タイトル:新たなる正義マスター:きっこ

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/12/26 10:46

●オープニング本文



 日本某地方都市に、『イツメパイユ』という名の会社がある。
 ヒーローやキャラクターのきぐるみを使用したショーの興行で、子供達に夢を提供してきたイベント会社である。全盛期は大手のイベント会社だったが、メディアの発達により衰退し倒産寸前となっていた。
 それを救ったのが、社運をかけてモチーフにKVを使用する許可を取り、メインキャスト・脚本原案に傭兵を起用した『地球戦隊KV☆STAR』という名のヒーローである。
 遊園地内のヒーローショーからスターとしたKV☆は、その後劇場での公演を重ねる中で着実にファンを増やし、ついには映画化されるにまで至った『イツメパイユ』の看板ヒーローへと成長した。
 かくして『イツメパイユ』は自社ビルを持つまでになったのである。
 しかし、KV☆はその劇場版をもって大団円を迎えた。つまり今の『イツメパイユ』には、新たなヒーローが必要なのだ。
 先に行われたイベント『ヒーロー大集合』で、傭兵を対象にに新ヒーローを募集した。ヒーローショーを通して社員、観客による審査により順位を決定したのだ。
 それらを元に新たなヒーローを生み出すべく、『イツメパイユ』企画会議室に社員が集っていた。
『新ヒーロー企画!!』と大きく書かれたホワイトボードの前に、髪を凛々しく結い上げたパンツスーツの似合う若い女性が腕組みをして立っている。彼女こそKV☆の原案者であり、イベントマネージャーとしてKV☆を裏から支えてきた真壁秋良である。
「資料にもある通り、一番人気だったのは『武装ラウザー』だった訳だが‥‥」
 言って、秋良は長机に整然と座っている社員達に意見を求めるべく視線を向けた。
「『KVやAU−KVを模した装甲』ってのは良いわよね。やっぱりそれが『イツメパイユ』のヒーローっぽい気がしない?」
「うーん‥‥この『謎の敵キマイラに体の一部を食いちぎられ』って設定は、子供には向かないんじゃないかな」
「ならば『奪われた』ということにしてはどうかな?」
 談義を交わす社員達に声を投げたのは、一番奥の席に座っていた青年だ。白いスーツに身を包み、外ハネレイヤーの金髪に青い眼というこの場にはそぐわない雰囲気の彼はここの社長なのだ。
「最終的には、敵を倒して奪われたものを取り戻す、と。それはまぁ、正義のための戦いの末にということで。最初からそのために戦うという事では無くてもいいんだけれど」
 社員や社長の意見を、秋良がホワイトボードに記していく。そうしながら、皆に向けて言う。
「せっかくたくさんの応募があったんだし、上位に入った他のヒーローの案もうまい具合に入れて行きたい所だな」
「私は『雷獣武神ガイライガー』の『幻獣に選ばれた戦士』っていう設定、好きなんだけど」
「じゃあさ、その奪われた部分? そこに『地球を救わんとする人知を超越した力』が宿るって風にしたらどう?」
「なるほど。じゃあ悪者を倒して身体が元に戻ったら、その良い者達も還っていく訳だ」
「じゃあ、奪われて力が宿った部分が武器となる仕様で‥‥」
 そうして皆が思う所を口にし、意見を出し合いながらヒーロー像を組み立てていく。
 KV☆も、こうして出演者達の意見をあわせる事で物語を作り上げていた。そのスタンスを尊重しての事である。


「というわけでぇ、イツメパイユさんから新しい戦隊モノの役者さんの募集が来ております〜」
 集まった傭兵達に説明するのは、日本人オペレーターの小野路 綾音(gz0247)である。彼女もイツメパイユと傭兵の橋渡し役としてKV☆に長く関わってきた人物の一人である。
「前作であるKV☆の時もそうだったのですが〜」
 言いながら綾音は皆に資料を手渡していく。そこには新ヒーローについてのデータが記されていた。
「基本設定はイツメパイユさんから提示があるのですが〜、細かい演技は出演者さん達で相談の上である程度構成していただく形になります〜。今回は新ヒーロー誕生ストーリーという事らしいですねぇ」
 確かに。資料には『普通の地球人だったメンバーが力を手にし、地球侵略勢力と戦う力を得るまでを描く』といった内容が記されている。
「今回は一話限りの特番としてテレビ放送されるそうで〜。これが成功すれば、テレビの連続シリーズとして展開されるんですって〜。皆さんがんばってくださいねぇ」
 新ヒーローシリーズがスタートするか否か、そしてイツメパイユの未来は傭兵達に託された。


