タイトル:みんなでヒーローマスター:KINUTA

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/11/25 01:54

●オープニング本文


 ところはイギリス。イングランド南部地方。
 緑の丘の続く穏やかな田園風景が広がる中、作られた特設ステージ。
 観客席には既に多くの親子連れが詰めかけていて、幕が上がるのを待っている。
 近隣のみならず、町から遠出してきた人も多い。
 さもありなん、本日ここで開催されるショーは、かの「ニンジャー8」のものなのだから。

「ニンジャー8」

 それは、昨今ちまたで爆発的人気を博する、子供向け番組である。
 なんでも遠く日本で作られているものをヒントに、とあるテレビ会社が製作したらしい。
 悪の権化バカトノーが世界の平和を乱すため、イギリス、それもロンドンに大方限定して毎週放ってくる怪人たちを、ニホンのフジサンロクに住むオジジのもとで修行を積み秘伝の技を授かった8人の、これまた何故かイギリス人であるニンジャたちが迎え撃ち、華麗な必殺技で爆発とともに倒すという‥‥まあ要するに特撮戦隊ものだ。
 忍術というのは柔道や空手と一緒で、国外から大いなる誤解を受けがちな日本文化である。
 「ニンジャー8」も主題上ご多分に漏れず、いや低年齢向けであるだけになおさらその面が強く出ているのだが、そこがまた男の子には痺れるものであるらしく、関連グッズの手裏剣やヌンチャクや刀、そして口にくわえるとライトが点滅する巻物などが売れに売れている。
 装束セットなど常に品薄で、店頭に出てきた途端取り合いになることもあるそうな。
 閑話休題。
 とにかく目下そのステージショーで、偶然8人の能力者がバイトをしていた。
 セットの枠組みをしたり背景を設置したり、椅子を並べたり、入場者の誘導をしたりといった、いわゆる裏方さんとして。
 しかし、もうそろそろ開演時刻になるというこの時、大問題が持ち上がっていた。
 ニンジャーを演じる8人の役者さんが、待てど暮らせど現れないのである。
 イベント関係者一同おろおろし、大汗かいているチーフのジョンは、貧乏揺すりが止まらない。

「一体どうしたんだ、連絡はとれないのかねキミ、もうショーが始まるんだよ」

「いえそれがその、誰の携帯電話も通じませんので」

「マネージャーがいるだろうがね」

「そっちも駄目なんです。一体どういうことなのか」

 後もう五分もない。
 ここで中止ですなんて言ったら暴動が起きそうだし、当然料金を全額払い戻さなくてはいけない。後で不始末により自分も責任をとらされてしまうことだろう。左遷とかも有り得るかもしれない。いやひょっとして首とか。
 結婚して子供が生まれたばかり、家も買ったばかりでローンは後二十年も残っているのに冗談じゃねえ。
 諸々考え併せてジョンは、一か八かのばくちを打つことにした。

「よし、代役を立てよう。どうせショーの最中は全員覆面被ってて顔なんか見えないんだ。必ずごまかしおおせる!」

「えっ。し、しかしチーフ、あれは素人がパッと出来るものじゃありませんよ。飛んだり跳ねたりしなきゃならないんですよ。相当訓練を積んだ人でないと」

「いや、なんとかなる、なんとかなる。素人以上の人間がここに丁度8人いる‥‥そうだろうキミたち!」

 能力者たちは全員さっと振り向いたが、誰もいなかった。
 なので、ジョンが指さしているのがまさに自分たちのことなのだと、理解せざるを得なかった。
 その時、舞台の方でわあっと歓声が上がる。
 何事かと幕の透き間から見てみると、もう敵役が登場してきていた。
 全身黒ゴムタイツに身を包んだ男たちが五人、「イー」「イー」と奇声を発しながら、それぞれしょっているモッコに子供を入れてきゃあきゃあ言わせ、客いじりをしている。
 紫色の煙に包まれ、舞台の袖から怪人が出てきた。
 両腕にグローブをはめシュッシュと目にも留まらぬジャブを繰り出している、筋肉モリモリ身長約3メートルのエビ人間が。

「あっ、四天王のエビショーグンだ!」

「すげー、今日エビショーグン出るんだ!」

 子供たちの興奮は止まらない。
 なにしろ四天王はエビ、イカ、タコ、カニといるのだが、どれもバカトノー直属の超強いレアなキャラクターで、カードにさえ滅多に出てこないのだ。

