タイトル:【KV☆】四周波及マスター:きっこ

シナリオ形態: シリーズ
難易度: やや易
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/07/31 12:41

●オープニング本文


前回のリプレイを見る


●社長、念願の
「社長室ですよ! 素晴らしいッ」
 これから自らの職場となる真新しい社長室で感極まった声を出しているのは、外ハネレイヤーヘアの金髪に青い眼を持つ白スーツの青年‥‥イベント会社『イツメパイユ』の社長その人である。
 以前は雑居ビルの中にあり、お世辞にも立派とは言い難い社長室兼事務所だったのだが。これからは小さいとはいえそれなりに立派なデスクを備えたこの部屋で仕事ができるのだ。
 それも『地球戦隊・KV☆STAR』の人気のおかげである。舞台公演で人気が出るにつれ、ヒーローショーKV☆の上演依頼も以前よりもさらに増えている。
 それに、キャラ色応援メガホンやサントラ、KVテクター型トランシーバーなど、会場で売られているグッズも着々と売上げを伸ばしている。近いうちに某有名玩具メーカーからも声が掛かるのではないかという話まであるくらいだ。
 忙しくなるに比例してスタッフ数も増え、それに対応すべく今回の事務所転居となったのである。
 前よりもランクの上がった椅子に腰掛けて窓の外を眺めつつ、喜びを噛み締める。と、社長室の扉がノックされた。
「入りたまえ」
「失礼します」
 開かれた扉から入って来たのは、きりりと結って流した髪にパンツスーツが良く似合っている女性だ。KV☆の発案者でありマネージャーである真壁秋良である。後ろについてきているのはヒーローショーの司会役を務めている水瀬春花だ。
 社長は椅子ごとくるりと向き直るとおもむろに口を開いた。
「君達を呼んだのは他でもない」
「呼ばれてません」
「えっ、呼ばれてましたっけ?」
 冷たく返答する秋良と、必死に記憶を辿る春花に社長はおどけて見せた。
「‥‥ちょっと言ってみたかっただけじゃないか。せっかくの社長室なんだし」
 そんな社長のロマンは歯牙にもかけず、秋良は資料を差し出す。
「第四回公演の時期が近づいているので。今回はシリアスなストーリーで行く予定だという事ですが‥‥」
「ああ、その辺は私の許可を取る必要はありませんよ。全て傭兵‥‥役者の方々に一任していますからね」
「解りました。じゃあ、いつもどおり依頼をしておきます」
 秋良が社長室を出ると、春花は別の資料を社長に渡した。
「これ、最近までのグッズの売上データとアンケートです! この地域だけじゃなくて、結構広く認知されてきたみたいですよ。うちのご近所の子供達も、遠くに住んでる親戚の子に知らせたりしてるみたい」
 春花の言葉通りの結果が資料に記されている。
 今やKV☆はご近所の子供を持つ母親達の間でも噂に登る程の話題のヒーローとなりつつあった。


●というわけで
 LH本部では、オペレーターの小野路綾音(gz0247)により第四回KV☆公演の説明が行なわれていた。
「今回も、おなじみの演劇場での公演になるそうですよ〜」
 第三回公演では見事満員御礼となったのだが、まずは同じ演劇場で引き続き様子を見るのだそうだ。
「出演人数も前回と同じ10名となってますので〜、また満席になるといいですねぇ。事前の相談はもちろん、当日は客席からも応援してますから〜」
『イツメパイユ』との橋渡し役としてだけではなく、純粋にファンとしてKV☆を応援している綾音であった。