『新ヒーロー概要』

【ヒーロー(名称未定募集中)】(募集人員:三〜五名)
 地球軍所属兵出身。普段は軍服着用。
 地球防衛戦中、身体の一部を敵に奪われる。そこに幻獣や神の力が宿り復活すると共に人知を越えた力を得た戦士。通常時は常人の二倍(敵雑魚を蹴散らす程度)、変身後はさらに数倍の力(キマイラと戦闘可能)を発揮。
「幻神天装!」の声と共に幻獣・神の姿とKV(AUーKV)をミックスした装甲を瞬着。
 個体分けは色によって行なう。(○○レッド、○○ブルーなど)

 幻獣や神は和洋問わず。(麒麟、蛟、カトブレパスなど)
 奪われる箇所は身体のパーツのうちどこか一つ。武器は基本奪われた箇所に準拠する。
 声(声帯)を奪われセイレーンの力を宿す。武器はイリュージョンボイス。
  左腕を奪われアヌビスの力を宿す。武器はドレインハンド(生気を奪う)。
 など。

 ★考案が難しい場合など、相談に応じてイツメパイユからの設定提供もあり。


【バグアバグ】(募集人員二〜三名)
 突如として地球に現れた悪の組織。
 謎の生命体キマイラを操り地球の征服をもくろむ。
 地球侵略の目的は宇宙でも希少なエネルギーを得るため。エネルギー(名前未定)は様々な場所や物に、時には人に宿っている。
 ラウザー達が身体の一部を奪われたのは、その箇所にこのエネルギーが宿っていたため。

 最低限必要な配役は幹部(人型)とキマイラ(獣型。トラキマイラ、サメキマイラなど)。増員する場合は幹部が望ましい。(特別な場合以外、一つの話にはキマイラ一体が理想)
 幹部は衣装+悪役メイク。キマイラはきぐるみ着用。

●参加者一覧

鷹代 由稀(ga1601
27歳・♀・JG
鬼道・麗那(gb1939
16歳・♀・HD
ドッグ・ラブラード(gb2486
18歳・♂・ST
シャーミィ・マクシミリ(gb5241
14歳・♀・HD
布野 橘(gb8011
19歳・♂・GP
伊達 士(gb8462
20歳・♀・DG
CHAOS(gb9428
16歳・♂・SF
エイラ・リトヴァク(gb9458
16歳・♀・ER

●リプレイ本文


 夜の街を見下ろす丘で、指輪から出るホログラムの女性を見つめている少女がいた。
 彼女は不意に空を見上げる。
「サラスヴァティ? ‥‥そう、もう来てしまうのね。準備を急がなくては」


 日本某都市。
 暴れ狂う合成獣の群れに逃げ惑う人々。破壊され行く街並み。瓦礫の合間に上がる炎と黒煙。
 蛇の如き鱗に覆われた獅子を銃弾の雨が襲う。加えて戦車の砲撃を二発喰らってようやく動かなくなった。
「なんて生命力だ‥‥」
 血と汗の混じったものを拭い呟いたのは地球軍第八部隊の橘 紅狗(タチバナ クク)だ。
「死傷者の回収、終了しました!」
 部下の報告を受けて振り向いたのは隊長の祠堂 青燈(シドウ ハルト)。その瞳に哀嘆が垣間見えたのは一瞬。部隊に進軍の指示を出す。先を行く紅狗の横を抜ける際に囁いた。
「‥‥橘、死にたくなければ前に出るな‥‥お前は特に、だ」
「それは、どういう‥‥?」
 紅狗の問いかけに答えは無かった。

