●オープニング本文
前回のリプレイを見る●
「頼むぞ‥‥」
広大な中国の地図を見上げたまま、椿・治三郎(gz0196)は腕を組む。UPCの正規軍が展開を終える前に、1つでも多くの敵拠点を解放できることが望ましい。一般人多数からなる正規軍は、バグアの主力とぶつけるよりも治安維持に当てるべき、と参謀部は分析していた。
「‥‥歯がゆいが、な」
長くバグアに支配されてきた中国は、難地なのだ。戦って勝つだけではなく、その後まで考えれば、正面の戦闘は少しでも多く傭兵に頼らざるを得ない。
●
瀋陽に駐留していたUPC軍は、『傷門』張家口市の様子がおかしいとの一報を受ける。
すぐさま、砂漠基地GDABへと連絡を入れ、一軍が向かう。
もうもうと上がる黒煙。
それは、黒に緑のラインの入ったゴーレムが、片端からバグアの拠点を破壊して回った跡だと言う。
そのゴーレムは集中砲火を浴びつつも、各拠点を半壊させて動かなくなったのだとか。
パイロットは脱出した後であり、そのゴーレムはただの金属の塊となっていた。
市民感情はUPC軍を良いものとは思っていない。
しかし、バグアが、バグアを襲い、戦場のようになった瞬間を見てしまっていた。
その激しさを見て色を無くした張家口市はUPC軍を迎え入れたのだった。
●
北京環状包囲網北東を跋扈する、バグアにもUPCにも組しない、『祭門』という組織があった。
彼らは、ただ生き延びる事のみを掲げる、民人達である。
現在、瀋陽に白鼬という老齢の男が客分と言う名の人質として、『祭門』の行動がUPC軍の裏をかく者ではないという証になるべく、在留し、赤峰空港付近には、狐老という、青年が『祭門』の頭として、避難する人々を纏めていた。
その『祭門』から、一振りのサバイバルナイフと共に、赤峰空港と、第二赤峰空港、そして、『傷門』張家口市の情報が入ったチップが届けられた。
サバイバルナイフは、強化人間となったペッパーという運び屋のものに間違いが無いと鑑識からの情報が上がる。
「もしも、生きているのならば、助けてやって欲しいんじゃが‥‥」
壱岐玄界灘でバグア侵攻時からずっと、反バグア組織を纏めていた、三山宗治が、皺深い顔をモニターに映し出した。
この時期にすまないと、深く頭を下げた手には、トウシューズが握られていた。
●
ペッパーはキメラから逃げていた。
屠っても、屠っても、追いかけてくる、頭は黒い牛。身体は人間。そして、背には真っ黒な猛禽類の羽が生えている。
もう、何体目だろうか。
domestique noir。
そう、このキメラを呼んでいたのは、ロウだった。
「あたしも、とんだ馬鹿野郎だ‥‥」
死んでしまえばいいのだけれど、このまま、このキメラに殺されてやるのは業腹だった。
情報をUPC軍へと流すと、ゴーレムを無効化し、タートルワームとRCと戦い、アグリッパを破壊し、水門を開放した。そのまま、ロウを倒しに向かおうと思ったのだが。
その時、あの男が目の前に現れ、いとも簡単に強化ゴーレムを破壊した。
何処にでもいる、何処かくたびれた風の、普通の顔をした男だった。
それが、一瞬で禍々しい雰囲気へと変わった。
きゅっと吊り上った口元は、間違いようもなく、先日出会った男である。
アジア・オセアニア総司令ジャッキー・ウォン。
『これはこれで、面白いですが、少しやり過ぎましたね』
死ぬ。
そう思った。
だが、何の気まぐれか、ウォンは踵を返して立ち去って行った。その後姿と入れ替わるように、domestique noir が現れたのだ。
二体のdomestique noir を倒すと、走った。赤峰空港へと。
