レックスのお相手が出来れば良いがねぇ」
にやりと笑い、無造作に踏み出して行く。
システム・ニーベルングを展開しつつ、ロイ・マッケンジー(
gc3281)も地殻変化計測器を設置する。
「情報収集は大事だろ? システム起動‥‥さて、コレで多少は違うかね?」
未だKV戦というものに慣れていない。後方からの支援が出来ればと思うのだ。
ショルダーキャノンが、前衛からこぼれてくるキメラを粉々に吹き飛ばす。
機体のモノアイが光り、左右に振れる。諷(
gc3235)はシャベルを手に、塹壕内を僅かな傾斜角をつけるよう気をつけながら慣らして行く。ファリア・レンデル(
gc3549)は、仲間達と離れないようにと、周囲に気を配りながら、出来る事をこなして行く。
「さあ、ツヴァイ‥‥一緒に頑張りましょう」
煙幕を張り変形着陸をすると、シルフィミル・RR(
gb9928)は仲間と共に塹壕に寄って来るゴーレムやHW、キメラへ向かいグングニルを構える。
(「本星からの降下部隊‥‥バグアさん達も本腰入れてきた、というわけですか? ‥‥でもいくら本腰入れて来ても、私たちがきっと返り討ちにしてあげますの」)
本格的な戦いは、タロス降下後。それまでは。一閃する機槍が、複数のキメラを横薙ぎに吹き飛ばした。
「空の連中が気兼ねなくやれるように、こっちはきっちり掃除するぞ」
塹壕を背にし、ネオ・グランデ(
gc2626)はガトリングとレーザーバルカンを撃ち放つ。無数の弾丸がキメラをはじく。不意に目の前に現れたキメラを盾で受ける。
背後からマシンガンの激しい音が響き渡る。
「ここは通行止めだ。他に行くんだな」
シャベル片手に諷が口の端に笑みを浮かべた。
●
BF迎撃は、5機目に移行していた。
その時である。
降下途中のBFのハッチが、一斉に開いた。
横一線に広がる、BFの布陣。
それは、BFを一転突破で迎撃する仲間達にとって、空域を移動するに時間のかかる布陣であった。
補給に戻り、再びBFへと取り付く者も多く、BFの降下を推し進める結果ともなっていた。
ゆらりとした長い手足を、大きな輪の先にぶら下げて、タロスがふわりと空に展開を始めた。
「タロス、降下開始」
戦闘を避け、各地域の仲間と連携を取りながら、希崎 十夜(
gb9800)は情報収集に励んでいた。その目の前で、降りて来るタロス。攻撃したいのをぐっと堪えて、コスモスサヤカへと繋げる。
【千日紅】、【うーりん・U1、U4】等が、それを確認するとタロスへと機首を向ける。
淡紅色した光線が飛びかい、何機か被弾する。だが、機体操縦がぶれるほどの被弾ではない。
「この夏はこの辺が本気で熱くなりそうね‥‥目障りだけど」
(「やれやれ、ただでさえ敵の多い所に、追加戦力降下なんて嫌になるわね」)
とっとと追い払う。
軽く肩を竦めると、百地・悠季(
ga8270)は、K−02を放ち、ミサイルで追撃をする。その直後紫の光線が飛来する。
「『ABアタック』起動‥‥後ろには行かせないっ!」
力を乗せてトライデントを撃つ、高日 菘(
ga8906)。
やはり、面倒な中身を乗せていた。菘は、僅かに目を細める。
「鯨ごとまるっと落としたかったけど、簡単にはさせてくれへんか」
「こっちは任せて」
部隊内の最後尾を守り矢神小雪(
gb3650)が寄って来るHWやキメラの攻撃をファランクスで跳ね返す。
仲間達の作ってくれた間に、橘川 海(
gb4179)と澄野・絣(
gb3855)が、飛び込む。
「絣さん、いくよっ! 新型複合式ミサイル誘導システム、起動っ!」
「了解。さて、ちょっとばかり痛い思いをしてもらうわよ。覚悟はいいかしら?」
