タイトル:ド派手に行くぜ!マスター:

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/11/23 23:11

●オープニング本文


 男は悔しかった。だが、負けた訳でも、失敗した訳でもない。むしろ大成功していた。金も地位も必要以上に手に入れた。しかし‥‥

「もはや、何の価値もないとは言え‥‥」

 男が遠くに見える山々を見つめている。その視線の先、その山々には‥‥大きな農場が広がっていた。そこはかつて、男が経営していた農場だった。

 かつて男は、その農場主として大きな成功を収めた。そして、バグアが地球に攻めて来る前の年、男は農場を手放した。それはただの偶然だったのだが、結果的に一番得をする形となったのだ。その後の持ち主が誰になったのか‥‥男にはどうでもいい事だったが‥‥

「忌まわしいキメラどもに占拠されたままというのも、腹立たしい」

 農場は、キメラが住み着いた事で放棄され、荒れ放題となり、人さえ寄り付かなくなっていた。持ち主も行方が知れず、生きているかどうかさえ解らない。持ち主もなく、管理する者さえ失くした農場‥‥誰からも必要とされなくなった農場‥‥それを見て、男は悔しかった。農場を売り払う事にも抵抗はなかった。しかし、こんな状態になってしまったのを見ると、やはりそこには大切な何かがあった気がしてならなかった。

「失くしてから解る大切さか‥‥。それもまた忌々しい」

 それから数日後‥‥男は決意した。手に入れた地位で、手に入れた金で‥‥様々な方法で、農場を誰のものでもない物にした。そこで大きな大きなド派手な事をやる為に

●参加者一覧

花=シルエイト(ga0053
17歳・♀・PN
ドクター・ウェスト(ga0241
40歳・♂・ER
河崎・統治(ga0257
24歳・♂・FT
榊 兵衛(ga0388
31歳・♂・PN
宗太郎=シルエイト(ga4261
22歳・♂・AA
鈴原浩(ga9169
27歳・♂・PN
睡蓮(gb3082
14歳・♀・DG
神棟星嵐(gc1022
22歳・♂・HD
秦本 新(gc3832
21歳・♂・HD
BEATRICE(gc6758
28歳・♀・ER

●リプレイ本文

 元農場主の男は、胸が苦しくなるのを感じた。それは、期待からか‥‥それとも、不安か、罪悪感か‥‥いずれにしろ、最早誰にも止められない。これから始るフェスタを。

●派手に狙い撃つぜ!

「かつて所有していた土地で、派手に戦闘をするようにとは‥‥なんとも変わった依頼主です。」

 神棟星嵐(gc1022)の愛機、シュバルツケーニッヒが低空で農場へと向かっている。彼が、開戦の合図とも言うべき攻撃を行なう役目だ。そのモニターに大型キメラの影が映る。

「あれか! この荷電粒子砲を喰らって、一体どれだけのキメラが残りますかね」

 HL00対艦荷電粒子砲と、二門のショルダー・レーザーキャノンが巨人キメラに狙いを定める。

―――

「ほう、始ったか」

 遠く離れた場所から、依頼主である男はしっかり見ていた。その視界に三つの光線が入り込む。

ゴゴゴゴゴゴゴゴ‥‥

 地響きと共に、農場が炎に包まれるのが見えた。
―――

「さて、それじゃあ花火大会を始めるとしようか」

 高高度からの、Gプラズマ弾の攻撃で、農場が一瞬で様相を変える。その一撃を放ったのは、河崎・統治(ga0257)の乗るKV雷電「天雷」だ。

ドドドドドドドド!

 そこへ、様々な放物線を描き、千を超える数のミサイルが降り注ぐ。

「さて‥‥いつも通りのことを‥‥いつも以上に全力で‥‥」

 さらにミサイルを射出していく。

「開幕10秒がミサイラーの華‥‥あとは黒子に‥‥と言うところでしょうか‥‥」

 BEATRICE(gc6758)K−02小型ホーミングミサイルを撃ち続ける中、それを援護する様に、撃ち漏らしたキメラへと同じミサイルを撃ち込む真っ白なアンジェリカが颯爽と姿を現す。

「さぁ、行きなさい。ボクの可愛い子達‥‥傀儡劫火『ゴーストインフェルノ』!」

 月森 花(ga0053)だ。そしてその愛機『シュヴェルトライテ』。二機の放つミサイルが、見える全てを破壊していく。

「地形を変えても問題ない‥‥との事ですから‥‥」

 BEATRICEの通信を聞いていた全員が、驚くが、

「冗談です‥‥地形などそうそう変わりませんよ‥‥」

―――

「ほぉ、今のはなかなか派手だったな〜」

 ミサイルによる爆撃は、肉眼でも確認できる程であった。

「さて、どうやら次は陸戦の様だな」

 男の眺める先で、KVが着陸していくのが見えた。

●豪快に行くぜ!

