タイトル:【FC】守れ、命と蜜柑マスター:菊ノ小唄

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/08/03 09:31

●オープニング本文



 最近、沖縄の戦況を注視しているミスターS(gz0424)にとって、四国の動向は二の次である。
 しかし、指揮官にウィリアム・シュナイプ(gz0251)が就任したとの報告を聞くと、驚きの声を上げた。
「へぇー、それは思い切ったことをしたね。こっちの手を読もうと必死だ」
 彼は「これは楽しめそうだ」と笑うが、内心は「僕の敵じゃない」と思っていた。
 確かに用兵だけ見れば、ミスターは一枚も二枚も上手。だが、勝ちに不思議の勝ちはある。油断はできない。
「ウィリアム君はまだ、四国で活動するレジスタンスの詳細を知らないだろう」
 ミスターは東京解放戦線において、レジスタンスの活動を放置したせいで手痛い目に遭っている。まさに「千里の堤も蟻の穴から」を体現した格好だ。これを教訓とすべく、彼はある策を授ける。
「UPCとレジスタンスが組むと、何かと面倒だ。まずはここを封じようか」
 彼は部下に対し、レジスタンスを引きずり出す作戦を決行するように指示。あの手この手で存在を抹消しろと伝えた。
「僕はしばらくここを留守にする。沖縄の3姉妹をエスコートしなければいけないからね」
 ミスター肝入りの「レジスタンス討伐作戦」が、今まさに始まろうとしている。


 カンパネラ学生であり、駆け出し能力者として最近ようやく動き始めたリミン(gz0469)のマイブームは、『みかん』。四国で初のキメラ退治をした後にみかんのデザートを食べる機会があり、オレンジともまた違う味、香りにすっかり嵌ったらしい。
 それ以来、
「本場のみかんが食べたい食べたい食べてみたぁぁい! またニホンでお仕事無いのー?」
 と、狙撃訓練や補習の前後など、いつもの担当教師と話す機会があるたびゴネまくること2週間が経過している。

 今日も今日とて補習の後に、みかんたべたーいたべたーいとウダウダしているリミンに対し、堪忍袋の緒が切れた教師が遂に怒鳴った。
「やっかましい!」
「だってー!」
「そんなに本場物がいいならモアに言ってあっちに仲間入りでもしてろ!!」
「?」
 リミンは、突然教師の口から飛び出したよく知る名前と、よくわからない文脈に首を傾げた。教師は一瞬『しまった』という顔をしたが、すぐ開き直った様子で顔をしかめている。
 リミンの以前の主治医がモアといい、目の前の教師はその人と知り合いらしい。その上レジスタンスって何のことだろう、と疑問がぽこぽこ浮かんでくる。聞かないわけにもいかず、リミンは尋ねた。
「モアって、モア・ブランシュ?」
「‥‥そうだー」
「知ってるの?」
「ここでお前が勉強できるよう手配したのがあいつでなー」
「知らなかったー‥‥あっ、あっちに仲間入りって何の事?」
 その問いに、わかりやすく『チッ、話戻しやがって』という顔になる教師。顔をしかめたまま少し声を小さくした。
「今は医者を辞めて、日本の四国で活動中なんだとー。仲間入りは流石に無理だろうが、時間があるなら見聞でも広めてくるんだなー。ついでにレポートも書けー」
 そう言いながら、少し大きめの付箋に何か書き留めている教師。
「え、お医者やめたの? なんで?」
「知らん」
 ペチ。教師は良い音を立ててリミンの額に付箋を貼り付け、席を立つ。
「えええ」
 額から付箋を剥がしながら食い下がろうとするリミンだったが、教師はシッシッと追い払うように手を振り、その場を後にした。