そこへロウは戻るはずだから。
だが、また二体。ペッパーを襲う。
その繰り返し。
強化人間であっても、体力も気力も尽きかけていた。
もつれる足を引きずるように、ペッパーは岩だらけの坂を上る。岩場の合間に倒れ込んだ。
見上げると、星が綺麗だった。
●リプレイ本文
●
夢から覚めたかのような表情をしている人々。
バグア軍が、生活と密着し、渾然一体となっていた張家口市。
夜の闇の合間に、生活の光が点々と灯り、その合間に、破壊されたバグア拠点の煙が見える。
今までは、夜間警戒に動いていたのはバグア軍だったのだろうが、変わりにUPC軍が警邏を行っていた。
「危ないですよ」
「ありがとう。気を付けるわ」
緑色の線の入る漆黒のゴーレムへと近付くラウラ・ブレイク(
gb1395)に、軍兵士の声がかかる。
脚が片方吹き飛び、腹部が破壊され、武器を持っていたとみられる片腕も吹き飛んでいる。もう、動く事は無いだろうけれど、内部を下手に触ると爆発しないとも限らない。
「派手に壊れてるわね‥‥」
ペッパーの搭乗機はそれなりに強化されているはずだ。この場所には、たいした戦闘痕も残っていないのに、この破壊されようはどうだろうか。
その場には、彼女のものと思われる血痕が僅かにあった。
DN−01リンドヴルム。シエル・ヴィッテ(
gb2160)のAU−KVのエンジン音が響く。排気音がひときわ大きく吐き出された。不知火真琴(
ga7201)が後部座席にまたがる。
「急がないと‥‥。ちょっと飛ばすよ! 真琴、しっかりつかまってて!!」
「はいっ!!」
軽く首を横に振ると、ラウラはエンジン音を響かせて走り出すAU−KVの後を追うように、ジーザリオに乗り込んだ。ばさりと地図を広げ、記録するのは、キメラの死骸が点々と連なる方角。
(「彼女の目的は、ロウ。そして、この事態を招いた彼女をキメラが追ってとして向かっている‥‥」)
ラウラはアクセルを踏み込んだ。
その方角は、仲間達が予測した方角とぴったりと一致していた。
ここから、それを辿った先にあるのは、赤峰空港。
「行こうか」
探査の目、GooDLuckを発動させたユーリ・ヴェルトライゼン(
ga8751)が、一台のジープのハンドルを握る。
軍が用意したジープだが、盗聴器を仕掛けられそうになった前回の事もある。
幸い何も問題は無いようだと、ひとつ頷く。
「とにかく、急がなきゃな」
(「間に合え‥‥間に合えッ‥‥!」)
杉崎 恭文(
gc0403)は、誰も運転するものが居なければ、自分がと思っていたのだが、ユーリがハンドルを取ったのを見て、後部席に乗り込み、無線を手に四方、上空を確認する。
「空から来るやつも見たしな」
倒れていたとされるキメラは羽付きだった。
羽が落ちているという事は、そういう事だろうと恭文は渋面を作った。
「お願いします」
インカム、【OR】情報端末天照の調子を確かめると、終夜・無月(
ga3084)がジープへと手をかける。万が一乗車中にキメラに襲われても、すぐに対処が出来るようにと両手を開けたのだ。
全員がそれぞれに動き始めた事を確認すると、仲間達が割り出した方角へとユーリはハンドルを切り返した。
市を離れれば、そこは光の無い大地。
星明りに照らされて、AU−KVが先行し、三台のジープが後を追ように走っていた。
「方向、間違いなさそう」
「はい」
シエルと真琴は黒い羽のキメラが倒れている横を走り抜け、後続のジープへと連絡を入れる。
かなりの数だ。
(「例え、助けられたとしても‥‥、強化人間じゃ‥‥」)
どうして、こうなってしまったのだろうか。