「先輩、先輩!」
 第五部隊・天野 鈴奈(アマノ ススナ)は、重みを増した彼の身体を地に横たえる。
「何で、皆先に逝っちゃうの‥‥」
 涙を拭い、長銃を握り直して立ち上がった。初めて臨んだ戦いで多くを失い、心は既に折れかけていた。
「見つけちゃいましたよ、オーララウズ!」
 突然の声に振り返る。眼前に発生した赤い雷渦を纏った黒い球体が鈴奈の左眼を包み込んだ。
「きゃあぁっ!」
 激しい痛みが左眼を襲い、膝から崩れ落ちる。
「左眼が‥‥無、い──」
 意識はすぐに闇に閉ざされた。

 地球軍へ向けて駆ける合成獣の群れの間を、悠然と歩む女がいた。
 サイハイ・ブーツは腿の中程までを覆い。身体に密着したブラックレザーのスーツはエナメル部分が爆発の炎に輝き、紅のロングマフラーが爆風に靡く。顔の上半分を象った仮面が鼻より上を覆い、鏡状のそれが壊滅していく地球軍を映し込んでいた。
「闇より来たりて全てを覆う。紅の炎、ヴァーミリオン! さぁ、バグアバグに跪け!」
 二の腕までのロンググローブに包まれた腕で空を薙ぐ。
「許しはしない、バグアバグ!」
 駆けて来たのは既に壊滅した第三部隊の碧川 霧(ミドリカワ ミスト)だ。ヴァーミリオンは笑みを浮かべる。
「見つけたぞ」
 スタッドに飾られた手元を覆うクローの先に、赤い雷渦を纏う闇が生まれ霧の全身を包み込んだ。
 闇がヴァーミリオンの手元に戻り消えた時、霧は倒れ、手には虹色の結晶があった。
「いやぁ、ここにはオーララウズが豊富ですね」
 忽然と現れたのはピエロの如き装束を身につけた陽気な男だった。白塗りの顔は星形や涙の模様で飾られている。
「さっきもオーララウズを宿した人間を見つけてしまいましたよ、ほら」
 手品のような手振りで、掌に虹色の結晶を二つ出現させた。さらに喋ろうとするのを、ヴァーミリオンが遮る。
「行くぞ、時間までに少しでも多く集めなくては」
 二人の姿は廃墟の奥、立ちこめる爆煙の中へと消えていく。

 地を這うように進む紅狗の足の爪先は欠落していた。突如として現れたピエロのような男に奪われたのだ。
「何者なんだ、バグアバグ‥‥隊、長‥‥」
 彼が力尽き倒れた時。青燈はビルの上から廃墟の街を見下ろしていた。
「さて、と‥‥軍との付き合いも今日までか‥‥」
 呟き、彼は宙へ身を踊らせた。


 周囲を包むのは重く冷たい闇。これが死というものなのだろうか。
『聞け、人間よ──』
 存在そのものに呼び掛ける力強い声に、紅狗は眼を開けた。
『貴方はまだ、戦う意志がありますか?』
「戦う意志‥‥」
 凛とした声に、霧が呟く。
『この世界を守る力を必要としますか?』
 優しく暖かな声に向けて、鈴奈はその手を伸ばす。
「世界を、守る‥‥」
『我はどんな獲物も逃さぬ運命の猟犬ライラプス。奪われしものを我が力で満たそう』
 紅い光が、紅狗の爪先を包み込む。
『貴女に幻神の力を。我が名はヴァルキリーが一人、軍勢の戒めヘルフィヨトル』
『世界を救うのです。全てを見知する大天使ラジエルの力を与えましょう』
 碧の光が霧の魂を、橙の光が鈴奈の左目を形成する。
「幻神天装!!」
 三人の声に、光は幻神の姿を形作る。目映い光が全身を包み込んだ。

