●リプレイ本文
●マグナムキャット対処法
「猫って‥‥はっ、キメラですか!?」
UPC軍が包囲する仮設住宅の建設地にやって来たのは良いが、猫好きな真上銀斗(
gb8516)はキメラ退治だと知ると驚きを隠せなかった。
「猫には間違いないようだが‥‥マグナムキャットの亜種‥‥という事で良いのか、これは」
「そのようだな。しかし‥‥こんな時期に猫狩りか‥‥」
白鐘剣一郎(
ga0184)にそう言うと「敵は何を考えてるんだか‥‥」と漸 王零(
ga2930)は呆れてため息をつく。
「その猫が如何程の害があるかは知れぬが、キメラを蔓延らせる訳には参らぬでの。何ともやり難い見てくれの相手じゃが、致し方あるまいて。一匹たりとも逃がさぬぞえ。わしらが活躍すれば、『暇人』も少しは考えを変えるのではないかえ?」
秘色(
ga8202)の言葉に「能力者の批判かー、そんなことする人がいるんだね〜」とホープ(
gc5231)。
「まぁ関係ない人の言ってることだし、こういうのは私達が気にすることじゃないね。とりあえず、猫退治を頑張ろうっと」
そんなのは気にしない! と前向きに考えることに。
「‥‥キメラである以上、どんなことをされても可愛くないのよね。‥‥ましてや猫なんて見飽きてるし‥‥とにかく、早いとこ終わらせましょう‥‥」
うちの猫のほうがまだいいわね‥‥と紅 アリカ(
ga8708)は呆れた表情を見せる。
「作戦ですが、こういうのはどうでしょうか?」
新居・やすかず(
ga1891)が提案したのは、風上にある広場に猫の餌を置き、またたびを燻して香りが風下に流れるようにして誘き寄せるというものだった。
「ここの範囲は広くないが、相手も小柄なだけにそう簡単にはいかないだろうな。その作戦、やってみよう。キメラの数が多いからペアを組み、分かれて索敵したほうが良いだろう」
話し合いの結果、剣一郎とルーネ、王零とホープ、やすかずと銀斗、アリカと秘色がペアを組む。
「では、各班予定通りに。事前に判明しているキメラの特性を逆手にとってのサーチ&デストロイ、逃げられた場合は広場に追い込むように」
「誘き寄せる時に野良猫がおった場合は、キメラと誤って巻き込まぬよう注意じゃの」
秘色が言うように、普通の猫がいるかもしれないので各自注意することに。
●猫と戯れではなく探索
「猫缶とおもちゃを設置しましょう」
やすかずと銀斗は、広場の見通しの良い場所の何ヶ所かに設置する。
「都合良く引っかかってくれるかどうか分かりませんが、やらないよりはマシです。狙撃に適した場所や猫さんが好みそうな場所を調べましょうか」
「はい。キメラでなく、普通の猫に会いたいものです」
しばらく歩いていると、物陰に猫を発見したやすかずは猫槍「エノコロ」をフリフリして誘き出してみる。
「ほーら、おいでおいで‥‥」
キメラでも猫の習性が残っているのか、それとも本能なのかはわからないが、キメラはエノコロにじゃれつくかのように飛びついた。
「この仕草、心得ていますね! しかし、いくら僕でもわかっていてこんな見え見えの手に引っかかるわけがありません。そうです、これは違うんです!」
やすかず曰く「油断した振りをして近寄ってきたところを抱き上げ、動きを封じてから超機械で攻撃するという作戦」で、決してキメラの手管に引っかかったわけではない。
「逃がしませんよ」
照明銃で目を晦ませた銀斗は、キメラが怯んだ隙になるべく音を立てないよう、倒れるまで銃撃。
「マタタビと猫餌だけでは心許ないからの」
LEDライトをヘルムに、ショットガン20にサプレッサーを付けた秘色は、カニ缶を開けると袋に入れ腰に下げた。
「‥‥うまく誘き寄せることができるかしら‥‥」
エマージェンシーキットから取り出した懐中電灯で周囲を照らし、猫を見つけようとするアリカが呟く。
「此れで寄ってくるなれば幸いじゃ。そう思わんか?」
「‥‥まあそうだけど‥‥ん‥‥?」
足元に何かが擦り寄ってきた感覚がしたアリカは、何だろうと思い見ると1匹の猫が甘えるように体を擦り付けていた。
「‥‥私達を油断させようとしているのかしら‥‥」
「カニとマタタビの匂いに惹かれる愛い奴じゃが、キメラには変わりないからの。生憎、わしは敵には躊躇せぬのじゃよ。可愛いものであってもな」
袋のカニ缶をぶらつかせて更に気を惹き、自分達のところに近づけさせようとする。