●以下資料
【地球戦隊KV☆STAR(テラセンタイ・ナイトフォーゲル・スター)】
 クラッシュバグに対抗すべくテラ・ネットワーク財団が生み出したヒーローがKV☆STARである。
 財団所有のKV☆養成所では、地球の平和を守るための戦士達が日夜訓練を重ねている。
 普段は白と銀をベースにしたKV☆養成所のジャケットとブーツを着用。
 変身時は「地球(テラ)パワー、セット!」の声と共に腕時計型の通信機兼発動スイッチを押す。
『KVテクター』というKVを思わせる装甲(口元以外を覆うヘルメット、胸・腕・脚装甲。背中に機翼)を纏った戦士となり、数倍の能力を発揮できる。
(舞台では、ジャケットやベルト、ブーツの模様に紛れるように装着されたパーツが展開し、装甲へと変形する仕組になっています)

・決定済KV☆
 スターブラック・黒木メイ
 スターホワイト・吹雪レイナ
 スターブルー・天野ユウリ
 スターピンク・春風サクラ
 スターシルバー・星川ショウキ
 スターオレンジ・時雨アヤメ
 スターパープル?・下部戸レイ
(名前はお子様に判りやすいようカタカナに変えてあります)

【クラッシュ・バグ】
 地球を乗っ取り占領するために宇宙から来た悪の組織。ボス、幹部、魔獣、戦闘員という縦社会によって構成されている。
 魔獣は地球の生物をベースにメカ改造を施したモノが多い。名前は『改造元生物の名前+バグラ』。
 また、ドクター・ウォッシュの開発した『D(ダーク)テクター』を装着した戦士も新たな戦力となっている。

・登場済幹部:クリムゾン船長、ドクター・ウォッシュ、コマンダー・シャドウ
・『D(ダーク)テクター』:ルナゴールド
・故 魔獣:クマバグラ、ライオンバグラ、クモバグラ、クラゲバグラ

【国連地球防衛軍・特別即応班】
『Union Deffence Force』『Special Counter Team』
 財団所有のいわゆる民間戦力であるKV☆と対極にある公的な軍。
 KV☆と協力体制をとることもあるが、戦力的にはクラッシュ・バグ戦闘員と互角程度なので言わばやられ役。

・登場済:沢渡ユキ少尉

●参加者一覧

ジャンガリアン・公星(ga8929
27歳・♂・JG
瑞姫・イェーガー(ga9347
23歳・♀・AA
RENN(gb1931
17歳・♂・HD
鬼道・麗那(gb1939
16歳・♀・HD
天戸 るみ(gb2004
21歳・♀・ER
狐月 銀子(gb2552
20歳・♀・HD
シャーミィ・マクシミリ(gb5241
14歳・♀・HD
桜井 蒼生(gb5452
17歳・♀・DG
カイト・レグナンス(gb5581
18歳・♂・FC
桂木穣治(gb5595
37歳・♂・ER

●リプレイ本文


「私は‥‥ルミナ。D(ダーク)テクター‥‥クラッシュ・バグの戦士ルナゴールド」
 暗いステージ、スポットを浴びて立つのは、白地に金糸紋様の巫女装束に身を包んだルミナだ。
「違う‥‥あの子は私を姉と言った。姉って何‥‥?」
 混乱する自らの意識に苦しむ姿が、闇に融けていく。
「私は‥‥誰なの?」

