タイトル:【KV☆】新たなる飛翔マスター:きっこ

シナリオ形態: シリーズ
難易度: やや易
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/05/11 16:57

●オープニング本文


●社長、感動っ☆
「素晴らしい! 素晴らしすぎます!」
 感極まったためもあるだろうが、普段からわりと高めな彼の声は一段と高くなっている。
 白いスーツに身を包み、キュートに外ハネしたレイヤーヘアの金髪に縁取られた色白な顔の青年。その青い双眸は今、少年のように輝いていた。
 彼をそうさせたのは、遊園地で行われた『地球(テラ)戦隊KV☆STAR』ヒーローショーを収めた映像だった。そしてこの青年こそが、KV☆を産んだ『イメツパイユ』の社長である。
 ヒーローショーをメインに活動をしていた大手のイベント会社だった『イメツパイユ』は、メディアの発達と共に衰退し倒産寸前となっていた。
 それを苦に病床に伏せった父の代りに社長を継いだ時には、社員二名・役者六名しか残っておらず。彼は社運と大金をかけて使用許可を取り、KV☆というヒーローに会社の命運を託した。
 初のお披露目となるはずの遊園地でのヒーローショーを前に、役者達を乗せた車がキメラの襲撃に遭った。そこを救ったのが、代役の依頼を受けて駆けつけた傭兵達。
 社長に多大な感動を与えたのは、傭兵達が作り出したKV☆の大活劇だった。
「見てください、子供達の輝かしい顔を! バグアの侵略に脅かされているこの時代だからこそ、子供達にはヒーローが絶対不可欠なのです」
 口が裂けても立派とは言えない社長室兼事務所で両腕を広げ熱弁しながら、若き社長は勢い良く振り返った。
「真壁くん、KV☆の舞台を行いたいという事でしたね?」
「はい。劇場での公演を、何とかやらせていただけないかと‥‥」
 答えたのは真壁秋良(21歳)。きりりと結い上げた髪とパンツスーツが似合う活動的な美人。会社の事務一切からイベント時のマネージャーから音響までを一手にこなす。KV☆の原案を構想したのも、この秋良だった。
「子供達だけじゃなくて、親御さんからも、もっとKV☆を見たいってお手紙、たくさんもらってるんですよ」
 嬉しそうにそう言ったのは水瀬春花(18歳)。ツインテールの髪に雰囲気も服装もふわふわしている童顔の少女。秋良の仕事の補佐と、ヒーローショーの司会を担当している。
「やりましょう」
「いいんですか、社長!?」
 あっさり許可されると思っていなかった秋良は思わず聞き返した。
 費用は劇場の手配に掛かるものだけではない。ヒーローショーのものを流用できる分には問題ないが、それ以外の舞台装置もろもろ、決して安い金額ではないはずだ。正直、会社には借金も沢山ある。
「大丈夫。当面の費用は、何とかなるでしょう。今はあちこちからKV☆ショーを熱望されていますからね」
 社長の言うとおり、テーマパークからデパートまであらゆる方面から申し込みが寄せられている。
 今は会社の役者スタッフ達が、傭兵達が組み立てた設定・ストーリーを使ってショーを演じて回っていた。多いときは近場で三〜四件はしごしてショーをする時もあるくらいだ。
 スタッフを志望し入社する者も数人おり、今は安定した運営を行う事ができていた。
「それにファンになってくれた皆様も『そろそろ続きのストーリーを』と望んでいる事でしょう。私も早く続きが観たい!!」
 今日も届いているファンからの手紙を机の上から拾い上げ、社長は胸に抱きしめた。
「実際に正義のために戦っているヒーロー‥‥傭兵の皆様だからこそ、このような感動を生み出せるのでしょう。今回の劇場公演も彼らに脚本・出演を要請します」

