タイトル:【KV☆】舞台での再戦マスター:きっこ

シナリオ形態: シリーズ
難易度: やや易
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/06/08 12:04

●オープニング本文


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●社長、燃える!
「いや〜、前回の舞台も素晴らしいものでしたねぇ‥‥何度見ても素晴らしい」
 事実、何度リピートしたかわからない映像を前に、彼は溜息をついた。
 すっくと立ち上がった外ハネレイヤーヘアの金髪に縁取られた色白な顔の青年は、イベント会社だった『イメツパイユ』の社長である。
 倒産寸前だった『イツメパイユ』は、とある事故がきっかけで傭兵を役者として起用した『地球(テラ)戦隊KV☆STAR』のヒットにより活力を取り戻しつつあった。
『イツメパイユ』の原点であるヒーローショーも好評で、各方面からKV☆を招きたいという問い合わせが寄せられていた。
 ヒーローショーは会社の役者スタッフが傭兵起案による脚本を使用して演じている。現在役者の数も増え、KVテクターも若干増産され、以前に増して多くのショーを提供できるようになっていた。
 KV☆のショーを盛り上げるためにと作った『キャラ色応援メガホン』も、ショーのたびに好調な売上げを記録している。
「このまま人気が上がってくれれば、会社の借金を返済できる日も近いですね。クックック‥‥」
「しゃちょー、その笑い方悪人っぽいです」
 挙手して突っ込んだのはヒーローショーの司会を担当している水瀬はるか(18歳)だ。
 彼女は送られてきたファンからの手紙を会社に来ているものと、傭兵達宛てに来ているものを仕分けしている。
 その隣で電話応対を終えた真壁秋良(21歳)が書き込みを終えた手帳を閉じた。以前は会社の事務一切からイベント時のマネージャーから音響などを一手に引き受けていたが、スタッフの増えた現在はマネージャー業に専念できている。
「社長、前と同じハコ(会場)が手配できました」
 秋良が言うと、社長は両の手を拳に握り締めて宣言した。
「よろしい! 今度こそあの会場を満席にしてみせますよ!!」
 何と言ってもKV☆人気を支えているのは傭兵達が作り出すKV☆の舞台なのだ。秋良は携帯電話をプッシュした。
「じゃあ、連絡を入れておきます」
「ちょっと待ってください、真壁くん。出演してくれる傭兵の皆さんに確認しておいて欲しい事があるのです」

●というわけで
「えぇと、またイベント会社『イツメパイユ』さんから『KV☆』の依頼が来てましてぇ」
 日本人オペレーターの小野路綾音(gz0247)は、集まった傭兵達に資料を配布する。
「前に参加された事のある方はお解りでしょうけど、今回の依頼内容も『役者としての出演』『ストーリー構成』の二つですねぇ」
 参加できるメンバーや役どころなどによって、構成されるストーリーも変わってくる。それ故に、脚本までが傭兵達に委ねられているのだ。
「ん、社長が皆さんに確認したい事があるようですねぇ」
『KV☆(ヒーロー)は永遠です。ですが、物語としてやる以上は必ずエンディングが必要になる。私も映画化を果たし、華麗なるラストを迎えたい。ラストを迎えるまでに何度上演をするのかを、考えていただきたいのです』
「‥‥ということです〜。回答はすぐにではなくても良いそうなので‥‥」
 という綾音も、心なしか寂しそうだ。
「実は私もKV☆の物語は楽しみにしているんですよ〜。皆さん、頑張ってくださいねぇ。あ、今回から打ち合わせに参加させていただきますので〜。社長やスタッフさんへの確認は、私を通してくださいねぇ」

●以下資料
【地球戦隊KV☆STAR(テラセンタイ・ナイトフォーゲル・スター)】
 クラッシュバグに対抗すべくテラ・ネットワーク財団が生み出したヒーローがKV☆STARである。
 財団所有のKV☆養成所では、地球の平和を守るための戦士達が日夜訓練を重ねている。
 変身時は「地球(テラ)パワー、セット!」の声と共に腕時計型の通信機兼発動スイッチを押す。
『KVテクター』というKVを思わせる装甲(口元以外を覆うヘルメット、胸・腕・脚装甲。背中に機翼)を纏った戦士となり、数倍の能力を発揮できる。

・決定済KV☆
 スターブラック・黒木メイ
 スターホワイト・吹雪レイナ
 スターブルー・天野ユウリ
 スターピンク・春風サクラ
 スターシルバー・星川ショウキ
 スターオレンジ・時雨アヤメ
 スターパープル?・下部戸レイ
(名前はお子様に判りやすいようカタカナに変えてあります)