「‥‥あれ? 今日の敵役ってあれじゃなかったような‥‥」

 衣装係は不審に思って呟いたが、ジョンは8人を急き立て衣装を着させ、アドリブでいいからと舞台に送り出してしまった。
 本物の怪人役たちが全員控室でエビパンチにのされているのが発見されたのは、その直後である。

●参加者一覧

那智・武流(ga5350
28歳・♂・EL
長谷川京一(gb5804
25歳・♂・JG
沖田 護(gc0208
18歳・♂・HD
秦本 新(gc3832
21歳・♂・HD
リズレット・B・九道(gc4816
16歳・♀・JG
天乃 凪(gc5247
11歳・♂・FC

●リプレイ本文

 今か今かという期待に違わず彼らは――彼らは現れた。テレビで活躍しているそのままの姿で。
 まず上方から頼もしい呵々大笑が響く。
 見上げると、晴れ渡った青空に浮かぶ大きな凧と、そこに乗った白い忍者の姿が見えた。

「闇に染まりて悪を絶つ‥‥ニンジャーホワイト推参!」

 子供たちは喜び、大人たちは感心する。

「いや、今回は大掛かりですねえ」

 さて、そんなホワイトこと那智・武流(ga5350)は下界に向けて手を振りつつ、思った。どうやって降りようと。
 飛び降りる‥‥しかないよな、やはり。降りなきゃドカーンがやれないし。うん。巨大扇風機を操作して協力してくれているイエロー(本名フロイド)とオレンジ(本名アル)に凧引き戻してもらうのもおかしいし。
 風に吹かれて彼がそんな思案をしているところ、ニンジャー8リーダー・ニンジャーレッドこと沖田 護(gc0208)が舞台に現れた。
 なりゆきでヒーローショー、しかもリーダーを任されてしまった彼であるが、とにかく責任感をもって役を全うすることに努めた。どう見ても敵役が「本物」であるので。
 昔自分が見た特撮ものの記憶を総動員し、高らかに叫ぶ。

「怪人よ、おれたちが相手だ! 天に輝く八つ星‥‥」

 赤い爆煙が彼の後ろで上がった後、舞台の袖からニンジャーグリーンこと秦本 新(gc3832)が、緑の爆煙とともに現れた。

「闇を飛び越え悪を裂く‥‥ニンジャーグリーン推参!」

 それに引き続き青い爆煙が上がる。

「闇夜を貫き悪を裁く! ニンジャーブルー、推参!」

 とうっ! という勇ましい声を出し、ニンジャーブルーこと天乃 凪(gc5247)が現れた。
 次いでは、ニンジャーパープルことリズレット・ベイヤール(gc4816)だ。

「‥‥闇夜を切り裂き悪を討つ‥‥ニンジャーパープル‥‥推参‥‥」

 紫の爆煙がたなびき終わらぬうち、群青の爆煙が上がった。
 ニンジャーダークブルーこと、長谷川京一(gb5804)である。

「闇に潜みて悪を断つ‥‥ニンジャーダークブルー推参!」

 そこにようやく武流が、回転しながら飛び降りてくる。
 舞台の床が多少ミシっといったけれども、とにかく格好はつけて着地できた。

「あえてもう一度言おう‥‥闇に染まりて悪を絶つ、ニンジャーホワイト推参!」

 彼の後ろに白い爆煙が上がる。
 続いてトリのニンジャーイエロー、ニンジャーオレンジが名乗りを挙げる。黄色と橙の爆煙とともに。

「闇に挑みて悪を照らす! ニンジャーイエロー推参!」

「闇に向かいて悪を焼く! ニンジャーオレンジ推参!」

 これで全員揃ったので、護は溜めていた台詞の続きを、全員と合わせて吐き出した。

「「ニンジャー8!!」」

 観客たちは拍手を送るのを惜しまない。
 しかしそうしないものもいた――タイツたちである。

「ブー」「ブー」

 口々に(口あいてないけど)ブーイングを上げるのみならず、それぞれ親指を下にしたり拳を振り上げたりして顰蹙を表している。
 彼らを前に相手したことがある護は、同じくその経験を持つリズレットへ言った。