●というわけで
「えぇ〜、イベント会社さんからの『舞台【KV☆STAR】』の脚本・出演をするということですねぇ」
 依頼を受ける能力者達を前に説明をするのは、日本人オペレーターの小野路綾音(おのみち・あやね)だ。
「以前、怪我をした役者さん達の代役をこちらで引き受けて大成功したのに味をしめての依頼、というところでしょうかぁ」
 表現に大いに問題があるような気がするが、直接の関係者は今ここに一人もいないので良しとして、まぁそんなところだろう。
「KV☆は今、日本の一部の都市で静かなブームになっているみたいですねぇ」
 今はまだローカルヒーローの域を出ないが、今後の展開によっては認知度も上がっていくことだろう。
「依頼内容はおおまかに『役者としての出演』『ストーリーの構成』の二つとなっているようです。前に出演された方は、そのままの役を引き継いでくれて良いそうです〜」
 しかし、全く同じメンバーでこの依頼に向かえるとは限らないのでは‥‥?
「そうなんですよ〜。その場合は、新しい役を作って良いそうですから〜」
 KV☆は傭兵達と同じように、戦闘可能な戦士を沢山抱えた『KV☆養成所』から出動する『KVテクター』という装甲をまとって戦う戦士だ。有事に際し、養成所の所員がKV☆として出動する。だから前作に出たKV☆以外にもKV☆はいるという事らしい。
「ですから、前作に登場しなかった新しいKV☆として出演したり〜。後は敵の幹部として登場したりも出来ますしねぇ。あ、良く戦隊モノとかに出てくる、敵幹部かKV☆と絡みのある一般人とかでもいいんじゃないですかぁ?」
 絡みのある一般人‥‥ああ、戦いに巻き込まれるヒーローの誰かの肉親とか。敵幹部が一目惚れする花屋の店員とかそういうヤツか。
「依頼に向かう皆さんの人数や配役によって演じるストーリーも変わってくるでしょうから〜。それでこっちで決めていいって言ってくれてるのもあるんでしょうねぇ」
 綾音は皆にKV☆の資料を配って歩く。KV☆の基本設定に加え、前作となるイベント内での情報が追加されている。
「KV☆はKVや傭兵をイメージしたヒーローですので‥‥成功させれば我々のイメージアップにも繋がるはずですから〜。皆さん頑張ってきてくださいねぇ」
 綾音は依頼へと向かう傭兵達をいつもどおり笑顔で送り出した。

●以下資料
【地球戦隊KV☆STAR(テラセンタイ・ナイトフォーゲル・スター)】
 クラッシュバグに対抗すべくテラ・ネットワーク財団が生み出したヒーローがKV☆STARである。
 財団所有のKV☆養成所では、地球の平和を守るための戦士達が日夜訓練を重ねている。
 変身時は「地球(テラ)パワー、セット!」の声と共に腕時計型の通信機兼発動スイッチを押す。
『KVテクター』というKVを思わせる装甲(口元以外を覆うヘルメット、胸・腕・脚装甲。背中に機翼)を纏った戦士となり、数倍の能力を発揮できる。

【クラッシュ・バグ】
 地球を乗っ取り占領するために宇宙から来た悪の組織。ボス、幹部、魔獣、戦闘員という縦社会によって構成されている。
 魔獣は地球の生物をベースにメカ改造を施したモノが多い。
 名前は『改造元生物の名前+バグラ』。前作で倒れたのは『クマバグラ』

●参加者一覧

ジャンガリアン・公星(ga8929
27歳・♂・JG
RENN(gb1931
17歳・♂・HD
鬼道・麗那(gb1939
16歳・♀・HD
天戸 るみ(gb2004
21歳・♀・ER
シャーミィ・マクシミリ(gb5241
14歳・♀・HD
緋桜 咲希(gb5515
17歳・♀・FC
カイト・レグナンス(gb5581
18歳・♂・FC
桂木穣治(gb5595
37歳・♂・ER