自分でも良くわからない程、無数の感情が渦を巻く。
何処にこの感情を持って行って良いのか。シエルはぐっと唇を引き結ぶ。
ペッパーのとった行動を真琴は思い返して苦笑する。
彼女に対して、出会った時々で、何をどう伝えれば良かったのか、今もわからない。
その原因は知っている。
自分が彼女ならば、やはり同じ行動をとったであろうから。
(「‥‥頑固ですよね」)
少し、似ていたと告げれば怒るだろうかと、ふと思う。
ジープのハンドルを握り、朧 幸乃(
ga3078)は、ペッパーが何故にバグアへと向かったのかという事を思う。
求めたのは力。
何故求めたのかと言えば、きっと、ロウと名乗った強化人間と戦い、殺す為。
(「それが達成出来るまで、簡単に命を捨てる人では無いと思うけど‥‥」)
大陸の状況は急転したから。
「‥‥あのキメラ‥‥」
ロウが連れていたキメラに良く似ていた。それも気にかかる。
胸のロザリオが悪路に揺れる。
「‥‥答えのピースは多分、あの彼に‥‥」
「うん、まずは急いで見つけないとね」
いつもにこやかな大泰司 慈海(
ga0173)の表情は、厳しく、そして幾分か憂いを含んでいた。
バグアの元へと向かった時点で、ペッパーは、もう死ぬ覚悟は決めていたのだろうと思う。
記憶を操作されなければ、きっと彼女は目的を果たし、その身をも消していたはずで。
(「情報を流した功績とかで、多少は考慮してもらえるかな」)
彼女の親代わりの三山と収監前に会わせてあげられたらと。
UPCへと収容されて、消息が知れない強化人間を知っているから。
『祭門』の村が脳裏に浮かぶ。
だが。
(「嘆いても何も変わらないよね」)
悔しさと情けなさに潰れそうになっても。自分の出来る事を成し、大陸の人々の為に動く事が言葉に変える唯一のものだと慈海は思っていた。
●
「真琴、一旦降りて!」
「了解ですっ」
その黒い羽ばたきの群れが、行く手を阻んでいた。
というよりも、ペッパーを追っているのだろう。
こちらに気が付いたキメラが羽音を響かせて、シエルと真琴を取り囲んだのだ。
「邪魔ぁぁぁ!!! あんた達に構ってる暇はないの! 邪魔しないで!」
AU−KVを装着すると、シエルはファルシオンを振り抜く。
真琴はその合間に、拳銃黒猫を構えると、立て続けに撃ち込んで行く。狙うのは翼。
そして、手、脚。
手に纏いつくのは幻視の焔。髪や瞳が紗がかかったように僅かに赤くなる。
キメラの数が多かった。回り込まれた背後から、肩にざっくりと爪がかかる。
「!」
「邪魔だって言ってるでしょっ!!」
シエルが割って入り、竜の咆哮で吹き飛ばす。
後方から、銃弾が飛ぶ。
「特に罠とかの危険は無しだ」
ジープを停めると、探査の目でユーリは周囲を確認する。
余計な増援はなさそうだと、仲間達へと告げる。
「‥‥少し、多いですが‥‥」
無月の小銃ルナが、キメラを撃ち抜く。紅い目が、月光を思わせる金色に輝いた。
次々と、射程に入れると、無月の的確な射撃がキメラを撃ち抜いて行く。
羽音を響かせ、キメラが急降下してくる。
「ここは良いから、先行けっ!」
恭文がジープから躍り出る。紅い目がキメラを睨み据えた。
「数が減りゃ、そんだけあいつへ向かう敵が減るってもんだよな! ‥‥我流・柳葉閃!」
両腕が炎のようなオーラに包まれる。キアルクローが弧を描き、襲いかかってくるキメラの腹へと入る。
代わりに、ざっくりと肩を切り裂かれた。
「! 何だ‥‥これ‥‥」
「平気?」
光源を背にして、ラウラが回り込み、拳銃ラグエルで翼を狙う。
淡い燐光の粒子が現れ、瞬く軌跡を描いて消えて行く。
その、黒い姿が闇に溶け合う事を寸前で見切る。