 手にした付箋を見ると、聞いた事のない運搬会社名、連絡先、人名が。なんだろう、と思いながら取り敢えずそれを持って席を立ったのであった。


 数日後、再び四国へやってきたリミン。詳しくは四国の西側、愛媛という場所だ。
 彼女を出迎えたのは、大型ワゴンから降りてきた作業着姿の女性2人。片方の壮年の婦人はアンリと名乗り、もう1人はよく知った顔‥‥モア・ブランシュ。
「モア! 久しぶり!」
「久しぶり、よく来たわね」
 彼女たちは現在、運搬会社の出資によって活動する反バグアチームに所属しているそうだ。アンリはそのリーダー。モアはアンリと古い知り合いで、アンリ率いる『チーム・フロラ』に拾ってもらったらしい。
 しかし作業着の足元は土まみれ、ワゴン後部の隅には‥‥
「‥‥バケツ?」
「ああこれね、今お世話になっている農家から借りたものなのよ」
「へえぇ」
「ハウスミカンの収穫のお手伝いもしにいくの、リミンも手伝って頂戴」
「みかん!!」
「最近食べたくて仕方ないそうじゃない?」
「食べたい!」
 即答するリミンにくすくす笑うモアとアンリは頼めば少し頂けるかもしれないと言いながら、ワゴンに乗る。(移動や手伝いに使う為だろう)教師から『もっていけ』と指示されたAU-KVを運び込んでリミンも乗り込んだ。

 山間の鮮やかな緑の中を車は走る。楽しみでそわそわしているリミンを楽しげに眺めているモアとアンリ。
 だが。
 目的地の農家に通じる一本道、その途中で待っていたのは緊急事態だった。
 4人の男女が集まっている。3人の乗る車を彼らが制止した。隣の農家の者のようだ。比較的若い男が、
「あんたらこの先の農家に泊まってる人らやろ」
 と話しかけてくるが、降りようとした3人を制止した。
「すまん、待て、降りんで聞いてくれ!」
「どうしたんです?」
 驚きながら、運転席の窓を開けてアンリが尋ねた。
「ちっせぇ男が来て突然『ここに出入りがあれば、ここと果樹園が大爆発だ、二度と出るな、人を入れるな』っつって、言い返そうとした旦那を一捻りに伸したんやと」
 それを聞いたアンリが目を見開く。
「あのご主人を‥‥。それにしても、出入りがあれば爆発‥‥ですか。‥‥その男は今は?」
「わからん、気付かん内に来て、気付かん内に逃げてもうたらしい」
「なんてこと‥‥町へ救出要請は?」
「それが、その、みんな停電で何も繋がらん‥‥。あんたらのこと止めて知らせてやってくれって、大声でうちら頼まれたんやわ」
 敷地が隣り合っている場所から、隣家に助けを求めた様子。

「助けてやってくれ‥‥!」
「わかりました、人手不足ですので応援を呼んできます。どうか待っていてください」
 そう言うと、彼らは心細そうな顔をする。
 リミンがハッと思いついて申し出た。
「私、残る! AU-KVもあるから、何かあったら対応する。でもバハムートだから人は沢山乗せられないし、呼びに行くのはモアたちにお願いする」
「リミン‥‥」
「そうね、じゃあ、そうしましょ」
 モアが言葉につまり、アンリは頷く。リミンが能力者であり、訓練を受けた者であることをモアとアンリが説明。納得した4人とリミンは、互いに宥めあいながら、救出者を待つこととなった。

 恐らく、閉じ込められた人々はもっともっと緊張した時間を過ごしているのだろう‥‥。
 何とかしたい。
 早く、早く。

●参加者一覧

ラウル・カミーユ(ga7242
25歳・♂・JG
最上 憐 (gb0002
10歳・♀・PN
遠倉 雨音(gb0338
24歳・♀・JG
レティア・アレテイア(gc0284
24歳・♀・ER
エレナ・ミッシェル(gc7490
12歳・♀・JG
レスティー(gc7987
21歳・♀・CA