 爆撃が続く中、影がそこを疾走しているのが見える。その影は、宗太郎=シルエイト(ga4261)が駆るストライダーことナイトフォーゲLM−01改であった。

「ウイング展開、出力全開! スリルドライブってやつだ、腕が鳴るねぇ!」

 宗太郎がテンションMAXで叫んでいる。そこに睡蓮(gb3082)から通信が入る。

「‥‥ポイントG3に大型キメラ」
「了解!」

 その報告の場所は近く、すぐにそこへ向かう。巨人キメラが、片膝をついて座り込んでいる。どうやら、爆撃で足を負傷し、行動不能の様であった。

「ブースト全開! かっ飛べ、マグ‥‥」
『ザッ!』
「‥‥ムトルネードぉ!!!」

 巨人キメラに向かう途中の、小型、中型のキメラも巻き込みながら、ソードウイングの餌食にしていく。そして、目標の巨人キメラ直前でジャンプし、一刀両断する。

「‥‥お? 途中で雑音が入ったか?」

―――

 爆撃も終わりに近づいた頃、二機のKVが爆撃範囲ギリギリへと着地、変形する。

「ヒロ君、セイラン君、行くぞ〜!」

 先頭に陣取るドクター・ウェスト(ga0241)のナイトフォーゲルHF−042天から、勇ましい声が響く。それに負けじと勇ましく応じる鈴原浩(ga9169)。

「さあ、暴れさせてもらうぞ!」

 彼の乗るKVは、ソルダードの『ロートヴォルフ・ダス・エンデ』。そして、ドクター・ウェストと鈴原に少々遅れて、神棟も陸戦に参加する。

「さぁ、参りましょう!」

―――

 すでに陸戦を始めている者も居た。スラスターライフルによる弾幕掃射によって、手際よくキメラ群にダメージを与えつつ、意図的にキメラの群を一ヶ所に固めていっている。

「一網打尽だな」

 榊 兵衛(ga0388)がトリガーを引く。二挺のグレネードランチャーが、キメラ群を一掃し、その爆発音と炎は依頼主の男にも確認出来る程だった。

「次はどこだ?」
『‥‥そこから、20m先の建物の影に大型キメラの生き残りです』

 榊の言葉に、睡蓮が上空から偵察した結果を報告する。それを聞いた榊は、鎧武者の様な雷電『忠勝』の手に機槍「千鳥十文字」を握らせ、大型キメラへと向かわせる。

―――

「爆撃はなかなかだったが、少々地味になってきたな」

 男はそういっているが、農場のある山は真っ赤に燃え、空一面を赤く染め、豪快かつド派手にというに相応しい。

「ただの戦闘ではつまらん」

 男が機嫌を損ね始めたその時、カラフルな煙が農場から立ち昇るのが見えた。

―――

「さて、此方も開幕と行きましょうか」

 カラフルな煙の発生源は、秦本 新(gc3832)が撃ったCC−02ミサイルの煙であった。派手さを演出するために、着色した煙にしてあったのだ。そして、その煙を目印として着陸し、彼もまた陸戦へと参戦していた。

「まずは、景気良く撃たせてもらいますよ‥‥!」

 M−SG10で、小型キメラを蹴散らし、中型キメラの群への道を作る。そして、スルトシステムによる加速を、BCランス「ゲイルスケグル」に加えて一直線に突撃をかける。緑色の残像を残しながら、敵を薙ぎ払い振り回しと大暴れしていく。

『‥‥記録します‥‥』

 睡蓮が、遠方からでは見えないであろう、数々の戦闘を記録しており、秦本のこの戦闘もまた記録しているのだ。

「兎に角、派手に暴れれば良いんだろう?」

 鈴原がアームパイクで、近場に居た中型キメラを粉砕する。さらに、M−MG60の連射で移動の邪魔になる小型キメラや中型キメラを撃ち抜いていく。

「けっひゃっひゃっ、我輩はドクター・ウェストだ〜」

 鋭く輝く眼で敵を捉えては、小型キメラにレーザーカノン、アサルトライフルを撃ちこみ、中型キメラにブーステッドソード、MMEディフェンダーで斬りつけながら、キメラの肉片を撒き散らしながら突き進む天。それを援護するかの様に、河崎がスラスターライフルを放つ。すでに最初の攻撃で、兵装のほとんどが残弾0となった彼は、上空からの援護に徹している様だ。
 さすがに奇襲を受けたとはいえ、ここまでされてはキメラの方も大人しくしているわけはなかった。神棟からの攻撃を受けた満身創痍の巨人キメラが、中型の昆虫と人間を合成したキメラを投げつけてくる。その中型キメラは、空中で丸くなると弾丸のようになり、上空を飛びまわる睡蓮と、河崎へと次々に襲いかかる。

「睡蓮‥‥戦闘、あまり、好きではありません‥‥」

 得意でない戦闘を避け、睡蓮は距離を離す。河崎はスラスターライフルで迎撃しつつも、より上空へと退避する。それを見た神棟が、ショルダー・レーザーキャノンで巨人キメラの腕を貫き、ブーストジャンプで一気に距離を詰める。

「死神の洗礼、篤と味わって下さい!」

ジュゥッ!