「爪‥‥何か毒‥‥? あります。軽度ですがっ!!」
真琴から声が飛ぶ。
「だな‥‥」
恭文も、くらりとしたが、移動困難な程では無い。微量の毒だ。
幸乃から錬成治療が飛ぶ。
「こちらに一度下がれるか?」
ユーリが拳銃アイリーンで迎撃をして近寄るが、大丈夫だから先に行くと手を振られる。
「ペッパーを見つけたら治療する。無理せず!」
その声はしっかりと届いた。
ユーリは恭文に触れると、キュアをかける。
「ふーっ。サンキュっ」
「重い毒じゃなくて良かった」
軽い眩暈は遠のいて、恭文はユーリにニッと笑えば、ユーリは、安堵の息を吐く。
「‥‥毒って事は」
羽音が消え、闇がただの闇となった先を見据えて、ラウラが呟く。
この攻撃を受け続けているのならば。ペッパーはと。
群れを抜けると、再び前にキメラが飛んでいる。
二体だ。
「突っ切るわよっ!」
「はい!」
シエルはこちらを向いたキメラの合間を駆け抜ける。
後方からやってくるジープから、銃声が響く。
そして、前方の岩場に四体のキメラを発見した。
それは、何かを探す素振り。
岩場のくぼみに、真琴はペッパーを見つけた。
隠れるのならば、そういう場所だろうと、良く見ていたから。
ペッパー発見の一報が仲間達へと飛んだ。
「やらせない、絶対にやらせないんだから!」
その場で真琴を下すと、シエルは再びAU−KVを装着する。
振り下ろす刀に竜の咆哮を乗せて、キメラを吹き飛ばした。
真琴も銃を撃ち込み続ける。
すぐに、後方からジープが到着する。
「‥‥さして、強い個体では、ありません‥‥が」
無月の銃弾が飛び、一体を屠る。
歴戦の能力者ならば、難なく倒せる相手だが、数が重なると、まずいかと無月は呟く。
「いかせねぇよ!」
力を乗せて恭文が走り込んだ。
●
「‥‥お久しぶり、かな?」
「‥‥ああ」
どうやら記憶は本当に戻っているようだと、その表情を見て幸乃は微笑む。
虚実空間を展開するが、それはペッパーには効果は無さそうだ。
「ペッパーちゃん、しっかり」
慈海から、援助の手が向かうが、やはり効果が無さそうで、すぐに錬成治療を施す。
「お前の荷を待ってるやつ、いんだろうがよ‥‥あぁ、くそっ。言いたいこととかあったはずなのによ‥‥」
がしがしと恭文が頭をかく。
「しっかりして下さい」
真琴はペッパーの手を握りしめる。
「‥‥あんたか。いい、もう駄目だと‥‥わかる」
「払った代償は安くない、最期まで生き足掻きなさい!」
ラウラがキュアをかける。
「‥‥もう‥‥あたしはいいから‥‥そんな顔しないでくれ‥‥」
どんな顔をしているのだろうかと、ラウラはペッパーの苦笑に目を軽く見開く。
「絶望にあっても生きようとする心こそ本当の力なのに!」
ラウラはつい声を荒げた。
「その程度の覚悟なら大人しくしてれば良かったのに、バカ!」
「ん‥‥馬鹿だと‥‥思う」
今になってこんなに素直なのは反則だとラウラは思う。
けれども、無愛想なままの顔に言葉が詰まる。
「捨て置いてくれて良い‥‥。どうせ助からない」
強化人間は、その身に爆弾が埋め込まれている事が多い。幸乃は慎重に彼女の身を確認していた。
「‥‥行きたい場所、あります‥‥? あの水族館とか‥‥」
首を横に振るペッパーに、雪乃は根気良く語りかける。世間話のように。
「やり残したこと、あります‥‥?」
その言葉にぴくりと反応するペッパーを見て、幸乃は首を軽く傾げる。
間違いなく、これが彼女を生に繋ぎとめるキーワードだった。
「一度決めた事が在るのなら‥‥貫き通しなさい‥‥」
キュアをかけ続けている無月が、変化した雰囲気を感じ取り、確たる口調で声をかける。