●リプレイ本文

●集合、調査
 助力を請う声に応えて駆けつけた、6人の能力者たち。
 レティア・アレテイア(gc0284)は
(厄介な爆弾を敷設したものですね)
 と胸のうちで零しつつ、心優しきキャバルリーの女性、レスティー(gc7987)は
(必ず、助けます‥‥!)
 と強く誓いながら、そして今日は弓を背負った無邪気な少女、エレナ・ミッシェル(gc7490)は
(この前手違いで市民傷つけて責められてた人達じゃん、今回も大変だなぁー)
 と軽く同情のような思いを持ちつつ、各人、依頼者『チーム・フロラ』の2人、及びリミンと挨拶を交わす。
 ラウル・カミーユ(ga7242)を見つけて思い出したリミンが声を上げて。
「あ! 雪だるまの人! こんにちはっ」
「あはは、リミリミ久しぶり☆ 昨年末以来だネ」
 妙な覚え方をされていて笑いながら手を振り、モア、アンリにも
「モアせんせ達は少しぶり。その後は上手くやってるよーダネ」
 と挨拶するラウル。それを聞いてアンリが苦く笑った。
「順調とは言い難い有様ですよ」
「いやいや、だってサ、『上手くやれてる』カラ、バグアの邪魔が入ったワケでしょ?」
 だーいじょーブ♪ と明るく笑うラウル。
「‥‥ん。リミンは。微妙に。久しぶり。モアは。結構。久しぶり。ミカンを。守りに。来たよ。」
 端的に、だが紛れも無い本音で今日の目標を語る最上 憐 (gb0002)の横では、遠倉 雨音(gb0338)がリミンを呼んで、今回武器を持っていなかったリミンにエネルギーガンを渡していた。
「この前ご一緒した任務の時に言われたこと、覚えていますか?」
「このまえ‥‥。よく、見ること?」
 初のキメラ退治の時のことを思い出すリミン。そうです、と雨音が頷く。
「まずは落ち着き、そして観察する。今回もそれは同じ‥‥いえ、今回はよりそれが重要になります。お互い心してかかりましょう」
「うん。しっかり探して、落ち着いて行動、だね。頑張ろう!」

 傭兵6人と依頼側の3人は、最初に話を伝えに来た隣の農家へ移動。到着すると、
「爆弾もセンサーも正体不明とは」
 そう言ってレティアが覚醒、爆弾発見の成功を祈ってGooDLuckを使用した。白く冷たい笑みと共に。
 ラウル、憐、雨音、レスティーは双眼鏡を覗き込み、解放目標の農家の周囲をチェックする。どこに何があるか、異変は無いか、妙な物は見当たらないか。眼を凝らしながら雨音が横のラウルに尋ねた。
「ありました?」
「それっぽいものは見当たらないナー。レスティん見っけタ?」
「有りませんね‥‥」
「‥‥ん。こっちも。見つからない。あっちに。聞いて。みようか」
 憐が呼笛を取り出した。ピー! ピピー!! と高く吹き鳴らす。何度か吹いていると、向こうの家屋の窓が開いた。ラウルが大きな声で自分たちの目的を告げる。窓から顔を出した男性が大声を返した。あの家の主人のようだ。
 現状、何も出来ないという様子らしく、断水で水が使えず困り始めたところだという。不安ではあるが、怪我人は自分以外には居らず、自分も手当てを受けて既にピンピンしている、と力強い声が届いた。
「何か気付いたことナイー? 近くに不審物トカー!」
「いーや! なんもない! すまんなぁ!」
 ガキがバッタ見つけて喜んどったくらいや、と笑い混じりの元気な声。それを聞いたラウルは横目で傭兵たちに
「もしかしてバッタがキメラだったりシテ?」
 夏休みだしサ〜とおどける。まさかね、と皆で一緒に笑うが。‥‥彼らの笑いは嫌な予感で尻すぼみに消えてしまった。
「ちなみにそのバッタ、大きさどれくらいだったノーっ?」
「大きさ? 待ってな‥‥ メスのトノサマバッタの倍くらいだってよー!」