【クラッシュ・バグ】
 地球を乗っ取り占領するために宇宙から来た悪の組織。ボス、幹部、魔獣、戦闘員という縦社会によって構成されている。
 魔獣は地球の生物をベースにメカ改造を施したモノが多い。名前は『改造元生物の名前+バグラ』。
 また、ドクター・ウォッシュの開発した『D(ダーク)テクター』を装着した戦士も新たな戦力となっている。

・登場済幹部:クリムゾン船長、ドクター・ウォッシュ
・『D(ダーク)テクター』:ルナゴールド
・故 魔獣:クマバグラ、ライオンバグラ

【国連地球防衛軍・特別即応班】
『Union Deffence Force』『Special Counter Team』
 財団所有のいわゆる民間戦力であるKV☆と対極にある公的な軍。
 KV☆と協力体制をとることもあるが、戦力的にはクラッシュ・バグ戦闘員と互角程度なので言わばやられ役。

・登場済:沢渡ユキ少尉

●参加者一覧

ジャンガリアン・公星(ga8929
27歳・♂・JG
RENN(gb1931
17歳・♂・HD
鬼道・麗那(gb1939
16歳・♀・HD
天戸 るみ(gb2004
21歳・♀・ER
シャーミィ・マクシミリ(gb5241
14歳・♀・HD
緋桜 咲希(gb5515
17歳・♀・FC
カイト・レグナンス(gb5581
18歳・♂・FC
桂木穣治(gb5595
37歳・♂・ER

●リプレイ本文


――地球は今、宇宙から来たクラッシュ・バグの脅威に晒されている。
 クラッシュバグに対抗すべくテラ・ネットワーク財団が生み出したヒーローがKV☆STAR(ナイトフォーゲル・スター)である。

 メインテーマ曲とナレーションが響くと、客席から歓声と拍手が上がる。ライトアップされた舞台は、休工中の空地のセットが組まれていた。
 そこに駆け込んでくるのはシャーミィ・マクシミリ(gb5241)扮する時雨アヤメだ。
「魔獣が現れたって聞いたのに、誰もいない‥‥」
「シャッシャッシャー。のこのこと現れたなKV☆め」
「ふはははは! 罠とも知らずにな」
 周囲を見回すアヤメを嘲る二つの笑い声。
「誰っ!?」
 詰まれた土管の影から姿を見せたのは、スーツに白衣を羽織り、眼鏡をかけた眼の下には毒々しい赤いラインを引いた桂木穣治(gb5595)。同時に『クラ・バグMETAL』が流れ出す。
「クラッシュバグの幹部にして科学者、ドクター・ウォッシュだ」
「そんな、倒したはずなのに!」
「おかげで右腕を失ったが、パワーアップして舞い戻ってきたのだ!」
 その右腕は機械の義手へと変わっていた。
「我らが野望のためにこの手に落ちよ! クモバグラよ。KVテクターを奪うのだ!」
 ウォッシュの声で前に出たのは、クモ型魔獣だ。八本の脚のうち下四本が足。上二本が手となっている。きぐるみの中には、今回もジャンガリアン・公星(ga8929)が入っていた。
「ここに来た時点で、貴様は負けているのだ」
「‥‥これは!?」
 アヤメの足元に巨大なクモの巣が白く浮かび上がる。
「その『粘着性の糸』は逃れようとする程絡みつくのだ! シャッシャッシャー」
 足を捕られ動けないアヤメに、クモバグラは左右二本目の手から糸を発射した。糸が絡みつき簀巻き状態になったアヤメの左腕から、テクター発動装置を奪い取る。
 糸から逃れようともがき地面に転がったアヤメを、クモバグラが蹴り飛ばす。
「こいつさえ頂けば、貴様に用は無い!」
「ふははは、さらばだ」
 舞台がゆっくり暗転する中、ウォッシュとクモバグラの嘲笑が響き渡る。