海機から、ミサイルが飛び、絣機が、その速度を上げて、急接近すると、オメガレイを照射。2人の連携攻撃『光の矢』がタロスを傾がせる。揺らいだタロスは、糸の切れた操り人形のように、地上へと落下して行く。
「各機、タイミング合わせ。外すなよ‥‥攻撃開始!」
【うーりん・U4】の指揮を取るのは、ヴァレス・デュノフガリオ(
ga8280)。タロス密集空域へと飛び込む。
乱舞するする紫と淡紅の光線。機体が衝撃に傾ぐ。
「BはCの援護に回れ。A各機、データリンク。あのタロスを狙い撃つ」
「おおお。敵も味方もいっぱいじゃぁ‥‥っ。が、頑張らねばならぬのう、うむ」
ミサイルで牽制しながら接近するのは正木・らいむ(
gb6252)速度を上げ、接近すると変形しリッターシュピースを腹にぶち当てると、速攻再変形。
「きっと痛いこと間違いなしというものじゃ。敵の耐久力もわらわの練力も。‥‥ほんとに消費が激しいのじゃぁ‥‥」
「全く‥‥群れるなとは言わないが、礼節位は弁えないのかね?」
らいむの背後から、流叶・デュノフガリオ(
gb6275)がライフルで狙い撃てば、別方向から、紫の光線が流叶を穿つ。機体がぐらりと傾ぐが、持ちこたえる。
「タイミング合わせて一気に落とすぞ、回復の間を与えるな」
ふと、同じ戦場で戦っている恋人の事を思い出しす。
(「心配だが、あいつは俺より強いから‥‥まあ大丈夫だろ」)
ブロンズ(
gb9972)はミサイルを撃ち、ライフルの照準をタロスに合わせる。
「空から降ってくるのは雨や雪だけで充分なんだがな。地面に着く前に処分してしまおう、うん」
仲間達とタイミングを合わせ、ユーリ・ヴェルトライゼン(
ga8751)は、重機関砲を撃ちながら、接近し、剣翼をぶち当てる。
「接触は一瞬よ‥‥吼えろ、SilverFox!!」
ペアを組むセージ(
ga3997)は、ここに到るまでに、被弾し、戦線を離脱している。その分までがんばらないとと、タロスの中に速度を上げて突っ込むと、パンテオンの弾丸を撒き散らす。速度を緩めず、スラスターライフルで強襲する。しかし。その速度に仲間は追いつかない。援護のミサイルが飛ぶも、敵機が多い。
「! でも、撃墜マークを沢山持って帰ってあげるよ!」
タロスに当たる前までは、随分と沢山の敵機を落としたのだから。
失速した銀子機は、操縦が可能なうちに、撤退を開始する。
鮮やかな軌跡を描いて、【うーりん・U1】がタロスへと迫る。
「斬り込むぞ!」
前を行くのは狭間 久志(
ga9021)。
「かなりの降下が予想されます。深追い厳禁ですよ」
周辺情報を入れつつ、タロス降下の状況を見て、桂木穣治(
gb5595)は純一へと回線を繋ぐ。
「出来る限り落としましょう」
穣治機を護衛するのは麻宮 光(
ga9696)。
「ばらばら落ちてきやがって‥‥締まって行くぜ」
後方を行くのは賢木 幸介(
gb5011)。
「甘い相手では無い。突出と孤立は避けるぞ」
鹿島 綾(
gb4549)が、仲間達に声をかける。
十六式が、タロスへと着弾する。続け様にライフルを打ち込み、速度を上げて、タロスへと迫る。紫の光線が当たるが、さしてダメージは食らわない。すれ違い様に、剣翼がタロスの腹をしたたかに打ち付ける。
「叩き落す――では生温いな。遠慮無く吹き飛ばさせて貰おうか!」
久志のコクピットではやぶさの縫い包みが、かすか揺れたかのようだ。その速度に、僅かに期待が震えたような気がする。瞬く間にタロスに迫ると、G放電を撃ち放つ。
「ハヤブサライダー舐めるなよ!! 行くぞ、翼面超電導‥‥!!」
スラスターライフルを叩き込むのは光。この戦場には追い続けていた人が居る。
「まだまだ!」