「超生体エネルギー・オーララウズ‥‥その結晶体であるこのラウズライトの美しい事」
 虹色の結晶を見つめるヴァーミリオンの元へ紅い影が飛来する。直撃は避けたものの、弾かれたラウズライトが地を転がる。
「何奴!?」
 リンドヴルムとアヌビスを融合した赤い装甲、肩周辺を覆う獣毛は後頭部からアヌビスの犬型マスクに続く。
「悪を見つけりゃ捕らえて砕く。ライラプス戦士、ライララウザー参上!」
「一人だけで何ができる。ナイトフレア!」
「後ろに跳んで!」
 声に従い跳び退ったライラのいた場所を、ヴァーミリオンの放った炎が呑み込む。
「誰だか知らねぇが、助かったぜ!」
 振り向いたライラの前に現れたのは橙色のイビルアイズ。マスクの側頭部には天使の翼が備わっている。
「悪を見破る至高の目、ラジエルラウザー!」
「おや、体内のオーララウズを私に奪われた方達ではないですか」
 ピエロは恭しく礼を送る。
「ようこそ死にぞこないの皆様、ラドルと申します。お見知りおきを!」
「私が倒してあげる」
 ラジエルが率先して攻撃を仕掛ける。
「まだ一人いるぜ!」
 声と共に現れたのはヴァルキリーの甲冑とヘルヘブン750が融合した装甲の緑の戦士。
「深緑の鎧を纏い魂を導く戦乙女が一人、ヘルフィラウザー‥‥見参!」
 大型拳銃から放たれた幻神の力は真紅の炎に相殺された。
「ふむ‥‥見込みはありそうね。でも、残念‥‥」
 バグアバグの二人を守るように立ちはだかったのは、悪魔と見紛う漆黒のシュテルン。十二枚の翼の一部と装甲の隙間は炎の如き真紅。
「イスフェネクス、奴らを排除するぞ」
 ヴァーミリオンの声に、イスフェネクスは両肩の翼を二丁の拳銃として身構えた。
「私は醒凰鬼イスフェネクス‥‥このシュベルトフリューグで地獄に送ってやろう‥‥」
 彼女が放つ連弾は逆方向に駆けるヘルフィを追う。
「ライラキッカーの威力を見せてやるぜ!」
 猟犬の如く疾走するライラが、爪先から臑までを覆う超硬質のグリーブによる蹴りをヴァーミリオンに繰り出す。
 それを受け止めた背に三対の銀の翼を有するその男は──。
「隊長、あんた何で‥‥!? その姿は‥‥」
「お前‥‥橘か。忠告を聞いていれば、俺に殺されずに済んだものを‥‥幻神天装!」
 青燈の肩胛骨から青い光が広がる。光は堕天使ベリアルの姿を一瞬映して全身を包むアンジェリカカラーのディアブロ型装甲へと変じた。マスクから伸びる脹脛までの髪の間から、エネルギー体に変じた三対の翼が広がる。
「天が理に背き、汝俗悪を排す者‥‥堕天の使徒、べリアラウザー‥‥」
「やめてくれ隊長! 今まで一緒に戦ってきたあんたはどこに行っちまったんだ!」
「‥‥ドミニオンエッジ」
 ベリアの声に翼の一対が消え、彼の両手に両刃の双剣が宿る。
「悪意と敵意を司る刃に倒れるがいい」
 戸惑うライラに、ベリアの迷い無き刃が振り降ろされる。