 再び照らし出された舞台は、KV☆養成所内に姿を変えていた。
 トレーニングルームのベンチに一人腰掛けたアヤメは大きな溜息をつく。
 その様子を扉についた窓から伺う柿原錬(gb1931)演じる星川ショウキ。
『まさか敵にKVテクターを奪われちゃうなんてね』
 腕に装着したKVテクターからKVテクター制御AI・アリスの声が響く。アリスの声は、覚醒時に変わる声を利用したショウキの一人二役だ。
 次いで先録りしておいたショウキの心の声が流れる。
(「何でアリスを造ったのか父さんに聞いた時、きっぱり『趣味だ』って返された時も驚いたけど‥‥一番驚いたのは、僕の妹の記憶をアリスが引き継いでいた事だった」)
『で、ショウキお兄ちゃんはどうするわけ?』
「KVテクターをクラッシュ・バグに悪用されるわけには行かない」
『それなら大丈夫。あいつらの居場所も私が突き止められるかも』
「そうか、アリスは全てのKVテクターを制御できるんだったな。‥‥皆には言うなよ、妹だってこと」
『わかってるってば』
 ショウキはトレーニングルームに入り、振り向いたアヤメに言う。
「アヤメ、君のKVテクターを取り戻しに行こう! このままなんて、納得いかないよね」
「でも、ショウキさんに迷惑をかけたくないし」
「僕達は同期じゃないか!」
 励ますショウキの横を通り、アヤメの足元に擦り寄る中型犬サイズの阿修羅。
「わぁ、かわいい!」
「なんだこれ」
 それぞれの反応を見せるアヤメとショウキに、アリスの声が答える。
『こいつはKVアニマルのシュラ。まだ調整中なんだけど、役に立つと思ってさ』
「ありがとう、アリス。私、行く。KVテクターを取り戻してみせる!」
 二人は頷き合い、トレーニングルームを出て走り出す。二人の後を、シュラが追いかけて舞台袖へと消えた。


 再び暗転した舞台は、謎の機械が無数に並ぶ倉庫に。
 薄暗く機械のランプが明滅する中、ウォッシュがひたすら機械を操作している。機械に備わったカプセルの中にはKVテクターが納められていた。
「何故ルナゴールドは突如不調を訴えたのだ。分析は済んだが‥‥D(ダーク)テクターと比較しても原因がわからないとは」
 頭を悩ませるウォッシュの横で頑丈なみかん箱に腰掛け、自分の糸で戦闘員とあやとりをしているクモバグラの姿が客席の笑いを誘う。
「貴様、遊んでいる暇があったら手伝え!」
「シャッ!?」
 八つ当たりを受けてクモバグラが立ち上がる。と、ウォッシュはみかん箱に目をつけた。
「みかんか。気分転換に一つ頂くとしよう」
 大きく頷きクモバグラが箱を開けると、そこからミニスカートのUDF(国連地球防衛軍)軍服に身を包んだ少尉・沢渡ユキが転がり出る。演じるは緋桜咲希(gb5515)だ。
「ひぃっ。見つかっちゃいましたぁ!」
 通信機に向かって叫ぶと『UDFマーチ』が流れ、舞台袖から彼女の部下達がなだれ込む。落ち着きを取り戻したユキが逃げ腰ながらもウォッシュに言う。
「軍の情報分析・収集能力を甘く見てはいけません! ここを突き止め、特殊迷彩ユニットで偵察していたんです」
「何!?」
 ウォッシュが驚くと同時に、みかん箱にスポットが当たる。
――『温州みかんの箱』はUDFの技術力を結集して製作された究極の潜入ユニットだ。敵兵に発見された時も「ダンボール箱か」でスルーさせる! ‥‥ただ、箱ごとテイクアウトやみかん好きによる開封という弱点もある。
 再び笑いが起こる。
「確か、STC(特別即応班)だったな‥‥秘密研究所を突き止めるとは。戦闘員ども!」
 ウォッシュが片手を上げると、わらわらと黒い全身タイツに身を包んだ戦闘員が現れる。SCTと臨戦態勢になったその時。
「KVテクターを返して!」
「これ以上父さんの技術を悪用させはしない!」
 アヤメとショウキも秘密研究所へと駆け込んでくる。
「ここは僕が食い止めるから、アヤメはテクターを!」
「シャッシャッシャー。たった二人で何ができる。かかれ!」
 戦闘員達がSCTとショウキに襲い掛かり、ショウキは果敢に大勢の戦闘員に立ち向かう。ユキはチェインダガーの鎖で戦闘員をなぎ倒し、部下達も必死の攻防を見せる。
 分析機へ駆け寄るアヤメにクモバグラが立ちはだかった。
「そうはさせん」
 両の手から放射状に発射された糸が、二人のKV☆とSCT隊員に絡みつく。
「おやめなさい!」
 突如響く声と共に、秘密研究所に鬼道・麗那(gb1939)とカイト・レグナンス(gb5581)が駆けつけた。
「レイナさん、ユウリさん!」
 驚きと安堵の入り混じった声を上げるアヤメに、吹雪レイナは溜息をついて。
「貴女ねぇ、私達に黙って敵のアジトに乗り込むなんて。これだから一般庶民は‥‥」
「生憎、大人しく待っていられるほど気長じゃないんでね」
 天野ユウリが言い、二人は同時に身構え発動スイッチを押す。
「地球(テラ)パワー、セット!」
 舞台手前でスモークが吹き上がる。
「輝く白は乙女の純心、純情可憐スターホワイト!」
 スモークから登場した白いウーフーを模ったホワイトがスター・バトンを回転させる。
「ホワイトプリティハリケーン!」
「ぐおお!」
 白い旋風が糸を全て吹き飛ばし、クモバグラを怯ませる。その隙に青いS−01を纏ったブルーが飛び出す。
 恐怖に気を失ったユキを救出し引き渡すと、軍曹の撤収の声と共にSCTが退場した。
「すみません。責任は僕が取ります」
 何とか立ち上がったショウキが言うと、ブルーがその肩に手を置いた。
「一人で抱え込むな。俺達は仲間だろう」
「おのれ、こうなったら‥‥」
 ウォッシュは怒りを露に、分析機からKVテクターを取り出し装着した。
「地球パワー、セッとおぉぉお!?」
 言い終わらないうちに爆発が起こり、舞い上がったテクターをアヤメがキャッチ。ショウキとアヤメが声をそろえる。
「地球パワー、セット!」
 スモークの中で、二人は銀のロビンとオレンジの翔幻に身を包む。
「天翔る不屈の銀狼、スターシルバー!」
「暗雲切り裂く一陣の光、スターオレンジ此処に推参!」
 メインテーマが流れ出し、五人集まりポーズを決めた。
「正義の翼で悪を討つ、地球戦隊・KV☆STAR!」