 照らされた舞台は、クラッシュ・バグ本部の研究所だ。
「D(ダーク)テクターが二人となれば、KV☆とて手も足も出まい。目覚めよ強化型Dテクターの戦士、ダークラピスよ!」
 ドクター・ウォッシュがスイッチを押すと噴煙が起こり、青藍色のアイメイクと黒いエナメルのボンテージに身を包んだ女性が目覚めた。
「あはははっ! あたしが力を手に入れたからにはKV☆に明日は無い‥‥って、ぎゃー! 胸が無くなってる!?」
「‥‥強化型Dテクターの副作用なのか?」
 こっそり呟くウォッシュを他所に、ラピスは胸にパッドを重ね入れながら怒りを燃やす。
「KV☆め! 女子高生モデルの美貌をうらやんで呪いを掛けるなんて、許せない!」
 思い込み激しく騒ぐラピスを他所に、袖から白黒模様のマレーバク型魔獣がウォッシュに近寄り耳打ちする。
「ウォッシュ様、ルナゴールドの洗脳が解けかけているようです」
「何!?」
「かくなる上は、彼女の心の底に眠る『大切なもの』を彼女自身の手で破壊させるのです」
「スターホワイト、あやつの妹か」
「このバクバグラ、見事その役を果たしてみせましょうぞ」
 観客席に向かって仁王立ちになり大声で嘲笑するバクバグアに、ウォッシュは頷いた。
「なるほどな‥‥ルナゴールド!」
 ウォッシュが呼ぶとルミナが現れた。憔悴した彼女に気遣う視線を向けながらラピスを引き合わせる。
「ダークラピスと共にKV☆を抹殺せよ。お前はスターホワイトをその手で打ち砕くのだ!」
 その名を聞きルミナは再び苦しみ出した。
「スターホワイト‥‥あの子は何なの? 何でこんなに‥‥苦しいの? 何で‥‥」
「ルナ様、その苦しみはスターホワイトが原因。あの忌々しいKV☆を倒す事があなたの使命。そうですな?」
 バクバグアが芝居がかったそぶりで語りかけると彼女は顔を上げた。
「――倒さないと。あの子を‥‥KV☆を。そうしないと、この苦しいのは終わらない」
 立ち去る二人を見送り、ウォッシュが呟く。
「あまりバクバグアを現場に連れて行きたくはないが、仕方あるまい。念のため我もついていくとしよう」


 舞台は変わり、KV☆養成所の訓練施設。
 メイとユウリがショウキとアヤメに訓練を行なう様子を、端でサクラが見守っている。ふと観客の視線に気づいて、微笑み手を振る。客席の子供達も手を振り返す。
「先にあがらせてもらう」
 一区切りついたところで、ユウリは皆に背を向ける。
「俺は武器に頼りすぎているのか‥‥?」
 舞台の端でぽつりと呟き姿を消した。
「二対一になっちゃうから、私は休んで‥‥」
 そんなアヤメの言をメイが遮った。
「よし、それじゃ本気出してやる。二人でかかってきて良いぞ」
「えぇっ」
「お願いします!」
 アヤメとショウキは一斉にメイにかかった。トリッキーな動きを見せるアヤメと実直にぶつかって行くショウキに、メイは次第に追い詰められているように見える。
 が、メイが地面を這わせた電撃に気をとられた隙に二人は倒されていた。
「オレの電撃は攻撃以外の使い方も出来るんだぞ」
「どうしてテクターを装着していないのに電撃が使えるんですか?」
 アヤメに問われ、メイは俯いた。
「この力は家族を奪った奴らに勝手に植え付けられたんだ。兵士にされるためにな」
「え‥‥」
「それでも今はこれでこの星を守ることが出来る。たとえ悪の力だろうと‥‥アヤメ、思ったよりも体力がついてきているんだな」
 暗い雰囲気を払拭するように後半を明るい調子で言うと、アヤメは客席の前まで行く。
「実はこっそりトレーニングしてたんだ。仲間の前で頑張るのは恥ずかしくって‥‥KV☆の仲間にはこの事、内緒だよ!」
「でもその怠け癖は度が過ぎてるな。少し残って貰うぞ」
「えーっ!」
「ショウキ、お前は自分の問題が解決するまでここに来るな判ったな」
 動きに心の迷いが出ているショウキを締め出し、メイはアヤメに問う。
「アヤメ、ショウキの事どう思う」
「う〜ん、今は仲の良い頼りになる仲間って感じかなぁ‥‥って、そんな事聞かれたら変に意識しちゃうじゃないですかっ!」
 顔を赤らめぶんぶんと手を振るアヤメ。
「意識って何だよ?」
「‥‥鈍感ねぇ、メイは」
 全くわかっていない様子のメイにサクラは溜息をついた。