「止まってんじゃねえよ。そのまま落っこちろ!」
援護に徹していた幸介は、仲間達の攻撃で生まれた隙に、その弾丸に力を乗せて、4連キャノンを叩き込む。
ぼこりと、タロスに穴が開いた。
動きを止めたタロスは、分解しながら落ちて行く。
波状攻撃。
【U1】は、タロスに合間を与えず、畳み掛けるような攻撃を連ねて行った。
様々な場所を転戦している【雷光】も、タロス降下の補助に回る。
「むかし天が落ちる事を心配した奴がいたそうだが‥‥コレの事を言うなら確かに心配しておいた方がよかったな」
速度を上げて、ミサイルを撃ち込むのは仮染 勇輝(
gb1239)。
「こちらCDL1、援護する。鹿嶋さん、こいつはかなり派手な仕事になりそうですね」
タロスに当たる、傭兵達の背後に回りこむような、そんな敵機を絞り、仲間達に攻撃角度を提示しつつ、クラーク・エアハルト(
ga4961)も速度を上げて、ミサイルを撃ち込んだ。
「そうだな。これほどの増援とは‥‥この前のアフリカでの仕返しと言ったところでしょうか‥‥まぁ、大局的なことは上層部に任せて俺達は目の前の仕事を片付けますか」
この戦いを通して、【雷光】は、手の届く範囲、たどり着ける範囲の仲間達の危機を、危機になる前に、なった後から、攻撃の補助を行っていた。鹿嶋 悠(
gb1333)は、ちらりと従妹の機体を目の端に入れると、軽く溜息を吐いて、速度を上げて、タロスへと向かう。スラスターライフルが的確に腹をえぐった。
「うわー‥‥団体さんが一杯きたのですよー。ちゃんと戦えるか解りませんけどー、頑張るのです」
悠の従妹でもあるシェリー・クロフィード(
gb3701)は、従兄はともかく、大切な人をしっかりと視線の中に入れる。
(「アクセルさんも悠兄ちゃんも居るから心強いけど‥‥アクセルさんの背中はボクが護るのですよ♪」)
両手軽く握り拳。
あわてて、操縦桿へと戻し、周囲の動きを逐一受信し、発信を行う。
「敵戦力降下ですか‥‥ここで出来る限り叩いておきたいですね」
【雷光】の仲間は皆、一度一緒に飛んでみたかった先輩ばかり。アクセル・ランパード(
gc0052)は、笑顔を浮かべるシェリーを見て、頷くと、攻撃へと気持ちを切り替える。
(「――護りたい人も居ますからね」)
攻撃する箇所は同じまま、突入する角度を僅かにずらし、攻撃を開始する。
「宇宙から降下作戦とは恐れ入る。というかだね。我々『ヲタク』の世界ではある意味お約束なんだがどうなんだろう」
にこやかな笑顔の下に、鈴葉・シロウ(
ga4772)は、容赦の無い攻撃を向ける。K−02に、ストレイ・キャッツ。本気も趣味も織り交ぜた、本気の本気な攻撃である。
(「地球人なめるなよ異星人」)
●
横に広がったBFの片方端に取り付いた傭兵達へと、本星ワームが向かっていた。
けれども本星ワームはBFの援軍に辿りつく事が出来ないで居た。
BFが2機迎撃されるまでの合間に、本星ワームと激闘が展開されていた。
向かう部隊は、在敵を迎撃しつつ【SL】、【C4】。数機と、スカイフォックスが向かう。
「攻撃順、こういう形でどうです?」
「了解です」
「では、お先に」
厳密に一斉に攻撃というのは難しい。それを良く知る【C4】井出 一真(
ga6977)は、同目標に向かう【SL】御崎 緋音(
ga8646)へと声をかける。緋音もそれは心得ており、素早く攻撃目標を設定する。降下を考えていた【SL】だが、先に本星ワームが下りてきたので、先にこの空域へとやって来ている。
「まあ、やっぱ、BF狙ってるヤツを狙うわな」
HWなどを攻撃しつつ、須佐 武流(
ga1461)も本星ワームへとその攻撃の刃を向ける。