 ラジエルはヴァーミリオンのクローを優れた反射神経を生かして見切りかわしていく。
「ちょこまかと!」
 鋭く突き入れられたクローを腕で払った瞬間に幻神の力を発動する。
「ラジエルアイズ!」
 オーラに映し出される天使ラジエルが全てを記した書を開く。
「ヴァーミリオンの弱点は‥‥鏡?」
 斜に斬り上げられた爪を連続後方転回で間合いを取ったラジエルは、迫るヴァーミリオンに掌を翳した。廃墟の瓦礫から拾った鏡面加工の金属片には、彼女の姿が映し出されている。
「ぐ‥‥あ‥‥」
 苦しげな声を上げてヴァーミリオンは身体を強張らせた。その隙をついて繰り出した剛拳は忽然と姿を現したラドルの掌に受け止められた。
「まぁ、所詮人間。よくがんばりましたってね」
 ピエロの全身を包んだ闇はの強化装甲ガルムとなって彼を戦闘形態へと変化させる。
「多少の力を得たとたん英雄気取りか‥‥笑止」
「うあっ!?」
 拳を掴んだまま、ラジエルの身体を上空へと放り上げる。それを追って、ラドルはブースターで一気に上昇した。
 二人は落下しながら激しい格闘戦を繰り広げ、次第にラジエルが押され始める。
「くっ‥‥!」
 側頭部を狙ったラドルの蹴りを左の掌底で反らし、中段に捻り込んだ右拳は空を切った。
 ブースターで頭上に移動したラドルが、組んだ両拳を叩き込む。
「うあぁっ!」
「ラジエル!」
「他者の心配をする余裕などあるまい」
 ベリアの双剣がライラの装甲に火花を散らす。吹き飛ばされたライラの身体は、ベリアの左剣が変じた六本のナイフが描く六芒星の結界に囚われる。
「神罰の陣!!」
 高速飛翔するベリアの右剣がライラを斬り飛ばした。
「うわあぁぁっ!」
 同じ頃、ヘルフィもイスフェネクスに圧され始めていた。
「お前の幻神の力はその程度か‥‥」
 イスフェネクスが左右の拳銃のグリップを切り替えると、銃身に沿って刃が現れる。
 舞うような双剣の連撃。左右同時に振るわれた瞬間を狙って大型拳銃で受けとめる。
「ランドグリーズ&ラーズグリーズ!」
 ヘルフィの声に大型拳銃は光に融け、一対の双剣へと変じた。右剣は双剣を受けとめたまま、左剣がイスフェネクスのマスクを掠めた。
「命は惜しくないようだ‥‥」
 怒りを込めて呟いた彼女の左胸に宿る真紅の宝玉が輝きを放つ。
「ブルート・ヴェルステイカー!」
 全身から吹き出した黒い炎をまとったイスフェネクスは、それまで以上の力でヘルフィを襲う。
 体勢を立て直したヴァーミリオンが天へ撃ち出す火炎光弾が無数のメテオとなり降り注ぐ。
「我が力、思い知るがいい。ナイトメア・プロミネンス!」
 三人の悲鳴が炎と黒煙に飲まれた。