(何だか強そうな雰囲気の人だな〜)
周囲の音に注意を払いながら猫を探している最中、王零を一目見てホープは関心する。
「猫は全部で24匹‥‥我ら2人で倒すのは6匹がノルマってところか?」
「普通に考えればそうだけど、場合によっては多い‥‥って、アレ」
ホープが指差したほうを見ると、お座りしている猫が。何か匂いを嗅ぎ取ったのか、ん〜と背伸びすると鼻をヒクヒクさせて歩き始めた。
「誘き寄せがうまくいったようだな」
ある程度数を集めて一気に仕留めようとする王零は猫じゃらしを取り出すと振って見せつけ、飛びつくよう仕向ける。猫が集まってくるまでは武器は抜かず攻撃避けに徹し、ホープは刺激しないように様子を見て近づくのを待つ。
剣一郎は正面を照らすように肩口にライトを固定すると持参した毛糸玉、猫じゃらし等をいつでも使えるよう準備。
「これで、惹き付けられると楽ですが‥‥」
「誘引作戦には使えると思う。とりあえず探索だ」
周囲を照らしながら慎重に探していると、数匹の猫が接近して2人の足元に体を摺り寄せてきた。
「マタタビに釣られてきたか。まぁ確かに子猫ゆえの可愛らしさがあるのは否定しないが‥‥とはいえ、被害が出てからでは遅い。ルーネ、やるぞ」
「はい」
●夜が明けるまでの戦い
猫を発見した各班は餌やおもちゃ、燻したマタタビ等を利用し、猫キメラを広場に集めることにしたが襲いかかってくるものは倒すことに。
見た目が可愛い猫なので、傍から見ると虐待同然に取られる可能性はあるがキメラは倒さなければならない。
「一気に行こう。巻き込まれないよう注意してくれ。天都神影流・虚空閃っ!」
剣一郎は離れている猫に『ソニックブーム』を放ち、 カイキアスの盾で猫の攻撃を防ぎながら隙間を走り抜け、手数を減らせると判断すると『猛撃』を使い蹴散らす。
「素早く、鋭く、迷い無く‥‥一撃に必殺の意思を‥‥乗せる!」
近づいてきた近間の猫の習性を利用し、できるだけ自分に惹き付けてからルーネ・ミッターナハト(
gc5629)は『刹那』『円閃』を使い火力を増してから叩き切る。攻撃をできるだけ喰らわないよう『疾風』で回避。
物理攻撃の利きが悪いと感じたので機械剣αに持ち替え、『疾風』のみ使用することにし非物理攻撃を中心的に。
「硬いなら‥‥これで、どう?」
攻撃後に目から涙を流して体を震わせ二本足で立ち上がるが、情けは無用、と攻撃の手を休めない。
「引き寄せられたということは‥‥マタタビが効いたのかえ?」
普通の猫のように酔ったりしていないが、匂いに誘われたと思っていいだろう。
秘色は『両断剣』を使うと 蛍火で体の急所を斬る、突くの攻撃。
フーッ! と威嚇し、反撃、といわんばかりにコルク栓を飛ばしたが、当たらないよう回避し、それを蛍火で打ち返した。
「‥‥ちと痛い程度かもしれぬが、其れでも当たってやる義理は無い故。悪く思わぬことじゃな」
そう言うとコルク栓を当てたキメラに銃を向け至近射撃で撃ち込んだ。
「其の涙、ぬしらを作った者に見せてやりたいのう‥‥」
近づいて擦り寄り、甘えてくるキメラに対し、アリカは一切躊躇することなく「‥‥うちの子のほうが可愛わね」と接近攻撃で撃破。
「‥‥こちらアリカ、キメラを広場に追い立てているわ。追い詰めに協力して」
逃げ出すような素振りを見せたので、無線機で連絡して協力要請を。
アリカからの連絡を受け、付近にいたやすかずと銀斗が駆けつけ逃げるキメラを追い立てる。
猫缶とおもちゃをちらつかせ、近寄ってきたところをサプレッサー付きの小銃「ルナ」を突きつけた時に『人の声』が流れた。
「何だか夢を壊されたというか、一気に現実に帰らされました。何でこんな余計な機能をつけるんでしょうね、台無しですよ」
興ざめしたという顔で倒れるまで銃撃するやすかずを「猫なのにキメラなんですよね」と複雑な心境で援護射撃する銀斗。
「何か、こういうのって気に食わないな〜。バグアって、こんなキメラ作って恥ずかしくないのかな?」
「恥ずかしくないだろうな。しかし‥‥こう見てると宴会芸を見につけたような猫だな‥‥。だが‥‥キメラである以上‥‥我が魔剣の贄となって散れ」