「タロスを満載したBFを地上にでも降下された日には大陸での戦力バランスが瓦解し、辛うじて持ちこたえている北京などの戦線が崩壊するのは目に見えているからな。何としても水際で阻止しなくてはな」
そういう事だろうと、榊 兵衛(
ga0388)が頷き、本星ワームへと機首を向け、攻撃を開始する。
「ただのんびりと降下してくるわけがない‥‥まだ何か隠している筈だ」
一真がつぶやくと、スラスターライフルを撃ちながら接近する。
「あー、随分と奮発してくれたもんですなあ敵さんも。ま、こうやって防ぐタイミングがあるだけで儲け物と考えておきましょう。実際数年前まではそもそも阻止なんて発想すら出来なかったワケですからなあ」
周囲の敵機を減らしてきた稲葉 徹二(
ga0163)は、僅かに目を眇める。随分とあの日の戦場から遠くにきたものだという思いがある。
人類の進歩は早い。早すぎる程に。バグアが楽しみ、生かし続けている事がこの先どう転ぶのか。
レーザーが本星ワームへと飛ぶ。
「まるで早めのお祭り、ですね。大事に至ることが無ければよいのですが」
徹二とBF周辺の敵機を屠ってきた南部 祐希(
ga4390)は、笑みを浮かべながら、なにやら薄ら寒いものを感じていた。今は空戦の真っ只中。なのに、人形で戦った機槍の感触が不意に蘇ったから。あれは、ロシア戦線だった。そして、その機槍で屠ったのは。考えを振り払うように首を軽く横に振り、ガトリングで弾幕を張りながら、本星ワームへと迫る。
本星ワームから、紫の光線が、襲い、機体が揺れる。
「長時間の戦闘は得意とする所だ。粘り強い戦いをしよう」
レティ・クリムゾン(
ga8679)は、仲間の被弾状況を確認する。万が一の場合は、それぞれ補給に戻ってもらわなくてはならないかと、軽く頷く。
飛び交う光線。銃弾。入り乱れる敵と味方。
(「大規模の戦闘に近いな」)
傭兵の多さに、笑みを浮かべると、仲間達と合わせて攻撃を開始する。ちらりと、楓姫(
gb0349)を見れば、楓姫も、レティを見る。
「あんただけの‥‥派手な花火だっ!」
楓姫は、ありったけの攻撃を仕掛ける、レティと呼吸を合わせた攻撃が、本星ワームへと吸い込まれる。
強化FFが、消える。
「逃がしませんよ」
緋音は、素早くG放電を撃ち込む。
「御崎さんには無事に帰って貰います。絶対に。 行きましょう、BADBOY。不安ですか? 私もです」
緋音の側に寄せて飛ぶのは、ガーネット=クロウ(
gb1717)。力不足は百も承知。少しでも長く戦域に止まり、敵に嫌がらせ攻撃を仕掛ける気はいっぱいである。なによりも、緋音の無事を願いミサイルを撃ち込む。
「相澤、行きます!」
本当に凄い数の敵が居る。相澤 真夜(
gb8203)は、この戦場をかなり叫びながら過ごしていた。けれども、踏ん張る所は踏ん張らないといけない。狙いを定めて重機関砲で弾丸の嵐を起こす。
「力不足は承知している、覚悟の上だ!」
生きて帰る。何よりも、この戦場の全ての皆が、無傷とは言わないけれど、生きて帰って貰う為に。仲間の行動を邪魔しないようにと後方から援護を中心にしていた、イレイズ・バークライド(
gc4038)が、ミサイルを撃ち込む。
「落ちろよ、異星人」
SG−01で狙いすました弾丸を撃つのは紫電(
gb9545)。ボイスレコーダの擦れた音が聞こえる。
自身の力の限界を知る為に、この戦場で、考え付くだけの行動を試した。それらは、上手くいかなかったけれども、KVに慣れ、KVを操る技が上がれば、いずれ必ず、出来る日が来るのだろうという手ごたえもあった。
その合間から、タイミングを計っていた2機が飛び出してくる。