●リプレイ本文


――地球は今、宇宙から来たクラッシュ・バグの脅威に晒されている。
 クラッシュバグに対抗すべくテラ・ネットワーク財団が生み出したヒーローがKV☆STAR(ナイトフォーゲル・スター)である。
 財団所有のKV☆養成所では、地球の平和を守るための戦士達が日夜訓練を重ねている。
 クラッシュバグが現れた時、KV☆は必ず皆を守ってくれる

 白と銀を基調としたKV☆養成所のジャケットとブーツを身につけた三人が、舞台右袖からステージへと登場する。
 前のKV☆ショーに出演していたカイト・レグナンス(gb5581)が、横の二名をを指して言う。
「俺はKV☆、天野ユウリ。この二人はKV☆の新人隊員だ」
 シャーミィ・マクシミリ(gb5241)が客席に挨拶をする。
「こんにちはー! KV☆の時雨アヤメです」
「僕は星川ショウキ。よろしくお願いします」
 続いて柿原錬(gb1931)が役名を名乗ると、アヤメは客席の子供達に言った。
「今日は皆となぞなぞ遊びをしようと思いまーす! 答えがわかった人は手を挙げてね」
 アヤメとショウキが出題するなぞなぞに、元気に手を上げる子供達。ユウリは客席に下りて、回答する子供にマイクを向けたり、手を上げていない子供達に話しかけたりしている。

 舞台左袖に控えているのはジャンガリアン・公星(ga8929)、天戸 るみ(gb2004)、桂木穣治(gb5595)の三人。
 時折笑い声が起こる会場の様子に、ジャンガリアンが言う。
「盛り上がってきたようですね」
「悪役がいるからこそ主役が映えるってもんだ。しっかり役目をこなさないとな」
 穣治の言葉にるみも頷いた。
「やるからには子供達に楽しんでいただきたいです。公星さん、桂木さん、頑張りましょうっ」


「ふはははは!」
 和やかな空気を破る突然の高笑い。直後ハードなメロディが鳴り響く。
 舞台左袖から、クラッシュ・バグの戦闘員達が走り出る。
 悠然と姿を見せたのはスーツに白衣を羽織った穣治だ。伊達眼鏡の奥、目の下には毒々しい赤いラインが引かれている。
「我は幹部にして科学者、ドクター・ウォッシュだ。KV☆! 今日こそ貴様達をクラッシュ・バグに引き入れ、地球のっとりに弾みをつけてやるぞ」
 会場の大きさを念頭に入れて声を張り、大きな動作で名乗りを上げる。
「なぞなぞ遊びだと? ふん、我らの知力を見せてやろう。ライオンバグラ!」
 機械により強化・巨大化した右腕の先に長く強靭な爪。針金の如くツンツンとしたたてがみが凶悪な顔を包む。
 ジャンガリアンがきぐるみ内で話すと、エフェクトの掛かった音声が会場に響く。
「クラッシュ・バグの問題は難しいぞ〜。問題を解けなければ、お前達をクラッシュ・バグとして再教育してやろう。アリガタクオモエ」
「やめるんだ!」
 止めようとしたショウキに、ライオンバグラが指を突きつける。
「問題! 地球の赤道部分の直径は何キロメートルだ?」
「うっ‥‥?」
 考えるために動きを止めたショウキに続けて、ライオンバグラはアヤメに向き直る。
「次はお前だ。海底で一番深い場所の名前とその水深は?」
「えーっ!?」
「このくらい答えられなくてどうする。頑張って考えるんだ」
 ユウリに言われ二人が考えている隙に、ウォッシュとライオンバグラは小学〜中学の理科の授業で習う問題を出題し、答える事ができなかった子供達を戦闘員に捕獲させる。
「わかったぞ、二万キロだ!」
 ショウキの答えをライオンバグラがあざ笑う。
「ブー! はずれだ」
「ふえぇ、わかんないよー!?」
 アヤメは一人パニックになっている。二人の様子に見かねたユウリが前に出る。
「一問目の答えは約12756キロ、二問目の答えはチャレンジャー海淵で海面下10920mだ」
「正解だと!? くそっ問題! 太陽の表面温度は!?」
「6000度だ」
 あっさりと答えられ、ライオンバグラは吼えながら地団太を踏みまくる。
「次はこちらが問題を出す番だ! 太陽が昇る方角と沈む方角は?」
 ショウキに指差され、ドクター・ウォッシュは言葉に詰まった。
「くっ‥‥ライオンバグラよ答えるのだ!」
 突然振られて動揺したライオンバグラだが、そこは百獣の王のプライド。冷静を気取って答えてみせる。
「よ、よおし。答えは‥‥北と南だ!」
 会場内にブーという音が鳴り響き、子供達の笑い声が起こる。
 KV☆の出す簡単な問題に全く答える事ができず。終いには捕虜としてステージに上げた子供達にまで答えられる始末。
 アヤメは嬉しそうに笑って言う。
「全然答えられないじゃない」
「うるさーい、お前だって答えられなかっただろうが!」
 ライオンバグラが逆切れして叫ぶと、ウォッシュの苛立ちも頂点に達した。
「このような遊びに付き合ってられるか!」
 ウォッシュが腕を横に薙ぐと、捕まっていた子供達は客席に開放される。
「自分からなぞなぞ勝負を仕掛けてきたのに」
 アヤメが突っ込むが、ウォッシュは構わず手を上に上げた。
「やってしまえ!」