 ショウキは作りかけのパーツを投げ出した。
「このままじゃ、駄目だ‥‥KV☆としての役目は果たしているはずだけど、役に立っている実感が無い。それに作っているこれも上手く行ってない」
 それを聞いたアリスが声を掛ける。
『お兄ちゃん、どうしたの。何か思いつめているみたいだけど』
「うるさい、お前に何が判るんだありすの偽物のくせに」
『そっ、そうだよね。私はありすの記憶をインプットされているだけ‥‥でもずるいよそれは』
 声が消え、KVテクターに何度呼びかけても返事はない。
「僕は何やってるんだ‥‥アリスの方が辛いのに」
 突如サイレンが鳴り、クラッシュ・バク出現を知らせるアナウンスが響いた。


 暗転した舞台が再び照らされ、仲間と共に駆けつけたレイナが驚いた。
「ここは、姉さんとの思い出の遊園地‥‥」
「ワタシに記憶を奪われた哀れな人間共、もっと破壊するのです」
 操っている人達に遊園地の破壊を促すバクバグラは、KV☆に向かって優雅に一礼した。
「ワタシはバクバグラ。ようこそ、夢の楽園へ」
「何が楽園よ、今すぐその人達を解放しなさい!」
 怒るサクラをバクは嘲笑う。
「夢溢れるここは、夢を食べるワタシにとっての楽園。さぁ、やってしまいなさい!」
 左袖から駆け込み群がる戦闘員達。KV☆は客席に向けて並ぶ。
「悪を狩る黒き雷光。漆黒の翼スターブラック!」
「大空を翔る自由の翼。蒼天の剣、スターブルー!」
「輝く白は乙女の純心、純情可憐スターホワイト!」
「天翔る不屈の銀狼スターシルバー!」
「暗雲切り裂く一陣の光。KV☆、スターオレンジ!」
「貴方を包む春の風。恋の魔法使いスターピンク!」
 各人がポーズを決めて名乗りを上げると、全員が集まってポーズを決める。
「正義の翼で悪を討つ、地球(テラ)戦隊・KV☆STAR!」
 向かって来る戦闘員にブルーはスターセイバーを振り下ろす。小爆発と共に戦闘員が吹き飛ぶ。
「まとめてかかってらっしゃい。ラブ☆タイフーン!」
 復帰後にテクターがシュテルンからビーストソウルになりパワーアップしたピンクの必殺技が炸裂。桜舞う竜巻に戦闘員が次々と離脱していく。
「残るはお前だけだ。覚悟しろ!」
 メイが指差すが、バクは余裕で一般人を集め盾にする。
「この者たちは操られているだけの善良な市民です。彼らを攻撃できますかな?」
「しっかりしろ、正気に戻れ!」
 ユウリの声も届かずバクを守り、かつKV☆を捕らえようとする。
「ルナ様、今がチャンスですぞ!」
 振り向き声をかけると舞台袖からDテクターに身を包んだルナゴールドが現れる。
「姉さん!」
「‥‥違う、私は‥‥」
 苦しみ出し膝をつくルナ。そこにアリスの声が。
『客席にいる皆、KV☆を助けて! バクバグアは身体の模様を気にしているみたい。あの白い模様に向かっておむつって叫ぶの。せーの‥‥』
「「おむつーー!!」」
「む、誰だぁ? 今“おむつ”と言ったのは〜」
 客席を見渡し、怒りを露に腕を振り回す。
「お前達からも夢を吸い取ってやる!」
 バクの腹は次第に膨らんでいく。腹に仕込んだ風船に空気を送り込んでいるのだ。
「ははは、は‥‥量が多すぎて、苦しい〜!」
 限界まで膨らんだバクの腹は大きな音を立てて破裂した。同時に我に返った操られていた人達をアヤメとショウキが右袖へ逃がす。
 入れ替わるように、左袖からウォッシュとラピスが現れた。膝を屈し苦しんでいるルナにウォッシュが駆け寄り、両肩を掴んで必死に呼び掛ける。
「我にはお前が必要なんだ! 戻って来い」
「‥‥ウォッシュ、様?」
 ルナゴールドとしての意識を取り戻したルナに安堵し、ウォッシュが命じる。