 その後、一行は果樹園へ。
 探査の眼を使えるアンリに声がかかり、まずは爆弾の調査を行うことに。雨音がアンリに話す。
「爆弾のような不審物と、もしバッタが居ればその確認もお願いします」
「‥‥ん。アンリの。探査の眼に。期待する」 
 と憐が続けて、アンリは頷いた。
「わかりました、少しお時間下さいね」
 そうしてしばらく調べた結果、明らかに大きなバッタ(15cm前後のようだ)が、果樹園のあちらこちらに散らばっていると判った。爆弾らしい形状の不審物も見当たらない、と。
「バッタの色や形の特徴はなんでしょう」
 レティアが尋ねる。
「バッタは茶系のものと緑系のものが居ます、トノサマバッタによく似ています」
 隠れているものも多いと思いますのでご注意を、というアンリに、ラウルから武器が渡された。
「これとこれ、モアさんと2人で好きなほう使っテ」
「ありがとうございます」
 超機械「魂鎮」とエネルギーガンを受け取り、アンリが前者、モアが後者を使うことに。
「それじゃーバッタ取り‥‥もとい爆弾除去、がんばろー!」
 弓を担いだエレナの元気な声で、除去作業が開始した。

●除去
 爆弾除去はA・B・Cの3つの班に分かれて行う。班分けは以下の通り。
 A班:憐、レティア、アンリ。
 B班:ラウル、レスティー、モア。
 C班:エレナ、雨音、リミン。

 A班の憐はまず果樹園に入っていき、以前漁港で倒した自爆型キメラと同じかもしれない、という予測のもと実験的な行動に出た。
 非常識な大きさの例のバッタを見つけ、その視界に入る。するとバッタが飛び跳ねてこちらへ近付いてきた。
「‥‥ん。この動き。前の。カニと。同じかな?」
 憐は1、2、3、4‥‥と数えつつ、ビニールハウスから離れるように移動。29まで数えたところで瞬天速。ついてきたバッタの視界から外れる。数秒置いて、何事も無かったかのようにひと跳ねしたバッタの前に再び姿をさらす。という動きを何度か繰り返す。ついてくるバッタが1匹から2匹、3匹と増えていたが、器用に計算しながら動く憐。
 果樹園の外まで引っ張り出した。レティアからの練成強化を確認し、最後に素早く攻撃を仕掛けて一撃でトドメ。爆発は無し‥‥。憐は確信を持って、トランシーバーを取り出し、伝えた。
「‥‥ん。爆弾は。キメラ。普通に倒しても。爆発無し」
『爆‥‥の条件ってわか‥‥イ?』
「‥‥ん。たぶん。こっちが。向こうに発見されて。30秒後。自動で。自爆する」
『な‥‥ホド。じゃ、さくさく倒し‥‥ば‥‥』
「‥‥ん。それが。妥当」
 無線は雑音が酷く聞き取りにくいが、全く使えないわけではないらしい。憐はそれを確認し、再び果樹園の中へ入っていった。‥‥時折ミカンに心を奪われながら。

「了解、助かるヨ‥‥‥っと!!」
 B班の他の2人より少し先行して果樹園を進み、トランシーバーで受け答えしていたラウルは目の前にバッタが来ていることに遅れ馳せ気付き、急いで通信終了。発見が遅れたためいつ爆発するかわからない。間に合ってヨ、と祈りながら刀、天照を振った。
 しかし刃がキメラに届くより一瞬早く。
 ドンッ!!!
 大きな爆発音が響き、ラウルの目の前に居たのはボディガードを使ったレスティー。ふらつきながらもラウルを見て
「ご無事、ですか?」
「大丈‥‥っテ、そりゃこっちの台詞!」
 ひとまず果樹園を出てラウル・モアの蘇生術でレスティーの応急処置を済ませ、再度果樹園へ戻るのだった。
 大した相手ではなくても気を抜けば命取り。それが自分の命とも限らない。しかし、レスティはキメラを倒していく仲間たちを見て思う。キメラとて被害者では‥‥と。『総てを守りたい』。言葉にはしなかったが、それが彼女の本音である。

 遠くでは少女が、積み上げられた大きなカゴの上で弓に矢をつがえ、無邪気に狙いを定めていた。C班のエレナだ。
「狙って狙ってぇー‥‥っ」
 弓を使うのは今回が初めてのエレナ。気合充分に、美しい薄桃色の長弓「百花繚乱」の弦を鳴らし‥‥彼女とエミタが経験と実力で制御した矢は、寸分違わずバッタの頭部を射抜いてその命を絶った。
「どまんなか! 命中ー!」
 楽しそうに眼を輝かせ、次の的を探すのだった。
 エレナと背中合わせに座る雨音とリミンも、銃を構え、キメラを探して目を凝らしていた。
「あれキメラかな、あのホースの束のところ」
「‥‥! 束からもう少しだけ離れたら撃って下さい」
「わかった」
「‥‥もう少し‥‥もう少し‥‥今!」
 ダダダダダ!
 2人分の銃撃が叩き込まれ、粉々になるバッタ型キメラ。乙女3人の周囲に、次々とキメラの残骸が散っていった。