 その時、マーチ風の曲が流れ始めた。
「国連地球防衛軍・UDFの沢渡ユキです!」
 客席の後ろから、スカートの軍服を纏った緋桜咲希(gb5515)が姿を見せた。
「我々SCTが来たからには、もう大丈夫です! ‥‥多分」
「少尉、多分て何ですか」
 副官の曹長に言われて、ユキはライオンバグラを指差した。
「だって、めちゃくちゃ強そうですよ」
 及び腰なユキだが演技というよりは素に近い。この依頼を受けたのも、戦わずにお金がもらえるからである。
 学校の演劇程度の経験しか無い為に、ボロが出ないよう自然体で臨む事にしたのだ。
「びびってないで、突撃しますよ」
「う〜‥‥えーい、突撃ー!」
――『Union Deffence Force』『Special Counter Team』。国連地球防衛軍の特別即応班。彼らは、民営であるKV☆養成所とは違い公的な軍隊である。彼らもまた、クラッシュ・バグと日夜戦い続けているのだ!
 舞台へとなだれ込み、既に戦闘員と戦っているKV☆に加勢し戦うSCT。ユキは二つのナイフを鎖で繋いだ武器を操り、ナイフを投げたり戦闘員を絡め取ったりと健闘している。
 戦闘員が全滅し、戦いにライオンバグラが加わったとたんにSCTは劣勢に。近距離でライオンバグラの咆哮を受けたユキは攻撃される前に卒倒した。
「て、撤収ー!」
 曹長がユキを抱えSCTは舞台袖に逃走していく。入れ替わりに鬼道・麗那(gb1939)が駆け込んできた。
「一般庶民の皆さん、お待たせしましたわ。KV☆吹雪レイナ!」
 客席に向けてしっかりポーズを決めて、レイナは三人の横に並ぶ。
「残るはお前達だ!」
 ユウリが言うと、ウォッシュは得意気に人差し指を立ててみせる。
「我はKVテクターの戦闘力に目をつけ研究を続けてきた。出でよ、ルナゴールド!」
 ドクター・ウォッシュの声と共に暗転した舞台に様々な色の光が明滅する。舞台左袖から現れたのは、巫女服に身を包んだ天戸 るみ(gb2004)だ。いつも笑顔の彼女だが、今は感情の無い冷たい表情をしている。
「お呼びでしょうか、ウォッシュ様」
「KVテクターを上回るD(ダーク)テクターの力を見せてやるのだ!」
 こくりと頷き、ルナゴールドは手首に填めた腕時計型スイッチをかざした。
「KV☆、私が相手をして差し上げましょう。月(ルナ)パワー、セット‥‥!」
 スイッチが押されると同時に噴出したスモークの中で、Dテクターの装甲が展開される。スモークが晴れた時、スノーストームを思わせる金色のテクターを身につけたルナゴールドが佇んでいた。