「どうやらタイツ人間たちも日々進化しているようですね」

「‥‥そのようですね‥‥どんどん面白機能が強化されている‥‥リズにはそんな風にうかがえます‥‥」

 さてエビショーグンはというと、客席に向かって肩をすくめ首を振っていた。
 
(やけにノリがいいな)

 近づいてみてエビショーグンの横腹の足がわちゃわちゃしているのを目に、「あ、これリアルにキメラだ」と気づいた新は、そんなことを思ったり思わなかったり。
 とにかくこれでもこいつらはキメラ。子供たちを守らねばならない。
 全員の意見が一致したところで、護がレッドとして指示をする。

「みんな、早く子供たちを安全な場所に!」

「承知‥‥しました‥‥レッド‥‥」

 それに従いパープル、グリーン、ブルー、ダークブルーが観客席に向かう。
 護とともにエビショーグンの相手に回るのは、イエロー、オレンジ、そしてホワイト――彼がまず、ガードを固めたエビショーグンに勇ましく切りかかって行く。

「エビショーグン、貴様の命、頂戴致す。覚悟! 忍法、鴉乱斬!」



「忍者の飛技、見せて差し上げましょう‥‥!」

 新は竜の翼を使い、軽やかに客席を飛び越えた。タイツたちの頭上をも飛び越えた。
 どんな仕掛けを使えばあんなことが出来るのだろうと大人たちはまたまた感心し、子供たちは当然だと受け止めてわあわあ歓声をあげる。
 モッコに入っている子たちも別に怖がっておらず、一緒になって喜んでいる。
 飛び降りるや新は、まず手近にいたタイツの尻に蹴りを入れた。

「イー!」

 怒ったらしい。
 タイツは180度首を回し、かなりの速度の後ろ歩きで迫ってきた。
 華麗なバク転でそれを避け、後退し、双槍を取り出す。
 タイツは少し警戒したのか動きを止め、間合をはかる。
 とはいっても、何しろ子供がくっついている状態なので、新からも手が出しにくい。

「おおっと、そこまでだ」

 京一がその膠着を崩した。
 隠密潜行を利用した彼は背後からタイツに近づき、手首付近にあるモッコの紐を断ち切り、ずり落ちてきた子供をさっと奪ったのだ。

「ほら、もう大丈夫だぞ坊主たち。今だ、グリーン! 例の必殺技を!」

「おお、かたじけないダークブルー! それではくらえ、ニンジャー‥‥ツイン・スピアー!」

 彼は相手を舞台の方へと押しやって行く。観客席に被害を及ぼすわけにはいかない。
 凪もリズレットも、次々タイツを客席から追い出しにかかった。

「忍法、迅雷!」

 凪は子供に当たらないよう手加減しつつタイツを徒手で攻撃し、子供をモッコから奪い取る。
 テレビのヒーローに間近で救助されたちびっこはもう手を叩いて大喜びだ。

「ありがとう、ニンジャーブルー!」

「なに、こんなのはお安い御用さ! さあ! 逃げるんだ!」

 一方リズレットは、子供を連れて逃げて行こうとしていたタイツの前に立ちはだかる。

「‥‥逃しはしませんよ‥‥」

 彼らは睨み合いしつつ併走を始めた。
 そして両者同時に宙に飛び上がり交差し――あまりに一瞬のことで何が起きたのかはっきりしないのだが――それぞれ相手がいた場所に着地する。
 その時、リズレットの脇には子供が一人抱えられていた。
 息詰まる数秒の後、タイツがグラリと姿勢を崩し爆発する。
 リズレットは、「フッ」と失笑を漏らす。

「‥‥その程度で我らニンジャー8に勝とうなど‥‥笑止‥‥です‥‥」



 タイツが劣勢の中、舞台の上ではエビショーグンが優勢であった。

「ぐはあっ!」

 ニンジャーホワイト武流がエビパンチにより吹っ飛ばされ、書き割りを突き破った。
 もうもうと煙が上がる。
 激突した先でいち早く板壁にめり込んでいたオレンジとイエローが、体を引き抜きつつ彼に話しかけた。