「何故だぁ!?」
 焼け焦げのできた姿で叫ぶウォッシュに、アリスが言う。
『KV☆になるには愛と正義の心が要るんだから。残念でした』
「一般庶民の皆さん、お馬鹿さんを退治しますわよ」
 ホワイトの言葉に怒り心頭のウォッシュ。
「ええい、やってしまえクモバグラ!」
「シャー!!」
 四本の腕を広げて威嚇するクモバグラに、スターブレイドを構えたブルーが駆け寄り必殺技を放つ。が、クモバグラが糸で編み出した盾が防いだ。
「何っ!?」
「シャッシャッシャー、効かんなぁ」
 かざされた上の両腕から鋭く糸が発射された。ホワイトがプリティハリケーンを放ったが、今度は弾き飛ばす事ができない。
「きゃあっ!」
「うわあ!」
 金属音が響き、花火の爆発と共にKV☆全員が吹き飛び倒れる。
「この『刃の糸』は『粘着性の糸』よりも丈夫で鋭いのだ。そらっ!」
 絶え間ないクモバグラの攻撃に劣勢に陥るKV☆。その時アリスの声が響く。
『アヤメに頼まれていたクモの糸の分析結果が出たわ! 弱点は水。シュラ!』
 舞台袖に現れたシュラの尻尾から電磁波が飛び、天井のスプリンクラーを破壊した。降り注ぐ水にたちまち糸が弱体化しうろたえるクモバグラ。
「卑怯な手を! それでも『正義』か?」
「人を騙したりするあんた達に言われたくない!」
 オレンジが放った二本のワイヤーがクモバグラに絡みつき動きを封じ込めた。
「糸で拘束されたのをヒントに編み出した必殺技、レストリクションワイヤー!」
「よし、今だ。スターライザー!」
 シルバーのスターフォースセイバーがクモバグラを打ち上げる。
「とどめだ!」
「スターゲイザー!」
 落下して来るクモバグラに振るわれるブルーの必殺技とスターゲイザーが重なる。
「シャシャー!?」
「一気に畳み掛けますわよ!」
 ホワイトの声に、全員が集まり武器を重ねる。変形した四つの武器は必殺の巨砲へと姿を変えた。
「完成、スターキャノン!」
「お願い、引き金は私が」
 オレンジの願いに皆が頷く。発射された光の砲撃はクモバグラを大爆発と共に粉砕した。 