周辺の敵機を攻撃していた、2機だ。
ミサイルを撃ち込むのはファルル・キーリア(
ga4815)。
「時雨、タイミングは任せるわ。こっちも一緒に仕掛けるわよ!」
「待ってた甲斐があった‥‥。ここで全て終わらせる‥‥この青い星が貴方達の墓場‥‥。覚悟‥‥! これが私の全力‥‥! 震えて沈めっ‥‥!」
力を温存していた瑞浪 時雨(
ga5130)が、本星ワームの目の前に躍り出ると、ミサイルを撃ち込んだ。戦いに加わりたいのを堪え、この時を待っていたのだ。1機でも本星ワームを沈めたくて。
同じように、戦力を温存していたヒューイ・焔(
ga8434)がミサイルを撃ち込む。
「ここは俺らで洗い浚い持って行かせてもらうぜ!!」
ファルロス(
ga3559)が、御影・朔夜(
ga0240)と攻撃のタイミングを合わせようと本星ワームを狙いすます。
「悪いが、形勢逆転だよ‥‥!」
戦いは勝てば良い。冷めた眼差しで御影・朔夜(
ga0240)のレーザーライフルが、本星ワームを打ち抜いた。光りの残像が、本星ワームを抜けて、かすかに後方へと流れた。
地上に、タロスが降り立った。
1体。
また1体。
山や、林の合間から、横一列になって、ひたひたと西安を目指し、進んで来る。
約半数のタロスが、降下に成功をしていた。
地上の塹壕から戦う傭兵達は、空と同じく、絶え間なく押し寄せてくる敵と、持久戦を繰り広げている。そこに、タロスの降下である。
地上と空を行き来しようと考えていた者は、その敵の波状攻撃に、空に戻るのは補給だけと言う状況になっていた。
「全員生きて帰るよ。生きてればいくらでも挽回することはできるんだから」
天と地と。敵機で埋まっているのは、ある意味壮観かもしれない。神撫(
gb0167)は唇を引き結ぶ。しかし、天にも地にも。仲間達の機体が目覚しい働きを見せている。
レーザーライフルを撃ち、そのまま、速度を上げてタロスへと迫る。アスクレピオスを腰にため、由梨が居る方向へと、タロスを向かわせるかのように攻撃を撃ちつける。
タロス機の紫の光線が神撫を穿つ。
「さぁ行け! 破壊神!」
巨大剣・シヴァを振り抜くのは如月・由梨(
ga1805)。
「バグアも東に西にと忙しないですね。まぁ、それは私たちも同じということでしょうか‥‥いつも通りにこなしましょう」
空気を震わせ、剣がタロスを凪いだ。タロスの振り下ろそうとする槍が、由梨機に届く寸前で、その力を無くし、大地に落ちる。ゆらゆらと揺れながら、タロスが切られた方向へと、地響きを立てて沈む。
やる事は何時もと同じ。
殴る。ただそれだけなのだから。
「破壊神も至近に迫られると窮地‥‥か?」
レーヴァテインを片手に、アンジェリナ・ルヴァン(
ga6940)機が由梨機の死角に入ったタロスの槍を受け流す。紫の光線が肩を穿ち、僅かに体を崩されるが、その程度ではどうと言う事も無い。笑みを浮かべると、タロスへと接近し、機剣を撃ち込んだ。
「由梨は存分にその破壊力で薙ぎ払え‥‥ッ」
タロスはまんまと由梨の前にと捧げられ。
「守ってちゃやられる!! 攻めろ!!!」
戦力を温存していたインファレンス(
gc2581)が飛び出る、今までに無いほどの覚悟があった。力を乗せた一撃を加える為、塹壕から離れた場所へと向かい、突進をして行くが、その後方を叢雲が追い、機体操縦不可能となったインファレンスを拾い上げた。
「降りてきたぞ! ここが最後の砦だ、しっかり踏ん張れ!」
仲間をライフルで援護しているのは、キリル・シューキン(
gb2765)。塹壕に寄って来る敵を迎撃する。
「必殺の一撃! ゼロブレイカァァ!!」