猫がある程度集まったので、王零は『抜刀・瞬』で魔剣「ティルフィング」を抜き、手近な猫が『人の声』が出せぬよう『急所突き』で口を封じ、その間に離れた猫は『迅雷』で追い駆逐する。油断させるべく首を撫でられようと近くでお座りするが、我関せずな王零の魔剣の錆となった。
「本当にコルク栓みたいだけど‥‥当たると痛そうだね〜」
砲台から発射されたコルク栓を避けながら見たホープは武器の間合いに入ったのを見計らってオルカを抜くと『刹那』と『円閃』を使い、反撃される前に1匹ずつ仕留め、攻撃を仕掛けてきた猫には『迅雷』で距離を詰め、ステュムの爪で蹴った後にオルカで『円閃』を使い倒す。
瀕死のダメージを受けた猫達は涙を流して体を震わせ許しを請うような仕草をするが、それを気にせず止めを刺す。
「そんなことしたって許さないから!」
●誤解と感謝の気持ち
1匹も逃さない、と広場に集結した8人は時間一杯まで周囲を探索し、倒し残しがいないかを確認しながら残りを集めることに。
「キメラにはマタタビが効かなかったようじゃの。残らず倒す故、覚悟せいよ」
「‥‥撃ち残さないわ」
撃ち洩らしがいないかを確かめながら、秘色とアリカは刀で倒す。
「一気に行こう、巻き込まれないよう注意してくれ」
広場にある程度以上の数の猫が集まったので、剣一郎は『十字撃』を使い蹴散し、『人の声』がどのようなものか理解したルーネは、それを利用することに。『暇人』の興味を惹くような言葉と判断すると、近くにいる仲間に連絡し、できるだけ喋らないよう注意を喚起する。
「暇人を喜ばす事は、ルーネ達の任務的にも、好ましくない」
これ以上傭兵を非難するようなことはさせない、という決意を表すかのように傭兵刀と機械剣αを使いわけて猫を攻撃する。
「そのとおり。全部倒して『暇人』に文句を言わせないようにしようね〜」
逃がさないよ! と『迅雷』で猫との距離を詰め、一瞬の隙を見逃さないホープと王零が確実に倒していく。
「猫は大好きですがキメラは別です。1匹残らず倒します!」
そう主張するやすかずに同意する銀斗も「逃がしませんよ」と一斉射撃。
「これで最後だな。天都神影流・虚空閃っ」
離れた猫が『ソニックブーム』で倒されたことで、どうにか夜明け前に24匹のマグナムキャットの亜種殲滅が成功した。
「‥‥これで終わりかしら?」
「終わりだな。皆、お疲れ様だ」
剣一郎が皆を労うとUPC軍に殲滅の報告をし、ルーネは「立つ鳥、跡を濁さず、です」と設置物等を残さず回収。
「‥‥大分身体も冷えたし、戻ったら暖かいスープでも作ろうかしら‥‥」
「その前に、一般市民にキメラ退治が終わったことを報告じゃ。スープ作り、わしも手伝おう」
一刻も早く安心させたほうがいいじゃろ、と秘色が皆を促す。
夜明け前に無事キメラを倒すことが出来たことは、『暇人』を含む一般市民に知れ渡った。
「私達のこと、少しは見直した? 私としては文句の言いようのない仕事ができたかな〜って思うけど、どーだったかな? な〜んてね。他人の評価気にしてたら何もできなくなっちゃうよ? 大事なのは、今日やったことで何ができたかってことだよね〜。そうだと思わない?」
ホープにそう言われた一般市民の中に、バツの悪そうな顔をした男がいた。彼が誹謗中傷の紙を貼り付けた『暇人』本人だろう。コソコソと逃げようとしたところ、ちょっと待てい、と秘色に止められた。
「おぬしが誹謗中傷を書いた張本人かえ? わしらがあのようなことをしておらんこと、十分わかってもらえたと思うのじゃがどうかのう?」
「わかってくれたよね〜?」
ニッコリ笑っているが、青筋を立て怒っている秘色とホープに参ったのか、『暇人』は「あんなこと書いてすみませんでした!」と何度も頭をペコペコ下げて謝った。
「わかってもらえればいいんじゃよ。もうあんなこと書くでないぞえ」
「は、はいぃ!!」
これ以上迫られてはたまらん! と『暇人』はその場をダッシュで去っていった。彼の処罰は依頼に含まれていない、改心したこともあり誰も追いかけて捕まえようとしなかった。
「‥‥お待たせ。スープができたわ」
「今から配るから一列に並ぶのじゃ。そこ、割り込みはいかんぞ」
アリカと秘色が腕によりをかけて作った温かいスープは、市民達の心と体を温める。
傭兵の皆さん、ありがとうございましたと深々とお辞儀をして市民達は8人に感謝した。
仮設住宅が完成し、少しでも復興されれば天津市と市民達は少しは活気付くだろう。
(代筆 : 竹科真史)