「‥‥いやー、馬鹿にしてたら結構きますねあのパンチ」

「なんかオレ一瞬火花が飛んだよ‥‥」

「ああ‥‥俺も実はちょっと足に来そうになった‥‥」

 ボソボソ言葉を交わすそこへ、パンチをアイムールで受け流すレッドの声が飛ぶ。

「大丈夫か、ホワイト、オレンジ、そしてイエロー!」

「だ、大丈夫だ。問題ないレッド! くっ‥‥しかし今のはちょいとばかり効いたぜ‥‥」

 芝居がかった調子で起き上がりつつ、彼は横目で観客席を窺った。
 どうやら子供たちは全員無事救出されたようだ。

「太郎坊より授かりし、この大団扇の威力を見よ! 忍法、鳥居つむじ風!」

 京一の声に大風が湧き起こり、タイツたちがわあーっと巻き上がる。
 客席も大風に吹かれる。
 まさに屋外スペクタクルだ。
 吹き飛ばされて舞台に落ちてきたタイツは、そのとき既に四人になっていたが、すぐ起き上がりシュバッと敵っぽいポーズを取る。

 その後ろでエビショーグンが声を上げる。

「フォフォフォフォ」

 護の元に、京一、リズレット、新、凪が戻ってくる。
 それを待っていたかのように、タイツたちが襲いかかってきた。

「ブルーセイバー!」

 と称してただの刀を凪が取り出だし、相手に切りかかる。

「食らえ、忍法! 円陣! たーっ!」

 一体が華々しく爆発した。
 護はアイムールを使用し、一撃必殺の突きを加える。

「受けてみろ、戦棍一擲!」

 そしてまた一体が爆発した。
 残り二体は新だ。彼は対の槍を振るい、同時にタイツを刺し貫いた。

「ツイン・スピアー!」

 二つの爆音が重なった。
 人間が直に爆発したようにはっきり見えているが、ここは舞台。特殊効果の一言で不条理に説明がつく世界であるため、見ている誰も疑問には感じなかった。

「すごいですな、どんな仕掛けでしょう、あれは」

「爆発と同時に人がいなくなったわよ。こってるわねえ」

 さあ、後はエビショーグンである。

「もはやお前一人だエビショーグン! 食らえ、忍法、鳥居つむじ風!」

 京一が舞台の上で大風を起こす。
 書き割りが全て吹っ飛び、エビショーグンとともに舞台の端に叩きつけられる。
 またもや上がるもうもうたる煙。

「やったか!?」

 子供たちもそれを期待する。
 しかし彼らも、名にし負う四天王がこの程度でやられるはずがないのではということを薄々予想はしていた。
 はたせるかな、煙が晴れてみるとそこには、巨体が無傷で立っていたのである。

「エビエビーッ!」

「「何いっ」」

 ニンジャーたちが異口同音に叫んだ。
 実際驚いてはいたのだ。相手がフォフォフォ以外にも喋れたという事実に。
 エビショーグンは両手を振り回して突進してくる。
 まず京一と新とが、半分自分から吹っ飛ばされた。彼らは舞台の端の方まで飛んで行き、受け身を取って派手に転がる。