 2時間ほどかかってようやくキメラを狩り尽くし、果樹園を後にする能力者たちが次に向かった先は、何十人もが閉じ込められている農家。
 離れた場所から物陰に隠れ、敷地の入り口付近を双眼鏡で確認するとやはり門のそばの草むらに大きなバッタ型キメラが潜んでいた。数は1。恐らくあれが出入り口のセンサー役となっているキメラであろう。
「あれをなんとかしないといけません」
「ええ、万一全部同時に爆発されては一巻の終わりですものね」
 レティアが呟き、雨音が頷く。ラウルがふぅむと唸った。
「ここだと彼我100mってトコか、少し近付かないとネェ‥‥。一番射程長いのは誰の武器? エレにゃんカナ?」
「一応70m飛ばせるよー。当たるかどうかは別だけど」
「絶対当ててネ☆」
「このおにーさんひどーい!」
 などと軽い会話をかわしてから、護衛役を買って出たレスティーと共に、エレナは出来るだけ門の近くまで移動。木陰から静かに狙う。そして弓を引いた。
 ビュン! ダン!
 後方から双眼鏡を覗いて命中を確認したラウルが、お見事、と口笛を吹いた。
 その後は手分けして順に周辺のキメラを潰していき、無事に殲滅を完了したのだった。

●安堵
 爆弾もといキメラ除去が終了し、閉じ込められていた人々の元へ向かう能力者たち。
 農家の家族には子供も居て、のど渇いたーあついーしんどいーとごねていた。時は既に18時。外は明るいが、お昼からずっと家の中でじっとしていなければならなかったことを思えば、子供のつらさも想像できるというものだ。
 レスティーがラムネを取り出し、子供に渡す。
「大変でしたね、もう大丈夫ですよ」
「ラムネだ! おねーちゃんありがとー!」
「どういたしまして」
 子供は笑顔に、それを見た親も笑顔になって、レスティーは幸せな気持ちになる。その後もスポーツドリンクやミネラルウォーターを雨音と2人で配って回った。

 別の場所では、ミカン目当てのお手伝い部隊が結成されていた。家の主人とも打ち合わせをする。
「断水って修理の手伝いできるカナ?」
「ああ、そんなら業者へ直接、現状伝えに行ってくれんか、ついでにすぐ入用な物の買出しも」
「‥‥ん」
「りょーかい☆」
「しましたー!」
 ぴしっと敬礼した憐、ラウル、リミンは車を借りてお使いへ出発。

 お手伝い部隊が出かけている間に、手の空いている者たちは総出で昼間やるはずだったミカンの収穫を行った。暗くなってしまうまであと1時間程度。大急ぎだ。
「それは向こうに」
「これもう獲れる?」
 ‥‥途中、
「おいしそー♪」
「こらそこ! つまみ食いしてる暇無いの!」
 エレナが農家の子供と一緒にこっそりつまみ食いしようとしたが、あえなく失敗。
「後で余ったもん食べさせてやるから」
 と作業に駆り出されるのだった。
 収穫後、ミカンの仕分けをして箱詰めまで済ませた頃、お使いに行っていた3人が戻った。外はもうとっぷりと日が暮れて、今度は全員で食事。もちろん食後のデザートにはお待ちかねのミカンが登場。果樹園に多少の損壊はあったものの、ミカン自体は全て無事。守り抜き、そして収穫したミカンは格別に甘く美味しい。守り抜いた人々と過ごす時間もまた格別。

 四国は愛媛県、とあるミカン農家にて。傭兵、レジスタンス、農家の人々。そこに立場の垣根など無く、終始大騒ぎしながら賑やかに過ぎていく時間はとても温かかった。