 焼け焦げる音と共に、リビティナがその首を地面へと転がした。

―――

 月森、宗太郎、榊の三人は、偶然にも同じ巨人キメラと対峙していた。建物の影に居た為に発見が遅れ、爆撃からも逃れていたキメラだ。そしてその周囲には、無数の昆虫人キメラが犇いている。

ぶん! ぶぶん!

 巨人キメラは、次々と昆虫人キメラを投げつけてくる。丸まって弾丸の様になる者、回転して鎌を振り回してくる者など色々だが‥‥

「この剣の錆になるのは‥‥まずはおまえだ!」

 月森は、飛んでくる昆虫人キメラを「獅子王」で斬りおとすが、数が多すぎ太刀では捌き切れずストライクシールドを構え防ぐ。
 宗太郎は機槍「ロンゴミニアト」を剣技補助AIのサポートを受けて振り回すが、剣と槍との違いと、ロンゴミニアトの扱い難さも災いし、飛来するキメラに防戦一方となっている。
 しかし、榊が二人を庇う様に前へ出ると、「超伝導アクチュエータ」を起動させて機動力を高め、キメラの群れに飛び込み、敢えて魅せることに重点を置いた戦い方で機槍の穂先が当たるを幸いに縦横無尽に「千鳥十文字」を振るい、一気に形勢逆転に成功する。

「‥‥我が穂先に掛かれることを誉れとして、散っていくが良い!」

 榊の槍が、巨人キメラを突き刺す。さらに、宗太郎もまた槍を巨人キメラへと突き刺し、二人が力任せに上へと投げ飛ばす。

「咲け、ボクの‥‥禁忌妖花『リミットブレイド』!」

 すでに絶命しているだろうが、ド派手な演出の為にも、月森がフィニッシュを狙い、雪村の最大射出レーザーで豪快に横一文字に両断する。

ダダン!

 両断された塊を、銃弾が貫き肉片をさらに飛び散らせる。

「グレネーダーリロー‥‥いえ‥‥何でもありません‥‥」

 BEATRICEのダブルリボルバー攻撃だ。その際に言ったセリフに関しては、彼女なりに『大人の事情』を踏まえた上での、配慮で中断された。

「10km先からでは余りよく分からないかもしれませんし‥‥」

 どうやらBEATRICEは、月森、宗太郎、榊の戦闘を撮影記録していたらしい。そして、そっと自分のセリフの一部に修正をかけるのだった。

●ファイナル波状攻撃

 農場全体を舞台としたド派手戦闘は、大型キメラの殲滅まで残り一匹となった。小型や中型に関しては、数の把握も出来ておらず、ほとんどは倒したであろうが、殲滅までは至ってはいなかった。

「これで止めだね〜」

 ドクター・ウェストが、すでにドレスBまで発動させており、その装備はロマンの塊とも言えるバニシング・ナックルだ。

「ボクたちも」

 月森が、フィアンセである宗太郎に声をかける。月森は「獅子王」、宗太郎は槍を構え、巨人キメラとの距離をじりじりと詰める。

「さぁ、出力全開‥‥派手に行きますかね」

 秦本もまた、雪村を抜き構えている。すでにKVのスキルは全開状態である。
 すでに後がない巨人キメラが最初に動いた、が‥‥。神棟のKVがフォトニック・クラスタを放ち、その巨体を焼き焦がす。

ズシャ! バシュ!

 さらに月森と宗太郎の攻撃が、巨人キメラの横をすり抜ける様に決められていく。

ブゥゥン! ジュッ!

 続けて、秦本が土煙を上げながら高速で背後へと回り、雪村で斬り上げ一刀両断。

「ひっさ〜つ! バ〜ニシング、ナッコォー!!」

 最後の波状攻撃、ドクター・ウェストのバニシング・ナックルだ。命中した巨人キメラは粉々にり吹き飛ぶ。

ドーン!

 そこに演出とばかりに、五機のKVの背後に秦本が準備しておいた、カラフルな爆発が起こる。
 この一連の攻撃を、睡蓮とBEATRICEが別々のアングルで撮影していたのだった。


「満足いただけると良いのですが‥‥」

 BEATRICEが、睡蓮らと共に撮影・編集した戦闘記録動画を男に渡した。

「おお! これなら見えなかった分も観られるわけか」

 男は喜び、全員に感謝しながら握手をすると、満足げな面持ちですぐに映像の確認を始めた。それが終わるまで待つことはせず、傭兵達は帰還した。

「大暴れして、スッキリしたな」

 鈴原がそう言うと、他の者も頷いていた。

―――

 映像の確認を何度も‥‥同じビデオを何度も繰り返し見る子供の様に、飽きずに見ていた男は、ふと現実に返り、大人な発想を展開させていた。

「ふむ‥‥これを売って派手に儲けたいな」