「月光の使者、ルナゴールド」
 KV☆は横並びに身構え、声を合わせて腕のスイッチを押した。
「地球(テラ)パワー、セット!」
 KV☆のテーマ曲が流れ出し、まばゆい光が舞台を駆け巡る。スモークの中から、青いS−01のKVテクターに身を包んだユウリが姿を見せた。
「大空を翔る自由の翼。蒼天の剣、 スターブルー!」
 続いて登場するのは、白いウーフーを装備したレイナと銀のロビンを装備したショウキ。
「輝く白は乙女の純心! 純情可憐スターホワイト」
「天翔る不屈の銀狼、スターシルバー!」
 最後に登場したのは、オレンジの翔幻のKVテクターをつけたアヤメだ。
「とっとりあえずスターオレンジ!」
 ずっこける三人。客席から笑いが起こり慌ててオレンジが言い訳する。
「ほら、訓練期間終わってないのに急にKV☆になったからっ」
 気を取り直して全員が集まってポーズを決める。
「正義の翼で悪を討つ、地球戦隊・KV☆STAR!」
 シルバーは怒りをルナゴールドとウォッシュに向ける。
「星川博士の‥‥父さんの技術を悪用するなんて許せない!」
「初めての戦いだけど、負けないんだから!」
 オレンジは発光するワイヤーを腕の装甲から引き出した。
「スターワイヤー! 当たると痛いよ〜」
 極細の特殊ワイヤーにダイヤモンド加工を施したそれを、中距離から振るう。
「えっ!?」
 スターワイヤーはルナゴールドの左腕に備わったシールドで防がれていた。
「スターフォースセイバー!」
 シルバーが取り出した柄に力を込めると、緑色の波動を刀身とする大剣が現れた。しかし、頭に血が上った攻撃はするりとかわされる。
「クレセントムーン」
 言ってルナゴールドが左腕のシールドを外すと、シールドは一瞬でアローへと組み変わった。放たれた月光を思わせる矢が、シルバーとオレンジに当たり小爆発が起こる。
「私がお相手いたしますわ、スターバトン!」
 ホワイトはバトンを華麗に回転させながらルナゴールドの間合いに飛び込む。振り下ろされたバトンを、ルナゴールドはクレセントムーンをエッジ形態に変形させて受け止めた。
 交錯する視線に、ホワイトが息を呑む。
「ま、まさか」
 その隙にホワイトの右手が弾かれる。
「スターブレイド!」
ピンチを救うべくブルーが武器を振るう。スターブレイドから放たれたエネルギー波の前に、ホワイトが立ちはだかった。
「やめて!」
「!?」
 悲鳴を上げて爆発に吹き飛ぶホワイト。駆け寄る三人に、彼女は告げた。
「あれはルミナ‥‥私の姉」