その決めた事が何であれ。
無月の金色の瞳がペッパーを覗き込む。
「‥‥死にたくなければ死ぬ気で抗え! 諦めたらそこで負けだ!」
出来れば、助けたいとユーリも思う。
このままで良いわけがないのだと。
普段はのんびりとした雰囲気のユーリだが、一本筋の通った声がペッパーに響く。
キュアを使用出来る三名が、続け様にかけ続けていた。
真琴がぎゅっと手を握る。
「上手く言えませんが、生きてさえいれば、変わるものはあるもので。けれど、生きる意味を何にかけるかは、本人だけが決める事で。だから、どうしても、とは言わないです。でも。何を置いても、そうしたかった事があるのなら‥‥最後まで、諦めないで下さい。一発でもいい、あいつをぶん殴って、そうして、帰りましょう」
「そうね、それは手伝うわ」
ラウラが頷く。
彼女を生に引き止めたのは、あの男。
赤峰空港辺りを管轄する強化人間ロウ。
望むのならば、連れて行こう。
このまま、無理に連れ帰っても、また同じ事になるだけならばと、ラウラは、それもありだと頷く。
「紗夜からの伝言があるわ。『三山のジイサンに伝える事は?』」
「‥‥三山さんは‥‥良い‥‥」
シエルが月城 紗夜(gb6417)の伝言を口にすると、ペッパーは首を横に振る。
何を言わなくても分かってくれている人なのだろう。
真琴が首を横に振る。
「そんな事、無いです。壱岐で三山さんが待ってます。また朝日も桜も見たいです。帰る場所は、ちゃんとあるんです。だからどうか」
「あなたには待っている人が居る、帰る場所があるんだから」
ラウラがもう何度目か分からなくなるほどのキュアをかける。
この依頼を出したのは、その三山だ。生きているのならば連れ帰って欲しいと。
「‥‥帰る‥‥場所‥‥?」
また、心が動いた。そう、ラウラは見て取った。
「そうよ!」
シエルが覗き込む。
「こうも言っていたわ。『此れが貴公の結末なら、我も憎悪を抱え生きる』って」
「‥‥あたしを、生きるダシにするな‥‥」
幾分生気の戻ってきているような顔色のペッパーが面白そうに苦笑した。
峠は、超えた。
キュアをかけ続けていた三人が顔を見合わせた。
練力はもう僅かしか残っていない。
それほど、身に蓄積された毒であったのだけれど、三人がかりでこれでもかという程、かけ続けた結果だ。
助かる確率は本当に数パーセントしかなかったはずだった。
錬成治療で治った傷。キュアで抜け落ちた毒。
だが、身体に受けたダメージは残る。
歩くのは未だ無理のようだ。
真琴がぎゅっと手を握る。
「うちは、手を伸ばす事も、足掻く事も、諦めません、よ」
「‥‥好きにしろ」
「好きにします」
「それに‥‥後片付けはしっかりしないと‥‥ね‥‥」
いろいろ? と、素知らぬ顔で幸乃が言う。
運び屋さんに運ばれてもらいましょうかと、くすりと笑みを浮かべた。
「生きろ‥‥!」
こうして、これだけの人々が、彼女を助けようとしている。
ならば、生きなくてはいけない。何としても。
無月の重い言葉が、今度はペッパーにすとんと入ったかのように見えた。
眉間に寄った皺が緩み、かすかな笑みが傭兵達へと向けられた。
冷えた夜空に無数の星が瞬いていた。
爆弾などはその身体からは発見されなかったが、発信機が埋め込まれていた。
それを頼りに、キメラは追ってきていたのでは無いかという事が判明した。
『傷門』を奪還した彼女の処遇は北京奪還作戦後に正式決定されるとの事だった。
彼女の記憶を操作し、彼女にキメラを差し向けたのは、アジア・オセアニア総司令ジャッキー・ウォンであるとう事が、調書に記された。