「くそっ、あれでまだ生きているとは‥‥」

「なんて強さだ‥‥これが、四天王‥‥!」

 続いて果敢に挑んだ凪もまた、必要以上に後方へ飛ばされ転がり、悔しそうに床を叩いた。

「なんて、なんて強力なパンチだ!」

「噂どおりの‥‥相手ですね‥‥」

 リズレットがそう続ける。
 そんなこんなでエビショーグン、いい気分なのかガッツポーズを取る。
 ニンジャー8、ピンチである。
 そこで満を持し、護が叫んだ。

「弱気になっては駄目だみんな! 忘れるな‥‥そこにいるたくさんの子供たちの応援、それこそ、ニンジャーの力なんだ! さあみんな、おれたちにパワーを分けてくれ!」

 彼が観客席に向けたこの呼びかけは、熱狂的に支持された。たちまち大合唱が起きる。

「がんばれー、ニンジャー8」

「がんばれ、まけるなー」

「エビショーグンをやっつけてー」

 出たとこ勝負の演技だったとはいえ、これだけの大反響。役者一同いささか胸が熱くならないでもない。
 京一はますますノってくる。

「こうなったらアレをやるしかないぞレッド!」

 引き続いての武流、新、凪、リズレットも同様である。

「そうだ、この窮地を切り抜けるにはアレしかない!」

「アレだ、レッド!」

「今こそアレを!」

「‥‥いよいよ、アレの出番が来ましたね‥‥レッド‥‥」

 こんなにまで強調されるアレとは一体何か。子供たちは目も耳も釘付けである。

「分かった。こうなったら、おれが突破口を開く! みんな、おれに続いて攻撃するんだ!」

 その正体をリーダー・レッドがとうとう明かした。

「超忍法、八重連星! たーっ!」

 護がまず相手の懐に飛び込むと同時に、その丈夫そうな頭蓋に一撃を食らわし、ついで練成弱体をかける。

「忍法‥‥双燕!」

 間を置かず新が二本の槍で、手と腹の関節を攻撃した。
 エビショーグン、殻がひび入ったことに激怒、高速のパンチを奮う。
 そこに、リズレットからの稲妻が襲いかかった。

「‥‥やらせはしません‥‥降れ雷‥‥忍法、雷遁の術‥‥かの者に裁きを‥‥」

 ちょっと焦げでもしたか、舞台にうっすら焼きエビのいい匂いが漂う。
 京一の突風が巻き起こる。

「超忍法、天狗颪!」

 突き出た目にほこりでも入ったかエビショーグンは動きを鈍らせた。
 隙をつきリズレットは、先程ひび入った場所目がけ、正確に刃の攻撃を加える。

「‥‥これで‥‥お仕舞いです‥‥」

 ピシピシッと更に甲羅が割れる音がする。

「ホワイト奥義、忍法、五月雨!」

 そんなところへ武流の乱れ突きが来るのだからかなわない。
 京一がひそかに援護射撃していることもあり、ビキビキ頭と腹との割れ目が繋がってしまった。

「エッ、エビエビ!?」

 そこからぷしゅーと蒸気が漏れ出すのを、エビショーグンは大きな手で塞ごうとした。
 しかし時既に遅し。凪がスマッシュを加えてきた。

「忍法、円陣!」

 バッキーン。
 取り返しがつかないほど何かが割れる音がした。
 刀をさっと鞘に収め、凪はポーズを決める。
 エビショーグンはその後ろで2、3歩ふらふらとよろめき。

「「忍法、暖色二重蹴!」」

 オレンジとイエローによって止めを指された。
 殻の色が赤から燃え尽きた白に変わり、頭がパックリ割れたので、レッド始めニンジャーたちは急いで舞台の袖までその巨体を抱えて投げ飛ばす。

「エビショーグン! さあ、大人しく海に帰れ!」

 うまい具合に爆発が起きたので、何とかうまくまとまった。
 袖での受け止めに回ったオレンジとイエローが指で丸を作り、キメラ死亡を皆に伝える。
 やれやれ、これで一段落だ。

「みんなの応援のお陰で勝つことが出来た、ありがとう!」

 新の言葉に、またまた拍手が沸き起こる。
 彼からマイクを託されて、護が締めくくる。

「これからもおれたちのことを応援してくれ、みんな! さあ、みんなでもう一度一緒に‥‥ニンジャー8!」

 レッドを中心に団体ポーズを決めるニンジャーたちに、会場から割れんばかりの合唱が起こる。

「「ニンジャー8!」」



 ショーが過ぎて二時間後。
 控室にてようやく忍者装束が脱げた護はぐったりしていた。
 疲れていたのだ。ステージだけでもそうなのだが、後に続いた触れ合いタイムで、サインと握手と記念撮影とも任されてしまったために。

「‥‥いいんですかねここまでして‥‥僕ら本物の役者さんでもないのに‥‥」

「いいんじゃねえか。仕方ねえじゃないの。ファンサービスしないわけにもいかないし」

 武流の言葉に、京一も頷いた。

「そうそう。ガッカリさせなくて何より何より」

 そこへ凪が、気遣わしげに聞いてくる。

「ところでどうしましょうか、これは」

 彼らは床の上を見る。
 そこには、灰になっちまったエビショーグンが転がったままであった。
 新が眉をひそめて提案する。

「‥‥埋めときます? エビの墓とか札立てて」

 彼らが頭悩ませるその頃、リズレットは先に控室から出てグッズ売り場に来ていた。
 ニンジャー8や敵キャラのマスコット人形を物色しつつ、一人ごちる。

「‥‥それにしても‥‥リゼがヒーローだなんて‥‥ふふ‥‥」

 彼女にとっては今回の体験、なかなか楽しいものであったようだ。