 残るはウォッシュ一人。そこへ白地に金糸を施した巫女服に身を包んだ天戸るみ(gb2004)演じるルミナが悠然と登場する。
「調整から覚めた途端騒がしいと思ったら‥‥」
「姉さん!」
 動揺するホワイトの姿に、ウォッシュがほくそ笑む。
「ふふふ、感動の姉妹対面か。我が誘拐させたのだ‥‥研究の実験体としてな」
「何て事を!」
 怒りに燃えるブルーを前に、ウォッシュは分析機からディスクを抜き取った。
「今日は別の用事があるのでな‥‥後は頼んだぞ、ルナゴールド!」
「待て!」
「ヴォルテクスサイン!」
 ウォッシュが機械の右腕を振り上げたと同時に竜巻が起こる。後を追おうとしたブルーはそれ以上先へ進めず、ウォッシュは研究所を離脱した。
「新しい怪人も倒されてしまったのですね‥‥ならば私があなたたちを消しましょう。クラッシュ・バグの未来を汚す、KV☆を‥‥」
 ルミナは手首に填めた黒い発動装置をかざした。
「月(ルナ)パワー、セット‥‥!」
 和ロックな『月光の戦士』が流れ、ルミナは金のスノーストームを全身に纏う。
「降り注ぐ月光の使者、ルナゴールド」
 ルナゴールドは左腕に装着していたシールド状のクレセントムーンを外しエッジタイプへ変形させ襲いかかる。手加減無しの猛攻に客は固唾を飲んで攻防を見守る。
 KV☆もそれぞれの武器で応戦するが押され始め、
「やめて、姉さん!」
 思わず飛び出したホワイトにも構わず、ルナゴールドはシールド状のクレセントムーンをKV☆へと力強く突き出す。
「Dエクスプロージョン!」
 力が収束する。連続して起こる爆発。KV☆達の悲鳴。火花と爆炎が止んだ時、シルバーとオレンジは倒れ伏し、ホワイトを庇って間に割り込んだブルーも崩れ落ちた。
「皆!」
 膝をつくホワイト。オレンジとブルーが呟く。
「クモバグラ戦で、力を使い果たしちゃったみたい‥‥」
「ルナゴールド‥‥以前より力を増しているのか?」
 次々と変身が解け気を失う仲間を前に、ホワイトは握り締めた拳を震わせる。
「姉さん、どうして‥‥」
 その姿に頭痛を覚えるルナゴールド。
「私は‥‥クラッシュ・バグのルナゴールド・ルミナ」
 ホワイトは立ち上がる。
「例え姉さんでも‥‥もう許さないよ‥‥」
「私に、地球人の妹なんてものは居ないのよ!」
 頭痛と自らの中の何かを振り切るようにルナゴールドが叫ぶ。クレセントムーンをアロータイプに変えてホワイトへ向けた。
 メインテーマが流れる中、ホワイトに赤いスポットが当てられる。
「燃える炎は乙女の情熱! 豪火絢爛スターバーニング!」
――熱い魂で解除されたホワイトのリミッターが、テクターを炎に染める。それがスターバーニングだ!
「クレセントアロー!」
「バーニングナックル!」
 ルナゴールドが月光の矢を放つと同時に、ホワイトの炎纏う神速の拳が交錯する。二人はすれ違い、沈黙が訪れた。
 爆発はルナゴールドに起こった。背中の機翼が砕ける。
「まさか攻撃を受けるなんて‥‥?」
 同時にホワイトも膝をつき、変身が解除された。
「これが代償‥‥」
「KV☆‥‥また会いましょう」
 ルナゴールドは機翼の破壊された右肩を抑えながら撤退した。
「レイナ、無事か?」
 何とか立ち上がった三人がレイナの元へ駆け寄る。レイナは立ち上がり、
「私は一般庶民に心配される程ヤワじゃありません」
 腕組みをして強がって見せるが、その笑顔でもダメージは隠せない。
「私はもう逃げない」
 レイナが拳を握り締めると、ED曲に乗せてナレーションが流れる。
――スターバーニングはレイナの生命力を蝕む諸刃の剣。悲壮な決意を固めるレイナ。絶大な力を誇るルナゴールドに、どう立ち向かうのか、KV☆。 待て次回!


 今回の公演も大盛況の内に幕を閉じた。満席まであと少し、客席の入りも前回より良かったようだ。
 会場で販売されているキャラ色応援メガホンを持っている客も多く、今回から発売されたサントラも好調な売上げを見せている。
「皆さん、大丈夫でしたか?」
 楽屋でるみが心配そうにKV☆組に声をかける。皆笑顔で頷き、カイトが言う。
「問題ない。客も惹き込まれていたしな。俺も次までにはキャラクターを固定化させたいな」
 依頼として持ち込まれているとはいえ、皆KV☆の舞台に真剣に取り組んでいる。
 傭兵、いや役者達は映画化を目指して気持ちを一つにするのだった。