「バクバグラを倒させるわけには行かん。行け、ダークラピスよ!」
「貴女がバグの新幹部ね、天下無敵にして容姿端麗。この吹雪レイナがお相手して‥‥」
 腕組みしたままダーク・ラピスを挑発していたが、ラピスの胸の歪みに気づいて赤面しつつ言う。
「ちょっと貴女! パットがずれてますわよ」
「んなぁっ!? ‥‥ひんにゅーっていうほうがひんにゅーだぁー!!」
 怒りと屈辱に我を失ったラピスがDテクターの発動も無しに襲い掛かる。
「リストリクションワイヤー! 早く魔獣を‥‥!」
 咄嗟にオレンジがスターワイヤーを伸ばし動きを抑え込むが、シルバーは二の足を踏む。
「だけど僕の力では‥‥」
「今までの努力を無駄にする気か! お前には父親を越えるという夢があるんだろう!?」
 ブラックに一括され、シルバーは拳を握り締める。
「何迷ってるんだ僕は、自分が信じられなくなるなるなんて」
 そして新たな武器である白銀の斧を天に掲げる。
「父さんの作ったスターフォースセイバーの機能を組み込んで作った僕だけの武器・スターゲイザー。見ててくれ、父さん」
『ようやくやる気になったね』
「アリスごめん、どんな姿だって妹には変わりないのに」
『後で埋め合わせしてよ‥‥それよりあれやるよね』
 二人の声が重なる。
「喰らえ流星の嵐ゲイザーストーム」
 斧を地面に叩き付け衝撃波でバクを吹き飛ばす。そこにブラックか駆け込みダークサイズを振り下ろす。
「フラッシュスマッシャー!」
「スプラッシュブレイド」
 同時にブルーの必殺技も決まり、バクは大爆発と共に姿を消した。
 と、ラピスを拘束していたスターワイヤーが切断される。そこにはC(クレセント)ムーン・エッジを構えたルナゴールドが。
「貴女は冷静さを失っています、下がっていなさい」
 ラピスを退け戦いに向かうルナ。
「強いとわかっていても、負けられないわ!」
 ピンクが放つ必殺技すら、シールドに変形したCムーンに防がれた。構えた盾が光を放つ。
「Dエクスプロージョン!」
 ルナの周囲で起こる爆発に巻き込まれ、吹き飛ぶKV☆に間髪入れず攻撃に移る。アローとエッジを巧みに使い分け駆け回るルナに翻弄されるKV☆。子供達から応援の声が上がる。
「許さないよ姉さん‥‥いやルナゴールド。燃える炎は乙女の情熱、豪火絢爛バーニング!」
――命の炎がホワイトのテクターを赤く染める時、強化形態・バーニングモードへと変化する!
「必殺バーニングナックル!」
「Dテクターが破損している? それ以上戦ってはいかん、ルナゴールド。ヴォルテクスサイン!」
 ルナのスノーストームを模したテクターの機翼は、前々回の戦いで破損していたのだ。ウォッシュが二人の間に割って入る。機械の義手を振り上げ起こした竜巻をも抜けて、ホワイトの炎の拳が炸裂した。
 爆発し吹き飛ぶウォッシュをラピスが助け起こす。ルナは敢然とホワイトを睨んだ。
「よくもウォッシュ様を‥‥!」
「二人で決着をつけましょう、ルナゴールド」
 言い放ち、振り返るホワイトに皆が頷き返す。
「自分の手で家族を取り戻して来い」
 ブルーの言葉に頷き、ルナと戦いながら駆け去る。瀕死のウォッシュがそちらへ向けて手を伸ばす。
「ルミナの記憶を奪っていたバクバグアが倒れた今、洗脳維持機能がついたDテクターが壊れてしまったらルナは‥‥ラピスよ、ルナを止めるのだ」
 行こうとしたラピスをKV☆が取り囲み、ピンクが言う。
「あたしの妹の‥‥いえ、妹達の邪魔はさせないわ」
 意識を失ったウォッシュを振り返り、ラピスは両手を舞わせた。
「ダークブルー・オーシャン!!」
 深海の暗青を思わせる光の洪水に呑まれたKV☆が体勢を立て直した時、二人は忽然と姿を消していた。