 ルナゴールドは、容赦無くクレセントムーンをKV☆に向ける。エネルギーが集まり始めたその時。
「うっ!?」
 突然苦しみ出したルナゴールドに、ウォッシュが驚く。
「どうした、ルナゴールド!?」
「‥‥すみません。後は任せます」
 そのままよろけながら舞台袖へと走り去っていく。
「仕方ない。我の必殺技ブレインクラッシュを喰らうが良い!」
 ウォッシュは大きなカメラを取り出すと、シルバーとオレンジを撮影した。とたん、二人はホワイトとブルーに襲い掛かる。
――ブレインクラッシュ。専用カメラに収めた者を一時的に洗脳状態にする事ができるのだ!
 同士討ちとなっているKV☆に、咆哮を上げたライオンバグラの右爪が炸裂する。爆発と共に四人は宙に舞い倒れ伏す。四人のKV☆はショートしたようにスパークしていた。
 舞台が暗転しシルバーにスポットが当たると、澄んだ女性の声が響く。
『あんたそれでも銀河の息子? いい加減周りを見たら。結局何も見えてないの』
「これは‥‥僕のKVテクターに組み込まれている制御AI・アリス!?」
 ショウキ役の錬が覚醒時に変じる声を利用しての一人二役だ。
『どうする? ワタシのアシストを受ける? それともあの力の為に自分でやり遂げる?』
 倒れていたシルバーは力を振り絞り身体を起こす。
「僕は自力で乗り越える。いや、乗り越えてみせる!」
『そう。じゃあ頑張りなさい』
 煌く音が響く。舞台が明るくなり、四人のKVテクターからスパークが消える。
――自ら機能停止していたアリスは、KV☆のピンチに目覚めた。アリスは全てのKVテクターを癒す力を持つのだ!
 シルバーに続き、ホワイト、オレンジも立ち上がる。
「このくらい何でもありませんわ!」
「皆が頑張ってるんだもん。研修期間は終わって無くても、私だってKV☆なんだから!」
「俺達は負けない! 例え、この体がボロボロになっても! 何度でも立ち上がってやる!!」
 最後にブルーが立ち上がり、全員が武器を構える。対するウォッシュとライオンバグラも身構えた。
 ライオンバグラも咆哮と共に力を溜め、赤光する右腕を振りかざし走る。
「スターワイヤー!」
 オレンジのワイヤーが右腕の回路を分断する。爆発する右腕によろめくライオンバグラに、シルバーがスターフォースブレードを低姿勢で振り回す。
「足元注意だ、スターライザー!」
 花火と共にライオンバグラが上昇する。
「これで終わりだ、スターゲイザー!」
 跳び上がったシルバーが大剣を振り下ろす。
――波動の旋風、スターライザーで打ち上げた敵を波動の帯剣スターゲイザーで地面に叩きつける。これがシルバーの必殺技だ!
 悲鳴を上げて大爆発に散ったライオンバグラ。
「おのれ! 我が直々に倒してくれるわ!」
 科学者ながらも鍛えた肉体で格闘戦を挑むウォッシュだが、次第に四人の連携プレーに押されていく。
「行きますわよ、ホワイトプリティーストーム!」
――ホワイトの見事なバトントワリングが衝撃派の嵐を生む。それがホワイトプリティストームだ!
「くうぅっ!」
 衝撃波に耐え動きの止まっているウォッシュに、ブルーがスターセイバーをかざす。
「スプレッドエッジ!」
――水の力を刀身に集中させ、相手に向けて放つ。相手を斬る事もエネルギーを放出する事もできる、それがスプレッドエッジである!
 蓄積されたエネルギーがウォッシュを断つ。
「さすがは我が目をつけた素材よ‥‥しかしこれで終わったと思うなよ!」
 赤い光が明滅する中ウォッシュが叫ぶと、舞台全体に花火が炸裂した。
 ホワイトは片膝をつき、拳を握り締めて決意を呟く。
「待ってて姉さん‥‥いつか私の手で取り返してみせます」
――パワー・スピード・ガードの全てにおいてKV☆を圧倒するDテクターの戦士、ルナゴールドはホワイトの姉ルミナだった。どうする、KV☆!? 待て次回!


 終了後の握手、撮影会も好評に終わり、楽屋では簡易打ち上げが行なわれていた。
 子供も大人も楽しんでくれた手ごたえに、演じ終えた皆にも充実した笑顔が浮かぶ。
 見かけによらず子供の扱いが上手い事が発覚したカイト。皆の意外そうな視線に、つらっと答える。
「別に、子供の世話は慣れてるしな?」
 今回は空席も少し見られたが、次回は満席を目指したい。
「いつかは映画進出! それまで皆で頑張りましょう」
 更なる高みを目指す麗那にカイトも頷く。
「それも、悪くないな‥‥」
 麗那が社長に提案したキャラ色応援メガホンは、採用される事になり。地球パワーをKV☆に送るペンライトなども話に登った。
 かくしてKV☆は好調なスタートを切ったのであった。