 力を振り絞って立ち上がりはするが、上回る力を持つ相手に三対四。勝機を見出す事ができない。
「今終わらせてやろう」
 とどめを刺そうと進み出たイスフェネクスの行く手を遮るように、頭上から飛来したハートのAが突き立った。
「さぁ、お遊びは此処までよ!」
 崩れたビルの瓦礫の上から飛び降りて来たのは、夜の丘でバグアバグ来襲を察していた少女である。
「幻神天装!」
 彼女の頭部から発した白い光が弁財天サラスヴァティを映し出す。スマートな白いミカエルの装甲に身を包み、背には頭光を思わせるリングを背負っている。
「輝く白は素敵に無敵、愛の女神ヴァティラウザー!」
「味方‥‥なのか?」
 ライラの問いにヴァテイは力強く頷いた。
「これで四対四。反撃開始よ!」
 ヴァティの合流に、三人は再び果敢に各敵へ挑みかかる。
「一人増えたくらいで! ナイト・フレア!」
 ヴァーミリオンの炎をひらりとかわし、ヴァティは拳を覆う装甲を眼前に翳す。
「アナタの能力は頂いたわよ。シャクティナックル!」
「な‥‥」
 ヴァティのナックルはクローそっくりに姿を変えた。繰り出される炎を舌打ちと共にかわしたヴァーミリオンに、再び姿を変えたヴァティの拳が光る。
「魂よ光って唸れ‥‥必殺閃光拳!」
 光の波動が込められた拳がヴァーミリオンを光と共に弾き飛ばす。
「ヘルフィヨトル・キュリア!」
 魂から生み出された鎖がイスフェネクスに絡みつく。そこへ大型拳銃での高速連撃を撃ち込んだ。
 ライラは助走をつけ高く跳び上がる。
「橘狗大蹴撃!」
 赤く光る爪先が猟犬の残像と共にベリアを吹き飛ばす。
「‥‥過小評価していたようだな‥‥」
 前に出るラドルの背後で、ヴァーミリオンは苦しげに喉を押さえる。
「待てラドル、時間が‥‥っ」
「努力はしたようだが‥‥終わりだ、弱者よ」
 ブースターで高く跳びあがった彼は、同じくブースターを利用し超高速の踵落としを放つ。
「ファング・オブ・デス!」
「させない! ラジエルアイズ!」
 アナライズしたデータをラジエルは仲間に転送する。
「皆、幻神の力を集めるのよ!」
 ヴァティの声に応じて、四人の幻神の力が共鳴する。輝きは一つの巨大武器を生み出す。
「これが最終武器ラウザーマグナムよ!」
 ヴァティが言い、マグナムの基盤を支えるラジエルが合図を送る。
「今よ!」
「十字を切って己の罪を悔いなさい!ギルティ!」
 ヴァティが引金を引くと、銃口から飛び出した四色の光の奔流がラドルを、背後の三人をも巻き込んで爆発を起こす。
「カッコイイとはこういう事よ」
 ヴァティの台詞と共に、マグナムは光の粒子となって霧散した。
 傷つきながらも、敵勢は誰一人欠けていない。
「退くぞ、ラドル」
 ヴァーミリオンの声に従い、ラドルは背を向けた。
「‥‥貴様らの顔は覚えておく、また矛を交わそうぞ」
「幻神の力を振るえるのは自分達だけだと思わない方がいい」
 イスフェネクスもそう言い残して二人へ歩み寄る。
 彼の身体から滲み出た闇が二人を包み、消えた後には何も残らなかった。
 一人残ったベリアは装甲を解き、
「生き残りたいなら足掻け‥‥俺達に、殺されたくなければな‥‥」
 三対の翼で跳び去った。


 ヴァティは装甲を解き、皆に言った。
「初めて幻神の力を振るったとは思えない戦いぶりだったわ」
「ホント!?」
 喜ぶ鈴奈に、彼女は微笑む。
「マッスルにしては頑張った、という事よ」
「へ? それって体力バカってこと!?」
 四人はひとしきり笑い、互いに自己紹介する。少女の名はアイナといった。
「アナタ達、この女を知らない?」
 アイナは指輪のホログラムを見せる。脳をバグアバグに奪われた時に記憶をも失った。その女が失った過去の手がかりなのだという。
「紅狗は爪先にライラプス、霧は魂にヘルフィヨトル、アイナは脳にサラスヴァティ、私は左眼にラジエル。皆奪われた箇所を幻神を宿すことで補い、力を得ているのね」
 鈴奈が納得する横で、紅狗が皆に言う。
「なぁ、力、合わせようぜ。一人ひとりじゃ敵いっこねぇ。でも、全員でかかれば、きっと」
「あたしは、構わない。世界を救う使命も受け入れる‥‥自分の想いを貫くために」
 霧の言葉に鈴奈も笑顔で頷く。アイナが言った。
「私達は幻装天鎧を纏い戦う戦士、幻装戦隊ラウズブレイバーとして戦うのよ!」
 言い終わると同時に暗転しタイトルロゴが重厚に表示され、スタッフロールが流れる。

アイナ(ヴァティ)/鬼道・麗那(gb1939
天野鈴奈(ラジエル)/シャーミィ・マクシミリ(gb5241
橘紅狗(ライラ)/フーノ・タチバナ(gb8011
碧川霧(ヘルフィ)エイラ・リトヴァク(gb9458

祠堂青燈(ベリア)/CHAOS(gb9428

ヴァーミリオン・ナイアーラ/伊達 士(gb8462
ラドル/ドッグ・ラブラード(gb2486
醒凰鬼イスフェネクス/鷹代 由稀(ga1601


 シリーズ前のプレ放送となった本作は、イツメパイユファンを中心にではあったが話題を集め。
 めでたくシリーズ化を果たすのだった。