 ホワイトとルナゴールドの戦いは熾烈を極めた。
 ルナのCムーンが、ホワイトの炎の拳が当たる度に互いのテクターは小爆発と共に破損していく。あまりに激しい戦いに誰もが固唾を呑んで舞台を見守る。
「貴女だけはここで倒さないと‥‥私はっ!!」
 蘇る記憶と洗脳の狭間に揺れながらもエッジを振るう。一旦距離を取り対峙する二人。
「私のハートが真っ赤に燃える。貴女を倒せと轟き叫ぶ‥‥これが、最後の炎」
 減り続ける生命力を燃やした紅蓮の炎が拳を包む。
「大口径から放つ収束砲は、その反動故ウォッシュ様からも禁じられたもの。でも、これしかない‥‥」
 ルナもDテクターのリミットを解き、その痛みに苦しみながらもCムーンを第四のモード・バスターへ切り替える。
「照準セット。月の狂気よ‥‥私に力を。ルナティック‥‥バスター!」
「バーニングナックル!」
 炎纏い駆けるホワイトに金色の光が直撃すると思われた瞬間、
「ビッグバン!!」
 ホワイトの声と共に炎が激しい爆発を起こす。金光は全て真紅の光に呑みこまれ、駆けるホワイトとバスターを構えるルナがすれ違った。
 一瞬の沈黙。
 砕けたテクターはルナのものだった。ほぼ同時に二人は崩れ落ちる。
 変身は解けたがまだ意識のあるレイナが何とか這い寄り、動かないルミナの手を握った。
「姉さん、今度はお化け屋敷についてきて、ね‥‥」
 力尽きた所へ皆が駆け寄ってくる。アヤメが助け起こすとレイナは僅かに呻いた。
「良かった!」
「無茶しやがって‥‥失うのはもう嫌だ」
 涙声のアヤメとメイに、レイナは言った。
「‥‥一般庶‥‥が、私の心配なんて、百万年早‥‥てよ」
 再び意識を失うと同時に舞台はフェードアウトする。

 闇の中、創痍のウォッシュが浮かび上がる。
「ルナを奪うとは、KV☆め!! こうなれば切り札を使って、我自らが貴様らを葬ってやる‥‥その時まで首を洗って待っているがいい!」
 ウォッシュの哄笑と入れ替わりにナレーションが入る。
――レイナの姉・ルミナを解き放つことに成功したKV☆。ルナを奪われ憎悪の炎を燃やすウォッシュの次なる策とは? 待て次回!

黒木メイ(ブラック)/柿原ミズキ(ga9347
天野ユウリ(ブルー)/カイト・レグナンス(gb5581
吹雪レイナ(ホワイト)/鬼道・麗那(gb1939
星川ショウキ(シルバー)・アリス/柿原 錬(gb1931
時雨アヤメ(オレンジ)/シャーミィ・マクシミリ(gb5241
春風サクラ(ピンク)/狐月 銀子(gb2552
ドクター・ウォッシュ/桂木穣治(gb5595
バクバグラ/ジャンガリアン・公星(ga8929
ルナゴールド/天戸 るみ(gb2004
ダークラピス/桜井 蒼生(gb5452