出来る限り粘って。そう、前に出ていたツバメは、タロスと打ち合う。重機関砲で、キリルが援護するが、横合いからゴーレムが数機現れる。手数を取られた。
「ボクの邪魔しないでよ!」
ガトリングを撃ち放つのは、ノエル・クエミレート(
gc3573)。ツバメの横合いのゴーレムへとナギナタを振るうが、挟まれる。横に、縦に、長い柄の先の刃が踊るが、二方向からの攻撃が、ざっくりと入った。
「少しやばいね‥‥。撤退させてもらうよ」
地上戦は押されている。それは、仲間達の目にも明らかだった。
「まずいですよー。 ここは一旦引き上げたほうが良いと思います。撤退を進言しますよー」
元が、地上で戦う仲間へと、声をかける。
持久戦の様相。さらに、補給に行って帰る合間は、戦力が落ちる。
「これ以上は機体捕獲の恐れ有り、迅速に離脱請う!」
被害状況と、敵情報を受けて、炎西も撤退を口にする。
「‥‥上空から‥‥新型です」
紗江子の下に飛び込んできたのは、この戦場を変えるであろう情報だった。
BFが5機落ち、本星ワームが1機、落ち、もう1機も落ちる。
その時。
一際巨大なビッグフィッシュから、1機の機体が飛び出した。
花の蕾を鋭角にしたようなライン。
見慣れない、青い機体だ。小さな物体が、周囲にいくつか、青い機体を取巻くように浮かんでいる。
変形すると、南国の花が開いたかのような、真っ赤な塗装が目に入る。
中心にあるオシベのようなとがった物体が、怪しく光った。
「っ!? 何か来る、退避ー!!」
羽矢子の声が響く。
空気が揺れる。本星ワームにとりついているKVが、何機かその光線に巻き込まれる。狙われたのは、BFを攻撃している傭兵達だ。本星ワームと、BFの戦域は渾然となっている。その中を、太い光線が延びたのだ。
それの盾になろうとしたのか、スカイフォックスが何機かそのレーザー砲の前に飛び出し、操縦不能に陥っているようだった。
「‥‥兎に角情報を残さないと‥‥」
祐介は、移動して行く青い機体を食い入るように見つめる。
「プロトン砲の何倍の威力があるんだ?」
勇輝が、様々に入力を開始する。
多くの仲間達が、新型が現れたと見るや、情報収集を開始する。
青い機体は、再び変形をすると、蕾のような形に収まり、本星ワームにとりついた傭兵達へと機首を向けた。
【雷光】が、割って入る。
「貴方の危険度が一番高そうだ!」
「光栄だね」
「ここで落ちてもらえば、後が楽になる!」
「そう簡単に落ちると思ってもらっても困るが」
クラークの一撃がかわされて、ミサイルと光線が一度に入る。悠がその横合いからライフルで狙い撃つが、簡単にはじかれ、逆にライフルと思しき攻撃を続け様に受ける。重い。
「女性を助けられなかったのがちょっと、アレでね、異星人!」
「フェミニストは、嫌いではないよ地球人。さて、そろそろお仕舞にしたいのだが? 君達の力は十分に見せてもらった。少しばかり、侮っていたのを詫びよう。このままでは、どちらにとっても消耗戦にしかなるまい。それは、あまり良い事では無い。我々は西安を諦めて引く。貴君等も、一時引く事を進める」
続け様に、重いガトリングと、K−02のような範囲攻撃がシロウと、その背後の傭兵達を襲った。
「私の名はドレアドル。この大陸に赴任してきたばかりだが、いずれまた合間見える事を約束しよう」
随分と手数も武器も多い敵だ。
しかも、硬い。
「地上、タロス他敵兵力、北京方面へ撤退を開始しています」
さやかは何枚目かのメモに書き込み、仲間達へと配信をする。
「西安を守れたなら御の字だ。これ以上こっちも犠牲を出すのは得策じゃない」
デラードからの通信が入る。
西安周辺の空港にも被害は及ぶ事は無く、ひとまずの脅威は阻止する事に成功したのだった。